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 落第者達(フランクゲッターズ)。
 そう呼ばれた5人が、オレの前に並ぶ。
 天乃原学院を想像したオレは、きっと負け組なんだろうと思う。

 中央に立った、三つ編みがやたらと長い青スピリットの一言。
「……では、まずは自己紹介と行きましょう。フラリア、貴女から」
「あ、うん」
 オレから見て左端、斬馬刀のような剣を背負った黒スピリットが頷く。
「わたしは永遠神剣第九位『哀歓』の主。フラリア・ブラックスピリットだよ。よろしく」
 ふむふむ、斬馬刀少女がフラリアね……って、おい。
「まさか、きみ……その剣で居合い斬り?」
「うん。正しくは抜刀斬りだけど、そうだよ?」
 うわあ……どんな腕力してんだよ。
「じゃ、次はあたしだな」
 さっきオレに声をかけてきた赤スピリット。右手に持っているのは、細身の槍の刃を柄の
両端につけたような武器。双剣よりも軽くて振り易そう。
「名前はアリエス・レッドスピリット。永遠神剣は第八位、『勇壮』だ」
 勇壮。
 なんだか、雄々しい物腰にぴったり来る神剣名だな。
「……なんか失礼なこと考えちゃいないか?」
「あ、いや、別にそんなことは」
 むう、なかなか勘が鋭い。要注意。
「次はわたくしですね。名はユーシル・ブルースピリット。永遠神剣第七位、『気情』の主
です。一応この部隊のまとめ役ですので、不明な点がありましたらご質問をどうぞ。何か、
ありますか?」
「え、あ、いや……」
 そんな急にまくし立てられても。
 そして折角そんな青い綺麗な目なのに睨まれても。
「そうですか。特に何も無いようですね。ではわたくしの番は終わりです。フィアナ、次は
貴女ですよ」
 きみ(ユーシル)、ひょっとしてツンデレキャラ?……そりゃないか。
「え、えっと……フィアナ、フィアナ・グリーンスピリットです。私の神剣名は、その……
第九位、『臆病』です」
 神剣を不安そうに抱き締めるその姿は、可愛いといって言えなくも無い。
 妙にどこと無く小動物チックと言いますか。ポニーテールだし。
 少なくとも、普通なら保護欲はそそられる。
 だけどさあ……。
 その持ってる神剣の形状がやたらとごつい槍斧(ハルバード)とくれば、これは苦笑。
 まあフィアナ、強く生きていってくれ。
 さて――
 最後の一人に、視線を移す。
「ボクはエクスキューレ・ブラックスピリット。第六位『交錯』」
 終わりかよ。
 しかし、本人が「言うべきことは言った」とばかりに口を閉ざしてるし、終わりだろう。
 ……うむ、無口なボクっ娘っつーのも珍しいなあ。
 それはともかく、際物揃いなメンバーだ。
 無論、このオレ自身を含めて。
「オレはカケル・ニイザキ。第五位神剣、『氷点』の契約者だ。今後ともよろしく頼む」
 ――そうだな、一応言っとくか。
「これは向こうの世界でのことだからあまり参考にはならないけど、今までオレは一対一で
負けたことは無い」

 そう言った次の瞬間。
 すらり、と涼しげな音がした。
 ――ユーシルがオレにその剣先を突きつけ、言い放つ。

「――――自己紹介もひとまず終わったことですし、そこまで仰るのなら……ひとつ、私と
お手合わせ願います」





 ※補足
  お付き合い頂きありがとうございます。月泉鴇音です。
  1人ずつ登場させるのも乙なものですが、私の技量上の問題でまとめての登場と相成り
 ました。
  日常編って書くの難しいんです。とっても。
  さて、本編の補足ですが。
  斬馬刀ってほんとに重いです。やたらと長い金属の塊ですからね、要するに。
  それを抜刀斬り、つまり片手で振りぬくっていうのは間違いなく非常識ですから。
  良い子は絶対まねしないで下さい。
  あくまで神剣の加護があってはじめて可能な芸当ですから。
  ちなみに、斬馬刀の長さともなると普通の黒スピリットみたいなことはできないので、
 必然的に背負った状態から抜くことになります。
  また、居合い斬りと抜刀斬りの違いですが、おそらく片膝をついた状態で放った斬撃を
 居合い斬りと言うのだと思います。
  もし正確な区別を知っている方がいらっしゃいましたら、ご面倒でもご一報くださると
 嬉しいです。(連絡先は注意書き参照)
  
  そうそう、()ですが。『氷点』の台詞のときは全角カッコ、ルビ代わりに使用する時
 は半角のカッコを使っております。

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