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今日子が死んだとき、余りの出来事に言葉がでなかった。

光陰が死んだと知らされたとき、悲しみを通り越して絶望と共に目の前が闇に覆われた。

そして、改めて思い知らされる…。

俺はやっぱり“疫病神”なんだ…、と。

 


 

永遠のアセリアinサモンナイトV

−導かれし来訪者−

序章 開かれた門の下で

 


 

首都マロリガンを攻略し終えた悠人たちラキオススピリット隊は現在、ニーハスのラキオス駐屯所にて休息を取っていた。

本来ならばあの戦いの後にマロリガンのエーテルジャンプ施設を使いラキオスに帰国する予定だったのだが……マロリガンの“マナ消失”をくい溜めたのは本当にギリギリで、集められた周囲のマナが未だに安定していないためか、司令部は万が一の暴走を考えスピリット隊をスレギトに建築中のエーテルジャンプ施設を使い帰国することを命じた。

戦いで疲れているにも関わらず、このような目にあっている理由は二つ。

一つ、悠人たちはニーハス経由で進行してきたため、近場のミエーユ、ガルガリオンなどはいまだに鎮圧が終わっていないため交渉が取れていない。

司令部からも、何かと事情を聞かされはしたが……結局の所、首都が落ちたとはいえいまだに降伏せぬ者もいる。スピリットは全て首都に回されたので、人間が、だろう。

そんな中に敵国の、それもスピリットが入って来ることを向こうはよしとしない。ラキオスは使者を送り、できるだけ穏便に事を済ませようとしていた。

二つ、他にエーテルジャンプ施設を作るためには、マナ、人材、時間など手間がかかり、その上扱える者はマナで構成さている悠人とスピリット隊だけ。

建築部、開発部、司令部は自分達が扱えないことを妬み、悠人たちを誤魔化してマロリガンに設置しているエーテルジャンプ施設の使用許可を認めなかったのだ。

 

・・・

・・

 

この世界での季節感は常に春か秋。特別暑くもなければ寒くもならない。

だがここ……マロリガン地方でのダスカトロン大砂漠では話は別だった…。

ラキオススピリット隊にとって初めて体験する温暖化地帯。常に気温は真夏日異常に温度が高く、吹く風や周囲の気温はまるでサウナにでも入っているかのような状況。

青スピや緑スピは特にダメージを受け、皆も初めての砂漠に戸惑い足場も悪く補給路も途絶えた状況ではどうしても行動力が鈍った。

まれに水分を取り、日射病にかからないよう体制を整え、昼はテントを張って日陰で休み、夜太陽が降りた頃に行動を開始する。そんな状態が続いた。

行きはおろか、まさか帰りまでこのような目に合うとは誰も思っていなかっただろう。余りの理不尽さに誰もが嫌気がさし、普通体勢が崩れるかと思われるが……。

しかし今―――ラキオススピリット隊にとってそんなことよりも、もっと重要な難関に出くわしていた。

 

「……ユート様……」

 

そう、ラキオス王国スピリット隊隊長『求め』のユートだ。

親友二人を自分の手で殺めてしまった悠人に、もはや覇気は全くと言っていいほど感じられず、これまでの道中でも指示をだす以外に殆ど喋ることはなかった。

スピリット隊の皆も、なにかと励まそうと試みてはいるが言葉が見つからず、無理に慰めようにも悠人自身がそれを強く拒んでいる。

年少組みのネリー、シアー、オルファの三人組ですらそんな悠人にかける言葉がなく近づこうとしない。頼みの綱のアセリアは神剣に心を呑まれたまま。

そして現在。ニーハスに辿り着いたスピリット隊は各自、駐屯所にて休憩をとっている……中で一人、夜中にも関わらず外に出歩く者がいた。

 

「………」

 

―――高嶺悠人。

目はどこか虚ろで、周りの様子など全く目に入っていない。

フラフラと夢遊病者のように歩く悠人は、ニーハスを出て、ソスラス方面ソーン・リーム中立自治区へと進んでゆく。

それに気づいた者は、

 

――― リィィィン・・・ ―――

 

ボンヤリと窓から外を眺める、ハイロゥが黒く染まった『存在』のアセリアだけだった……。

 

・・・ 

・・

・   

 

悠人がニーハスを出て歩くこと、数時間ほど時が経ったとき、

 

――― キイィィィィィィンッ!!! ―――

 

突然、腰の『求め』から激しく警告音が鳴り響いた。

 

「―――!!?」

 

それによって朦朧としていた悠人の意識が急速に加速していく。

気がつけばそこは、すでにソスラス地方が見える位置にまで来ていたようだった。

 

「あ、れ? ここは…何処だ…?」

 

意識が次第に戻り始め、ゆっくりと周囲を見渡す。

 

するとそこに―――

 

「あら? ……何かと思えば、いつぞやの坊やではありませんこと…?」

「ふっ、『求め』のユートよ。あれからどれほどの腕を上げたのかはしらぬが……このような地に、一人で赴くとはな……」

 

以前、アセリアとハイペリアの時に対面した、法皇テムオリンと黒く刃のタキオスが姿を現した。

 

「なっ!? お、お前らは―――ッッ!!?」

 

慌てて『求め』を構えようとするが、それも遅い。

構えるより先に、テムオリンの杖形の神剣・第二位『秩序』の柄が悠人の胸を貫いていた。

 

「がっ! はぁぁっ……!!」

「遅い、ですわ。……しかし、このような地に一人で赴くからには何かあるのかとでも思ったのですが……」

 

ズッ・・・

 

テムオリンは悠人の胸に刺さった『秩序』を抜き、

 

「……とんだ無駄足だったようですわね」

 

ドサッ・・・

 

悠人が倒れた……。

戦局は一瞬。貫かれた胸からはドクドクと血が溢れ、マナに還り『秩序』へと呑まれていく。

その様子をテムオリンは、見た目とは裏腹にとても冷めた目で見つめていた…。

 

「よろしかったのですか、テムオリン様? 『因果』『空虚』亡き今、残るは『誓い』とソ奴だけのはずでは?」

「別に構いませんこと。いざとなればこの『求め』を『誓い』に渡せばすむことですし、他にも手は打ってあります。『世界』の計画にはなんの支障にもなりませんわ」

 

悠人の意識が薄れる中で、二人の声がかすかに聞こえる。

言っている意味を理解しようにも、ズキズキと痛む胸に思考回路が苦痛以外に何も考えられない。

『求め』の加護のお蔭でいまだに生きながらえてはいるが……このまま放っておけば確実に、死に至るだろう。

 

「まぁ、少し惜しい気もしますが…生憎私も暇ではありませんの。タキオス、とどめをさしなさい」

「……ハッ」

 

テムオリンの容赦ない一言で、タキオスは第三位・『無我』を悠人の頭上で掲げ、振り下ろそうと構える。

だが悠人はいまだに激痛で動けず、その光景を苦痛に歪ませた表情で見ていることしかできなかった。

 

【契約者よ、このままでは汝の命は絶え、我はエターナルの手によって『誓い』に砕かれてしまう。どうにかしてこの場を凌ぐのだ】

(無茶…言うんじゃねぇ…よ、バカ剣。なんと、か…しろ!)

 

『求め』からも焦りが窺える、だが今の瀕死の悠人には指一つ動かす力さえも残っていない。

 

「ユートよ。会い見えたときがこのような醜態を晒した姿とは……もはやこれ以上語ることもあるまい。最後の情けだ。『無我』の力によって消えろ!!」

 

タキオスの言葉に鼓動するが如く『無我』が唸り、マナが集まっていく。

そのままでも振り下ろせば楽に殺せるものを、骨一つ残らぬほどに消滅させるつもりのようだ。

 

【……已むを得ぬ。契約者よ、どうやらこちらに<門>を開こうとしている者がいるようだ】

(な、に…?)

【先ほどからずっとだ。故に契約者はこの場に導かれたにすぎん。

我も気になっていたので何も告げずに周囲を調べてはいたのだが……まさか、このようなコトになるとは思いもよらなかった…】

 

そして、周囲に莫大なマナが『無我』に集い、黒のオーラフォトンが辺りを一層闇に照らす。

 

【契約者よ。どうやら『誓い』を砕く前に……】

 

タキオスは頭上に掲げた『無我』の柄を強く握り、悠人を見下ろし、やがて剣を振り下ろそうと力を加え―――

 

【……新たに一つ、やることができたようだ】

 

突如、辺りは光に包まれ……黒のオーラフォトンが蒼い閃光によって、掻き消された―――。

 

 

 

 


 

後書き

序章終了です。

何気に極端なような気もしますが気にしないでください。長々書いても結果は変わりませんので。(笑)

さて、次からはいよいよリィンバウム編ですが……上手く書けるかなぁ……。

この作品に出したいスピリットも何人かいるのですが、出せばその分話がややこしくなりますからね……難しいです。

今の段階では緑スピを一名出してみようかな? とか思っていますが、出すかどうかは本当に“始めに”と同じで不明です。

優柔不断ですいません。だってそのキャラは扱いが難しいんですよ? 中々アイデアが浮かばないんですって!

あと、悠人のいなくなったファンタズマゴリアの様子も少しは書いていく予定です。

ではまた、次の後書きで会いましょう。

 

 

 

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