アズマリアは笑顔で俺を迎え入れてくれた。




俺は二つの笑顔にそれぞれ誓った。



アズマリアのような笑顔を守ること。

そして、シリカや他のスピリット達のような悲しい笑顔を絶対に作らないことを。







Another Team's Episode


第六話 力の片鱗














「ユーガ、訓練に付き合って!!」


そう言いながら、俺の部屋に入ってきたのは、
カレナ・ブラックスピリットだった。

カレナは、イースペリアのスピリット隊の中でも、なかなかの実力者で、
よく俺を訓練に誘ってくる。

イースペリアの訓練は、各々に任せられ、訓練士がいるわけではない。

他の国では、そんなことはなく、訓練士がいるため、
この国の方針を馬鹿にされることもあるそうだ。





「わかった。今日こそは勝たせてもらうぞ!」




台詞からもわかると思うが、俺はまだ、訓練で一度もカレナに勝ったことが無い。

まぁ、それには理由があるのだが。



(まったく、私の力を使えば楽なものを。
主が毎回勝てる相手に負けている者のことも考えてください。)




そう、俺はまだ一度たりとも、追憶の力を使っていないのだ。

使うのは、夜に自主練をするときだけ。

これは、神剣の力に頼っていては、もしもの時に何も出来ないからだ。





「なら、私が勝ったら、また町で付き合ってもらうわね。」


笑いながら言うカレナ。

俺もそれに軽く答えながら、訓練所へと向かっていった。







































「はぁ!!」


カレナが、開始早々斬りかかってくる。

神剣の力は使わなくても、エトランジェとしての力があるので、
カレナの素早い動きが見えないことは無い。

俺は、カレナの攻撃を避ける。

いくらエトランジェの力があるとはいえ、
追憶の力を使わないで受け止めれば、滅茶苦茶痺れるんだ。

しかし、一刀目は囮で、本命の二刀目が来る。



今度は避けきれない。


「くぅ。」


なんとか追憶で受け止める。




・・・・・・・・なんで手数の多いだけのはずのブラックスピリットが、
こんな重い斬撃なんか繰り出すんだよ!!




「おらぁ!!!」


俺は一歩踏み出し、受け止めたカレナの刀を弾く。

それにより、体制の崩れたカレナに、反撃の太刀を加える。


「あまいよ!」


しかし、俺の攻撃はまだカレナには届かなかった。


そして、カレナの反撃が、鋭く俺を襲う。


「ちぃ!」



やべぇ、このままじゃあまたやられる。

あれから俺だって色々とやってきたんだ。

このまま負けるのは癪だ。




少し大振りになっていたところに、俺は素早く横薙ぎに斬りかかる。


「えっ?くっ。」


しかし、間一髪とはいえ、それをも受け止めるカレナ。

それでも、攻撃をする余裕は無いらしく、いったん飛び離れた。


「はぁはぁ。・・・・・・・・・・やるわね。
 ・・・・・でも、でも負ける訳にはいかないのよ、
 デートのために!!ただでさえ敵が多いんだから。」


カレナは訳のわからない事を言っているが、問題はそこではない。

カレナの纏うマナの量が、爆発的に膨れ上がったのだ。

それに、ここにきて初めて居合いの構えを取っている。




これは・・・・・・・・・・・・マヂでヤヴァイ・・・・。



「ちょっ、ちょまっ「やぁぁ!!」おいっ!」



速い。

これがブラックスピリットの居合いか・・・・。



だめだ、間に合わない・・・。

訓練で死ぬぞ、マヂで。










刀が俺に届こうとする時、世界の動きが・・・・・・・・・・遅くなった。

俺の鼓動もゆっくりと脈打っている。




それが、大きく聞こえる。


それだけじゃない。

カレナの鼓動も、そして息遣いまでもが、はっきりと聞こえる。




・・・・・・・これがあの某機械闘士で出てきた、悟りの境地なのか?


今なら、錆びた刀でも大木を斬る事が出来るのか?


そんなどうでもいいことを考えている一方で、頭の片隅に、
あるものが浮かんできていることにも気付いた。



俺は頭の中で、浮かんできたものを組上げていった。




これは・・・・・・。

これなら。







「はぁぁ!月輪の太刀!」










カレナの刀が、俺に届く前に、炎の壁により、遮られた。



「っ!?」


さすがにこれには驚くカレナ。

そして、俺はその隙を衝いて、追憶を振り上げ、振り下ろした。








ドガァァァァァン





俺はただ振り下ろしただけ。

そして、カレナはそれを受け止めた。

ただそれだけだった。

だが、カレナが俺の剣を受け止めた瞬間、
俺とカレナの間に爆発がおき、カレナだけを吹き飛ばしたのだ。



吹き飛ぶカレナを、俺は何処までも冷静に見、
詰めるため、一歩を踏み出す。










「終わりだな、カレナ。俺の勝ちだ。」



起き上がろうとしているカレナの喉元に追憶を突きつけ、そう告げる。

そこで、俺の中の世界が、元に戻った。








「何?今の。神剣魔法の気配は無かったのに。」


カレナがそう言う。

そう、あれは神剣魔法でも、追憶の力でもない。

あの力についてはまだわからないが、
そのことだけはなぜか理解できた。

現に、追憶が喋らないことからも、
力の封印が続いていることが証明されている。


「わからない。」


だから、俺はそれだけを告げた。










「まぁ、本人にもわからないのなら仕方ないか。
それに、負けは負けだし。それじゃ、約束通り、私を好きにしていいわよ。」






・・・・・・・・はぁ?

そんな事言ってたっけか?

まぁいいか。


「よし、それならお前今日から俺の召使な。」


「・・・・・・・・・・それって、メイドさんってやつよね。
 ユーガってメイドさん属性だったんだ。」


俺が言うと、カレナはすぐに返してきやがった。

聞き捨てならない言葉を。





だいたい、なんだ?

この世界でもそんな、メイドさん、萌え〜
ってやつがあるのか?

恐ろしきは、人の欲望か。

萌えという奴は、世界を越える力があるようだ。


「大丈夫よ。ちゃんと上手くヤルから。夜のお勤めも。」


危険な単語を発し、赤くなって俯く。

・・・・・・・たく、恥ずかしがるくらいなら言うなよな。


「とにかく、そんな意味じゃない。要するに、パシリってやつだ。」


「なんだ、詰まんないの。」


そう言うカレナ。

俺にどうしろってんだよ。

誰か助けてくれ。

何で今は平和なんだよ!







「エトランジェ殿、陛下がお呼びです。」


おお、アズマリア、俺のピンチを感じてくれたんだな。

これでこの空間から抜け出せる。





そう思い、俺はアズマリアの元へと急いだ。

カレナが何か言っていたが、もちろん無視した。











俺がアズマリアに呼ばれた理由は、
アズマリアの親友らしい、ラキオスの、レスティーナが来るので、
お供しろとの事だった。

そして、おれはレスティーナ王女とお近づきになれた。





続く・・・・





後書き・・・・



・・・・の前に、設定紹介





カレナ・ブラックスピリット





イースペリアのスピリット。
イースペリアの中でも、上位の実力を持つ。
自分は戦い以外では何も誇れるものはないとおもっている。
とってもかわいそうな女の子。
永遠神剣第六位『運上』の契約妖精。





はい、幽鬼です。

『A,T,E』第六話でした。

今回はユーガの訓練風景でした。

次回は、・・・・・・・・どうなるんだったっけ。

・・・・・・とにかく、次回もよろしくお願いしますね。

ではでは!