#2 犠牲
---防空壕 扉の奥---
「これが・・・、俺の剣?」
地面に刺さった剣をまじまじと見る。
「この十字架は!」
「気づいたかい?」
「それは、君の背中にあるものと同じだよ。」
背中の十字架、火傷の痕。
これと同じものが、この剣にも描かれていた。
「何故俺と同じものが。」
「それは、君がこの剣の主だからだよ。」
「これが・・・、俺の剣?」
「って、ちょっと待て!」
「さっき永遠神剣って言ったよな。」
「確かに言ったね。」
「永遠神剣って、スピリットが生まれてくるときに持っている剣じゃ無いのか?」
「そうだよ。」
「じゃあ、何でここにあるんだ?もしかして、奪ったのか?」
クーゴに単純な質問をする。
「さっきは、言い忘れていたけど、この永遠神剣はエトランジェ用で、大昔のエトランジェが死んだときに剣は砕かれなかったらしい。」
「それに、スピリットから奪うなんてそんなこと出来る訳がない。僕ら人間より遙かに戦闘能力があるんだから。」
「ちょっといいか?」
「何?」
「剣は砕かれなかったって、持ち主が死んだのに剣を砕いて意味はあるのか?」
「いいところを突いてくるね。」
「それを話すにはまず、マナとエーテルについて話さなければならない。」
「マナとは、この大地の命だ。よって、マナが少ない場所では動物は暮らせないし植物も生きられない。」
「そして、エーテル。
エーテルは、マナを変換させて、建築やスピリットに使うことができる。」
「マナとエーテルは基本的に1対1の関係になっている。」
「つまり、エーテルを建築に使ったとしよう。その建物を壊したときにマナに戻るため、使用した分のエーテルがマナとなり戻って来るんだ。」
やばい・・・。話が異様に長い・・・。
「そして、永遠神剣。これを砕くと、存在に必要なマナが手に入る。
それは、その神剣が強ければ強いほどね。
神剣の強さはだいたい位づけされている。
スピリットが持っているのはまあ、だいたい六〜九位ぐらいまでで、この剣は第5位スピリットより剣の力だけは強いわけだ」
剣を見る。
「ん?ならなおさら砕くんじゃないか?」
「そこは、今までずっと謎だった。」
「今も分からないけどね。」
「よく分からないな。」
「何が?」
「いや、いろいろなことを教えてもらいすぎて整理ができてない。」
「まだまだ、たくさんあるけどそれは、又今度で。じゃあ、戻るよ。」
クーゴは扉に向かって歩いていく。
「ちょっと待て、クーゴ。何か聞こえる。」
外から何かが聞こえてくる。
肉を斬る音や、・・・悲鳴!
「エイジ!君はここから、出るな!」
「お前はどうするんだよ!」
クーゴは俺の言葉を聞く前に出て行った。
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俺の世界での時間で30分経った。
未だ剣の音は続いている。
それに・・・悲鳴も。
(結構時間が経ったな。)
(みんな大丈夫か?)
街の人々は俺に良くしてくれていた。
そして、家族同然に見てくれた。
元の世界で家族が意識不明な俺にはうれしすぎることだった。
(! 音がやんだ。)
(出るなと言われたが、さすがに気になるな。)
外に出てみる。
「こ、これは!」
村から黒煙が上がっている。
「くそ!みんな!」
俺は村に駆けだしていた。
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「はあ、はあ、はあ。」
肩で息をしながら村へ入る。
「こ、こんなことって・・・。」
村は見るも無惨な位変わってしまった。
道には死体があり、家々は全て燃やされている。
(だ、だめだ。見ていられない・・・。)
においに耐えきれず嘔吐する。
「はあ、はあ。」
(こんなところで立ち止まってなんかいられない!)
「はあ、クーゴ!」
叫ぶと同時に駆けだしていた。
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開けた場所に来た。
広場みたいなここに、おそらく一般兵が一人と、スピリット?が三人いる。
そして、クーゴはスピリットに取り押さえられていた。
(! クーゴ!)
「クーゴ=ジルクレイド お前は我が国の技術者として働き、その研究資料を持ち逃げした。」
「ああ。」
剣をクーゴの喉に突き立てる。
「資料の在処を吐き、研究所に戻る気は無いか?その返答し・・・」
「あるわけが無いだろう!あんな実験をさせられて!資料をお前等に渡す気も無い!」
相手の言葉を遮った。
「お前のような頭脳の持ち主を殺すのはいささかもったいない気もするが。」
「少しいいか?」
「何をする気だ?」
「神に祈らせてくれ。」
クーゴは男が返答する前に大きく息を吸っていた。
〈エイジ!いるなら聞いてくれ!あの剣を抜き、戦うんだ!それしか生き残る方法は無い!〉
「え?」
聞き慣れていた言葉。日本語?なぜ、クーゴが?
〈行くんだ!早く!〉
(くっ、すまない。・・・・クーゴ。)
俺は踵を返し、防空壕へと戻っていく。
「お前たち!まだ生きている奴がいる。探して始末しろ!」
男の言葉に反応してスピリット達は辺りを散策し始めた。
男は剣に力を込めた。
「誰と話していた。」
「神だよ。このもの達に天罰を〜ってな。」
「もういい。死ね!」
男はクーゴの喉を切り裂いた。
(生き残れ。そして、帰れるといいなお前の世界へ・・・。)
---防空壕 入り口---
俺は全速力で防空壕へ走っていた。
「はあ、はあ、はあ、もう少し!」
後ろからスピリットが追ってきていることには気づかなかった。
---防空壕 扉の奥---
「あった!」
剣を見つけ、剣に向かって走り出す。
そして、剣に手を伸ばそうとしたその時、
ドッゴォォォォーーン
巨大な爆発音と、共に足場が崩れだした。
「なっ!」
足場が崩れ落ちていく。
それと同時に俺自身も落ちる。
「うわぁぁぁぁぁ。」
相当な距離を落とされ、たたきつけられた。
当然のように、意識が途切れていく・・・。
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あとがき
一章#2終了です。
村人全員が皆殺し・・・。
シリアス過ぎですかね?
そして、英慈の運命はいかに!#3を楽しみにしてください。