「エリア!こんなところにいたの?心配していたんだからね!」




・・・・・・・こんな幼い娘にまで心配されるってのはどうよ。

「ありがと〜シリカぁ〜。どうなるかと思ったよ〜。」

自分より小さな娘に泣きついている。・・・・・・・これでいいのか?

「それよりもエリア、この人は?」



その後、自己紹介をしあい、シリカに連れられて、やっとイースペリアに向かったのだった。






Another Team's Episode


第三話 エゴ














俺は今、エリア達に連れられ、街中を歩いていた。
だが、なんだろう。周りからの視線が冷たい。



「なぁ、追憶?この視線はいったい。」

エリア達は気にしていないようだが、俺はたまらなくなったので、追憶に問いかけた。




「・・・・・・おそらくはスピリットと一緒にいることが原因と思います。」



そういえばそうだった。この世界ではスピリットは人間以下、使い捨ての道具だったな。





・・・・・・・・・・・うん?この世界では?俺のいた世界ではスピリットなんていなかったはずだよな。
まぁ御伽噺には妖精ってのもよく出てはいるが。ま、考えても仕方ないか。それよりも、

「やっぱり気に入らないな。どう考えたって劣っているのは人間じゃないか。」

「えっ?」

シリカが聞き返してきた。どうやら彼女にはよく聞こえてはいなかったようだ。

「あぁ、気にするな。こっちの話だ。」

そう言って、俺はふとエリアのほうを向いた。



「・・・・・・・仕方ないわよ。そういう風に教育されているんだから。人間も、スピリットも。」




向いた俺に、シリカはそう言った。その顔には、諦めが浮かんでいた。だが諦めているということは、
今の状況に疑問を持っていたり、もしくは納得してはいないということだろう。穢れのない純粋なこの娘達が、どうして。



「だからこそ人間はスピリットを自分たちよりも下だと見ているのでしょう。力、容姿、純粋さ。
 そのどれもが人間が太刀打ちできるものではありません。
 だからせめて、スピリットを下等な存在だと認識することにより、少しでも劣等感を誤魔化そうとしているのでしょう。
 その証拠に、スピリットを差別する具体的な理由なんて存在しませんから。」




なるほどな。でもやはり愚かだな。そのようなところがさらに
自分たちの品位を下げていると言うことに気がつかないのか?



それに、そりゃエゴだよ。」


「エゴ?」

俺の言葉に反応したらしいシリカが、尋ねてきた。っていうか、また声に出していたらしい。

「あぁ、そうだな。エゴと言うのは、PCソフトでIZ<キィィィィィィン>うがぁ!」

シリカに説明しようとしていた俺に、追憶が突然強制力を働かせてきた。

「悪いのはあなたです。ここでそんなことを言っては引っかかってしまいます。それに、物語にも関わってきますから。」



あぁもう!エリアがこっちを、何こいつ的な目で見ているではないか。
それにシリカの純粋に俺のことを心配している目が、逆に俺を追い込む。
大体、物語って何だよ。電波受けてんじゃねえよ。



「傍から見れば、電波を受信しているのはあなたですよ。まぁそんなことはどうでもいいです。私としては、
 18歳にも満たないあなたがどうしてそれを知っているかが気になって仕方がありません。」


・・・・・・・・いや、別に、なぁ。



・・・・・・・・・・・・たしか家庭用ゲーム機に移植されていたはずだ。うん。そうだ。やましい事なんてないんだ。

「あなたの言葉の中には矛盾があることに気がつきませんか?まったく、文系志望とはとても思えませんね。」




その後も、追憶と口論したり、口論する俺をエリアがからかったり、へこむ俺を、シリカが心底俺を心配し、
その視線に俺が耐えられなかったりで、精神的にも肉体的にもぼろぼろの状態で城へと向かった。




















>>>>>王城前<<<<<






俺は目の前の光景を目にし、言葉に言い表せないほどの感動を味わっていた。旅行とは無縁の生活を送っていた俺にとって、
城、しかも西洋風の物を見るのは生まれて初めてだった。その大きさ、そして美しさに、俺は圧倒された。



「でかいな。生の西洋式の城なんて生まれて初めてだ。
 テレビで見るよりもずっとスゴイ。ナンかこう、オーラって言うか迫力が全然違う。すげぇ。」


茫然自失の俺に、えりあは不思議そうに聞いてきた。

「このくらいなんて普通よ。と言うよりもどちらかと言えば小さい方かな。
 ラキオスやサーギオスなんてもっと大きいのよ。それよりも、ユーガがいた世界ってどんなところなの?しろをしらないなんて。」

この話題にはシリカも興味を示したらしく、目を輝かせている。
本人は気がついていないだろうが、俺に抱きついている腕にも力が入っている。


「俺の世界の俺のいたところは城なんてのは遙か昔の物だったんだ。
 それも此処みたいな感じではなく、和風、う〜ん、なんて言えばいいかなぁ。
 とにかく、此処の城は俺の世界でも俺がいたところとは別の所の物に似ているんだ。」

俺がそう言うと、二人は驚いていた。



「ねえ、違う所ってどういう意味?いくつも世界があるの?」

シリカがそう聞いてきた。
そういえばこの世界には大陸が一つあるだけで、海の向こうには何もないと言われているんだったな。

「厳密に言えばちょっと違うかな。俺のいた世界では海の向こうには別の大陸があって、
 そこでも人間が違う文化を持って生活してるんだ。文化が違えば当然建物も違ってくる。まぁ、そんなもんさ。」

エリアは分かったような分かっていないような顔だ。シリカは・・・・・少し考えるそぶりを見せた後、俺に聞いてきた。



「それが西洋って言うもの?」


どうやら少しは通じたようだ。
エリアはまだ分かってなさそうだ。・・・・・・シリカのほうが立派だな。

「話の分かるやつは嫌いじゃないぞ。」

追憶が何か言っているが、無視してシリカの頭をなでる。シリカは気持ちよさそうに目を細めた。
それを見たエリアは、何とか理解しようとはしたようだが、結局分からなかったようで、
シリカを羨ましそうに見ながら地団太を踏んでいた。



・・・・・・・本当にどっちが年上か分からんぞ。

「う〜ん、お兄ちゃん。」

そう言って組んだ腕に力を込めるシリカに、エリアもとうとう我慢の限界を迎えたようだ。

「シリカ、いつまで抱きついているのよ!ユーガも迷惑だろうから離れなさい。」

確かに辛いものがあるが、その言い方はまずいと思うぞ。だって、



「ねぇお兄ちゃん、シリカ迷惑なの?」

ほらきた。こうなることは長年の経験から予想できるんだ。しかも、



「いいや、そんなことはないよ。」

そう、俺には断ることなんてできないんだ。これも長年の経験から分かっていたことだ。





























「あれ?あんなに仲の良かったエリアとシリカが一人の男を取り合って喧嘩?
 二人とも今まで喧嘩なんてしなかったし、男にも興味なさそうだったのに。」

そう言ってこちらに来るスピリット。そしてその言葉によりコチラの世界に戻ってきたエリアとシリカ。
どうやらうやむやの内に、城の入り口まで来ていたようだ。正直助かった。
此処ではさすがのエリア達も余り喋ることはできないだろうから、二人の圧迫から解放されるだろう。

「ちょっ、ちょと。変なこと言わないでよ!私は別に。」

あわてて言うエリアだが、対して相手のお姉さんスピリットは、余裕の表情だ。

「あら、そうなの?エリアは興味ないんだ。ならシリカはどうなの?」

そう言って今度はまだ俺に抱きついているシリカの方に話しかけた。

「お兄ちゃん?大好きだよ?」

躊躇いもなく言ってのけるシリカに、俺の方が恥ずかしくなってしまった。
まぁ、悪い気はしないな。お兄ちゃんとしてってことだろうけどさ。

「その鈍いところはいい加減どうにかならないのですか?」

今まで黙っていた追憶が、口を開いた(?)。
が、俺のどこが鈍いんだ。これでも切れ者として通っていたんだがな。

「もういいです。あなたには期待しません。」

いきなり俺を突き放し、それ以降口を閉ざす(?)追憶。俺が何したってんだよ。




「ところであなたはどなたかしら?さっきから独り言が多いけど?」

そう言って俺を見てくるお姉さんスピリット。頼むからその蔑んだ目はやめてくれ。

「俺は神帝雄牙だ。一応新米だがエトランジェをやっていてな、今日はエリアに呼ばれてきたんだ。」

俺がエトランジェであることを告げると、始めは驚いていたが、しばらくすると納得したようだった。

「なるほど、だから独り言のようなことを言っていたわけね。頭がおかしいのかと思ったわ。」

納得したのはそっちかよ!!しっかりしているのかと思っていたが、天然なのか?

「まぁいいわ。エトランジェってことは、これから女王様の所へ行くのでしょう?今はお部屋においでだからそこに直接行くといいわ。」

「部屋に直接?こういう大事なことってのは、謁見の間ってところでするんじゃないのか?」

疑問に思ったことをそのままぶつけた。しかし、お姉さんスピリットは、さも当然とばかりに続けた。

「大事なことだからこそよ。エトランジェが国にいるなんてことが他国に知れたら、
 下手したら戦争だもの。謁見の間なんかで挨拶したら、どこに耳があるかなんて分からないわ。」

なるほど。そこまで考えていたとは。やはりこの姉ちゃんはまとものようだ。

「もう何もないかしら?なら急ぎなさい。」

俺たちを急がせるお姉さんスピリット。
その声に背中を押され、俺たちは城の中へと向かっていった。
しかし、門をくぐる前に、姉さんスピリットから声がかかった。

「あぁ、言い忘れてたけど、私の名前はサリア。サリア・ブラックスピリットよ!!これからどうなるかは知らないけど、よろしくね!」

叫ぶお姉さ・・・・・・サリア。別に自己紹介なんて良かったのに。
律儀というか、なんというか。



サリアがまだなにかいっているが、もう聞き取ることはできない。
聞き取れないその声に背を押される形で、今度こそ俺たちは場内に入っていった。





続く・・・・





後書き・・・・



・・・・の前に、設定紹介





サリア・ブラックスピリット

雄牙がイースペリアに来て最初にであったスピリット。
まともそうで、どこか抜けているところもある、みんなのお姉さん。
スピリット隊の参謀役。
雄牙のことは、今はどうとも思っていないが、
それでもなんだか気になっているようで、エリア達が雄牙とじゃれているのを目にすると機嫌が悪くなる。
契約神剣は、第六位『現実』





はい、第三話でした。今回は城に行くまでのお話。
さて、今回の別にどうでもいい話、お題は、僕流キャラの名前の決め方です。
他の作家さん達はどのように決めているのだろうかと、いつも思っています。どうしたらそんなに浮かんでくる物なのかなぁ。
僕は親にも
「子供が生まれたら、絶対に名前は奥さんに決めてもらいなさい」
っていわれてましたからね。それほどまで僕には命名能力がないのです。
そこで苦し紛れに考えた方法が、自分の好きなキャラクターの名前を少しいじる、親戚等の名をいじる、と言ったものです。
スピリットで名前が似た者が多いのは、そのためです。
きちんと自分で決めてあるであろう他作家さん達を、心から尊敬してやまない幽鬼でした。

とまぁこのくらいにして、次回予告です。
次回は雄牙がイースペリア女王と会見します。
と言っても場所は女王の私室。
そこで雄牙はイースペリアのスピリット隊隊長になってくれと言われてしまいます。
果たしてどうするのか。それが次話です。まぁまだ答えは出しませんが。
後、余談ですが、女王の名前は某ファンタジック・シミュレーションRPG3の姉御軍人の名に一文字加えさせて頂いた者です。
実の話、一年前、それも初期は女王ではなく、名前も違ったのですが、友人に送ったところ、
「イースペリアは女王が治める国だ」
と言われ、他の人にも聞いてみたら、みんなそのことを肯定していたので急遽変更しました。
そして、今年になってPS版の設定集を見たら、本当でした。恥をかかなくて良かったと心の底から思っています。


それでは、今度こそ本当に終わります。
次回もどうかよろしくお願いします。