庭園に出ると、そこには、これまた綺麗なネーチャンがいた。

・・・・・・・・・・・綺麗だが、胸元に目を向けると
・・・・・・・・・・・・あぁ、なんだか同情の念が。

要するに、・・・・・・・・・・いや、
まぁ、名誉のためにそれ以上考えるのはよそう。

話の流れからして、このネーチャンがラキオスの王女なんだろうし。



「お待たせしました、遅れてすみません。
 周りの連中が余りにも無能で、それなのに言うことだけは達者なので、なかなか動けなかったのです。」



いつものように、丁寧な口調で話すアズマリア。

しかし、丁寧だが、言ってることの内容は、果てしなくえげつない。

こんなことは、滅多に口にしないアズマリアなのだが・・・・・・・。


おそらく、レスティーナとは、同盟国と言うことは関係なく、
本音で気兼ねなく話せるほど仲がいいのだろう。

年もおなじくらいだし。




・・・・・・・・・・胸を見なければ。



「気にしないでください。
・・・・・・それよりも、そちらの方は?
なにやら、邪な念を、そちらから感じたのですが。」



俺を睨むレスティーナ。

マヂデスカ・・・。

なんて勘してるんだ。


・・・・・・・・・・・・こいつもニュー○イプなのか!?




「お初にお目にかかります、レスティーナ殿。
 私は、この度アズマリア陛下の付き人として参りました、雄牙と申します。」



俺は内心の動揺を抑え、無表情に努めて自己紹介をする。

しかし、アズマリアとレスティーナは、
それを聞いて、困った顔をした。



「ユーガ、ここには私とレスティーナしかいないのですよ?
 いつものように通りに呼んでください。」



「私も、レスティーナでかまいません。それに、敬語も要りません。」



二人がそういう。

うちのアズマリアもだが、この、レスティーナも、
ずいぶんと気さくなようだ。



「それなら、わた・・・・・・・俺も雄牙でいいよ。」



これ以上あんな顔をされていても困るので、俺は言い直した。

これが、俺たち三人の始まりだった。






Another Team's Episode


第七話 目標














俺がレスティーナと知り合ってから、どれくらいかが過ぎた。



「だいたいあちらの世界で、四ヶ月くらいになります。」



なんだと!?

そんなに経っていたのか。

まったく気付かなかった。



「あなたが気にしていなかっただけでしょう。」



・・・・・・・・・・今日はやけにつっかかる追憶だな。

なにがあったんだ?



「べつに。
 出番があまりないから、こんなところで出ておこうなんて、
 これっぽっちも考えていませんよ?えぇ、考えていませんとも!



最後には熱く語りだす追憶。

・・・・・・・・・おもいっきり思っていたんだな。



「そんなことより、話を進めたらどうですか?」



・・・・・・・・そうだな。













あれからちょくちょくお忍びでラキオスに行くアズマリアについて行ったり、
レスティーナがイースペリアを訪れたりで、
レスティーナや、その護衛のスピリットのヒミカ、セリア、ハリオンとは、かなり仲良くなった。





ハリオンを理解した時、あの時追憶が言っていたことを、その通りに痛感した。

そして俺は今、アズマリアに付き合い、ラキオスまで来ていた。

アズマリアが、ワッフルもどき(ヨフアルだっけ?)を食べたいと言うので、
それを販売している店へときていた。

この店はわりと有名らしく、男性客もそれなりにはいたため
(ほとんど女連れ、・・・・・・・悔しくなんてないやい!)
わりと入りやすかった。

雄牙が入店した途端、女性客の視線は熱いものを帯び、雄牙に向けられたのだが。



















「あら〜?ユーガ様じゃないですか〜?
 こんなところにいるなんてぇ、もしかして、迷子さんですか〜?」



レジに並んでいる俺に、顔を見ずとも誰だかわかるような声がかけられた。

ってか、迷子って何だよ。

俺が迷子なんてなるはずないだろ。



「こちらに来てから、早速迷子だったと記憶していますが?」



・・・・・・・・・話の骨を折らないでくれ。

あれはしかたないだろ、ノーカンだ。

追憶と話しながらも振り返ると、そこには案の定、
ラキオスの天然お姉さんこと、ハリオンがいた。



「なにって、見てわかるだろ。買い物だよ。
 うちの姫さんが、これを食べないとラキオスに来たことにならないってんだ。
 まぁ、それだけじゃないんだろうけどさ。」



噂では、レスティーナもこの菓子が好きらしいし。

毎日のように食べているとも聞くな。

でも、太ってはないんだよな。


・・・・・・・・・・・相変わらず、胸もないし。



「それでは、この後はお暇ですよねぇ。お姉さんに付き合ってくださいねぇ〜。」



いや、暇とは言ってないし・・・・・・。



「付き合ってくださいますよねぇ〜?」



プ、プレッシャーか!?

俺に向かって笑っているハリオンだが、なぜか体は撤退を訴えている。



「り、了解。」



俺にはそれしか残された道はなかった。

何でこんなに女性って怖くて強いのだろうか。

俺には拒否権なんての貰えないらしい。

日本と同じだな。

常任に入れたとしても、拒否権はない・・・。


・・・・・・・・・・・・今は関係ないか。

とにかく、俺は女性には敵わない。

なら付き合うしかないじゃないか!!!

あぁ、アズマリアになんて言われるか。



「よう、スピリットのねーちゃん!いつもこの国を守ってくれているお礼だ、おまけしておくぜ!!」



景気のよい声で、ワッフル
『ヨフアル!!』
・・・・・・・・・ヨフアル屋の親父が、
レジにて会計を行おうとしているハリオンにそう言った。

この国、特にこの区域では、人とスピリットの仲がいい。

その理由は、この前にちょっとあったからなのだが、それはまた今度にでも語ろう。

狂っているのは、上の連中と、一部の民間人だけだ。

上層部の何倍も民間人は存在するが、スピリットを蔑むのは、上層部の連中が遥かに多い。

スピリットは人間に劣ってはいない。

保身しかない連中には、それがわからんのですよ!

・・・・・・・・・・・とにかく、ここでは仲がいい。

しかし、やはりここだけなのだ。

それをさらに広げるのが、俺やアズマリアやレスティーナの願いであり、目標、誓い、そして求めなのだ。

「それじゃあ、行きましょ〜。」



黄昏ていた俺に、そんなことお構いなしにハリオンが話しかける。

手を引っ張るな。

何気に力入れんな、千切れる・・・・・・・・・・・。




そうして俺たちは店から出たのだが、そこで俺は、
向こうの方でキョロキョロしているネリーを発見した。

向こうも俺に気付いたらしく、駆け寄ってきた。



「あー!!ユーガ。どうしたの?
 ・・・・・・・・・・・ってハリオン、抜け駆けなんてなしだよ!!」



・・・・・・・・やはりちびっ子は元気がある。

あんなに遠くから走ってきたのに、そのすぐ後にこんな大きな声を出せとは。



「別にどうと言うことはないんだが。
 ただハリオンに付き合っているだけだ。
 ネリーこそどうしたんだ?シアーがいないことと、
 キョロキョロしていたことから考えるに、はぐれたんじゃないのか?」



俺がそれをネリーに言うと、ネリーはひどく驚いた表情へと変わった。



「スッゴーイ!!何も言ってないのにわかるなんて。ネリーとユーガは以心電信なんだね!」



難しい言葉を知っているようだが
・・・・・・・やっぱりまだまだ幼いな。



「何言ってるんだか。それにな、以心電信ではなく、以心伝心だ。」



「えっ?そうなの?それにしても、よく。わかったね。やっぱりネリーとユーガは以心伝心なんだね!」



今度はきちんと言えたようだ。

・・・・・・・・俺としては、ネリーが以心電信を知っていたことのほうが驚きだが。



「あのですねぇ、お姉さんを無視したらメッですよ?」



俺とネリーが二人で盛り上がっていることに疎外感を感じたのか、
ハリオンが俺たちに抗議してきた。

やべぇ、メッサ怖いです。



「べ、別に無視してるわけじゃないよ。ただ、忘れてただムグ〜!」



俺は慌ててネリーの口を塞ぐ。

これ以上喋らせていたら、さらにやばくなる。



「それよりネリー、シアーを探すぞ!・・・・・ハリオンはどうする?」



俺は誤魔化すように話題を変える。



「もぉ〜、せっかく二人でお出かけだと思ったのにぃ。
 でも、ユーガ様が困った人をほっとけないのは今に始まったことではないですしねぇ。
 仕方ないですねぇ、お姉さんも手伝ってあげますよぉ。その代わり、終わったら二人でお出かけですよぉ、ユーガ様。」



よかった。何とか話を変えることに成功したし、ハリオンという助っ人も確保することが出来た。



「わかっ「ダメェ!!」た・・・・・ネリー?」



そんなに慌てて叫んで、どうしたんだよ。

せっかく手伝ってくれるって言うのに、それを断るなんて。



「なんでだめなんだ?」



俺はネリーに聞いてみた。

何か不自然だったし。



「そんな、ユーガと二人っきりだなんて。
 ネリーだって、ブツブツとにかく、だめなのっ!!」



それを皮切りに、ネリーとハリオンの言い争いが続いた。

ハリオンがここまで熱かったなんて、知らなかった。







そして、肝心のシアーの検索だが、
騒ぎが気になったシアーが出てきたことにより、決着がついた。

そして、ネリーに加え、シアーまで講義に加わったため、
ついにハリオンが折れ、四人で町をぶらついた。


それにしても、ハリオンを言い負かすなんて、この二人はなかなかの逸材なのかも。






・・・・・・・・・・・・・あっ、やべぇ!

アズマリアのこと忘れてた。







もちろん、帰った俺を待っていたのは、
アズマリアと、そしてなぜかレスティーナによる説教だった。



勘弁してくれ。





続く・・・・





後書き・・・・



はい、幽鬼です。

『A,T,E』第七話でした。




今回は、ユーガINラキオスでした。

今回の初めには、前回時間がなくて書けなかった、
レスティーナとの出会いの場面を入れました。

そのせいか、今迄で一番長くなってしまって・・・。

それに今回も、ぎりぎりだったんですよ。

執筆し始めようとした日、脳震盪で入院。

退院が土曜日。

しかもまだ気分は最悪。

自分はよくやったと思いました。

頑張れ僕、おめでとう自分!

これも、僕のSSを見てくれていた方たちのおかげです。

先日、初めて自分のページを見たのですが、カウンタは八千を越えていて、
それが僕に力をくれました。

本当に、ありがとうございました。

これからも、どうぞよろしくお願いします。

それでは、また次回の後書きにてお会いいたしましょう。

ではではっ!!