「そんな、ユーガと二人っきりだなんて。
ネリーだって、ブツブツとにかく、だめなのっ!!」
それを皮切りに、ネリーとハリオンの言い争いが続いた。
ハリオンがここまで熱かったなんて、知らなかった。
そして、肝心のシアーの検索だが、
騒ぎが気になったシアーが出てきたことにより、決着がついた。
そして、ネリーに加え、シアーまで講義に加わったため、
ついにハリオンが折れ、四人で町をぶらついた。
それにしても、ハリオンを言い負かすなんて、この二人はなかなかの逸材なのかも。
・・・・・・・・・・・・・あっ、やべぇ!
アズマリアのこと忘れてた。
もちろん、帰った俺を待っていたのは、
アズマリアと、そしてなぜかレスティーナによる説教だった。
勘弁してくれ。
俺たちがラキオスに来て、早1週間。
いよいよ明日はイースペリアに帰る日だ。
俺は特にすることもないので、明日の帰国のために準備をしていた。
ようやくそれもひと段落した頃、こちらに向かってくる足音が聞こえた。
そしてそいつは俺の部屋の前に来ると、控え目に扉を叩いた。
「ゆ、ゆゆ、ユーガ様はいいいい、いらっしゃいますですか!?」
お世辞にも落ち着いているとは言えない声で、俺を訪ねてきた。
「あぁ、いるぞ。入ってこいよ。」
「し、失礼いたしますです。」
俺がそれに答えると、ガチガチに固まっている、
黒髪をツインテールに結んでいる少女、ヘリオンが、俺の部屋に入ってきた。
「どうしたんだ?君が一人で来るなんて、何かあったのか?」
俺にはそれが急いでいたように見えたので、ヘリオンに聞いてみた。
「ゆ、ユーガ様、ほほ、本日はお日柄もよく・・・・・・・・・って、そうじゃなくて!
ああの、ユーガ様。・・・・・・私と、私と町に出かけましょう!!」
忙しなく、詰まりながらも、一応伝えたいことを伝えるヘリオン。
(なかなかしっかりしているますね。
いえ、ちゃっかりしている、でしょうか。
そうやってドジッ娘で攻めるんですね。
私の主に向かって、そのような手を使うとは。)
追憶が何か言っているが、無視だ無視。
こいつの言っていることを一つ一つ考えていくと、とてもではないがやっていけん。
・・・・・・・・・・・・・それよりも、町へ、か。
やることはやったことだし、いいかな。
「そうだな。明日帰れば、またしばらくは来れないだろうし。・・・・・よしわかった、行こうか。」
俺が答えると、文字通り飛び上がって喜ぶヘリオン。
・・・・・・・・・ここは俺の部屋だ。
当然、天井はある。
注意したほうがいいんだろうか?
「それではユーガ様行き
「ユーガ様、大至急アズマリア様の下へおこしください!!」
まし・・・・・・・・・えぇ!?」
器用なことに、飛び上がったままで驚きの表情で固まっているヘリオン。
なんか、すごく・・・・・・・いや、すごいな。
・・・・・・・っとと、変なこと考えてる場合じゃなかった。
「なにがあったんだ?急に呼び出すなんて、滅多にあるものじゃないんだが。」
おれは、小さな声でつぶやく。
しかし、そのつぶやきは駆けつけたスピリット、ヒミカには届いていたようだ。
「私からはなんともいえません。」
どうやら、重要なことらしい。
ヒミカの顔を見てもわかるし、なにより、あのヒミカが駆け込んできたんだ。
重要なこと以外ありえない。
これがちびっ子達なら話が別だが。
何にしろ、ヘリオンと出かけることは出来そうにもない。
「すまない、ヘリオン。どうやら無理そうだ。」
とたんに悲しそうな表情になるが、こればかりはどうしようもない。
俺も心を鬼にして………だめだ かわいすぎるぞ。
何よりその保護欲を掻き立てる表情が………いかんいかん。
くそ、これだから女の子は苦手なんだ。
「そのかわり、今度会うときは町に出て何でも言うことを一つ聞くから。それで勘弁してくれ」
まだ納得できないようだが、わかったと言って、部屋を後にした。
うぅなんだか罪悪感が……。
俺はこみ上げる罪悪感から逃げるように、知らせてくれたヒミカに礼を言って、城へと急いだ。
「『追憶』のユーガ、只今参上いたしました。」
そう言って俺はレスティーナの部屋へと入った。
そこには、イースペリアにいるはずの、エリア達がいた。
「どうして彼女たちがここへ?何かあったのですか?」
何やらきな臭いなぁ。
「えぇ。それも最悪ね。」
そう言ってアズマリアがとても険しい顔をする。
アズマリアが俺の前でこんな顔をするなんて………いったい何があったんだ?
「私たちがこちらに来ている間に、どうやらスピリット部隊の訓練師達が上層部と結託し、クーデターを起こしたそうなのよ。」
「スピリットがいたのにか?人がスピリ………そうか。だから訓練師か。」
なるほど。訓練師達が意志のないスピリット達を使ったのか
「それで、どうするつもりなんだ?」
アズマリアに聞いたみた。
アズマリアの表情は、国を乗っ取られた本人にしては様子がおかしかったからだ。
「どうもしないわ」
「なんだって?」
あまりにも意外な返答に、思わず聞き返す
「だからどうもしないと言ったの。幸いにも主力である意志のあるスピリットは全てこっちに来ているし。
ほかのスピリット達は残念だけど、意志あるスピリット達に無理して元仲間と戦わせてそのことから、神剣に飲まれては元もこもないし。
それにこれは未確認なのんだけど、背後にはどうやら帝国が付いているようなのよ。下手につついたら何が出てくるかわかったものではないわ。」
そこで一度言葉を区切った。
まだあるのだろうが、この隙に疑問をぶつける。
「しかしそれでは!国はどうするのですか?」
スピリットのことはわかったが、アズマリアの家のことも考えると、どうも納得行かない。
「そのことなんだけど、実は私は国のこと、そして家名を背負うことに疲れていたから、かえってスッキリしているわ。」
はじめはその言葉を疑ったが、彼女の目を見て、本気であることを悟った。
「それに、これでユーガに敬語を使われる必要もなくなるしね。」
もうこのことの話は終わりだと、アズマリアは話を明るくした。
しかし、次にまた真剣な顔にもどって、話し出した。
「そんなことよりももっと重要な話があるわ。」
その言葉に、俺やスピリット達は、顔を真剣なものに戻す。
「イースペリアが乗っ取られたことにより、資金に限りが出てきたのよ。」
そんなことは当然わかりきってい………っておい!
この旅費はイースペリアの公費からだしてたのかよ!
「それで、経費削減のためにスピリット達はラキオスの詰所に住んでもらうわ。このことは既にレスティーナに許可はとってあるから。
そして、これからが重要なんだけど、ユーガの住む場所は確保出来ていないのよ。しかし、部屋を借りていたのでは費用の問題があるわ。
そこで、ユーガは私と相部屋となるわけ。分かったかしら?」
そこで一瞬世界が止まった。
そして一気に爆発する
「だめ〜(です)!!」
スピリットたちが猛抗議をする。
「い、いけませんよアズマリア。そのような必要はありません!ラキオス城で保護いたします。」
レスティーナも遅れてアズマリアへと抗議する。
「それは出来ないわよ、レスティーナ。私はイースペリアの元女王よ。
そんなことをしたら、あの愚かな王のことだから、最悪私たちをイースペリアに売りかねないわ。」
もっともらしいことを言うアズマリア。
さすがは切れ者の元女王だ。
しかしここで引き下がるレスティーナではなかった。
「それでは、ユーガも詰所で暮らせばよいでしょう。」
確かにその手もあるな。
幸いにも俺はエトランジェだ。
戦闘に参加できるし、主戦力にもなる。
「それこそ駄目よ。あの王にユーガがエトランジェであることを告げてみなさいな。
たちまち北方五国は戦乱となってしまう。それは避けねばならないわ。」
その後も俺の住まいについての討論が続けられた。
どこでもいいんだがな。
結局、話し合いにより俺の住まいは、ラキオス城内の一室となった。
勿論、アズマリアとは別室だ。
俺の処遇は、レスティーナ推薦のスピリットの訓練師だ
給料ももらえるし、なかなかにいい
しかし、この処遇が後に俺の性格を根本からかえることになるとは、誰も知らない
続く・・・・
後書き・・・・
お久しぶりです、幽鬼です。
『A,T,E』第八話でした。
まず初めに・・・・・・・ごめんなさい!!
楽しみにしていてくれたひと。ちょっと家でトラブルがありまして。
まぁ、だいたいは解決しました。
ですが、これから三月にかけて、それを過ぎるとさらに何かと忙しくなってしまいます。
ですので、更新はまた遅いままになってしまいます。
ですが、暇を見つけては書くつもりなので、これからもよろしくお願いします。
それでは、今度は何時になるか分かりませんが、またお会いしましょう。