Notice!!
※一部…微妙にエロスが入っています。18未満、及び性的表現に嫌悪感を持たれる方は先に進まないか、該当部分はすっ飛ばして下さい♪
※っていうか…18-PCGのサイトでそういう説明もあったもんじゃないと思いますが…一応ね(笑)
※なお、全部は表現してません。一瞬期待された方はごめんなさい。
※機会と希望があれば、3人娘やその他の展開を描いた外伝でも細々と書いてみようと思っていますので御勘弁を。





























聖ヨト暦329年 エハの月 青四つの日 夜
バーンライト王国 サモドア山道 中街道



「…はい。確かに。彼は自分の事をサーギオスのエトランジェだと言いました」


クィラスを前にしてエスペリアは淡々と続ける。
すでにアセリアはラセリオへと移送し、休ませてある。
その辺りの事も含めて、エスペリアはクィラスと話していた。


「…何たる事か…僅か1人のエトランジェが…小生の娘達を…よりにもよってリーファを……」


自らが手がけた愛しい娘達一人一人を思い出してクィラスは白くなるほどに拳を握る。
戦いの中では美しく、従順で…強く!
戦いの外では…優しく、賢く…艶やかに。
様々な知識を与え、公私ともに自分の力となってくれる娘達…
この戦いさえ終われば、自らの研究成果も…娘達も称讃されるはずだったものを!


(……赦せぬのである……サーギオスのエトランジェ……必ず小生の手で殺してくれる……)


握り締めた拳から血が流れ落ちる。
それは流すことのできない涙のように…


「クィラス様! 御手から血が…」


慌ててエスペリアが治療しようとするが、クィラスはそれを手で遮った。


「よいのである…これは小生の誓い…小生の娘達が受けた苦しみを考えれば……これしきのこと…」
「クィラス様…」


エスペリアはクィラスが初めて見せる生の感情に息を呑む。
いつも尊大で自信家で…自分を天才と呼び、それを憚らない。
元々のラキオスのスピリットにも自分の連れてきたスピリットにも同じように冷酷にあたっているように見えた彼の内心がこれだ。


(似ている筈が無いのに……この方は……どこか…ラスク様に近い……)


悲しげな目でクィラスを見る。
今は…声をかけるべきではないと思い、ただ静かに。


暫時…クィラスは瞑目したまま、何かに想いを馳せている様だったが…すぐに元の調子を取り戻した。
…少なくとも表面上は。


「エスペリア…一度、ラセリオまで退くのである。それからエルスサーオには最小の部隊を残して…後はこちらに呼ぶのである」
「…それは…」


危険ではないのか…と言おうとした瞬間、クィラスは続けた。


「サモドアが攻められている中で、エルスサーオに兵を向かわせられるほどの度胸はアイデスには存在しないのである。
 それに、エトランジェとて人間…疲労という名の敵には勝てぬのである」


言外にエトランジェを数で斃すという発言にエスペリアは震える。
エトランジェと対峙した時…エスペリアは冗談抜きで破滅の予感を感じた。
あれに数であたって勝てると本気で思うのか?
…否。エスペリアの勘は無理だと告げる。


「クィラス様…まことに申し上げにくいのですが…エトランジェに数で勝つのは不可能です」
「どうした…まさか臆したと言うのではあるまいな?」
「いいえ。私はスピリット…戦い、マナに還るのを臆したりはしません…ですが、あれは別です」
「別? 何が別と言うのか」
「あのエトランジェには…恐らく…私とアセリア……リーファが同時にかかっても…勝てないでしょう」


侮蔑するかのようなクィラスの視線に晒されながら、エスペリアは言うべき言葉を発した。
クィラスは一瞬だけ鼻白んだが…すぐに真意を確認する。


「……まさか…虚言ではあるまいな?」
「違います。あの場にはリーファ、アセリアを含め12名のスピリットが戦っていました」
「…ふむ…」
「最初…10名の反応がほぼ同時に消えました。その後は数分もしないうちにアセリアは重傷。リーファは……死亡…」


アセリアと仲の良かったリーファの事を思い出して、少し悲しみを覚える。


「その後、現場に到着しましたが…全く疲労しておらず…私とヒミカの二人がかりでも全く勝てる気がしませんでした…」


事実を淡々と告げるエスペリアの声から、クィラスは事実だと直感する。
それ以前に、スピリットは基本的には正直だ。
ここでエスペリアが虚言を弄する必要性も全く無い。


「ふむ……では、エスペリア…貴女ならどうすれば彼のエトランジェを斃せると思うであるか?」


クィラスはエスペリアに問う。
このあたりは、彼の特徴であり長所でもある。
人間だろうがスピリットだろうが…認めるべきところは認める公正さ。
どこか紙一重であっても…決して自らの力とやれることを過信しない。
そんなクィラスの問いに、エスペリアは少し考え…口を開いた。


「そうですね…クィラス様の妖精のうち…ブラックスピリットを全て…それからヒミカ。エルスサーオのセリア。後はアセリアの回復を待って…アセリア。
 ブラックスピリットの神剣魔法で動きを拘束しながらヒミカ。セリア。アセリアで攻め立て…私が回復と防御にまわれば…恐らく」
「ふむ…我が娘達の中で残っているのは…フェルテニアとペルテアであるか…」


ペルテアは熟練だ…恐らく問題は無い。
だが、フェルテニアはまだ完成形には遠い…が、それもやむを得ないだろう…
そう判断し、クィラスは頷く。


「分かった。エスペリア…細かい作戦は貴女に任せよう。我が娘達…そしてリーファの仇をとってくれるな?」
「はい…『献身』の名にかけて…必ずや」


大きく頷くとクィラスはいつもの笑みを浮かべる。




「では、まずはラセリオへ帰還。戦力の立て直し後…エトランジェとサモドアを陥とすのである!」






永遠のアセリア
The Spirit of Eternity Sword

〜人と剣の幻想詩〜

第一章
ACT-7
【漆黒の翼B 決着】
- Uruca the BlackWing “Show Down” -




聖ヨト暦329年 エハの月 青五つの日 朝
バーンライト王国 首都サモドア 臨時宿営所



「〜♪ 〜〜♪」


鼻歌を歌いながらアキラは宿舎の廊下を歩く。
二段飛ばしに階段を上り、右折。そのまま一番奥にある建付けの悪いドアを静かに開け自室へ入る。
片手に持っていたトレイを妙に洗練された手付きでテーブルに載せると徐(おもむろ)に時間を確認。
ニンマリと笑って頷くと、数回に分けて保温筒からティーポットにお湯を注ぐ。


(うむ。上出来♪ まさかとは思ったが…ここまで似てるとはな…)


ふうわり…と上品な香りが漂う。
数種類のハーブの香りが交じり合い、爽やかな香気を拡げていく…


(ローズマリーにレモングラスにセージ……まあ、ここでは名前は違うのだろうが…)


注ぎ終わってから正確に50秒が経過したところで、アキラはティーカップを軽く湯通し。
更に30秒が経過したところで、ティーポットから二人分のハーブティーを注ぐ。
鮮烈な香気が更に広がる…


「ん…ぅ……」


香気に目覚めを誘われたのか、ベッドの上の人影がもぞもぞと動き出した。
眩しそうに手で日の光を遮ると、ゆっくりと起き上がる。
一糸も纏わない、生まれたままの姿が外気に晒された。


「はふぅ……マスター…おはようございますぅ……」


眠そうに伸びをすると形の良い双丘もふるふると震えた。
美しい裸身のあちこちには激しい情交の残滓が残っている。


「おはよう。サラ。下着ぐらいは着けろよ?」


アキラはからかうように笑って言う。
あっ…と短い喘ぎを漏らし…サラはすぐに毛布を胸元まで引き上げた。
その顔は激しく上気している。


「…み…見ましたね?」
「…何を今更」


上目遣いに見るサラの台詞に、アキラは肩を竦めて答える。
既に心も身体も交えているのに何を言っているのか…


「ぅぅ……マスターも少しは乙女心を知って下さい……」


膝を抱えるようにベッドの上に座り込んだ瞬間、サラの裸身がビクッ…と震えた。


「んっ……あ……マスターの……まだ、零れてくる……」


気持ち良さそうに…幸せそうに目を細めながら身体を震わせるサラ。
どこか独りごちるように呟く。


「………」


その様子にまた情欲の焔を掻き立てられ、アキラは静かにベッドに近づく。
元々……いや、新しく変わって以来…このような姿を見せられて我慢するような性格ではない。


「……やられた………サラ…責任は取ってもらうぞ…」
「え…?」


サラがアキラを見る。
アキラのそこは既に固く屹立していた。


「うそ……昨日あれだけしたのに……そ…んぅっ」


サラの台詞を最後まで言わせず自らの唇で塞ぐ。
右腕を背中に廻し…左腕で、形のよい胸をなぞる。


「んっ…ちゅ…んむっ……ぅ」


舌を絡ませ、互いの唾液とマナで交歓する。
口を塞がれているため、嬌声すら漏らせない。
サラに許されるのは与えられる快楽にビクビクと身を震わせることだけ。


「ぁふ…ひぁ…」


左手はサラの胸から腰へ…そして、柔らかな繁みへと進められていく…
その手は的確に彼女の弱点を愛撫しながら降っていく。


秘所へと到達したその手で淫らに濡れる丘を撫でる。
すぐに指を侵入させたりはせずに軽く…焦らすように。
焦らされるのに耐え切れず…サラの両腕がアキラの背中をギュッ…と抱き寄せる。
その瞬間を狙って、アキラはサラの淫核をこするように秘洞へと指を差し込んだ。


くちゅり…と思ったより大きく淫音が鳴る。
欲しくなった瞬間を狙われて与えられた刺激が軽くサラを絶頂へと達しさせた。
それでも指は止まらず、サラに快楽を与え続ける。
蕩けるほどに熱せられた肉襞は淫らに蠢き…次の行為への期待を溢れさせながら、その指を咥え続ける…


─くちゅっ…ちゅぷっ…ちゅくっ…ちゅくっ


「んんっ…ふっ…あぁっ……いぅっ…ま、ますたぁ……はぁっ……いい…あぁ…」


口付けの愛撫をサラの体中に降らし…指で中を掻き回しながらアキラはサラをベッドへと押し倒していく…


それを見ているのは、机に置かれた白磁のティーカップとティーポットのみ。




まるで、二人の熱気に中てられたかのように湯気と香気を上げ続けていた……




















─1時間経過




















行為を終え、アキラとサラは1時間遅れのティータイムを楽しんでいた。
既に冷めてはいたが…それでも残っている香気を楽しむ。


「ふふっ…150時間ぶりに…マスターを独り占めできちゃいました♪」


ハーブティーを飲みながら嬉しそうにしているサラ。
その笑顔を見て、彼女が永遠神剣だと思うものはいまい…


「おいおい…150時間ぶりって何だよ…全く」


微妙な表情で突っ込みながらも否定はしないアキラ。
それは、どこにでもありそうな光景…日常の欠片。


「だって…この世界に来て早々…ルーテシアさんにセラさんなんて強敵が出るんですもん…」


不貞腐れたように頬を膨らませるサラを可愛いと思いながらアキラは苦笑を禁じえない。
確かに、ありえない展開だ。


(…今の俺の状態をケンが知ったら……俺は間違いなく首を絞められる…いや…
折られるな……)


可笑しくなってしまう。
ちょっと前のことのはずなのに…もう長くこの世界にいるような気になってくる。
そう思いながら、ハーブティーを啜る。


「さて……そろそろ時間だな……作戦会議に行くとしようか」


アキラは立ち上がるとサラに手を伸ばす。
サラは頷いて、すぐに優美な太刀へと姿を変えた。


「それじゃ、いっちょラキオスの連中に一泡吹かせてやるとするかね!」


椅子にかけてあった黒いコートを羽織る。
破れた部分は既に元の姿を取り戻している。
これでもデバイスの一部。並みのコートよりは遥かに頑丈で防御力も抵抗力も高い。


(ん。やはり、しっくり来る…)


軽く自分の髪を手櫛で梳く。
しなやかな闇色の髪が後ろに流される。


コキコキと首を鳴らすと、アキラは部屋の外へと歩いていった。




聖ヨト暦329年 エハの月 青五つの日 昼前
バーンライト王国 首都サモドア サモドア山道通用門



「…との事です。皆、あまり無理はせぬよう…ラキオス勢を引き付け、疲労させる事のみに集中するように」


ウルカは自らの部下達を前に、昨日アキラと話した通りの内容を説明していた。
戦術の一つ一つを吟味するかのように聞き入る隊員達。
だが、そこで一人のスピリットが手を挙げ…質問した。
クレリアだ。


「ん〜、でも隊長…あたし達が勝手にそれをやっていいのかしら? 命令違反で死刑…なんてあたしは嫌よ?」


他のスピリット達も同意するかのように頷く。
もっともな話である。
勝手に行動して、戦果を上げても結果的に処刑されるのでは割に合わない。
彼女達の実力があれば処刑されない可能性もあったが…もしソーマ隊で再教育などと言われたら尚更割に合わない。
が…その心配は無用とばかりにウルカは続けた。


「その辺りはアキラ殿が、何とかしてくれるとのこと…問題などありませぬ」


信頼感を滲ませるウルカの声に…ライカは暗い表情を浮かべてしまう。
彼女の敬愛する隊長が…人間に心を動かされることなどあってはならない。
人間に対して強い敵愾心を持つライカにとっては…その事実は容認ならざるもの…


「…隊長…して、その“エトランジェ殿”は信用できるのですか?」


思わず固い声となっていたが…それを気にする余裕は彼女には無い。


「…ライカ…少しは落ち着きなさい…貴女はただでさえエレガントさに欠けるのですから」
「…余計なお世話っ!」


フレイアの言葉に思わず心からの叫びを上げてしまう。
後ろで苦笑を堪えているノエルとフェリスを一睨みで黙らせてライカは再びウルカのほうを見る。
ウルカは軽く瞑目すると、ライカに答えた。


「…あのセラが…アキラ殿を信頼していると言えば? 付け加えれば……手前もアキラ殿は信頼できると思う」
「ッ!!」


断言するとウルカは目を開ける。
そこには迷いや隠し事などは一切感じられない。
いや、それ以前に…ウルカ隊で嘘が出たことなど、ただの一度すらない。
そして、清廉なウルカが虚言を吐くことも決して…無い。
その意味を悟るとライカは大人しく引き下がる。


(セラも…ウルカ様も…どうかしている。人間がオレ達にしている事を忘れたとでも言うのか!)


暗い感情は胸の中で燻り続けていたが、それが燃え上がらないうちにライカは感情を押し殺した。


「…では、オレはウルカ様とセラの目を信じることにします。ですが…オレ自身が“エトランジェ殿”を信用することはできません」
「はぁ〜、相っっ変わらず固いわねぇ〜…ライカの乙女チックな詩からは考えられないくらいに固いわ…」


クレリアの言葉にギシッ…という擬音を伴って硬直するライカ。
ザァァーっと音を立てて血の気が引いていく。
…そして次の瞬間…


─ぷちっ!


「うわあぁぁぁぁん! なんでお前が知ってやがるんだよおぉぉぉ!」


号泣しながらライカはキレた。
手にはマナの光を鈍く放ち始めた『激昂』が…


「ちょ! ちょぉ〜っとタンマ! ライカちゃん。ごめんして。お姉さん謝っちゃうからごめんしてっ!」


後頭部を見れば巨大な…そして漫画チックな汗が浮かんでいるであろうクレリアは必死に『激昂』から逃げる。



─ゴドォォォォォン!!



振り抜かれた刃が大地を砕き派手な爆砕音を上げる。



敵の襲撃と勘違いした兵士がガンガンと警鐘を鳴らし…混乱が巻き起こる。



「うあぁぁぁぁぁ…こうなったら…もう、オレの秘密を知ってる奴は全員、生かしちゃ帰さねえぇぇぇ〜!」



暴れ狂うライカの声だけが鐘の音とともに響き渡っていた…



この事件(?)でアキラはニルスリッチに呼び出され、バーンライト王アイデスの前で散々嫌味を言われたが…彼は超人的な忍耐力で耐えた。



大事には至らなかったため、責任追及までは行かなかったが朝の気分を台無しにされたアキラはライカを1回は説教してやろうと固く決心したとかどうとか…



その後、退出時にアキラがニルスリッチの事を“赤テミ将軍殿”と発言して場を爆笑の渦に巻き込んだ事は言うまでも無い。




聖ヨト暦329年 エハの月 青五つの日 昼下がり
バーンライト王国 首都サモドア 臨時宿営所/アキラの部屋



アキラの部屋には3名の来客の姿があった。
一人は言うまでも無いだろう…ライカだ。
後の二人は、ウルカとセラである。


「アキラ…本当にごめんなさい……もう、ライカ! ちゃんと謝りなさい!」
「部下の不徳は、手前の不徳……アキラ殿。申し訳ございませぬ…」


セラとウルカがそれぞれアキラに頭を下げる。
ただ、ライカだけが憮然とした表情をしていた。


「ちっ…分かったよ…別に大したこたぁ無かったし…問題ねーだろ? 悪かったな……」


そっぽを向いて喋る。
先程からアキラのほうを見ようともしない。
アキラは、そんな彼女達に背を向けて外の光景を見ていた。
外では通用門近くに出来てしまった小さなクレーターの埋め立て作業が行われている。
やれやれ…とばかりに溜息がひとつ。


「「ライカ!!」」


ウルカとセラの声が見事に重なる。


「…はいはい。申し訳ございませんでした。以後、このような事が無いよう心がけマス」


見事な棒読み。どこにも感情というものが入っていない。
人間の指揮官が聞けば、顔を真っ赤にして暴れだすことだろう。
場の雰囲気がおかしくなりかけてきた所でアキラは初めて室内に目を向けた。


「セラ。それにウルカも。俺は特に責めてはいないから頭を上げろ」
「いえ…しかし、それだけのことをして何も無しという訳には行きませぬ」
「そうよ。隊の内規にも関わるし…そんな適当なことをするのは間違っているわ!」


アキラの言葉にウルカとセラはそれぞれに反論する。
それも当然。そんな都合のいい話は軍隊では適用されるべきではないのだから。


「ほらほら…エトランジェ様もそう言ってるし…帰ろうぜ? 別に怒っちゃいねーんだろ?」


面倒くさそうに言うライカの態度にセラが爆発しそうになる。
が、それを遮ってアキラは言った。


「…何を言っている? 俺は帰っていいとは言っていないぞ? それに責める気は無いが…原因は追究させてもらう」
「……うそだろ!?」


そこで初めてアキラを見て、ライカは一瞬だけ硬直。
何事も無かったかのように目を背ける。
が、その頬が軽く上気しているのだけは隠し切れていない。


(やべっ…落ち着け…落ち着け…オレ……あれは人間だ。あれは敵だ)


自己暗示をかけるかのように心の中で呟き続ける。


「さて…それじゃあ…原因追求を始めようか…ライカだったな? 何が原因だ?」


よく通る静謐なその声すらもライカの心を掴み取ろうと掻き乱す。
もはや魔力か呪いに近い…しかも心地良く響く強制力だ…
だが、ライカは人間への敵愾心と持ち前の思い込みだけで、それに耐え切る。


「しっ知らねーよ!? そう、何となく。何となく喧嘩したくなったんだ!」
「ライカ? 一応、彼は私達の隊長…そして訓練士も兼ねる方よ? もっと言葉に気をつけなさい!」


自らの秘密をひたすらに隠し通そうと無駄な努力を続けるライカを、ウルカ隊の教育長ことセラが窘める。


「ってセラ! こいつは敵だぞ!? 人間だろうが! オレ達の約束を忘れたのか!?」


セラの言葉が本心から発せられたものだと察して、ライカはうろたえる。
自分と同じように人間を醜悪に思い…嫌い、もしものときはお互いに助け合うことを約束したセラが目の前の人間を信頼している。
ウルカとセラが本心から目の前の人間を信頼していることを悟って、ライカはどうしようもない孤独感を感じていた。
しかし、セラが発した次の言葉はそれを否定していた。


「…勘違いしないで。人間は今でも嫌いよ…そう、とても…とても嫌いだわ…」


仄暗い感情がセラの目に浮かぶ。

人間に命令されると、本能的な部分が…それに従えと喚き立てる。
それに従えば、本能から満たされるような気分が湧き上がり…逆らえば強い罪悪感と心理的な苦痛が湧き上がる。
それがスピリットの本能だからこそ…二人は幾つかの約束を交わした。
何があっても、二人だけは裏切らない。
何があっても、二人でウルカ隊という世界を…ウルカを護る…と。


これまでの何かを思い出したのか軽く自分自身を抱きしめる。


「…でも、アキラだけは別。私はアキラになら全てを預けられる。ウルカ様も大切だけど…私にとってはアキラも同じくらい大切だから」
「…………」


セラの独白に思わず鼻頭を掻いてしまうアキラ…
思わず何かを口にしかけるが…ここで口出しするのは無粋と感じて沈黙する。


「手前はアキラ殿に会って、まだ1日…ですが、アキラ殿には手前らを率いていけるだけの力があると感じました。
 ライカ…先程、貴公はセラと手前の目を信じると言った…ならばアキラ殿のことも信じてみてはくれぬか?」


ウルカも同じようにアキラを評価する。
アキラ本人は、正直なところ…何故、こんなにすぐに信用されているのか理解に苦しんでいた。
セラにしても、信用してくれるのは早かったが…ルーテシアの件が無ければ、絆を作るのに長い時間が掛かったことは明白。
むしろ得体の知れない者を警戒する精神がある分、セラやライカのような対応が普通だ。
そこに若干、ウルカの危うさを感じたが…やはり口には出さない。


「…でも、オレ自身は信用できない…とも言いました。ウルカ様とセラは信じます。でもオレはまだあいつの事はなにも知らない。だから判断できない」


頑迷に首を振る。
それを見て、アキラもついに口を開いた。


「ああ、構わない。別にすぐに信用しろなんて無理なことは言わないさ」
「「アキラ!(アキラ殿!)」」


またもセラとウルカの声がシンクロする。
だが、アキラはそれを気にせずに先を続ける。


「…人間を嫌うのも憎むのも構わない。そのようなモノはすでに見慣れている。憎みたければ好きなだけ憎むといい」
「……あんたにオレの感情をモノ呼ばわりされる憶えは無いね。この世界のことも知らないくせに!」


憎々しげにアキラを見つめる。
だが、アキラはその様なことでは全く動じない。
いや…動じるべき要素が無いというべきか…


「ああ、確かにまだ来て1週間程度だから知らないさ。だが…人が抱く感情というのはどの世界でも似たようなものだ…」
「くっ…知ったようなことを……」
「ま、知ってるしな。ちなみに俺の世界では君等のような存在は概ね人間と対抗しているぞ? それも、もっと賢く」
「バカって言うな!」
「……まだ言って無いのだが?」
「……ぅ…」


自爆した所で赤面して俯いてしまう。


「さて…まあ、そんな事はどうでもいい。お前自身が信じられるかどうかは、これからゆっくりと考えていけ。
 それまでは、別に俺のことを何と呼ぼうが言葉遣いがどうだろうが俺は気にしないでおいてやる」


ゆっくりとライカの前まで歩いていき、顔を覗き込むアキラ。
至近距離で交差する視線……瞬時にライカが硬直する。


(…あれは反則だわ…自覚してやって無い所が特に…)
(…同感です…)


様子を見守りながら頷きあうウルカとセラ。
アキラには生涯理解できそうに無い意志の疎通が、そこに存在していた。


「……………うぐ……わ、わかったわよ…とりあえずは…そう。と、とりあえずはあんたの事を少しだけ認めてやる」
「…………宜しい」


((…わよ!?))


後ろでは違った部分に驚く隊長格の二人。


「それじゃ…問題無いな? あんな事をした理由を聞かせてくれ」
「う゛……そ、それは……その……………」


ちらちらと後ろを気にするライカ。
最後の一線…セラにだけは秘密を知られたくないというライカの心が働く。


「…言いにくいことなのか……ウルカ。セラ…済まないが少しだけ外してくれ。プライバシーってやつだ」
「“ぷらいばしー”?」
「あー、うーむ…そうだな……個人の秘密を尊重するっていう考え方だよ…分かるか?」
「成るほど…では、手前らは隊のほうへ戻っておきますので…何かありますれば、そちらに…」


やけに心配そうな視線を投げかけてくるセラを引っ張ってウルカが出て行く…
何となくセラの言わんとすることを察したアキラは軽く肩を竦めるのであった。




………

……






「さて、ここには俺とライカしかいない。そろそろ理由を聞かせてくれないか?」
「………ぅ……その……」


アキラの問いかけになおも逡巡を続ける。


(うーむ…これは困ったな…)


悩むライカを見ながらアキラは心底困っていた。
カウンセラーでも超能力者でもない彼には、相手の考えを読む異能などは無い。
よく話す相手ならば、何を言いたいのかぐらいは分かるし…戦場を駆ける戦友であれば目だけで言いたいことが理解できる。
だが、アキラとライカは初対面。
よって、口に出してくれなければ何を言いたいのか分からない。


「……笑わないか?」
「ん?」
「ああ…じれったいなぁ! オレの理由を聞いても笑わないかって聞いてんだよ!」
「なら、最初から聞こえるように言え……確約はできないが…笑わないように努力しよう」


まるで子供のようなライカに内心では頭を抱えたい…否、すでに抱えているアキラ。


(…正直なところな……ガキの相手は苦手なんだよ…何で俺がこんな事してるんだっ!)


そんなアキラの内心をしらず、ライカはやっと語り出す。


「実はな……オレ……詩を作るのが趣味なんだよ」


ライカの言葉に黙って頷く。


「皆には内緒でノートに記帳してたんだけど…何故か、それを知られててさ……それを言われたんで…つい……」


ばつが悪そうに言いよどむ。
アキラは…見た目と似合わんことをする奴だな…と思う。
そして、はたと気付く。


「……自分でも似合わない…とか思っているのか?」
「ッ! ……そうだよ……悪かったな!」


拗ねたようにそっぽを向いてしまうライカ。
そのような所を見て、初めてアキラはライカの気持ちが理解できた。


「…でも好きなんだろ? 詩が…」
「……ああ」
「どんな詩なんだ?」
「…ごめん……本当に勘弁してくれ……正直、こっ恥ずかしくて人には聞かせられない内容なんだ……」


顔を赤らめて俯く。


「まあ、いいさ。だが、好きなんだったら何を言われても気にするな。お前が好きなものはお前だけが決めればいい。
 本当に自分で想うものがあれば…それは決して捨てないことだ。誰に何を言われても、似合わないと思っても…それが大切なことだろ?」


真摯な態度で語る。
多少、クサい台詞だな…と思いつつも…


「………あんた……よく真顔で、そんなこっ恥ずかしいこと言えるな……」
「………ほっとけ!」


お互いに顔を見合わせてニヤリと笑う。
互いに端正な美貌…台詞は男。
しかし、互いのあり方は違う。
男と女。
だが、未だそうあるには互いに遠く…


「……あんた…変わってるな…どうせ、セラにもそうやって迫ったんだろ?」
「馬鹿言え! セラとは俺より長いんだろ? 俺は最初…危うく斬られかけたぞ」
「ぷっ……はははははっ! そうか、やっぱりそうだったか!」
「野郎……俺に笑うなと言っておきながら自分だけ笑いやがって……」


打って変わって軽い空気が流れる。


「…それに野郎じゃなくて言うなら女郎だろ? これでも女なんだからな!」
「ちっ…言ってろ…全く…これじゃさっきとアベコベじゃないか…」


“星が降る…私の心に星が降る。暗く寂しい畦道を…輝く銀が照らし出す。マナの灯りに導かれ…私の心は歩き出す”


突然静かな声音で詠い出すライカを驚いて見つめる。


「………………………………」
「……………………笑えよ…」


頼むから笑いやがれ…と言わんばかりにそっぽを向いて言い放つ。
だが、アキラは笑わない。
軽く目を閉じ…内心では苦笑しながら口を開く。


「いや。良い詩だと思う…そうだな…心に響く詩だ」
「…ッ! なんだってんだよ! からかいやがって…」


静かな顔で言うアキラにライカは怒った振りをしながらも上気する。


(…オレは何で、こいつの前で詩なんて紡いでるんだっ!?)


「疑り深いな…ついでに感想も聞かせてやろうか?…そうだな…“希望”っていう奴を感じさせてくれる詩だったよ」
「うっ……」


内心で決めていたタイトルを言い当てられ、言葉に詰まる。
それは、アキラが真剣にその詩を聞き…内容を吟味していることを示しているからだ。
ついにライカは降参する。


「あんたにゃ負けるよ……この女殺し!」
「……不本意だが…最近自覚した所だ」


憮然とした表情で視線を逸らすアキラ。
その姿を見てライカはアキラのことを、本当に…本当に少しだけ認めてやることにする。


「これが理由だよ。もうキレたりしねーから…今回の事は許してくれ。済まなかった……」


頭を下げる…心から。


「ああ。分かった。ライカは真っ直ぐな性格のようだからな…言ったことは守ると信じよう」


謝罪の意を受け入れる。


「よし。それじゃ、戻ってウルカの手伝いをしてやってくれ。俺もそろそろ仕事の時間だしな」


悪戯っぽくウィンクしてみせるアキラ。
一瞬だけライカの心臓の鼓動が高くなる。


「ば、馬鹿野郎! 紛らわしいことすんなよなっ! と、とにかくオレはウルカ様のとこに戻るからっ」
「…くくっ……ああ、落ち着いていけよ?」


慌てて出て行こうとしてライカは扉の手前で立ち止まった。
背を向けたまま呟く。


「……あんたにだったら…オレの詩……何時でも聞かせてやるから……」
「……は?」


忍び笑いが止まる。
それを感じ取ってライカはニヤリ…と笑う。


「へっへ〜ん! さっきのお返しだ! ナニ期待してんだ。あっはははは!」
「……お…お前なぁ!」


笑いながらライカは走り去っていく。
アキラは溜息を吐いて、本日何度目かとなる肩竦めをした。


(……前途は多難だ……)




聖ヨト暦329年 エハの月 青五つの日 夜
バーンライト王国 首都サモドア リモドア街道側通用門



「アキラ殿…それではお気をつけて……こちらの事はお任せ下さい」
「気をつけてね…アキラ…ボクをおいて死んじゃったらヤダよ?」
「アキラ様ぁ………」


ウルカがアキラに声をかける。
アキラは軽く頷いてそれに答える。
次いで、ルーテシアとセシルの頭を優しく撫でる。


「大丈夫だ。こっちは隠密主体だからな…それより、ルーもセシルも…怪我するんじゃないぞ? ウルカの言うことをよく聞くんだ」


まるで保護者のような言い方に、ウルカが微笑する。
対してルーテシアはそれがあまりお気に召さないようであった。


「もう…ボクは子供じゃないんだから! 大丈夫。安心してよね」
「よぉし…それじゃ、俺は安心して行ってくるからな? こっちは任せるぞ?」
「あ、ああのっ…どちらかと言えば…私のほうが足を引っ張っちゃうかなぁ〜…って」
「心配性だな。大丈夫。ウルカ達やルーと協力して事に当たるんだ」


何時までたってもアキラを放しそうに無いルーテシア達にセラが声をかける。


「もう、そろそろ時間よ? アキラの事は私に任せておいて」
「…ボクが居ないからってアキラとエッチな事ばかりしちゃダメだからね?」
「「しねーよ!(しませんっ!)」」
「はううぅぅ…」


ルーテシアの相変わらずの突っ込みに見事にハモる二人。
いまいちそういう話に耐性の無いセシルは顔を真っ赤にしている。
どこか疑わしげな視線を向けるのはウルカだ。


「アキラ殿……セラ……まさか……?」
「いや待て! そんな戦時中に、んな事する訳ないって」
「そ、そうです。ウルカ様! とにかくこちらは迅速に任務を遂行しますので…サモドアはお願いしますね!」


散々引っ掻き回されるアキラとセラの様子を見て、ウルカはついに堪えきれなくなった。


「…ぷっ…くっ…くくっ……二人とも…そんなに慌てられては……もはや手前には耐えられそうにありませぬ……あははははっ」
「そうだよね〜ウルカ姉様♪ 本当にアキラとセラ姉様は面白いんだから♪」


ウルカの背中に隠れてルーテシアが笑う。
ウルカも我慢できずに笑う。
アキラも…セラも…セシルもついに笑い出してしまった。


「ふ…このような可笑しな見送り……手前には初めてです」
「馬鹿言え……こんな見送りあってたまるか…」
「こらっ! ルー! 待ちなさい!」
「あはははははっ♪」


さっき自分が言ったことも忘れてルーテシアを追い掛け回す。
それを見ながら、ウルカはどこまでも優しく…どこか遠い目をしていた。




聖ヨト暦329年 エハの月 赤ニつの日 昼
バーンライト王国 首都サモドア近郊



「うむむ…これは…意外に粘るであるな…」


ラキオス妖精部隊隊長、クィラスはサモドアを間近にして歯噛みしていた。
バーンライト軍は、僅か2部隊で立て篭もり…攻めに集中しようとするとウルカ隊が背後から遊撃を仕掛けてくる。
もう少しのところで、どうしても王手を掛けさせてくれない。


(幸い、こちらは誰も死んではいないのであるが…それでも疲労は隠せないのである…一度、退くべきか……)


「…………敵は……殺す!」
「奪う……マナを……」


防衛に徹していたバーンライトの1部隊がこちらの疲弊をみて突入を仕掛ける。
既に漆黒を超え…闇色に染まったハイロゥを展開しながら迫る!


(哀れな……完全に神剣に呑まれてしまっているのである…)


クィラスは突出してきたスピリット達を取り囲ませると右手を振り下ろして命令する。


「リーファ! ペルテア! エスペリアを支援して殲滅するのである!」


即座にペルテアは動く。
エスペリアは一瞬だけ逡巡を見せたが…ペルテアに続いて飛び込む。
だが、リーファは動かない…否、動けるはずが無い。
…リーファは既に再生の剣へと還ってしまった…


(くっ…そうである………リーファは……)


「セリア!」
「………了解しました」


無表情に走る。
セリアとしてはクィラスの命令など聞きたくもなかったが、それでも命令は命令。
戦場では命令に従わねば作戦が崩れる。
作戦が崩壊すれば…皆が死ぬ。


すぐに決着はついた。
完全に神剣に呑まれ、連携も何も無いスピリットではラキオスの精兵には無力。
魔法を無力化され、微塵に斬られ、マナの霧へと還る。


突出した部隊を援護しようとウルカ隊が姿を見せたが…
…全滅したのを確認すると、すぐに姿を消していた。


「うぉのれ……奴らは戦う気が無いのであるかっ! エトランジェすら出て来ないとは…!」


ギリギリと音を立てるぐらいに歯噛みする。
娘達の仇を取るために、わざわざ先行して挑発しているのに…エトランジェが出なければ本末転倒。
このままでは疲労が限界に達した所で反撃されてしまう。


「うぬぬ……口惜しいが…一度退却するのである……」


クィラスはサモドアの壁へ視線を向けると、撤退の合図を出した。




………

……






「さて……多少の被害はでましたが…こちらの首尾は上々……後はアキラ殿を待つだけか…」


サモドアを囲む城壁の上に佇むウルカはそう呟くと、遥か先…まるで点のようにしか見えないラセリオのほうへ目を向けた。


「それでは参りましょう……着かず離れず……限界の範囲からラキオスに圧力をかける」


「「了解」」


ウルカの部下達は頷いて行動を開始した…




聖ヨト暦329年 エハの月 赤ニつの日 昼
サモドア山道 ラセリオ峡谷 山林地帯



アキラ、セラ、サラの三名は山嶺に点在するように存在する林の中で昼食をとっていた。
メインディッシュは、アキラが捕獲したエヒグゥだ。
これまた、どこで見つけたのか数種類のハーブを使って香草焼きにされている。


「…複雑な気分よね……野営の単純な料理がここまで美味しいと……」


発言の通り、複雑な表情を浮かべているのはセラだ。
まあ、それでも旨い料理はその辺りの都合を忘れさせてくれるらしく、一生懸命にそれを食べている。


「…なんだかこれからエヒグゥさんを見ると……美味しそうって感じちゃいそうですよねぇ…」


サラの表現に一瞬、また複雑な表情を見せる。
が…何事も無かったかのように目の前の料理に集中しだした。


「おーい。そろそろ鳥のスープも出来上がるから水筒の蓋を持ってきてくれ」


草や枝、様々な自然を巧みに使って作られた簡単な厨房の前でアキラが呼ぶ。
夜間時や煙を隠匿することすらも考えて作られたそれは、軍時代の経験の賜物だ。


「あ、は〜い♪」


嬉々としてサラがセラの蓋を持ってくる。
ちなみに鍋代わりにされているのはアキラの蓋だ。
サラは出発時には神剣形態だったので、都合の良い道具は持っていない。


「念のため大きめの奴を持ってきといて良かったな。スープも無いと多少喰いにくいだろうし…」
「まあ、マスターと私だけなら気にしなくても良かったんですけど…」


そう。本来、永遠神剣そのものであるアキラやサラには人間のような食事や排泄といったものは必要ない。
その気になれば睡眠も取る必要も無いし、ほぼ永久に活動し続けることができる。
…そこにマナが存在している限り。
それが、食事をしたり性交渉をしたりしているのは単なる趣味のようなものだ。
所謂、本能を充足させたいという心の表れに過ぎない。


「ま、食するも本能って言うしな♪ 旨いものを喰えば幸せになれるものさ♪」
「…確かに食事をしているとマナの飢えを感じにくいですし…そういう意味ではこの形態は楽ですね♪」


当人達以外の存在が聞いても全く理解不能な話をしながら、鳥と野草のスープが注がれる。
空腹を誘う香りが漂う…


「さて、食事が済んだら後は仕事に取り掛かるぞ。連中が中間地点を越えた時点で分断する」
「……そうね…それで…実際にはどの様にするの?」
「ああ、この辺りは山に囲まれた峡谷上のつくりになっているだろ? 峡谷の上を神剣魔法なり何なりで破壊して土砂と落石で埋める」
「あの…マスター。どうせならラキオスの方々も巻き込んでやっちゃったほうが良いんじゃないんですか?」
「ん。サラの言うことももっともなんだが……相手はスピリットだ。落石程度では逃げられてしまうさ」
「…まあ、アキラが山一つ丸ごと破壊できるっていうなら、話は別かも知れないけどね」
「……いや…あのな…流石にそこまでの破壊行為を俺に求められても困るぞ……」
「大丈夫ですよ♪ マスターならきっと気合だけで山と言わずに山脈ごと消し飛ばせますから♪」
「できるかっ! そんなどこぞの変態師匠みたいなことっ!!」


久しぶりに発動したサラのアホ話に付き合いながら食事は進む。


この時間だけは…まだ平穏に満たされていた…




聖ヨト暦329年 エハの月 赤ニつの日 夕刻
サモドア山道 ラセリオ峡谷



夕日が静寂の海の果てに沈もうという頃…ラキオス妖精隊の面々は疲労した面持ちで峡谷を歩いていた。
連戦の疲労というものもあるが…最も大きいのは着かず離れずにプレッシャーを掛けてくるウルカ隊の存在。
サーギオス最強の名を欲しいままにしているその部隊の重圧はより大きな疲労としてかかってくる。


「…気に入らんのである…」


飛行できる青と黒のスピリットだけであれば…空を飛んで一気に帰還できる。
だが、地上を歩く赤と緑のスピリットを残して戻ることになりかねない。
そうなると、戦力は分割され…背後から迫るウルカ隊に壊滅させられてしまうことは目に見えている。


(…まるで黒狼の群れに囲まれているような気分であるな…)


ケムセラウトの北部に広がる夜光の森に住まうという獰猛な獣の姿を想像して怖気を誘われるが、クィラスは気にしない。
その様なことを気にしていてはスピリットと共に戦場に立つことなど不可能。
エーテル結晶の指輪と人造神剣が、スピリットに近い力を与えてくれるが…それでもクィラスは科学者。
元々、直接の戦闘に長けてはいない。
人造神剣にしても、帝国に居た頃のイオ計画と呼ばれた研究から発展させたもの…まだまだ試験段階に過ぎない。
どこで限界を迎えるかも未知数なのである。


「……………もう少し研究を進めておくべきであったか…いや、今更であるな……」


自らの戦力とスピリットの疲労…様々なことを考え続けるクィラスにエスペリアが声をかけた。


「クィラス様……申し訳ありませんが…アセリアの調子がまだ良くありません。できれば先にラセリオに帰還させてもらいたいのですが…」


断られることを覚悟の上で進言する。
確かにアセリアは戦えるまでに回復してはいたが…まだ調子が良いとは言えない。
外傷などは神剣魔法で治癒しているものの、血とマナが全快するまでには2〜3日の静養を必要とするだろう。
それを知っているクィラスは珍しく許可を出した。


「うむ…そうであるな…ヒミカ。セリア。アセリア。エスペリアの4名は先行してラセリオに帰還。
 ついでといっては何であるが…ラセリオに待機させてある残りのスピリットをこっちに向かわせるように頼むのである」


無理かと思っていたことをあっさりと許可され、エスペリアは暫し呆然としていた。
だが、言葉の意味が理解できるとパッと明るい笑顔を見せてクィラスに頭を下げた。


「ありがとうございます…クィラス様! すぐにラセリオの娘たちを向かわせますのでお待ち下さいませ」
「う…うむ。まあ…小生も、これ以上の被害は望まないのである。それゆえに許可するだけのこと…勘違いはしないでもらいたいのである」


恐らくは初めて見せるエスペリアの心からの笑顔にクィラスは気圧される。
つい、いろいろと喋ってしまい…すぐに口を噤んだ。


『献身』を手に、駆け出していくエスペリア。
すぐにセリアにアセリアを抱かせ、自らとヒミカは周囲を警戒しながらラセリオに向かった。


クィラスの想い…気紛れ……それがまさに今…悲劇として彼らに降りかかろうとしていた……




………

……






「いいぞ……主力の一部が先にラセリオに帰還するようだ……なんたる幸運♪ 神様ありがとう♪」


峡谷の様子を伺っていたアキラは内心で諸手を上げて喜ぶ。
神の恩寵我にあり…とばかりに相好を崩す。
……永遠神剣が神を信じるというのも、ある意味シュールな光景ではあったが……


「もう少し……あと少し……できれば街の近くに行くまで…いいぞ…本隊との距離も都合がいい……」


今、この場にいるのはアキラ一人。
神剣の気配を完全遮蔽できるアキラは、戦闘さえ行わなければ神剣の気配を発することは無い。
セラとサラはアキラが峡谷入口を破壊すると同時に最速で合流することに決めていた…


…エスペリアたちが峡谷を抜ける。
あと20kmも行けば、すぐにラセリオだ。
走れば車並みの速度をだせるスピリットであれば20kmというのは近い距離に過ぎない。
…だが、そのほんの少しの時間が致命的なダメージに繋がる…


「くくく……天運は俺に味方した…残念だが……幕は近いぞ…」


どこか邪悪な笑みを見せながら嗤う。
Cz75を出してチェック。
まだ、マナは通さない…今それを行うと逆に挟撃される恐れがある。


アキラは待つ…獲物がかかるその一瞬を狩人のような鋭い眼差しで待ち続ける。




聖ヨト暦329年 エハの月 赤ニつの日 夕暮れ
サモドア山道 ラセリオ峡谷出口



─シュパァァァァァッ! ズドォォォォォォォン!!


─シュパァァァァァッ! ドゴォォォォォォォン!!


夕暮れの空を引き裂いて二条の光が峡谷を疾る。
それはレッドスピリットの最高位神剣魔法よりも尚苛烈に、鋭く…なにより的確に破壊をもたらしていく…


─ゴガンッ! ゴガランッ! ドドドドドドドドドドドドドドドッ!!


自重に耐えられなくなった峡谷上部が崩壊していく。
それは派手に土砂を巻き込みながらサモドア山道を埋め立てていく。
人為的に起こされた天然の災害!
周囲に存在する全てを大地に帰すのだというように土砂が舞う。
一瞬にして行われた破壊は、まさに一瞬で高さ数十メートルにも及ぶ土砂の山を築き上げていた…




………

……






「うぬぉっ! な、何事であるかっ!!」


突然の衝撃と山道の崩落にクィラスは動揺を隠し切れない。
もうすぐで峡谷を抜けラセリオへ着くというのに…これではどうにもならない。


「クィラス様! 背後から帝国の部隊が!」


ペルテアの声でクィラスは、まんまと仕掛けられたことを悟った。


「おのれ…そうか…そうであったか……エトランジェめ…これが狙いで…」


唸りながらも、クィラスは考える。
こうなっては先にラセリオに戻した部隊…ウィングを持つスピリット達が援護に来るのを待たねばならない。
撤退しようにも先は土砂の山…両脇は峡谷…イースペリア側に逃げようにも…出口にはウルカの部隊。
進退は窮まった。
唯一の手立ては…緑と赤のスピリット達を見捨てて飛べるものだけで逃げるのみ。


(しかしっ…それは認められぬのである!)


クィラスには自分の娘達を一人たりとも見捨てるつもりは無かった。


「ペルテア! すぐに隊列を立て直すのである! こうなっては…ウルカ隊を退けるしか道は無い!」
「はい。クィラス様はこちらでお待ち下さい。すぐに片付けてきます」


ウイングを展開し、妹達の元へ飛ぶ。
途中、まだ幼い少女に何事かを語りかけると、残ったものをまとめて隊伍を組む。
距離は取らない。
お互いに支援できるだけの間合い。
支援やその手順を手短に話し合うと、すぐに突破口を作るべく駆け巡る。
クィラスの元には少女だけが残る。


「テニア…どうしたのであるか?」
「…ペルテア姉さんが…私はクィラス様をお護りしなさいって…」


クィラスの問いにフェルテニアは簡潔に答える。


「小生は自分を護る事ぐらいはできるのである…それよりはペルテア達を助けてあげるのである…」
「…ダメ。ペルテア姉さんが、そう言っても離れるなって言ってた…」


フェルテニアの言葉に驚きを禁じえないクィラス。
戦場では従順であるはずの彼の娘達が…初めて彼に逆らっていた。
困惑と…ほんの少しの喜びが彼の胸のうちに去来していた。


「うむむ…全くペルテアのやつめ…ではテニア…小生の背中は任せる。その代わり…ペルテアを援護するのである」
「…うん。任せて…」


クィラスとフェルテニアは微笑み合うと、ペルテアを支援するべく走り出した。








同時刻……峡谷上層









─Kyrie,eleison.

(主よ…憐れみたまえ)

Kyrie,eleison.
(主よ…憐れみたまえ)

Agnus Dei,qui tollis peccata mundi
(神の子羊、世の罪をのぞきたもう主よ)

dona eis requiem.
(彼らに安息を与えたまえ…)

Lux aeterna luceat eis,Domine
(永久
(とわ)の光で照らしたまえ、主よ)

Cum sanctis tuis in aeternum,
(あなたの聖者たちと永遠に…)

quia pius es.
(何故ならあなたは慈しみ深き方ゆえに…)

Requiem aeternam dona eis Domine,
(主よ、彼らに永遠の安息を与えたまえ…)

et lux perpetua luceat eis.
(絶えざる光で照らしたまえ…)





眼下の混乱を見下ろしながらアキラは歌う。
聖歌隊によって歌われるべき鎮魂歌を一人で歌う。
あらゆるものを魅了する歌声………というには程遠かったが、偽らざる気持ちがこの歌には込められていた。


(…世界に“神”と呼ばれる存在がいるなら…せめてこの死が救われるものでありますよう…)


基本的に無神論者のようなアキラだが…実際には神を信じている。
信じていないのは人間によって好きに弄ばれた宗教教義だけ。
思い込みによって信仰すらも欲望の捌け口に使ってしまう権力という名の害毒だけ。
神という存在に対する考え方すらも異端な彼は、元の世界でも有数の宗教の聖歌を歌う。


(………)


暫時の瞑目…それは散り逝く者への哀悼。
自らが手を下す者達への祈り。


「アキラ!」
「マスター!」


セラとサラがアキラの元へやってくる。
サラの手を取り……瞬時に神剣に変えるとアキラは眼下に広がる戦場へと飛び降りる。
どこか機械的な印象を与えるハイロゥを広げ…等しく死を与える執行者が舞い降りる…
傍らに夜色の翼を広げる美しき御使いを引き連れて…




………

……






そこは既に激戦区となっていた。
両側を高い岩壁で塞がれた山道での決戦。
背後に道は無く。前方には強大な敵。
両軍は正面から神剣魔法を飛ばし、剣を閃かせる。


「奔れ紅の焔翼! アークフレア!!」
「ほ〜らほら♪ 斬っちゃうわよぉ〜♪」
「そこっ! 動くと苦しむことになりましてよ?」


上空にいるルーテシアの魔法が発動し、敵の前衛を足止めする。
足りない威力を補うため、バニッシュが届かない高空からの爆撃。
ウイングハイロゥを持つレッドスピリットたるルーテシアにのみ許される戦術だ。
視界を遮られた相手にクレリアとフレイアが止めを刺す。


「…マナよ…命の輝きをここに……リヴァイブ!!」
「大丈夫…私が…癒してみせる……キュアー!!」


そこで終わると思いきや…敵もさるもの。
起死回生とばかりに蘇生と回復の魔法を発動させる。
散りかけたマナが収束し、倒れたスピリットが立ち上がる。
即座に、中衛と前衛が交代。
無傷のスピリット達がクレリア達に反撃を開始した。


「…っく…敵も…やりますわね…」
「いや〜ん…ちょっと! 嫌な感じじゃないの!」


猛攻に押されて、決して浅くは無い傷を受けていく。
帝国最強と名高いウルカ隊と互角に戦う精兵。
決して楽に勝たせてはくれない。


「……それ以上はやらせません……マナよ、我ら全てに大地の加護を! ガイアブレス!!」


ノエルの魔法がクレリア達を包み敵の攻撃を弾くとともに傷を癒す。
こちらの支援戦力も互角。
このままでは互いが力尽きるまで戦う消耗戦になることは目に見えていた。


「…敵もさるもの…しかし…手前らは負ける訳には行きませぬ!」


まずはグリーンスピリットを排除するべく、ウルカが神剣魔法を発動しようとした瞬間…
正に黒き疾風と化してペルテアが突っ込んでいった。


─ギャリィィン!


刀と刀が喰いあう。
恐るべきことにウルカと互角の力で押し合うペルテア。
強敵の出現にウルカも支援を諦めざるを得ない。
距離を取ると、全く同じタイミングでウルカとペルテアは居合いの体勢に入った…


「見事な判断です……貴公の名を聞かせてもらえませぬか?」
「……ペルテア……私は『銀嶺』のペルテアです…」
「……かたじけない。手前はウルカ…『拘束』のウルカ…では、いざ尋常に…」
「「勝負ッ!!」」


全く同じタイミングで神速の踏み込み
二人は目で追えぬほどの速度で斬り合い始めた。








「む…このままでは……小生が神剣…『偽典』よ…加護の力をもたらすのである! トラスケード!!」


クィラスの持つエーテル結晶の一つが甲高い音を立てて砕け散る。
マナの身体を持たず、固有の魔力も持たないクィラスは自身で神剣の力を引き出すことは出来ない。
力を発動させるためには別の所からエーテルを引き込むしかないのだ。


─パアァァァァ


白い光がオーラとなってクィラスの娘達を包む。
オーラは鉄壁となって彼女達を護り、その傷すらも癒していく。


「これはっ…くそっ! こんなの聞いてないぜ!」


押していた戦局をクィラスによって戻され、ライカは悪態をつく。
まさか、単なる人間が神剣の力を発動させるなんて聞いたことも無い。


「よし。今のうちに突破するのである!!」


『偽典』を掲げてクィラスが叫ぶ。
彼の娘達は一丸となって最も薄い箇所に突入していく。
…即ち、ライカとフェリスの所に。


「きゃああん…そんなに沢山できちゃ嫌ですぅぅ〜」
「うわっ…このっ! 虫みたいにわらわら来やがって!!」


戸惑うフェリスの前に立ち、高速詠唱。最速で紡がれた焔が発動する!


「喰らいやがれ! イグニッション!!」
「ッ! マナよ力を凍てつかせよ!」


─パキィン


瞬間的に発せられたブルースピリットの言葉がライカの魔法を打ち消した。
凍気がライカの動きすらも凍りつかせ致命的な隙を作り出す。
疾る死の刃!
だが、それを許すほどウルカ隊の練度は低くは無い。
即座にフェリスが刃を神剣で受け止める。


─ギンッ!


「ごめんなさいぃ…ライカさんをやらせる訳にはいかないんですぅ」


ギリギリのところで剣撃を止めたものの更に迫る第2第3のスピリットまでは対抗できそうにない。
必然的にフェリスとライカはお互いの背中を護る形で取り囲まれる。
絶体絶命の危機。
ウルカはペルテアで手一杯。
クレリア達も足止めされている。
上空で支援を続けるルーテシアもライカ達を巻き込むような爆撃は行えない。


「…まだだ……オレは…まだ終われねーんだよ!」
「ふぇぇ…でも…これはちょっと絶望的ですぅぅ…」


ライカもフェリスも繰り出される攻撃から命を護るだけで精一杯である。
回復できず…敵はオーラの加護がある。
打開策は……無い。




─キュドッ! ドンドンドンドンッッ!!




二人が絶望に染まろうというその時…天空から降ってきた光弾が二人を救った。
貫いた光弾がスピリット達から貪欲にマナを奪い、消滅させていく。
マナの霧となって再生の剣に帰る事すら許さない絶対の死。
だが、二人にとっては命を繋ぐ光だ。


「よう! らしくねーな…もう泣き言か?」
「てめぇっ! 馬鹿野郎……遅いんだよっ!!」
「え…え? もしかして…エトランジェ様?」
「話は後よ…まずは傷を治してきなさい」


天空から二人の救い手が降臨する…アキラとセラだ。
嬉しさと怒りが綯い交ぜになって叫ぶライカ。
初めて見るアキラの姿に動揺を隠せないフェリス。


「自己紹介は後だ。こっちは俺とセラに任せてあっちを支援しに行け!」


『七鍵』でクレリア達の方向を指し示す。
向こうに行けばノエルとフレイアから回復を受けられる。
だが、ライカは逡巡した。
その視線はウルカのほうに向けられている。


「…ぅ…だけどよ……」
「ウルカなら間違いなく大丈夫だ。ウルカを信じろ!」


ウルカを信じろ…と言われれば、もはやライカは言い返せなかった。


「ちっ…あんたに言われるまでもないっ…すぐに向こうを片付けてくるから見てやがれ! いくぞフェリスっ!」
「あ、はい〜」


フェリスを連れて走る。
アキラの一撃で戦力のバランスは崩壊した。
全滅させるのは時間の問題だ。
数分と待たずにウルカ隊はクィラス隊を呑み込み始めた。




………

……






クィラスは呆然としていた。
目の前の現実が信じられない。否、信じたくなかった…
舞い降りた死の遣いが…瞬時に4人の娘達と4人のラキオスの妖精を文字通り、この世から消滅させてしまった。
死中求活の一手は、本当に敢え無く…儚く消え去った。
逆に死の顕現たる者の庇護を受けた敵達は団結し、残った娘達を殺すべく走る。
ペルテアはウルカの相手で手一杯…しかし、仮にペルテアが勝利したとしても…先は無い。


「くっ…赦さん…絶対に赦さんのであるッ!!」


血を吐くかのような叫びを上げると、クィラスは『偽典』を高々と掲げる。
クィラスの持つエーテル結晶が次々と砕けながらエーテルを『偽典』に供給し、強大な力へと変える!


「なにっ……人間が…永遠神剣を使えるのか!?」


若干の驚きと共にクィラスを見るアキラ。
その憎しみに染まった視線を正面から受け止める。


(…他人事ではないな…)


ほんの少しだけ…寂しげな翳りを浮かべ、アキラは『七鍵』を構えた。


「……せめて苦しみなく…全てをお前と共に逝かせてやろう……」
「…抜かすのである! ライトフォトン・レイーーー!!」


限界まで収束され…白い輝きを纏うオーラフォトンが、まるでレーザーのように撃ちだされる。
如何なる力が込められたものか…それは4位の全力にも匹敵する火力で放たれる。


「ルーンの護りよ…!」


瞬時に護りの結界を展開する。
一瞬、その輝きを押し止めて…貫通される。


─カッ! グゴォォォォォン!!


「…結界突破!? …ぬうっ……この力は……」


結界で被害は軽減したものの、無視できない被害に苦痛の声を漏らす。
そこに追撃の刃が迫っていた。


「……いく! 星火燎原の太刀!!」


神速の踏み込みから、斬撃ではなく刺突を狙った居合いが放たれる。
神剣魔法によって動きを止められたアキラには回避不能のタイミング。
それは居合いの速度を上乗せして、点の動きで敵を貫く必殺の奥義!
黒のマナまで乗せられた一刺しは、正に当たれば必殺の一撃となる!


しかし…


「…無駄よ! アキラは私が護る!」


─ギキィン! ギシュッ!!


それを見越していたセラが、その一撃をカウンターへと転じ阻害する。
フェルテニアの一撃が強烈であるほどに、カウンターアタックのダメージも無視できないものとなる。
ブラックスピリット特有の神速が封じられた瞬間…アキラの銃から放たれたオーラフォトンの弾丸がフェルテニアの頭部を爆ぜさせた。


頭部の無い身体だけが、二歩…三歩と後ろへ下がり…そのまま金色のマナへと還る…


「──あ…あ…………テニアァァァァァァァァァァァァァァァァッッッ!!!」


フェルテニアのほうへ数歩足を進め…そのまま膝から崩折れるクィラス。
その心はもはや虚無…
…自らの愛する者を悉く目の前で失った者に許されるのは…自らの崩壊という救いのみ…
クィラスは虚ろな眼差しでフェルテニアの消えた場所と自らの手を眺める。




─Kyrie,eleison.
─Kyrie,eleison.
─Agnus Dei,qui tollis peccata mundi
─dona eis requiem.
─Lux aeterna luceat eis,Domine
─Cum sanctis tuis in aeternum,
─quia pius es.
─Requiem aeternam dona eis Domine,
─et lux perpetua luceat eis.





口ずさむ鎮魂歌。
せめて死を迎えることで全ての苦痛が取り去られるよう…
永遠の安息を得られますよう…




「……幕引きだ…お前の刻は…尽きた……」


一通り歌い終わると…アキラは『七鍵』に過大なほどのオーラフォトンを流し込む…
黄金と純銀の燐光を巻き上げながら青白く刀身が輝く。


─シュバッ


一瞬の事だった。
刀身がクィラスの身体に触れた瞬間…クィラスの身体は、強制的にマナの光へと換えられ…天へと昇って逝った。
一瞬遅れて、他の戦場からも黄金の霧が立ち昇って逝く…
それは、まるでクィラスを追いかけるように同じ方向へと消えていく。


(…終わったな…)
【ちょっと…後味が悪いですよね…】
(…戦いは多かれ少なかれ同じさ……俺でもサラやセラ…ルーが同じ目にあったら……)
【……マスター…】


瞑目して死者への哀悼を示す。
自らの都合と意志で奪った生命に後悔の無きよう…その生を冒涜しないよう…
アキラは暫時の祈りを捧げる。


「…アキラ。作戦は成功ね…サモドアへ帰りましょう」


セラが気遣うように声を掛ける。
目を開け、アキラはセラに答えた。


「そうだな。こっちは被害無し。大戦果だ…これで、暫くはラキオスも手を出せまい」


その言葉に黙って頷くセラ。
アキラは振り返って、自らが破壊したもの…奪ったものを記憶に焼き付ける。
奪ったものに詫びる気は無い。
詫びれば、奪ったものの価値を無価値にしてしまう。
破壊したことを悔いる気も無い。
悔いれば、破壊した事の意味を失ってしまう。
だからアキラは常に、それを心に残す。
失われたものの意義を認めるためにも心に残す。


既に戦いの終わった戦場を見渡す。
新たな戦友となるウルカ隊の面々を見る。
それぞれに生き残り…任務を成功させたことを喜び合う姿に微笑を浮かべる…


「さあ…帰ろう…凱旋だ」
「…まあ、私達には凱旋も何も無いんですけどね…」
「なに言ってんだ…誰が祝ってくれなくても、俺が皆を祝ってやるから帰ったら覚悟してろ」
「…ふふっ♪…そう。それじゃ、楽しみにさせてもらおうかしら」


会話を交わしながら歩く。
互いに健闘を労いながらアキラ達はサモドアへと帰還していった。




































こうして、バーンライトの戦史に『サモドア山道の奇跡』…ラキオスの戦史に『サモドア山道の悪夢』と記される戦いは幕を下ろした。

互いに殆どの戦力を失ったラキオスとバーンライトの両国は2年間の休戦協定を結ぶことになる。

この戦いを機に、サーギオスのエトランジェことアキラは『漆黒の悪夢』と言う二つ名で呼ばれる事になる。

また、アセリアも獅子奮迅の活躍が恐れられ『ラキオスの蒼い牙』と呼ばれる事になった。

更に、アキラは帝国にバーンライトへの兵力支援をさせる事を条件にセシル・ブルースピリットをウルカ隊に配置変更させる。

サーギオスの異端部隊たるウルカ隊は着々とその戦力を高めつつあった…




聖ヨト暦329年エハの月 緑一つの日…サーギオスに帰還したアキラは戦功を認められ異例の昇進を遂げる。

…サーギオス帝国 皇帝直属エトランジェ。帝国第三旅団長 黒龍将軍 『七鍵』のアキラ。

これは事実上、彼がサーギオスにおいて皇帝以外の命令には従わなくとも許されるということを意味する。

アキラは早くも帝国での地位を確立しつつあった…








─そして約2ヶ月の時間が流れていく…
─何故かエトランジェを使った侵略を行わない皇帝の政策により…世界は未だ危ういバランスの上に成り立っている……










Go to 2nd Chapter “Oath and Emperor”
To be Continued...





後書(妄想チケット売り場)


読者の皆様始めまして。前の話からの方は、また会いましたね。
まいど御馴染み、Wilpha-Rangでございます。


やっと第1章が終わりました。
長々と私の妄想作品に付き合ってくださいます読者の皆様には感謝感謝です。
ウルカ隊という戦友を…新たなる権力を手にしたアキラは今後、何をやっていくのでしょうか?
また、3人娘とウルカ隊の面々はどのような人間模様を見せていくのでしょうか…
マッタリとお楽しみ下さい。

2章は主にウルカ隊の訓練や皇帝との兼ね合い…水面下の暗躍といった感じまで描きたいと思います。
いえ、決してドロドロばかりじゃないデスよ?
ちゃんと愛もありますから!(ぇ

そう言えば、今回は試験的に濡れ場も描いてみましたが…これがどうなるか…
賛否両論色々とありそうで楽しみなような怖いような…(爆)
まあ、とりあえずは何を言われようと暴走してみたいと思います(マテ

なぬ? アセリア本編のメインキャラとの絡みが少ない?
ごもっとも…ですが、それは第3章までお待ち下さいませ。
第3章からは正規のエトランジェ達が現れる予定ですのでw



脳内妄想列車は停車中!



次回。永遠のアセリア外伝『人と剣の幻想詩』…“日々是訓練也”…乞うご期待。



「……死…死ぬ…オレは真面目に死ねる……」


独自設定資料

World_DATA
「妙に洗練された…」
以前、諜報工作時に家令(執事)の真似事をさせられた事があるため。
ただ、それだけのことですよ(笑)


「150時間ぶり」
まあ、その間色々とあったのですよ…色々と。
問い詰めたら命が危うくなることです。多分。


「折られる」
元々ケンは女好きである。
しかも何気に面食いな所があるため、そう思った訳だ。
今のアキラの状況を見たら……間違いなく獣化して襲ってくるだろう(爆)


ライカの詩手帳
ライカは詩を紡いで手帳に残すという珍しい趣味を持っている。
アキラに聞かせたあれも、その一つ。
その手帳の中には乙女力に満ちた恐るべき詩の数々が秘められているらしい。
見られるとキレるので要注意だ。


魔魅/カリスマ
『幻視の竜眼』のもたらす余剰魔力は微細なオーラとなって常にアキラを包んでいる。
これは無意識に発動しており、視線や声を交わした存在を魅了しようとする。
この効果によりアキラの指揮する部隊は強固な結束力を発揮する。
部隊内にアキラがいる場合、メンバーには常に+20%の支援効果が付加される。


女殺し
アキラとサハド
(by ラスフォルト[ぬへ様])の代名詞。
こやつらは恐るべきハーレム主義者達であり、ファンタズマゴリアでは恐るべきアドバンテージがある…はず?
本編で言えば、悠人も該当しそうだが…彼はいまいち鈍いので有効活用できていない。
現実世界で発動させると、余程の猛者で無い限りかなりの確立で死を招くので気をつけよう♪


ラセリオ峡谷
サモドア山道のラセリオ側出口に聳えるラセリオ山地の事。
元々一つの山地だったが、200年ほど前に地殻変動を起こして峡谷となった。
最も狭い部分は8mほどしか幅が無く、一気に大部隊を通らせるには不向きである。
よって一つ一つの中継点が戦場となることが殆ど。
329年エハの月にバーンライト側が封鎖したため、現在通行はできない状態となっている。


変態師匠
「ド○ォォォォォン!!」
「師匠ぉぉぉぉぉぉ!!」

気合で雪崩を吹き飛ばしたり、素手でMSを破壊したり色々と人外魔境な人。
人間のまま無手でエターナルと殺り合えそうな数少ない超人。
っていうか、明らかに人間の範疇外だろ!


黒狼
ケムセラウト北部に広がる“夜光の森”に住まうという獰猛な肉食獣。
その体躯は狼というには巨大で、しかも群れを成している。
並大抵の武器を通すことの無いしなやかな毛皮は美しく、傷の少ないものは高価で取引される。
戦闘能力を比較すると1体のスピリット=3体の黒狼となる。
“夜光の森”から外に出ることは無いため、今のところは危険視されていない。


イオ計画/人造神剣
元々は帝国の第6研究所で進められていたスピリットと神剣の関係を探る研究。
イオと呼ばれるホワイトスピリットが被検体となっていたが…?
研究放棄後、その資料を元にクィラスが人造神剣を創ることになる。
この計画で数十名のスピリットが犠牲になっているという事実は数名の研究者しか知らない。
初めて資料を読んだとき、クィラスは怒りの余りそれを思わず破いてしまったほど。
人造神剣はエーテル結晶とリンクさせることで擬似的にエトランジェ級の力を発揮できる。
クィラスが生きていれば、間違いなく世界を変えたであろう成果。


鎮魂歌(レクイエム)
ラテン語と日本語訳の両方を表記している。
本来であれば教会儀礼として聖歌隊によって歌われるもの。
アキラが歌っているのは彼が自分でアレンジした独唱版。
失われ逝くものへ捧げる歌。
実際に聞いてみると中々に荘厳で美しい。


サモドア山道の戦い
バーンライト戦史では『サモドア山道の奇跡』、ラキオス戦史では『サモドア山道の悪夢』と記される。
この数日間の交戦でラキオス、バーンライトともに数十のスピリットを失うことになった。
その後、両国は2年間の停戦協定を結ぶのだが…それは敢え無く1年で破られてしまうことになる。


異名/エイリアス
戦いなどで著しい活躍を見せ、敵味方双方に恐れられる存在に与えられる称号。
いわゆる二つ名である。

アキラ→“漆黒の悪夢”
ウルカ→“漆黒の翼”
アセリア→“蒼い牙”


黒龍将軍
皇帝との公約通り、どこからも文句が出ない戦果を上げたアキラに与えられた軍事階級。
権限は将軍と全く変わらないが、アキラは皇帝直属であるため皇帝以外の命令に従う必要は無い。
皇帝からの勅命を受けてウルカ隊を統率し任務を遂行する。
また、アキラが中央に居る場合は皇帝の護衛を行う場合もある。
新参者…しかもエトランジェという異物が、これだけの権限を持っているため貴族達の受けは悪い。
権謀術数に長けたものは早くも取り入るか暗殺するかで揉めているとかいないとか…




Skill_DATA

ライトフォトン・レイ (ディヴァインマジック)
修得Lv:不明
Lv:16 属性:白
対HP効果:2400 最大回数:1 行動回数:1
種別:ディヴァインマジック
ターゲット:変動 ターゲットスキルLV:16
MB:0〜100
MD:0
台詞
「赦さん……貴様だけは赦さんのである!!」
パラメータ変動
攻撃:+0 防御:-20 抵抗:-20 回数:-2
青:+0 赤:+0 緑:+0 黒:+0

【解説】
クィラスが数多くのエーテル結晶と自らの構成因子までも注ぎ込んで発動させた『偽典』最高のディヴァインマジック。
場の最大の属性効果を乗せて放たれる光線はほぼ全ての存在に甚大な被害を与える。
その威力は凄まじく、アキラのルーンスフィアを易々と貫き思わぬダメージをもたらした。
だが、恐るべきはそれだけではない。
この光線による爆発は、被弾者の行動力を著しく低下させるのである。
場にセラが居なければ、間違いなく次の攻撃でアキラは致命傷を負わされていただろう。




Personaly_DATA
ライカ・レッドスピリット/Raika Red-Spirit(『激昂』のライカ)
身長:158cm 体重:45kg スピリット。紅髪紅眼。Size:80/56/74
知的能力:普通 精神性:感情的外向型 性格:男勝り 容貌:かなり良い
性別:女性 誕生日:聖ヨト暦310年レユエの月 赤一つ
年齢:18(外見:18)
技能:戦闘術。神剣魔法。小隊指揮。戦術眼。作詩。
属性:赤
神剣:第7位『激昂』
光輪:スフィアハイロウ
特筆事項:無し
所持品:スピリット用服飾品。作詩ノート。

基本能力コード(常人の平均値を10とした場合。右は修正済みの値)
筋力:20
+20=40/92(230%)
耐久:16
+20=36/82(230%)
敏捷:13
+20=33/75(230%)
魔力:14
+20=34/78(230%)
感覚:17
+20=37/85(230%)
幸運:10
+20=30/69(230%)

戦闘パラメータ(LV1の状態で)
生命力:450
攻撃力:
108%
防御力:
90%
抵抗力:
120%


特殊能力:
<創造力>

※極めて高い創造力を持ち、イメージの扱いに長けている。
※イメージから現実化までの展開が異常に速いため、ほぼ全ての神剣魔法をスタートサポートタイミングで発動できる。
※逆に、マナの練り込みが甘いため魔法の対HP効果は低下している。

<馬鹿力>
※瞬間的に凄まじい力を発揮する。
※一瞬だけ筋力基本値に+20の修正を加えることができる。
※さらに全てのアタックスキルの威力が+500される。


解説:
ウルカ隊の小隊長格。
神剣魔法と剣技の両方に長けた優秀なレッドスピリットで、戦いでは常に前線を維持する。
セラとは同期であり、非常に仲が良い。
極度の人間不信で、並大抵の事では人間に心を開くことが無い。
一度ソーマの調教を受けた経験があるため、それが尚更に自分の心を縛っている。
本当は女性的な感性の持ち主であり、自分の素直な心情を詩として書き留めている。
アキラとの交流で自分の在り方に迷いを持ち始めていく…


セシル・ブルースピリット/Cesil Blue-Spirit(『泉水』のセシル)
身長:150cm 体重:41kg スピリット。青髪碧眼。Size:75/55/73
知的能力:並以上 精神性:感情的内向型 性格:天真爛漫・ちょっと臆病 容貌:かなり良い
性別:女性 誕生日:聖ヨト暦316年ソネスの月 青四つ
年齢:12(外見:15)
技能:剣術。神剣魔法。小隊指揮(初級)。
属性:青
神剣:第8位『泉水』
光輪:ウイングハイロウ
特筆事項:無し
所持品:スピリット用服飾品。ウルカの手拭。

基本能力コード(常人の平均値を10とした場合。右は修正済みの値)
筋力:10+20=30/66(220%)
耐久:11+20=31/68(220%)
敏捷:16+20=36/79(220%)
魔力:14+20=34/74(220%)
感覚:16+20=36/79(220%)
幸運:13+20=33/72(220%)

戦闘パラメータ(LV1の状態で)
生命力:350
攻撃力:98%
防御力:100%
抵抗力:104%

特殊能力:
※現時点では特殊能力と言えるほどの力は持っていない。


解説:
前線でベテランの妖精達が戦死してしまったため、何の因果か前線指揮を任せられてしまう。
見た目も心もまだまだ少女のものであり戦場に慣れてはいない。
そのためか比較的に自我も保っているようである。
戦場でアキラに叱咤されて以来、アキラに懐いてくる。
別名、バーンライトのヘリオン的存在(笑)
アキラがバーンライトにスピリットを支援させる条件の一部としてウルカ隊に引き抜く。
ウルカ隊の中ではフェリスと気が合うようで、よく一緒に訓練している。
実はお菓子好き。




SubChara_DATA
ペルテア・ブラックスピリット/Peltea Black Spirit
身長:157cm 体重:43kg スピリット。黒髪紅眼。
知的能力:高い 精神性:理性的内向型 性格:真面目。清楚。 容貌:非常に良い
性別:女性
神剣:第6位『銀嶺』
年齢:20(外見18)
職業:ラキオス妖精騎士団
解説:
クィラスが提唱していた強化妖精部隊の被検体。
ブラックスピリットの能力を更に高めることに主眼を置いて調整された。
同化比率は80:20であり、クィラスのそばに控えてサポートを行うことが多い。

強化妖精は、マナ結晶の指輪とセットで運用され、瞬間的に通常のスピリットの数倍の能力を発揮する。
原作においてはラキオス郊外でユートとウルカを襲った帝国の妖精に匹敵する。

日常においても清楚に振る舞い、クィラスに仕えた。
クィラスの娘達の中で、唯一クィラスと肉体関係にあった。
サモドア山道の戦いで死亡。


「……私は『銀嶺』のペルテア……クィラス様のため…貴方には死んでもらいます!」



フェルテニア・ブラックスピリット/Pheltenia Black Spirit
身長:152cm 体重:40kg スピリット。黒髪黒瞳。
知的能力:普通 精神性:理性的内向型 性格:純真・純粋 容貌:かなり良い
性別:女性
神剣:第7位『弦月』
年齢:12(外見15)
職業:ラキオス妖精騎士団
解説:
クィラスが提唱していた強化妖精部隊の被検体。
マナの少ない場所でもコンスタントに属性効果を得ることのできる機能を持たされている。
同化比率は83:17。技や能力はまだ荒削りだが高い才能を秘めていた。

強化妖精は、マナ結晶の指輪とセットで運用され、瞬間的に通常のスピリットの数倍の能力を発揮する。
原作においてはラキオス郊外でユートとウルカを襲った帝国の妖精に匹敵する。

とても純粋な性格で、クィラスには特に可愛がられていた。
クィラスファミリー(?)の中でも一番の末っ子。
サモドア山道の戦いで死亡。


…ダメ。ペルテア姉さんが、そう言っても離れるなって言ってた…




Eternity Sword_DATA
永遠神剣 第7位 『弦月(げんげつ)』
ブラックスピリット特有である日本刀型の永遠神剣。
自我は無く、本能だけの一般的な存在。
特筆すべき点は無いが、逆に言うと欠点も見当たらない。
強制力も並という、なんとも面白みに欠ける神剣。


永遠神剣 第6位 『銀嶺(ぎんれい)』
日本刀型の永遠神剣。
多少の自我を持っており、高い力を契約者にもたらす。
ロウサイドの剣だが、ペルテアとは相性がよく強制力の発動も殆どなかった。
フルに使いこなせれば、ウルカの持つ『冥加』に匹敵する力を発揮する。
ペルテアが単体でウルカと対抗できたのは、個人の技量もさることながら『銀嶺』のサポートによるものが大きい。


人造神剣 第4位 『偽典(ぎてん)』
一般的な騎士剣を神剣にしたものでクィラスが生み出したもの。
特殊なエーテル共鳴現象と特定エーテル変換施設との同調により高い力を発揮する。
自我も本能もなく、クィラスの命令に従うだけの存在。
ファンタズマゴリアの人間が扱える神剣は『禍根』と『偽典』の二本しかない。
神剣能力を発動させるためにはエーテル結晶を砕かねばならない。
制限は多いが、紛れもなく歴史を変えるはずであった逸品。
クィラスが死んだ後に『神薙』に喰われ、敢え無く散る。