#3 始まり
---帰り道---
辺りはもう暗く、電灯がつき始めた。
2人は道を歩いていく。
そこに居たものに二人は絶句した。
少女が一人
青い髪を後ろで一つに結っている。
その服装はヨーロッパを想定させる洋式の服。
脇腹に大きな傷を負っていて、もの凄い出血をしている。
だが2人が驚いたものは出血もそうだが、一番最初に目がいったのは、
剣
間違いなくヨーロッパなどの剣。
切れ味は良さそうでよく磨かれている。
その筋の人が使えば木などはもちろん、鉄までも斬れそうな位磨き上げられている。
その少女が、意識もなく電柱にもたれかかっているのだから驚くのは無理はない。
「な、何だあの子?」
「わからない。」
そう言った瞬間、少女はいきなり立ち上がり、空に向かって構えた。
「な、何だ?」
「何か来る。」
誠一が言った瞬間だった。
青白い光が少女から発されたと同時に少女の背中に羽が生え、空高く飛び上がった。
「!」
「羽!・・・飛んだ!?」
静かな夜に剣のぶつかり合う音が聞こえる。
少なくとも1秒に2回。
しかも空中で。
「戦ってる?」
「映画か何かか?」
見ていると何滴か血が降ってきた。
「血?」
「やばい、本当に斬り合っている。」
そうこうしている内に少女と、初めてみる男がいきなり降りてきた。
男も剣を持っていた。
その剣には、付いたばかりの血が張り付いていた。
少女はいきなり距離をとった。
少女が訳の分からない言葉を唱える。
少女の剣から、氷?の大きいものが一つ男に飛んでいく。
男は鼻で笑うと、剣でその氷を斬る。
そして、いきなり少女の元へ走った。
少女は地面に刺している剣を抜き男の剣を受けようとしたが、間に合わず一刀両断される。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁっっ!」
少女は叫びながら、何故か・・・消えた・・・。
男は剣についた血を振り落とすとこちらを向いた。
「わっ。」
「絶対にやばい。俺たち殺されるぞ。」
「逃げろ!」
誰かもわからない声。
どこから発せられたのかもわからない。
それ以前に空気中を通って耳まで来たのか、それさえもわからない。
もしかしたらテレパシーかもしれないような声。
「逃げろ!」
もう一度言われて意識が覚醒する。
「っつ、誠一!」
「わかった!」
逃げようとする。
だが、敵の方が比べるまでもなく早い。
それまで自分たちの後ろだった場所に敵はもう居た。
「ただの人間を殺すのは嫌なんだけどな。」
「仕方ないか、仕事だし。」
男はなんて言っているかわからない。
「なんて言っているんだ?」
「わかるかそんなもん!」
こんな時まで冷静でいられる誠一が怖い。
「じゃあ、そろそろ死んでもらうか。」
男が構える。
そして、俺に向かって突っ込んでくる。
「はっ。」
男の剣が一閃した。
俺は鞄で受け止めようとしたが、鞄は真っ二つになり、俺は吹っ飛ばされ、壁に恐ろしい勢いでぶつかった。
「がはっ。」
口から血を吐く。
後ろの壁に体がめり込んでいる。
そして、意識が無くなった。
「え、英慈?」
英慈に駆け寄る。
「おい、大丈夫か?」
返事はない。
「おい!英慈!・・・英慈!」
またしても返事はない。
胸に手を当てる。
どくん、どくん、
(良かった。まだ生きてる。)
誠一は立ち上がると男に向き直った。
「英慈をこんな目にあわせたお前は許さない!」
「さてと、後はあいつだけか。」
誠一は鞄から日本刀を取り出した。
「これを使うと思っていなかった。」
「大切なものには手を出させないつもりだった。」
「これは、俺の所為だ。」
静かに居合いの構えをする。
「だから・・・、俺はお前を倒す!」
居合いの構えで敵を待つ。
それは、カウンターをねらっている証拠だろう。
敵の太刀筋が見えていなければカウンターなどできない。することもなく斬られて終わりだろう。
だが、誠一は敵を待った。
それは、敵の太刀筋を見切れる、と思ったからだろう。
「日本刀・・・か。」
「だが関係はない。」
男は誠一に向かって斬りかかった。
「遅い。」
誠一は敵の剣をよけつつ、胴を切り抜いた。
「ぐはっ。」
敵は腹を押さえて片膝を付く。
「どうした?もう終わりか。」
刀に付いた血を払う。
「ふふふふ、ははははは。」
笑っている。斬られて致命傷なはずの男が笑っている。
「何がおかしい。」
だが、誠一と男は言葉が通じない。
「力を使っていないからこんな傷を受けたが、もうお遊びは終わりだ。」
男の足下に魔法陣が現れる。
「ん?なんだ?」
男は立ち上がりこちらを向いた。
「! 傷が治っている!」
致命傷ほどの傷がいきなり消えた。痕すら残らずに。
「遊びは終わりだ。お前を殺す。」
通じるはずのない言葉が通じた。
「やっと会話ができる。」
「なぜ俺たちを殺そうとする。」
刀を男に向けながら尋ねる。
「我が主の命だからだ。」
「私はなぜお前等のような奴らを殺さなければいけないかわからなかった。」
「だが、そんなことはもう、どうでもいい。」
男から殺気が放たれる。
「この私に傷を付けた代償を払ってもらう。」
「貴様の死で。」
男が飛びかかってくる。
さきほどとは比べものにならない早さ。
「くっ。」
何とか防ぐが、カウンターには転じられない。
誠一が後ろに飛び退く。
(なんだ、さっきと早さが違う。違いすぎる。)
「死ね。」
目の前に男が現れ、剣を振り下ろしてくる。
とっさに刀で押さえたが、敵の剣の勢いを殺す代わりに、刀が折れた。
「っつ、な!」
思い切り鳩尾を蹴られる。
「あ・・・、がは。」
数メートル吹っ飛ぶ。
(体が・・・うご・・かな・・い。)
うつぶせのまませき込み、血まで吐く。
「死ね。」
男が近寄って来て、剣を振り下ろす。
(俺は死ぬのか。)
(まだ、何も守れていないのに!)
くやしさで目を瞑る。
剣と剣が当たる音。
(なんだ。)
頭の上にある男の剣を別の男の短刀が止めていた。
「去れ、フォル。」
「トーラ!お前には関係ない!」
フォルと呼ばれた男と、トーラと呼ばれた男はにらみ合っていた。
「いや、関係はある。」
「だから退け、フォル。こんなところで戦うことはしたくない。」
一気に辺りの気温が下がった。
「それとも・・・今死にたいか。」
その温度の低下が殺気の所為だとわかるには時間を必要とした。
「くっ。」
フォルは剣を納める。
トーラも剣を納める。
「この次は・・・必ず殺す。」
「トーラ。お前にも邪魔はさせない。」
フォルは手を空にかざす。
まばゆい光がフォルを包み姿を消した。
「行った・・・か。」
「さて・・と。もう動けるだろう。」
誠一は立とうとしてみる。
案外すんなりと立てた。
「そうだ!英慈!」
英慈の元へ駆け寄る。
英慈は壁にめり込んでいて、引きずり出すのは大変だった。
「おい、英慈!大丈夫か!」
意識が戻っていく。
「せ、誠一?」
「ああ。そうだ。」
体を起こす。
外傷はあまりないようだ。
「俺は、あの男に斬り飛ばされた。だっけ?」
「ああ。」
「お前は大丈夫だったのか?」
折れた刀が目に入る。
「戦ったのか・・・?」
「ああ。」
「代々続く神剣を折ってまでも。」
「仕方なかったんだ。」
二人で話しているとトーラが割り込んできた。
「あ〜。もう時間でな、本題に入らせてもらう。」
声の方を向く。
「あんたは!」
「トーラだ。」
「もう話している時間はない。」
「これからお前たちを異世界へ送る。文句は言わせない。これは運命だ。逆らえはしない。」
トーラが言い終わると手を空にかざした。
「な、異世界!」
「何で俺たちが!」
必死に抗議する。
「文句は言わせないと言ったはずだ。」
「くっ。」
静かな声、かつ大きな声で空に向かって言葉を放った。
「開け!門よ!」
「ここの二名を彼の地へ送れ!」
足下と頭上にオーロラみたいなものができる。
そして、体が消えていく・・・。
「な、何だ!」
「くっ、誠一!」
「え・・・じ・・・・な・・・が・・・っ・・・し・・・ぬ・・・な・・・・・」
「誠一ーーー!」
そして、意識が途絶えた。
「これで、我が主の目的へ近づいた。」
道の向こうから巫女服の少女が歩いてくる。
「こちらがわは終わりました。」
「こっちも終わったぞ。」
時深は尋ねた。
「あなたは、どこに飛ばしたのですか。」
「ファンタズマゴリアには飛ばさずにどこに飛ばしたのですか!」
トーラは笑い続けている。
「我が主の目的を果たせる場所へ。」
「まさか!あなたはロウ側の!」
トーラは門を開いた。
「さらばだ。トキミ。」
「待ちなさい!あなた達の思い通りにはさせません!」
トーラが消えた。
時深は一人でたたずんでいる。
「時見の目では7人をファンタズマゴリアに送る未来だったのに。」
「どこでどう変わったのでしょう。」
門を開いた。
「とりあえずもう一人監視役が必要ですね。」
「誰かに頼めないかしら。」
時深が消えた。
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あとがき
初めましてZattuです。
初めてSS、作らせていただきました。
自分で作ってみていろいろおかしいと思うところはできる限り直したつもりです。
これから、第一章〜何章になるかわかりませんが、よろしければ最後まで読んでいただけるとうれしい限りです。では。
ちなみに、誠一VSフォル戦では、最初の方誠一があっさり日本刀で切りますが、その時まで、フォルは神剣の力を使っていなかったので、誠一が強すぎる、ってことは無いのでご注意してください。