[ ]←は聖ヨト語の言葉です。なので、最初は通じません。
聞き取れるようになったら、「」←聖ヨト語もこれになります。
-------------○○side------------- は、これより○○のキャラが主体の話ということです。主に、英慈と誠一の視点変更に使います。
#3 迎え
---暗闇---
ああ。またここか。
何度か来たことがある場所。
自分の意志では動けず、ただ見えるものを見るだけの世界。
そしてまた過去のことが蘇る。
「えっと、席は窓側の一番後ろね。佐藤君の隣りに座って。」
「はい。」
すたすたと歩いていき席に着いた。
1時間目算数が始まった。
新入生だからといって全く先生に指されない訳ではない。
「はい。じゃあ佐藤君、前に出てこの問題を解いてください。」
え〜、と文句を言いながら前に出ていく。
問題は 5+8−3 前の授業で一度解いた問題だ。
「先生・・・。分かりません。」
「昨日一度解いたのに・・・。じゃあえっ〜と・・・神楽さん。解けるかしら?」
はい。と返事をしながら前に出ていく。
なんと、わざわざ途中の式まで書いてわかりやすく解いてしまった。
「これでいいですか?」
驚いている先生。
「先生?」
「あ、はい。合ってます。」
またも、すたすたと席に戻っていく。
チャイムが鳴り授業が終わった。
その瞬間に生徒が理江の席に集まってきた。
「ねえねえ、神楽さん。私は・・・。」
等という自己紹介がされていった。
「前にいた学校はなんて名前?」
「友達になろうよ。」
「さっきの算数では凄かったね。」
「私に解き方教えて。」
と、気がつくと輪の中心にされていた。
「今までどの位転校したの?」
「どんな学校でも友達はできた?」
「好きな食べ物は?」
「誕生日は?」
「血液型は?」
転校生が珍しいのか質問責めされている。
そのときずっと口を閉じていた理江が口を開いた。
「私にかまわないで。」
静かに、だがよく通る声で理江の周りで騒いでいた生徒達に聞こえるように言った。
その言葉が聞こえたものから順に口を閉じていく。
・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
沈黙。
重苦しい空気に耐えられなくなったのか、生徒の内の一人が口を開いた。
「でも・・・」
「いいから私にかまわないで!」
さっきより強く、少し声が裏返りながら言ったので教室中に聞こえた。
・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
またも沈黙。
別の場所で話していた生徒も話をやめ、理江の席の方を見ている。
(なんであの子はこんなきついことを言うんだろう?)
そのとき俺はまだ分からなかった。
理江の周りにいた生徒達がどんどんいなくなっていく。
そしてクラスを重い空気が流れた。
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---深い穴の底---
「うう・・・。」
意識が戻った。
「俺は何でこんなところに・・・。」
辺りを見渡すと、洞窟のような場所で、頭上には30m位上に足場がある。
「あそこから落ちたのか・・・痛っ!」
どうやら肋骨が折れているようだ。
「はあ、はあ、まずいな。・・・これは。」
もう一度辺りを見渡してみる。
(ん?)
自分の足下に剣が落ちている。
「この剣は・・・。」
クーゴに見せてもらった剣。
俺のものだって言ってたけど・・・。
【私を取りなさい。】
「痛っ!」
いきなり頭痛と共に頭の中に言葉が聞こえた。
【私を取りなさい。】
前にトーラに話しかけられたような感覚。
(この剣からか?)
剣に近寄り、手に取ってみる。
「へえ。」
思ったより重くない。
【いきなり話しかけてしまってすみません。】
【こうでもしないと私を手にとって貰えないかもしれなかったのです。】
今度は頭痛はしなかった。
【とりあえず・・・、治療を・・・。】
剣から、白い光が出てきたと思ったら、すぐに俺の体に入り込み消えた。
「な、何をしたんだ。」
いきなりされたことに驚く。
【治療です。肋骨が折れていましたよね。】
「あ、ありがとう。」
【じゃあ、自己紹介を・・・って、もう聞いていますよね。】
【私は永遠神剣第五位『約束』です。あなたは、エイジですね。】
「俺、名前は言ってないけど・・・。」
【あなたがクーゴと話しているのを聞きました。】
俺とクーゴが『約束』の前で話したことは全て知っていた。
そして、クーゴがしなかった永遠神剣や、スピリットなどについての知識を俺に与えてくれた。
「えっと、つまり君、『約束』を使えるのはこの世界では俺だけって事?」
【そうです。】
「君と契約すれば・・・、クーゴの仇はとれるのか?」
【あなた次第です。そして、私の能力は何かを求める代わりに代償を支払ってもらうこと。あなたが力を求めれば私はいくらでも力を貸します。その代わりに代償はきちんと払ってもらいますが・・・。】
「なあ、代償って具体的になんなんだ?」
『約束』は一瞬間をあけて答えた。
【代償とは、あなたの所有物の事を指します。あなたの持っているもの、他人との関わり、記憶、最終的には命でもかまいません。】
「命なんて代償にしたくないな。」
【まあ、私もそれでは困るんですけどね。】
「明るく言うなよ・・・。」
「君の力で俺の世界には帰れないのか?」
【帰れなくは無いです。・・・その代償を聞きますか?】
『約束』の声のトーンが落ちた。
そんなに大変な事なのか?世界を飛ぶことは。
「いや、やっぱり聞かない。」
「で、契約はどうすればいいんだ?」
【あ、はい。では眼を瞑り、私が言うことを強く念じてください。】
「ああ。」
強く眼を瞑る。
【我は『約束』と契約せし者。】
(我は『約束』と契約せし者。)
【我は『約束』に認められし者。】
(我は『約束』に認められし者。)
【我は望む!力を!】
(我は望む!力を!)
【我は永遠神剣第五位『約束』の主、『約束』のエイジ!】
(我は永遠神剣第五位『約束』の主、『約束』のエイジ!)
【今ここに、力を解き放つ!】
(今ここに、力を解き放つ!)
最後の言葉を言った瞬間、剣が光り、辺りが真っ白になった。
光が消え、眼が見えるようになってから『約束』は俺に話しかけてきた。
【どうですか?それが神剣の力です。】
「凄いな。体が軽くなったみたいだ。」
実際に身体能力がかなり上がっているので、そう感じるのも無理はない。
【では、私を地面に刺して手を離してください。】
「こうか?」
言われたとおりに『約束』を地面に刺す。
その瞬間にいつもの自分に戻った気がする。
「なるほど、剣を持っていないと力は発動しないのか。」
【その通りです。】
「さてと。どうやってここから出るか。」
【さすがに剣の力を使っても上までは上がれませんね。】
辺りを見渡す。
「ん?」
うまくカモフラージュされているが、壁に扉があった。
扉のノブに手をかけ、開け・・・ることはできなかった。
「鍵がかかってるな。」
【エイジ。】
「ん?何だ?」
【見たところこの扉は鉄製ですが、私の切れ味なら斬れると思いますが・・・。】
「本当か?」
【はい。】
「なら、試してみるか。」
右斜め上から、左斜め下まで力をあまり込めずに軽く一閃させる。
あまり力を込めていないにも関わらず、扉は重い音と同時に崩れていった。
「・・・。」
【どうしました?エイジ?】
「『約束』。お前には鞘は無いのか?」
【どうでしょう?私は地面に突き刺されていただけですし、前の持ち主の時の記憶もありませんから。】
「早く鞘を用意しないと・・・。」
【私は鞘には入れないんですけど・・・。】
『約束』がそれが当然のように言ってのける。
「・・ッ!お前な!こんな鉄までも斬れるような奴が鞘なしなんて無理なんだよ!この分じゃ持っているだけで人でも殺しそうなんだよ!」
【そんなこと言ったって、私が鞘に入ると抜刀したときに鞘まで斬ってしまうんですよ!だから入れないんです!】
・・・・・・・・・・・・。
「はあ、何で前の持ち主は鞘も置いていかなかったのかなあ。」
「まあ、まずはここから出ないと。」
扉の先を見てみると、上へと続く階段があった。
「上がってみるか。」
【はい。】
階段を上がるとそこは、防空壕入り口の隣だった。
「・・ッ!まぶし!」
いきなりの太陽の日差しに眼をやられた。
「『約束』。」
【はい?】
「敵はこの辺りにいるか?」
【私には分かりません。ですが、あなたが神剣の気配を探せば見つけられると思います。】
「どうすればいい?」
【まず、自分を中心に円を描くようなイメージを作ってください。】
【あなたの近くに私がいます。それが神剣の気配です。】
【円を広げて、気配が在れば敵がいます。】
「よし。わかった。」
俺は、自分を中心に円を描くイメージをした。
まず、俺がいて、『約束』がある。
その円を広げる。
10m位に広げたときに、円のイメージが消えてしまった。
「あれ、円のイメージが消えた?」
【あなたには、まだそれぐらいしか探査できないんですよ。精神鍛錬をすれば、さらに広げられます。】
「だが、敵はいなかった。」
【なら、大丈夫です。】
「村へ戻って生き残りを捜さないと・・・。」
---国境の村クイアス跡---
(壊れてから二度目になるが、凄い壊れようだな。)
英慈がそう思うのも無理はなく、家は半分吹き飛ばされたり、全壊したりしている。
「誰か無事な人はいないのか。」
辺りを見渡しても、誰一人動かない。
「そうだ、クーゴは?」
クーゴがいた場所へ走っていった。
最後にクーゴを見た開けた場所へ来た。
そこに、クーゴが倒れている。
「クーゴ!」
クーゴに走り寄り、抱き起こす。
「クーゴ、おい!大丈夫か!」
しかし返事は無い。
【エイジ、もう駄目です。すでに亡くなっています・・・。】
「『約束』・・・。クーゴを生き返らせることはできるか?」
【無理です。さすがに私でも死者はどうすることもできません。】
「ッ!クソッ!」
拳を握りしめる。
「俺の・・・、俺の所為だ。」
「村がこんなことになったのも、クーゴが死んだのも。全部俺の所為だ!」
【・・・。泣きたいのなら泣いてもいいんですよ・・・。】
『約束』が優しく声をかけてくる。
「俺だってできるならそうしたい。だけど・・・、俺は泣けないんだよ。」
「それに、早く村の人を埋めてあげないと・・・。」
神剣の力を使いながらも、村人の墓を作り終える事はできた。
「これで、終わりだ。」
クーゴの墓を作り終え、俺は墓の前に腰を下ろす。
「クーゴ・・・、すまなかった。」
「俺はこれからどうすればいいんだ。」
うつむき、考える。
そして、意識が闇に落ちかけたとき・・・。
「この辺りでいいのか。」
「間違いないはずよ。光が立ち上ってから、神剣の気配がしたもの。」
「そうね。というより、もう目の前にいるわ。」
俺の意識は戻り、横のスピリット三人を見た。
一人は青い髪の少女、もう一人は赤い髪、あとの一人は緑色の髪。
「誰だ。」
その中の赤い髪の少女が一歩前に出て、
「あなたが、『約束』のエイジ様ですね。よろしければ私たちと来てください ませんか?」
胸を張り、そう言った。
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あとがき
一章#3をお読みいただきありがとうございます。
戦闘を楽しみにしている方、すみません。もう少しお待ちください。
戦闘は戦闘で思いっきり出して見せます。
楽しみにしていてください。
それと、おそくなりましたが、まだ初SSなので、おかしいと思うところはあると思いますがそこはご了承ください。