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多くの者をこの手で殺め、それでも戦いの日々に終わりを迎えることはない。

残された者を守るため、自身は未だに剣を振る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

永遠のアセリアinサモンナイトV

−導かれし来訪者−

第一章 始まりの鐘

第六話 白き旋風

 


 

 

鬱蒼とした木々を避け、白い羽織が風を切る。

帯刀する『求め』の探査が、戦場が近いと脳裏に告げる。

同時、風に乗って流れる血と火薬の匂い。

 

「くそッ……!」

 

遅い。

内心で舌打ちし、自身の身体能力の脆弱さに苛立ちを感じる。

もどかしい、自分はそれほどまでに『求め』に依存していたということか。

息が切れ、病み上がりで体が軋む。だが、走る速度は落さない。

失う者は、もう嫌だ。

それが僅かな付き合いであろうとも、あの優しい笑顔を消したくない。

 

「間に合って、くれよ……!」

 

 前方で舞い上がる黒煙を見て、悠人は走る速度を更に加速させる。 

 しかし、進めば進むほどに増す、謎の巨大な力の気配。

ここからでも伝わってくるほどの禍々しい威圧感が、重く体に圧し掛かる。

 

(敵か、味方か……どちらにせよこの力、普通じゃない―――)

 

帯刀する『求め』の警鐘が、キィンと小さく唸りをあげる。

まるで、この先に居る“何か”に、警戒するかのように―――

 

 

 

 

†    †    †

 

 

 

 

 鳴り響く剣戟音。

 血を流し、崩れ落ちる兵士達。  

爆炎が上がり、陥没した大地の上を、彼女は進む。

 

「《ドリトル》―――クラッシュ!」

 

 放つ召還石の光と共に、召還獣が敵を討つ。 

これで何度目の召還か、残る力はあと僅か。

 戦いとは言え、完全には殺さない。瀕死だが治癒すれば助かる命。

 甘いかもしれないが、 子供 ( アリーゼ ) の見ている前で殺しは成るべくしたくはなかった。

 

「……アルディラさま、大丈夫ですか?」

「ええ、大丈夫よ。クノン」

 

 傍で戦うクノンの援護をして、先陣を切るアティの後へと続く。

 だが正直、あと唱えられる召還獣の数はニ、三回程度。

 大きいのだと、一発が限度だ。

 限界が……近い。

 

(あと少し……もう少しで……)

 

 上を見ると、カイル一家が挟み撃ちの体勢で帝国軍を前後に攻め込んでいた。

 副官のギャレオとすでに臨戦態勢に入っており、戦いの終結は近い。

 戦況はこちらの方が有利。抜剣状態のアティが一騎当千の戦いを見せる。 

 

だからだろうか―――こんな油断を、仕出かしたのは。

 

「!? アルディラさま! 危ない!!」

「え? ―――きゃぁあああ!!」

 

 奇襲。

 横壁の頭上から、飛び降りざまの攻撃でアルディラは右肩から横腹にかけて斬りつけられる。

 咄嗟に反応したお蔭で深手ではないものの……傷口からの出血が、止まらない。

 向き合う兵士に、止血する暇は与えない。

そして、治癒系の召還獣をアルディラは持っていなかった。

 

「アルディラさま、いま行―――っくう!?」

「クノン!?」

 

 矢が、クノンの腕を掠める。

ここで、地形が上に立つ帝国軍にとって、下を攻める彼女達はどうしても不利になった。

他の仲間達も上空から降り注ぐ弓兵の攻撃に苦戦し、足が止まっている。

いけない、これでは狙い撃ちになる。

 

「みんな、壁側に沿って弓の死角へ!」

 

 『 碧の賢帝 ( シャルトス ) 』でシールドを張り、魔力を乗せて放つ斬撃が飛来する矢を次々に消してゆく。

それに伴い、斬撃の余韻は矢を消すだけに収まらずに帝国軍の足場をも砕き、弓兵達の体勢を崩す。

しかし……いくら抜剣状態のアティと言えど、アルディラの援護に回るだけの余地はなかった。

 

「―――くっ…うぅ…?」

 

 違和感が、襲う。

 握り寄る兵士からジリジリと距離を開け、三歩程後退した時のコトだ。

 

―――体に、力が入らない……。

 

 見れば、視界に納まるクノンも壁に項垂れるようにして動けないでいた。

 

「フフフ、効いてきたようだな、痺れ薬の効果が……」

 

 前に立つ兵士が口元を歪め、ゆっくりと闊歩する。

 そう……予め帝国軍の武器――特にビジュと親しい者――には、痺れ薬が塗りつけられてあったのだ。

 片膝に地面を着け、視線を上げて兵士を睨む。

 

「卑怯な……」

「卑怯? 戦いの中でそのような言葉が通じるとでも思っているのか?」

 

 兵士は眼前に立ち、剣をアルディラの首筋に添える。

 視界の端で、這いずりながらもアルディラに向おうとするクノンが―――上から飛び降りて来たビジュに、妨害された。

 

「ククク―――そらよォ!」

「あうっ!?」

 

だが、妨害するビジュはアルディラの死を見せつけるためか、足でクノンを踏みつけるだけで手を出さない。

 懸命に手を伸ばすクノンの手を、つまらなそうに蹴り付けた。

 

「アルディラ、さま……!」

「ヒヒヒ……無駄なんだよ、無駄ァ!!」

 

 ザシュ、と腕の関節の部分に剣が突き刺せられる。

 苦痛で顔を歪めながらも、クノンの視線は依然アルディラのまま。

 そんな二人を眺めるビジュが、口元を歪め愉快そうに嘲笑う。

 

「ク、ノン……」

 

 血か薬か、視界が霞み、四肢の感覚が薄れてゆく。

 アティが前方のアリーゼと後方のアルディラに葛藤し、足が止まった。

 後方支援型だったアルディラとクノンとでは距離が広がっている。両方は無理だ。

一瞬の迷い。だが瞬時に場面を見極めてアルディラの元へと駆けつける。

他の仲間達も対峙する兵士を退け、こちらに駆けつけようとしていた。

しかし……間に合わない。

 

(あの子は……またあんな無茶をして……)

 

 自身が傷つきながらも真っ直ぐにこちらに駆けつけるアティ。 

重なる最愛の人を思い出し、胸がズキンと苦しくなった。

 そう言えばと、アルディラはふと治療中の少年が脳裏に浮かぶ。

 昔の私を思い出す、あの寂しげな瞳……。

 できることなら、癒して救ってあげたかった。アティが私たちにしてくれたように……。

 

(ここまで、ね……ごめんなさい、クノン……)

 

 掲げられた剣に力が篭り、アルディラは静かに目を閉じる。

 遠くで聞こえる喧騒が、無音になって消えてゆく。

 確実に命を刈り斬る死神の刃が、勢いよく振り降ろされ―――

 

 

ザシュ――――!

 

 

 血しぶきを上げて、倒れていった。

 

―――眼前の、兵士が。

 

「……え?」

 

 ドサッ、と血を流し崩れ落ちる兵士の後ろに、一人の少年が立っていた。

 その身を鮮血で染め、白い羽織が朱へと変る。

 だがその姿が―――アルディラの目を、焼き付けた。

 

「―――大丈夫か?」

 

 無骨な青い剣を握り、もう片方の手を差し伸べる。

 反射的にその手を掴むと、どこかホッとする温かさを感じた。

それは過去に感じた、あの人のように―――

 

 

 

 

†   †   †

 

 

 

 

「どうして、ここに……」

 

 呆然とした眼差しで此方を見つめ返すアルディラを見て、悠人は苦笑しながら頬を掻く。

 よかった。どうやら最悪の事態は免れたようだと安堵し、一つ息を吐いた。

 

「ちょっと、な。それよりもアルディラ、血が……」

 

 悠人がそう言い、傷の手当を促す。

 その言葉にアルディラは自身の傷に目をやり、あっ、と忘れていたかのように言葉を漏らすと、すぐに止血を行い始めた。

 素早い動作で傷を塞いでゆく。どうやら手伝いはいらないようだ。

 

「………」

 

 手に残る、嫌な感触。

 目前に倒れる兵士を見て、殺めた後もそのまま死体が残る現実が思い知らされる。

 スピリットとは違い、形が残る分、罪の意識はやはり重い。

 本当の意味で人を殺したのは……今回が初めてだった。

 だが今は、それよりも―――

 

「貴様ッ……クノンから離れろッ!!」

「あぁん? んだテメェは……?」

 

突き刺した剣を無造作に引き抜き、うッ、とクノンが呻き声をあげる。

不快な表情を見せるものの、その俯瞰した眼差しが妙に勘に触った。

思い出すは一人の男。サーギオスのソーマ・ル・ソーマだ。

あいつもこうやって人を見下しては、愉悦に満ちた表情を浮かべていた。

 

歯軋り、一つ。

悠人は『求め』を構えると、再度ビジュへと忠告する。

 

「離れろと、言ってるんだよッ……!!」

「ククク……知るか―――よォ!」

 

ドッ――――!

 

「うあぅッ…!!」

「ヒヒヒ! 機械人形風情がいい声で啼くじゃねぇーかァ!」

「ッッ!! 貴様ァァ――――ッ!!!!」

 

 駆ける。 

蹴りつけ、クノンに向けて剣を振り翳そうとするビジュに向かい、悠人が肉薄する。 

距離は三間。

 瞬時に場を詰め、上段に構える『求め』をビジュへと向けて振り翳す。

 しかし一方で、その想定異常の瞬発力に驚きを示すものの……ビジュの口元には笑みが備わっていた。

 

「バカがッ!!」

 

 真正面から疾走してくる悠人に対し、ビジュが腕を振り被る。

同時、振り抜かれた先に見えるのは投擲された銀のナイフ。

放たれた二つのナイフが悠人の眼前に迫り―――ビジュは勝利の笑みを浮かべた。

が――― 

 

「―――ハァッ!!」

 

 その投擲を悠人は右足を軸にして反転し、半回転の勢いをそのままにして『求め』を横薙ぎに振った。

 途端、『求め』の刀身に収束されていたオーラフォトンが射出され、風圧と共にして投擲されたナイフが弾き飛ばされてゆく。

 

「なッ!? チィィ…!!」

 

戟音!!

咄嗟に最後の一矢として手に持つ剣を振舞うが、それを上段からの一撃が刀身ごと叩き折る。

技後膠着。動きの止めるビジュの懐に向けて、返し刃の一閃が下段から上空へと振り上げられる!

 

ザシュ―――!

 

「ギ、ぎゃ…!?」

 

血飛沫が舞う。

だが、手応えは浅い。咄嗟に後方に跳んで衝撃を弱らせたようだ。

しかし、軽症とはいえ眼前を掠める『求め』の軌跡に硬直し、恐怖という名の金縛りに陥った。

無論、その隙を見逃すほど悠人は甘くない。

瞬時に離れた場を踏み込み、掲げられた『求め』を両手で掴み取って、天へと翳す。

そして、最後の“フレンジー”の振り下ろしの動作を行な―――

 

 

「―――悪いが、 ( ) らせるワケにはいかんのでな」

 

 

 殺気。

 背後から響く声に対し、悠人は反射的に『求め』を盾にして横方へと跳んだ。

 同時―――紡がれる、刺突の連撃音。 

 

 

ガ、ガガガガガガガガガキィ――――ッ!!! 

 

 

「―――っつぅ!?」

 

 迫りくる連撃に対し、『求め』で防ぎ、捌き、往なす。

だが……全てを躱すことは、不可能だった。

咄嗟に張った簡易式の障壁は数撃で看破し、甲高い音を立てて砕け散ってゆく。

視力では捕捉しきれないほどの刺突を繰り出され、無数の剣尖がこの身を擦過し―――左肩に、風穴が開いた。

 

「あ…っぅう゛……!」

 

 激痛。

打突の構えを取ろうと踵を踏ん張るが、あえなく片膝が着き、眼前の敵へと目を向ける。

それは、軍服を纏った自分とそう年端も変わらぬ女性―――この隊の隊長、アズリアだ。

 

「ほぅ…咄嗟に急所は外したか? なるほど、ビジュに一太刀浴びせただけのコトはあるな……」

 

 カツン、と踵を鳴らし前に出、悠人の前に立ち止まる。

 強い。

先程の連撃、刺突に対して遜色ない速度と重さを誇っていた。

いかな研鑽を積めばあれほどの連撃を放てるというのか……風を穿つ死の音を、悠人の耳は訊いた。

 

「貴様が何者なのかは気になる処だが……それよりも貴様、“それ”はどういうことだ?」

 

 他兵とは一際違った強さを示すアズリア。

その彼女が剣で肩を指し、訝しげな表情を向けて悠人へと尋ねる。

 そこは――― 

 

「「「「 ―――っ!? 」」」」

 

周囲で息を呑む声が聞こえた。動揺の気配が広まる。

向けられたソコは、先ほどの刺突で重症を負った左肩。

 そして、出血するに伴い散ってゆく……マナの霞ゆく残滓の光。

 

「貴様、その身……人ではないな?」

 

 その言葉が周囲の者達を驚愕に染め、愕然とした意思が向けられる。

 交わる視線。しかし悠人にとって自身のコトを話すつもりはないし、信じてもらえもしないだろう。

 内心で打開案を練るものの、この距離では『求め』を振り被るまでに肩に当てられた剣が自分の命を三度は狩るだろうか……。

 

「……だったら、なんだよ。言っとくけど、説明する気はないからな?」

 

 騒めく声。

 周囲にとって見れば、どうみても悠人は人にしか見えないだろう。

 有り方としては逸脱している部分を感じとれる者もいるだろうが……明らかにその身は異質だった。

その異端な人物に対し、アズリアは眉を潜める。

 

「ふん、この状態で良くそんな口が開けるものだな。生憎、現時点での貴様は私に対する質問に答えてな―――っ!?」

 

爆音!!

放つ言葉を遮るのは、一際高い大砲の砲撃音。

 二人のすぐ横、五メートルも離れていないその位置に着弾した爆風が容赦なく体を吹き飛ばした。

 

「―――ぁ、が、はァ……ッ」

 

 外壁に体を打ちつけ、咳き込み、爆風の影響で視界が霞む。

突然の出来事で事態が把握できないが、『求め』の探査が一つの場所を示していた。

 そこは丁度この真上。断崖に隠れた一つの大砲。

そして、この気配は―――

 

「ビジュゥウウウウ―――ッ!!! 貴様、どういうつもりだ!?」

「ヒヒヒ、なぁに副隊長さんよ。あそこの化物を倒すだけでっさぁ」

 

頭を抱え半身を起こすと、アズリアが被さるようにして倒れて込んでいた。

 どうやら同じくして爆風に巻き込まれたようだが、その影響で頭でも打ったのか、気を失っている。

顔を上げて断崖を見てみると、ビジュはなんの躊躇いも無く次の装弾を詰め込もうとしていた。

 

「止めろ貴様!! あそこには隊長がいるんだぞッ!?」

「―――次弾装填完了。ヒヒヒヒ…隊長殿には尊い犠牲になって、化物退治の糧となっていただきましょうや」

「なぁ!? ふざけるな貴様ァァ!!! さっさとそこから離れ―――」

 

 目が、合った。

 ビジュは笑みを浮かべ、口元を歪ませている。

 愉快そうに俯瞰した眼差で真っ直ぐに悠人を見つめる一方で、先程の屈辱の怒りが垣間見えた。

最早、反論する副官の言葉は耳に届いていない。

そして、ここに倒れる仲間を気遣う心意気なども―――ない。

 

「ヒヒヒ……あばよォ!!」

 

なんの躊躇もなく、発火腺に火を点ける。

悠人は咄嗟に倒れ込むアズリアを胸に庇い、『求め』を逆手に持ち替えて眼前へと翳した。

無意識の内に『求め』を揮い―――力を引き出す

 

「マナよ、我が求めに応じよ。オーラとなりて、守りの力となれ―――」

 

紡がれる詠唱。

浮かび上がるは銀色の魔方陣。

神秘めいたその光景に、助けに駆け込もうとしていたアティの足が自然と止まる。

唱える魔法は神剣魔法。この世界に存在しない強大な力の一片。

そして―――

 

 

「―――《レジスト》!!!」

 

 

 唱えられると同時に砲弾が着弾し、轟音と共に爆風が舞った。

 

 

 

 

†    †    †

 

 

 

 

 決着は付いた。

 この戦いとなる指揮官のギャレオはカイルに敗戦し、既に戦闘は終了していた。

 クノンはアルディラの治療に当たり、自身もまたアルディラに治療を施して貰っている。

 助け出したアリーゼはアティの後方で匿われ、守護獣であるキユピーを抱いて戦線を離脱していた。

そして、この戦いの最後となる場では―――

 

「―――嘘…」

 

 爆風が晴れた時、敵味方構わず驚愕に目を剥けた。

 呟くソノラの声に反応できる者は、いない。

 あの現状で生き残れる者がいるとすれば、『碧の賢帝』も持つアティぐらいな者だろうか。

 それを、あの少年は果たし―――尚且つ無傷で、やってのけたのだ。

 

「う、あ……わたし…は……?」

 

 目を覚ますアズリアが初めに見たものは、精悍な眼差しで前を見据える黒髪の少年。

 やがて、緩慢とした意思が次第に回復し……先程から感じていた温もりが少年のモノであることに、彼女は気付いた。

途端―――頬を赤く染め、勢い良く体を起こす。

 

「ん? ああ、気が付いたのか?」

「な、ななななな! 貴様、何のつもりで―――」

 

 詰まる言葉を掻き消すかのように、暴風染みた風切り音が場を交叉し―――上空で爆砕音が響き立つ。

 見上げるとそこは爆炎の舞う屈曲した大砲と、尻餅を付きながら腰を抜かし怯えるビジュの姿。

 そして、皆の視線は自然と一人の女性へと集まった。

 

「……アティ」

 

 呟くアズリアの視線の先は、先程の攻撃を放った白髪碧眼の女性。

 巨大な魔力でその身を纏い、我らが輸送中の剣を使い抜剣者となった嘗ての親友。

 互いに視線を交える中で、アズリアが一歩を踏み込もうとして……傍らの少年が呻き声を上げた。

 

「っ! ど、どうした!?」

「…ぁ、がぁぁ…!」

 

 突如頭を抱えるようにして蹲る悠人に対し、アズリアは敵であることも忘れてその身を案じる。

 それを見たアティも悠人の元へと駆けつけようとして―――向けられた視線が殺気であることに、気付いた。

 

「お、おい…?」

 

 ゆっくりと、悠人は立ち上がり……徐に、打突の構えを取る。

 片手正眼。使い物にならない左手は項垂れ、獰猛な眼力の放たれる先は―――《抜剣覚醒》状態のアティ。

理解できない。皆が唖然とするなかで、キィイイ、となにか甲高い音が周囲に反響ゆく。

アズリアの下から覗き見える悠人の表情は苦悶に満ち、四肢を振るわせながらにして辛そうに佇んでいる。

まるで、“何か”に反発するかのように耐える悠人の心境に―――その手に持つ、群青色に輝く『求め』を見て、思いを馳せる。

 

―――まさか!?

 

気付く。ある一つの可能性に。

推測する。これからするであろう悠人の行動に。

そして―――

 

「待―――!」

「―――ぁぁあああああ゛あ゛っっ!!!」

「―――っ!?」

 

 アズリアの静止を振り切って―――悠人はアティへと殺到した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

<後書き>

 

やっと主人公登場。それに伴い、次回主人公×主人公の対戦ー。

次回も前半、バトルが続きます。暴走した悠人の行方は如何に・・・!

うぅむ、しかしそろそろ第一章も終わりかな? 一応、全6〜8章ぐらいまでを予定してますんで(ツヅケバネ

後、どうもダーク系は不評だったので、以後は気を付けて対処していきたいと思います。

それではまた、次の後書きで会いましょう。

 

 

 

 

 

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