「く……っ、いきなり手の中にナイフっ!?その指輪が神剣ねっ!?」
あれ、なんかあっさりバレた。
指輪型の神剣なんてそうそう無いだろうから、バレないと思ったんだけど。
(――契約者よ、急げ)
あ、『氷点』か?久しぶりだな。
(こちらが黙っていただけのことだ。それより……早く決着を付けろ)
どういうことだ?
こっそりと周囲を見ると、状況は一変していた。
エクスキューレは緑スピリットの防御の前に攻めあぐね。
フィアナは青スピリットに追い詰められて防戦一方。
ふむ、この戦況から言って――
「早く来ないと、不利になるのはそっちよ」
冷静に言い放つ赤スピリット。
ちっ。
ダッシュで詰め寄ったオレに対して、赤スピリットは目の奥に僅かに哀れみを見せて――
「――まさか、本当に突っ込んでくるなんてね」
まずい。
咄嗟に重心を後ろに掛け、腰を落とす。
直後、刃と熱風が頭上を掠める感覚。
そのまま、スライディングするようにもう一本の刃もくぐりつつ……半歩前に進んだ。
立ち上がった時には、もう彼女の目の前!
「――閃鞘――」
間合いはバッチリ届く範囲内、相手は攻撃直後で隙だらけ!
見様見真似の偽者(コピー)技の威力、思い知れ。
本当は先端ヒットさせたほうが強いんだけど。
「――閃鞘・八点衝……っ!」
腕を鞭のようにしならせて、一息で18の斬撃を放つ必殺技。肺活量の限界に挑戦。
「……斬刑に、処す」
とか言ってみたりして。
「あっ!しまった……!」
双剣はラッシュをかけて固めるならともかく、受けに回ると不利な武器。
八点衝を防ぎ切るのは難しい。
否。
防ぐだけならまだ、不可能ではない……しかしその後には当然、体勢が崩れる。
「隙あり、だ」
彼女の襟を掴み、地面に叩きつけてその背中に座る。
首筋にナイフを突きつけると、諦めたのか力を抜いた。
「……殺すなら、さっさと殺したらどう?」
強気な発言とは裏腹に、瞳の奥がほんの少し揺らぐ。
「悪いな、きみに死んでもらっちゃ困るんだ」
「は?」
わけが分からない、と言いたげなその表情。
「オレは部下殺されたくないし、きみだって死にたくはないだろう?命は取らないからさ、
この場は退いてくれないか?」
「何を……言っているの?」
理解しろよっ!?
ああもう、しょうがないなあ。
「戦闘中止だ!フィアナ、エクスキューレはオレの背後に。……ラキオスのお二人、仲間の
命が惜しかったら退いてくれ!」
……突然戦闘を中断してのこの言葉に戸惑ったのか、二人は動こうとしない。
どいつもこいつも。
「何だよ。退かずに戦うっていうなら、オレの方はきみたちの命が続く限り相手になるぜ?
仲間の命も惜しくない、ましてや自分から殺してくれって望むような低能を相手に、仏心を
出すほどオレは優しくない。もしそうだって言うんなら、マナの塵に還るのはきみたちだ。
……殺してバラして並べて揃えて晒してやるよ」
おお、退いてく退いてく。
やっぱりこの台詞、効くんだなあ。
「じゃ、また会うことがあったらよろしくな。ラキオス軍の面々にも、よろしく言っといて
くれ」
※補足
こんにちは、月泉鴇音です。
当然ですがこのSSで使われているパロディネタの著作権は版権元様にあります。
そのあたり大丈夫でしょうか、本当に。
さて、戦闘シーンでしたが。
翔は神剣による肉体強化効果を受けてはいます。ただし、一度にできるのは敏捷特化か
筋力特化のどちらかにしかできません。
元来魔法型の『氷点』は両方の強化なんていう器用な真似は出来ないんです。
ちなみに今回は敏捷特化でした。
もっとも、敏捷に特化したところで今日子やファーレーンには勝てませんし、だからと
言ってパワー特化にしても悠人やアセリアに勝てないのですが。
すごく中途半端な能力値。