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先日、悠人は時深に用があり時深の部屋を訪れた。
まさかこれがあの地獄にも勝る惨劇を引き起こすことになろうとは…
まだ誰もわかるはずが無かった…


コンコン
「おーい、時深ー」
コンコン
ここは第1詰め所。
悠人が時深の部屋のドアをノックしているが部屋からの反応が返ってこない。
「…あけるぞーー」
ガチャ と音を立ててドアを開ける。
しかし、部屋の主の時深はどこにもいなかった。
「…いない…どこいったかな…」
仕方ないと思い部屋から出ようとする悠人だが…

後日ここで無視して部屋から出ておけばよかったと、後々非常に後悔することになる。

「…???」
悠人の視界に時深が使う机が見え、その上に本がおいてあった。
普通の『この世界の』本であったなら気にしないのだが、その本の表紙はふと見ただけでも懐かしいものだった。
そう、表紙に書かれたタイトルが日本語だったのだ。
「そっか、時深結局俺達がここに来てまた会うまでハイペリアにいたんだもんな」
ちょっと納得しつつ、懐かしい気持ちを抑えきれない悠人は本に手を伸ばした。



「………なんじゃこりゃ…?」

と思わずしかめっ面を浮かべ、その本のタイトルを改めて読み返す。
その本のタイトルは………

『高嶺 悠人  観察日記        観察者 永遠の少女 倉橋 時深』

だったのだ。
「本のタイトルだけでも驚くが、その後の『永遠の少女』って…」
それだけ、少女ということを強調したかったのだろう。
「……超ばあさんの癖してなに書いてんだか…というより、俺の観察日記っていったい…」
興味2割、恐ろしさ8割の割合で、怖いもの見たさの好奇心が抑えられず悠人は本を開いてしまった。






『1990年 ○月○日    晴れ
今日、やっと私の夫となる運命を見た悠人さんが生まれた。
私はうれしさのあまり、任務をほったらかしにしてしまい、そのおかげで作戦は失敗。
ローガスに怒られることになってしまった。
けれどそれでも私は嬉しかった。
時を詠む力のせいで忌み嫌われ、誰からも受け入れられなかった私を受け入れてくれる人。
ああ、早くそのときが訪れるのを私は待ちきれない…』




「…時深もいろいろ苦労していたんだな…」
普段のあのアタックぶりからめちゃくちゃ引いていた悠人だったが、時深に対する思いは今好転の一途をたどっていた。

次の文章を読むまでは。




『それはさておき、生まれたばかりの悠人さんを写真に収めた。
もちろん、最高の画質を出すためにわざわざ悠人さんが生まれる5年も前から悠人さんの世界にい続け、
アルバイトにアルバイトを重ね、ためたお金で買ったライカでだ。
撮った写真とネガを印刷屋に持って行ってポスターにして部屋にはってみた…

かあいいよぉ、かあいいよぉぉ悠人さん〜〜〜〜。

5年後10年後にはもっといい感じになっているだろう。
…お姉さんが教えてあげる的に食べてしまおうか本気で悩んだ』




「…同情した俺が馬鹿だった」
好転していた好感度のグラフは急転直下で0を突き破りマイナスへといたった。
5歳10歳のときに巫女服のお姉さんと偽った時深に食われてると思うと……
ガタガタブルブル
考えたくなかったので考えるのをやめた悠人だった。
でも、ちょっぴり残念だと思ったりもした。男ってバカだよね(自分も男だけど)

とりあえずページをめくっていくと、どこぞの母子日記みたいになっていた。
「あいつ、子供生んだことあるんじゃないのか…??」
思わず悠人がつぶやいてしまうほどに、母子日記みたいだった。



ただ、ところどころに
『かあいいよぉ、かあいいよぉぉ』

『いつ食べごろかを皆に相談してみたら、神剣魔法食らった』
とかなければよりいっそう母子日記っぽいのだが。



だが、このページの日記だけはほかと違っていた。

『2002年 6月△日  雨
悠人さんの義理の両親が事故にあう日だ。
私はこのことをわかっていながら、防ぐことはできなかった。
「防いでしまえば、歴史が変わって悠人さんと会えなくなる可能性がでてきてしまう」
この言葉が私を動けなくしてしまった…
悠人さんの本当の両親の事故の日もこうして動くことができなかった。
罪悪感のあまりに日記すらかけなかった。
今こうして日記を書いてしまっているということは、慣れてしまったということなのかもしれないけれど…
私はこんなことに慣れたくはなかった。
今だって、こうして日記を書いていなければ心が押しつぶされてしまいそうだ。
今まで生きてきた中で、どれだけ人を殺しても、どれだけ物を壊してきても…
今、感じている罪悪感は超えることはできない
ごめんなさい。
ごめんなさい悠人さん。私が手を下したわけではないけど…それでも助けられる力を持っていたのに。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
いつか会ってこの話をしたとき、あなたはいったいどんな顔をするのだろう。
私を憎むのだろうか…それとも許してくれるのだろうか…
たとえ、あなたが私を憎んでも私はそれを受け入れなければならない…
いえ、受け入れる覚悟などできている。
悠人さんならいい』


「…そうか。時深はみてきたのか…」
あのときの事故を思い出す悠人。助けられる位置にいながら助けない時深に関しては悠人は憎む気にはなれなかった。
なぜなら、あの事故がなければ今この場にいなかったからだ。
両親を失い、悲しみに襲われたけれど。
ここに呼び出され、佳織を危険な目に合わせたけれど。
佳織を人質にされ、仕方なくスピリットを殺さなければならなかったけれど。
自分が戦争をしなければならなくなった。
でも、それでも得たものは多かった。
アセリア・エスペリア・オルファ・ウルカ・レスティーナ・時深や皆との出会い。
いろいろな思い出を手に入れ、とても楽しかったこと。
そして自分のパートナーを見つけられたこと。
それだけでも悠人にとっては十分だった。



が、結局本気で悩んだかどうなのかわからなくなるほどに、
「小学6年生のときの悠人さんの水着姿を直視してしまった。かあいいよぉ、かあいすぎるよぉ」
とか
「悠人さんに近づこうとした女を始末した。ち、人の獲物に手を出そうとするからだ」
とか
「そろそろ、佳織ちゃんと今日子さんを始末したくはないがすべきなのかもしれない。あの目はまずい」
とか、さっきのしんみりとした日記はどこへやら。
冗談が冗談に見えない言葉でつづられた日記に悠人は頭を抱えた。



『2008年 12月9日
ついに悠人さんと神社で出会った。
これから起こることについての、ちょっとしたアドバイスだけしかできなかったが。
悠人さんを待ち受けることを今ここで話すわけにはいかなかったからだ。
それについてはちょっと罪悪感を感じたが、それよりも悠人さんに膝枕をしてあげられた事がうれしかった。
悠人さんの整った顔立ちと、かわいい寝顔を見ていたら自然と顔が近づいていった。
でももう少しというところで悠人さんが起きてしまい、キスは不発に終わった。
ばれないように「年上の落ち着いていたきれいなお姉さん」をとっさに演じることができたのは幸いだった』



「…あいつ馬鹿だろ。ていうか馬鹿だ」
あのときに気がついてよかったと思った悠人だった。
やっぱり時深自身は外見は美人なのでちょっぴり残念になったのは男の性だ。


『2008年 12月18日
今日この日がやっとやってきた。
悠人さん達をあの世界に送り届けなければならない。
いったいどんな困難が待ち受けているのかは、あまり詳しくは見ていないからわからないが…
きっと悠人さんなら乗り越える。昔見たヴィジョンには私と一緒に歩いてくれている悠人さんの姿が今でもはっきり思い出せる。
ま、まぁある低確率で悠人さんが神剣にのっとられて、女の子達を…
こ、これ以上はかけない。
が!多分…いやきっと!!悠人さんは大丈夫だろう、うん大丈夫!
とりあえず、ローガスに頼まれていた仕事を後1年以内にどうやって終わらせるかが問題なのだが…;』



そろそろヤバそうなのでとりあえずここで読むのを止めた。
「あいつ。本当に何を考えているかわかりやすいのか、わかりにくいのか分からん…」
ため息をつく悠人。
「…しかし俺があのバカ剣にのっとられていたら…」
ガクガクブルブル
「…抵抗してよかった…いや、マジで」
求めに抵抗した自分を褒め称えつつもそろそろ時深にばれぬよう、ここから去ろうと本を机の上に置き部屋から立ち去ろうとした悠人。


だがそのとき



ビーーーーーーーーーーーーー!!!ビーーーーーーーーーーーーー!!!ビーーーーーーーーーーーーー!!!
ビーーーーーーーーーーーーー!!!ビーーーーーーーーーーーーー!!!ビーーーーーーーーーーーーー!!!



部屋から大音量の警報が鳴り始めた。
「な、なんだ!警報!?って、あれ…目が回る…」
そして、酔ったかのようにふらふらと床に倒れこむ悠人。
『悠人よ…』
「あはははは、なんだぁ聖賢…今なんかすっごく気持ちいいんだよぉ…」
『ああ、マナトラップの影響だろう』
「マナトラップぅ?」
『空気中のマナを変化させ、対象者を酔ったようにする罠だ』
「わなぁ?じゃぁ時深が仕掛けたっていうのかぁ??」
『部屋の主である時深以外誰が仕掛けるというのだ』

バタン!!

下のほうから屋敷の玄関のドアが乱暴に開く音がする。
ちなみにここは屋敷の2階、そして奥の部屋。
そこまで届くほどの乱暴な開け方…と、ここまで言えばもう分かるだろう。

「うふふふふふ…乙女の部屋に勝手に入る不届き者は誰でしょうねぇ…」

ガクガクブルブル
「ま、まずい…早くここから脱出しなければ…!」
ドアの音で思いっきり恐怖で酔いがさめた悠人。
「…くっ、か、体が言うことをきかない…!」
が、トラップの効果でまともに体が動かせない。

ドン…ドン…ドン…

悠人への死へのカウントダウンのごとく足音が近づく。

ドン、ドン、ドン…!

ガクガクブルブル…(((TдT)))!!!!
悠人の体の震えは止まらない。それほどまでに強烈なプレッシャーが伝わってくる。

ドン!ドン!ドン!

ついにドアの前で足音が止まった。




唐突だがなぜ時深の日記なんて読んでしまったのだろうかと、疑問に思った悠人だった。



「ち、ちくしょう!読んだ俺のバカバカバカ!」



そして…



ガチャ
ギィィィィィィィィィィィ…



悠人は鬼を見た。



「あら?どこかの不届きものは悠人さんだったとは…」


にっこりと笑顔を作って言う時深。
しかしその目は笑っていない、むしろ絶対零度の冷たさを持ち悠人を射抜く。
「いや、時深…これには深いわけが…」
「わけがあるかどうかは知りませんが、驚きました。まさか悠人さんが私の部屋で日記を読むなんて…
普段なら喜ぶことですが、今はちょっと悲しいです」
聞いてません。時深さん怒りのあまり悠人の言葉ですら耳に入っていません。

「さて…罪は精算されなければなりません。覚悟、できてますよね?」

本当に普段この笑顔を見れたらどれだけ見れたらと、思わず思ってしまうほどにっこり笑う時深。
しかし今はこの笑顔と殺気だけで人が殺せる。
時深が悠人に目の前に立ったとき、


悠人は目の前が真っ暗になった。









「――――――――、はっ!?」
唐突に目が覚めた悠人。
枕元にあった時計を見ると時刻は午前2時。
「…なんだろう、すごく嫌な夢を見た気がする…」
漠然と恐怖だけは覚えている。
「…思い出さないでいたほうが身のためか…」
そのまま布団を被る悠人。
「嫌な事はさっさと寝て忘れるにかぎ…る……?」



「ふふふふ、ふふふふふふ…」
キィィ…カチャ…



ガクガクブルブルガクガクブルブル…!!!!!!!!!!!






あとがき
はい、途中から知る人は知るネタを出したちょこです。
いやー、途中まではもう普通にこう終わらそうと考えていたんですが…警報の場面を考えた瞬間…
「げ、これってあれジャン;;」とか思いつつも、もうこうなったらあの……まぁ、あれをやってみたかったんですよ;

さて、時深の過去とか悠人の過去なんですが…
めっちゃ適当です!もう年代とかめちゃくちゃだと思います!!
Wilpha-Rangさんこと目玉一族の方々、年代表、本当にありがとうございました!!
いやー、あれがなかったら余計にすごいことになっていたでしょう…

それでは、感想・苦情・間違い指摘などなどお待ちしております。
ちょこでした。

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