人1人も、犬1匹もいない街。
ダーツィ大公国領、ケムセラウト。
「……避難命令でも出てるのかな」
ラキオス軍が来るまでの暇潰しに、と話を振ってみる。
「うん、そうかも知れないね」
「……」
ダメだ、続かない。
こういう時、向こうの世界じゃどうやって暇潰ししたっけ――
「――なあ、みんな。暇潰しにしりとりでもしないか?」
「「「「「…………?」」」」」
5人揃って首を傾げる。
あれ?
こっちに、しりとりは……ないのか?
「えっと、しりとりってのは向こうの世界での遊びでな……」
「なるほど、そういうルールでしたか」
「楽しそうだね」
「そうですね、面白いかも……」
「……うん」
どうやらみんな乗り気らしい。
「よし、じゃあ早速……」
「いや、ちょっと待て」
早速始めようとしたオレに、今まで黙ってたアリエスが待ったをかける。
「なんで止めるのさ、アリエス」
「隊長殿、あたしたちの会話は聖ヨト語だぞ?訳して表記したとき、ちゃんと『しりとり』
になる保証はないだろ」
……あ。
と言うか、オレ自身が聖ヨト語が分からない以上、そもそもオレは出来ないじゃん。
あくまで『氷点』が日本語に通訳してくれてる状態なわけだし。
「ねえユーシルちゃん、表記って何のこと?」
「フラリア、気にしたら負けよ」
メタな話だからな。
「……うん。それに……そんなことしてる時間はなさそう」
「エクスキューレさん、どういうことですか?」
珍しくまともに喋ってるな。
時間が無い?それってつまり……
「スピリット3、赤、青、黒。ラキオス軍」
やっぱり来たのか。予想よりも速かったな。
「戦闘よーいっ!皆さん、頑張りましょう!」
この間とは違うスピリット3人。
おかっぱ頭、目つきの悪い赤スピリット。
微妙に足も声も震えてる、ツインテールの黒スピリット。
どこかユーシルに似てクールそうな、ポニーテールの青スピリット。
2人はともかくとして、青いのはかなり『やる気』っぽい。
「オレたちは神聖サーギオス帝国所属、スピリット翔撃隊だ。そっちはラキオス軍だよな?
できれば今すぐにでも退いてくれ」
無意味と知りつつ撤退要請。
「サーギオスの翔撃隊……『氷点』のエトランジェですか。ユート様も知らない、『閃鞘・
八点鐘』とかいう妙な技を使いこなすと聞きましたが」
違うぞ、それ。
まあ、技名の由来は多分そこだけど。
「……その通り。永遠神剣第五位『氷点』の契約者、カケル・ニイザキだ」
※補足
そろそろここを読まなくなっている人もいるかと思いますが。
作者、月泉鴇音です。
聖ヨト語が分からないのは翔君が悪いわけではありません。
私が分からないからです(開き直るな)。
ところで、しりとりは日本だけのものだと思うのですがどうなんでしょう?
でも、英語のクロスワードもあるらしいですし。
誰か知っている人がいらっしゃいましたら教えて頂けると幸いです。
では、第14話でまたお会いしましょう。