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[ ]←は聖ヨト語の言葉です。なので、最初は通じません。
聞き取れるようになったら、「」←聖ヨト語もこれになります。
-------------○○side------------- は、これより○○のキャラが主体の話ということです。主に、英慈と誠一の視点変更に使います。
#5 もう一人
-------------誠一side-------------
英慈がクイアスに飛ばされた時、誠一は別の場所に飛ばされていた。
---牢獄---
「・・・う・・・」
気がつき、起きあがろうとする。
だが、何故か手足をロープで縛られ動けない。
「何故縛られている?ここは・・・?」
まあ、とりあえず現状確認だな。
体には・・・・・・縛られている以外には特に問題はないな。
この場所は、っと。よく分からないが、石造りの壁だが一つだけ鉄製の扉と、鉄格子がかかっている窓があるな。
辺りを見渡していると不意に扉が開いた。
「誰だ?」
扉の前にいる者を見る。
そこには、白い髪、白い服の少女が立っていた。
[あ、ようやく目が覚めましたね。]
聞き取れない言葉。
「えっ?何だ?」
さすがに驚きを隠せない。
[もう2日間も目覚めなかったので、心配しました。]
白い服の少女が話しかけてきている(そのように見える)が全く分からない。
[あ、言葉分からないんですよね。]
[ちょっとすみません。]
そういうと少女は、誠一に近づき、手を肩に置いた。
その手には指輪があった。
(『読心』よ、力を貸して。)
少女がそう思った瞬間、指輪が目も眩ますほど輝いた。
「うっ!」
誠一は思わず目を瞑ってしまった。
光が収まった時、何も変わってないと思ったが、
(これで、話せるはず・・・・・・。)
と、少女の声が理解できる言葉で、聞こえた。
だが、それは聞こえたというよりも、心に感じたという感じだった。
(! 何だ?)
(あ、慌てないでください。)
またもや聞こえてきた声に驚きながら問う。
(な、何なんだ?)
(いきなりすみません。)
(ですが、こうしないと会話ができないので。)
心の中なら言葉は通じるのでと、少女は付け加えた。
(心の中! そんなことができるのか!)
(はい。私の神剣ならできます。)
(神剣とは何だ?)
少女から出た神剣という単語を尋ねる。
(それはまだ知らなくても良いことです。)
(それより、お腹空いていませんか? 食事を運んで来たのですが・・・・・・。)
そう言われた瞬間、自分の空腹具合を理解する。
まるで、数日間何も食べていないような・・・・・・。
(なあ、俺は何日間、意識が無かったんだ?)
(ここに運ばれてきて2日間ですね。それ以前は分かりませんが。)
それなら、これほどまでに空腹だと納得する。
(ありがとう。なら、せっかくの食事をとらせてもらうかな。)
だが、誠一は手足を縛られている。
(ったく、邪魔だな、このロープ。)
そのとき、少女が何か思いついたのか、両手をパチンと合わせた。
その後、また肩に手を置き、
(それなら、私が食べさせてあげます。)
(なっ!)
少女は肩を手で掴み、動けないようにしてから、スプーンで料理をすくい、口まで運ぼうとする。
何故かその顔は、楽しそうに笑っていた。
(はい。口を開けてください。)
(ばっ、バカ!いい、いいって!)
赤面しながら必死で断る。
さすがに、この年になって食べ物を食べさせてもらうなんて抵抗がある。
それに、おそらく同年代の美少女。
首を左右に振るが、口を狙ってスプーンを突き出してくる。
(いいじゃないですか。ほら、口を開けてください。)
(ああ!くそ!)
その瞬間、するりと縛っていた縄を外した。
そして、自由になった手でスプーンを押さえる。
何とかスプーンの進入を押さえることに成功した。
(え?)
(危ない危ない。)
少女は驚いている。
それもそうだ。いきなり目の前でそんなことをされれば、驚かない人はいないだろう。
(あのバカ姉貴に無理矢理教えられた事がこんなところで役に立つとはな。)
(縄抜け・・・・・・ですか?)
(ああ。こんなものに頼りたくは無かったがな。)
(それより、飯を渡してくれ。もう自分で食えるから。)
(あ、はい。)
少女はお盆を手渡す。
乗っているものは、パンに見えるものが一つと、おそらくこれはシチューだろう。
(では、いただくとしよう。)
誠一は食事を食べ出した。
そして、最後の一口を食べ終わった後。
不意に、誰かが近づいてくる足音がした。
(一人や二人では無いな。)
少女もそれに気づき、いきなり慌てた口調で、
(お盆を隠してください!)
と、かなり早口に言った。
逆らう意味も無いので素直に体の後ろに隠す。
[エトランジェが目覚めただと!]
[はい。あのスピリットが中に入ってからです。]
相変わらず何を言っているか分からないので少女に問う。
(すまないが、通訳をしてくれないか?)
だが、少女は答えない。
ただ俯き、悲しげな目をして、誰かが来るのを待っているように見える。
そして扉が開いた。
そこに立っていたのは、もう少しで地面に付いてしまいそうな、貴族風のマントを羽織った男と、昔の西洋にいたような兵士が十人弱。
その男はジロリと誠一を見回すと、一言
[キャス。]
[・・・・・・はい。]
返事をしたのは側にいた少女だった。
何とか人名の様に聞き取れたので、この娘はキャスという名前なのだろう。
キャスは男に近づいていく。
手が届くほどに近づいた時、男がすごい剣幕でキャスの頬を殴った。
(!?)
少しよろけるが倒れない。
[スピリット風情が勝手な真似をするな!]
[・・・・・・すみません。]
言葉は分からないが、殴られた理由は何となく分かった気がする。
何故なら男が誠一を見たときに一瞬、ほんの一瞬だけ体で隠したつもりのお盆と、ロープの外れた手で視線が止まったからである。
おそらく、料理を勝手に持ち込んだのが悪かったのだろう。
そして、腕は縛られていないが、座っている誠一に向かって歩き出す。
その後ろには、頬に殴られた後がのこるキャスもいた。
男は目の前に立つなり、
[訳せ。]
ただ、一言。それにキャスは従い、誠一の肩に手を置く。
(これから、シン様の言葉を伝えます。)
(さっき、殴られたが大丈夫か?)
理由は問わない。
自分でも分かっているし、聞いたところで答えてはくれないことを雰囲気で分かったからだ。
(・・・・・・・・・・・・・・・。)
無言。まあ、いいだろう。
[(貴様にはこの国、アルカ帝国でエトランジェとして、戦ってもらう。)]
男の声と、キャスの声がほぼ同時に聞こえる。
拒否権は無いと言わんばかりの言い方。だが、
(断る。)
エトランジェという言葉の意味は分からないが、戦いに参加する気はない。
答えをキャスは、男に伝える。
男から帰って来たものは、蹴り。
それは、腹に入りその勢いで軽く転がる。
「がはっ、げほっ、ごほっ。」
意識は何とか保っていられた。
体勢を立て直し、何とか立つ。
そして、思い返す。
男に蹴られたときに、男の腰に見えた鞘。
それはどう見ても、この世界に来る前に持っていた物。
折れてしまっているが、先祖代々引き継がれてきた神剣(らしい・・・・・・)を。
俺が認められた証を。
それを、奪われていた。
(その剣を・・・・・・返せ!)
男に向かって走り出す。
周りの兵士が少し慌てているが関係ない。
狙いは男の顔面。
隙を作れればいい。その隙に剣を奪えるのだから。
「うおぉぉぉぉっっ!」
右手に力を込め、男の顔面に拳を直線的に打ち込んだ。
直撃。
キャスの手のひらに。
「! なっ!?」
いつの間にか、男との間に入り込んでいたキャスに止められた。
そして、動きの止まった一瞬に、
ごすっ、と鈍い音がした。
「かはっ!」
キャスの拳が腹に入り、体が軽く浮く。
薄れていく意識の中でキャスの声を聞いた気がした。
(すみません。)と。
[こいつを、縛っておけ。]
男がそう言うと、
はっ。と、短く返事をして、兵士達が誠一を縛っていく。
[キャス。二度と勝手なことをするな。]
[はい・・・・・・。]
それだけ、言葉を交わすと男達は部屋から出ていった。
あとがき
一章#5終了しました。
今回は、ファンティジアビスに飛ばされたもう一人、誠一の話でした。
この人は、一見冷静そうにしていますが、大事なものに手を出されたりすると、手の着けようがない。というキャラです。
では、今回登場したキャラクターの紹介を。
キャス・ホワイトスピリット
永遠神剣第?位「読心」の使い手。
白い髪、白い服と、見れば直ぐにホワイトスピリットだと解るような姿をしている。
傷ついた生き物等を見ると、治したくなる、優しい性格。
だが、その反面にいたずら心が備わっており、嫌がる誠一に無理矢理飯を食べさせようとしていた。
永遠神剣第?位「読心」
キャス・ホワイトスピリットの神剣。
キャスの目に映る人の心を読むことが出来る。
そして、対象に触れながらなら、心の中で会話をすることが出来る。
心の中の言語は、話す言語に関係なく統一される。
位が?位なのは、神剣がその話題に触れようとしないから。
だが、意思はあるので、高位な位ではないかと、思われている。
形は指輪。
シン・エイギィス・アルカ
アルカ帝国、現帝王。
前の帝王が、あまりに残忍だったため、帝国貴族達の満場一致で、無理矢理引きずり降ろし、シンがその地位に就くことになった。
帝王となる前のシン、良い性格だったのだが、帝王となってから、突然人が変わったようになってしまった・・・・・・。
と、紹介でした。
今回初めて、HTMLで作成したのですが、まだ、使い方が良く解らないので、どんどん精進して生きたいと思います。
それと、カウンタが、そろそろ10000を越えそうです。
皆さん、ありがとうございます。これからも、Parallel Storyを宜しくお願いします。
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