それは・・多分偶然だったのだろう

 

あの娘に連れられ、共に人気の無い路地を歩く

 

近道だとはしゃぐあの娘に手を引かれて・・・・

 

突然、目の前に現れた傷だらけの男

 

驚く俺たちの周囲に舞い降りる数人の影

 

目の前で始まる殺し合い

 

ただ、呆然としている事しかできなかった

 

巻き込まれ蹂躙されていく日常に、ソレを失うまで何もできなかった・・・・

 

何も・・・・出来なかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

追憶が刻む協騒曲   第三話「月下の出会い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・う、・・・・・・く」

 

 

頬をくすぐる風の流れで意識が覚醒する

 

うつぶせに地面に投げ出されているようだ

 

緑の匂いが強い、空気も妙に澄んでいる

 

どうやら草原にいるようだ・・・

 

 

 

 

何かがおかしい

 

うまく頭が回らない、妙なだるさが思考を阻害する

 

草原?

 

 

「・・・つ、・・・なにが、 ・・・・・・!!」

 

 

動き出した頭がさっきの状況を思い出させる

 

勢いよく身を起こす

 

 

「――――?--!!」

 

 

 

ゴンッ

 

 

 

かなりいい音ともに目の前に星が散った

 

もう一度突っ伏す羽目になる

 

 

 

「「っつ~~~」」

 

 

痛む頭を抑え前を確認する、と

 

鮮やかな青い髪を持った少女が額を抑えて苦しんでいた

 

突如として顔をあげ何事かを喋る同い年位の少女

 

外見はかなり良い、・・・外人?

 

ひどく騒がしいが

 

 

「―――――――!!――――――――!!!」

 

「何? なんて言ってるんだ?」

 

 

勢いよくまくし立ててくる

 

何を言っているか全くわからない

 

英語でもない、それなりに外国を放浪していたにも関らず該当する言語が無い、が

 

 

「――――――!!――――――!!」

 

 

抗議しているのはよくわかった

 

涙目でこちらを睨みつけ腕を振り上げる

 

 

「―――――――、――――――!っつ!」

 

 

突然、顔をしかめる少女、よく見ると右足がかなり腫れている

 

折れているようだ、青黒く腫れあがっている

 

 

「痛むのか?・・見せてみろ」

 

 

一応責任が無くは無い

 

 

(はぁ、俺もお人好しになったもんだ)

 

 

内心で嘆息する

 

近づこうと身を起こす・・              

 

 

 

 

次の瞬間、背後に火柱が咲いた

 

続いて二発

 

 

 

 

 

草原が赤く染まり

 

一瞬で灰になっていく

 

ありえない光景に一瞬思考が止まる

 

 

 

 

 

 

「・・・な、なにが「――――――!!!」

 

 

 

 

火柱に照らされた世界で

 

凶刃を携えた赤い髪の女が迫る

 

迅い

 

少なくとも常人の動きじゃない

 

振り上げた刃が俺達に向かって振り上げられる

 

多分、かわせない速度ではない・・・が

 

 

「っ!!」

 

 

突然、驚くほどの力で少女に突き飛ばされた

 

突き飛ばした少女はそのまま

 

右ひざを地に着けた態勢で振るわれる刃を己の剣で受け止めた

 

 

 

 

剣戟の音が響き渡り

 

少女の顔が苦痛に染まる

 

俺は・・助けられたのだろうか・・

 

右足が使えない状態ではやはり部が悪いのか反撃も出来ず圧されていく

 

俺は・・・・

 

 

何故だろう、見捨てて逃げるという選択肢は無かった

 

 

とうとう圧し負かされ、態勢を崩し倒れる少女

 

そこに目掛けて振るわれる刃・・・

 

 

「ちっ・・くそっ!!」

 

 

咄嗟に間に割って入った

 

命の危険とかそんな物は考えなかった

 

ただ・・・

 

痛みを、覚悟した

 

 

               

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

固い手応えが凶刃を阻む

 

痛みは俺を襲いはしなかった

 

 

「ん?・・・・これは」

 

 

ゆっくりと目を開き状況を確認する

 

左手にはつやの無い黒塗りの鞘が握られている

 

その鞘が赤い女の刃を止めていた

 

見覚えないその刀は妙に手に馴染む

 

まるで・・随分昔からそこに有ったように・・・

 

 

『いったーーーーーーーい!!』「っつ」

 

 

頭に響きわたった声に驚き力が弱まる      

 

ギシィ

 

その隙を逃さず相手が刃を押し込んでくる

 

即座に押し返し

 

 

「っく、何なんだ次から次へと!!」

 

 

わけのわからない事態の連続に声を張り上げる

 

 

「―っつ!?『ご、ごめんなさいっ!!』

 

 

相手が何かに驚き間合いを取る、油断無くこちらを確認し

 

そして俺にむかい

 

 

「――――――?――――――――。」

 

 

何を言っているか全くわからない・・・・ 

 

 

『あ、あのー』

 

 

が、友好的では無いようだ

 

油断無くこちらを睨んでいる    

 

 

『もしもーし、お~い、聞いてくださーい』

 

「うるさい、今忙しいんだ」   

 

『でもー、投降しろ。って言ってますよ?』

 

「わかるのか?」    

 

『はい、男なのか? 抵抗するな、神剣を捨てて投降しろ。訳すとこんな感じです~』

 

 

内容に頬が引き攣る。・・・どいつも、こいつも・・

 

 

「糞喰らえ、と伝えてくれ」  

 

『え? あのー、わたし』

 

「どうした? 早く」

 

 

すでに体は臨戦体勢に入っている 

 

  

『でもー、その~』

 

 

相手は何やら頭を抑えて俯いていた

 

覚悟しやがれ

 

 

『伝えられないんです~。「・・・・・・・はぁ?」ですからぁ、貴方にしか聞こえてません』

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・、・・・・・・・使えねぇ」  

 

『ひ、ひどい!!』

 

 

思わず脱力する、と

 

異常に気がついた

 

左手、声がするほうには誰もいない

 

 

「・・・・所であんたは誰だ。何処から喋ってる?」

 

『あ、【無為】といいます。永遠神剣 第五位【無為】。それであなたの左手にいます』

 

 

永遠真剣? 聞いた事もない単語と

 

わけの解らない解答にイラつきが余計に増す

 

 

「・・・・・・・面白い冗談だ、取りあえずふざけてないで出て来い」

 

『ふえ? あのでも~「―――――!―――――!!」

 

 

背後からの焦った声に視線を上げる 

 

 

『あ、危ない!!』

 

 

再び、赤い女が迫る

 

今度は、さっきよりも迅い!!

 

 

「っつ、くっ」 

 

 

間一髪の所で刃を受け止める

 

どうやらしびれを切らしたようだ

 

先程と違い意思の無い無機質な眼を向けてくる

 

それはまるで人形のような・・

 

相手が再び振りかぶる

 

 

「全く辛抱の無い。・・・・・何っ!?」

 

 

 

 

重い・・

 

今度は踏み止まる事も出来ずに体が崩れる

 

 

「しまっ」    

 

「っく」 

 

 

続けざまに刃が振り下ろされる

 

さっきとは比べ物にならない重さにじわじわ押されていく

 

 

「――――――!!」

 

『お困りですか~?』

 

 

悲鳴と共にいまいち緊迫感に欠ける声が響いてくる

 

目の前の刀に目を向け、声に出さず

 

 

(・・・くっ、どう見えるかね?)

 

『でしたら。契約しましょう』

 

(っ!!・・・なに?)

 

 

回答があった事に驚く

 

声は続く

 

 

『契約しましょう、神名蒼夜。私は永遠神剣第五位【無為】、過ぎる時を見届けるモノ』

 

 

刃がじわじわと近づいてくる

 

死を告げるモノが俺の命を絶とうと

 

 

『あなたに力を与えましょう。己の【無為】を打破する力を』

 

 

膝が折れる

 

刃が勢いを増しなお、振るわれる

 

声は俺の心に囁いてくる

 

 

『それともここで【無為】に散りますか?』

 

 

腕がしびれ力が入らなくなる

 

 

『貴方の意思を示してください。私はそれに応えます』

 

 

俺は

 

俺は・・・・まだ・・・・・

 

 

「・・・・・・・・いいだろう。・・何でもいい力を寄こせ【無為】!!

 

『契約はここに交わされました。御武運をマスター』

 

 

 

 

 

存在強化(リミテッド・ブレイク)、視界の裏にそんな言葉が走る

 

次の瞬間

 

無音の衝撃が体に響き渡った

 

 

「っつ!!」

 

 

闇を切り裂き、銀色のオーラフォトンが吹き上がる

 

赤い妖精が驚き間合いを離した

 

 

『《存在強化(リミテッド・ブレイク)Lv2完了。《知識補完(アイデンティティー)》設定完了。どうですか? マスター』

 

 

世界が変化していく、己の内と同じように

 

未だ草原に燻る炎は鮮やかに

 

闇はなお暗く、しかしどこまでも見通せる

 

自分の知らない知識が頭に流れ込んでくる

 

己の意志そのままに内側から違うモノへと書き換えられていく

 

 

「く、これ・・・は・・・・」

 

 

神剣という存在、妖精、この世界の事

 

マナの使い方、相手の神剣の反応、息使いから挙動のすべて

 

そして

 

 

「ぐっ・・」

 

 

焼け付くような感覚と共に己のうちに満ちていく熱・・

 

圧倒的な自分の力

 

左手の【無為】の刀身を僅かに抜く

 

蒼銀のオーラを帯びる夜闇が如き漆黒の刃がそこにあった

 

 

「・・っ・・・なるほど。これが・・「神剣の力」というものか」


『はい♪ 不束者ですがよろしくお願いします♪』

 

「・・・善処しよう。まずはあれを倒す」

 

 

軽く熱に浮かされた頭を切り替える

 

どうすべきかがわかる・・わかってしまう

 

目の前のあの妖精の殺し方が・・

 

そこには一片の躊躇いさえ無かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一度、刃を鞘に収める

 

青い妖精に振り向く

 

 

「おい、巻き込まれたくなければ離れていろ」

 

「え? きみは・・・」

 

 

さっきまで全くわからなかった言葉がすらすらと口から出る

 

相手もさすがに驚いているようだ

 

 

『マスター。来ます』

「あ! 後ろ!!」

 

 

慌てる事無く視線をむける

 

赤い妖精の渾身の一撃が迫っている

 

だが遅い

 

 

「守の型、柔式 螺旋」

 

 

鞘で受け円運動でいなす

 

勢いを殺しきれず妖精が自分の力で吹き飛んでいく

 

それは元の世界で合気と呼ばれる技

 

 

再び距離が開く

 

 

先程とは全く違う俺の動きに警戒したのか

 

間合いを離し、油断なく俺の隙を伺っている

 

 

「来ないのか? なら、・・・こちらから行くぞ」

 

 

重心を一度下げる

 

膝を軽くたわめる・・・

 

 

「っマナよ、我が声に応じよ。その姿を火球に変え・・」

 

 

赤い妖精がマナを集め始めた

 

空気が言霊に応え温度を上げていく

 

その姿を確認し

 

一瞬だけ僅かに身を沈め・・・

 

・・・・飛ぶ

 

 

瞬身

 

 

「・・敵を「・・悪いが、させない」なっ!!」

 

 

一瞬で間合いを詰めた俺に驚き詠唱が止まる

 

あまり無防備な相手

 

その意思の無い眼に恐怖が映る

 

 

「閃の型、初式 無明」    

 

 

 

黒い刃が二筋閃いた

 

無慈悲に振るわれるソレは容易に命を奪い去る

 

 

「あ、ああ・・・」

 

 

赤い妖精が地に伏す

 

妖精は跡さえ残さず金の霧となって消えていった

 

 

「悪いな、訳の分からないまま終われないんだ」

 

 

虚空に言葉を放つ

 

罪悪感は無かった、達成感も、喜びも・・・

 

呼吸するように相手の死を認めた

 

いつか繰り返していたように・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ~、終わったか」  『ご苦労様ですー、マスター』

 

 

久しぶりの実戦にかなりの疲れを感じる

 

夜気で体を冷やす

 

 

『驚きました。私の補助が有るとは言えまさかあんなに戦えるなんて、それに判断に躊躇いがない』

 

(・・・向こうでジジィに無駄に鍛えられてな、それに・・多分人を殺すのは初めてじゃない)

 

 

少し顔を顰める

 

そう、初めて・・ではない

 

 

『・・・そうなんですか?』

 

(・・・ああ、昔の記憶を失っていてな。だが、俺の体は生き物の殺し方をよく心得てるようだ)

 

『・・・・記憶が・・・無い?』

 

(ああ、五年位かな。それ以前の記憶が俺には無い。まぁ、今更どうでもいいがな)

 

 

口元に苦笑が浮いた

 

・・・何を話してるんだかな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっと、そうだった。おい、アンタ」

 

 

戦いに夢中になっていたせいか

 

すっかりあの青い髪の女のことを忘れていた

 

そちらに振り向こうと

 

 

 ヒュッ

 

 

「動かないで」       『マスター!!』

 

 

首元に刃が当てられていた

 

 

(っ、しまった・・)

 

 

視線だけで相手を確認する

 

刀を握っていたのは

 

青い妖精を庇う様に立つ美しい黒髪の妖精だった

 

不覚にも月光を浴びるその姿に眼を奪われた

 

 

「動かないで。・・・ルティア、離れて」

 

「え?・・・・うん」

 

 

視界の外であの娘が動く

 

それを見届けると

 

刃を突きつけての尋問が始まった

 

 

「あなた、どこのスピリット?」

 

 

美人二人を前に何とも色気の無い状況ですこと

 

眉を立てた黒髪の美人には逃げ出す隙も無い

 

 

(・・・・女難かね?・・次から次へと)

 

 

自失を抜け、内心で毒づく

 

黙り込む俺に相手が

 

 

「ゆっくりこっちを向きなさい。神剣を「おーーいキファ姉、おーーいってば」

 

「何? 今、忙しいの後にして」

 

「でも~・・・・その人。ボクの・・」

 

 

さっきの青い妖精と話し込んでいる

 

今なら・・

 

 

『何に見とれてたんですか?』

 

(うるさい。ところで【無為】離脱するぞ)

 

『あー、その事なんですけどー』

 

 

何故だろうか嫌な予感がする、ひじょーに

 

 

(・・・・・なんだ?)『解りやすく言うと・・・・・ガス欠です』

 

 

《強制終了》の四文字が脳裏に無慈悲に表示された

 

 

ガクッと力が抜ける

 

【無為】が急に重くなった

 

 

「・・・・ょっと」

 

(くっ、っのポンコツ!!もっと早く言え!!)

 

『ぽ、ポンコツって。ひ、ひどい!!』

 

「・・・ちょっと、しっかりしなさい。

 

 

はっ、と前を向く

 

息が掛かる距離に黒の妖精の顔があった

 

 

(っつ、近い)       『むぅーー』

 

 

あまりの近さに狼狽する

 

刀は・・・納められている

 

どうやら敵だとは思われていない?・・ようだ

 

 

「ルティアを助けてくれた事は感謝するわ。あなたはどこのスピリット?」

 

 

そんな事を聞いてくる、スピリット?

 

 

「ラキオス?サルドバルト?「あ~、キファ姉、・・・その人」何?まだあるの」

 

 

訳の判らない単語の連続に混乱する俺の前で顔を横に振る黒の妖精

 

言いずらそうに視線を彷徨わせる青い妖精

 

 

「キファ姉、その人・・・・・・・・“”だよ」

 

「・・・・・・・・・へ?「・・・それ以外に何だと?」

 

 

相手の驚いた顔に頬が引き攣る

 

本当にどいつもこいつも

 

目の前の黒い妖精が固まっている

 

大丈夫か?

 

 

「・・・・・・・きk」

 

 

異音に首を傾げた

 

 

「きk?」「キャアーーーーーーー!!」   殴

 

 

容赦のない一撃が側頭部を打ち抜く

 

突然の事に反応さえ出来なかった

 

視界が暗転する

 

 

お、男、おとこ嫌ーーー!!

 

『マスター!! 無事ですか!?』

 

わーーー!!回復、チェルを、チェルを呼んでこないと!!

 

 

意識はここで途絶えた・・

 

なんとも騒がしい夜はここで終わりを告げた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

永遠神剣

 

第五位【無為】

 

停滞を司る神剣、形状は漆黒の刀身を持つシンプルな日本刀、稲妻を使った神剣魔法が使用できる。身体制御を得意とし《存在強化》で身体能力、感覚、反射速度を細かく制御できる。人格は女性のもので調子に乗りやすく鬱に入りやすい一面があるが基本的には単純で扱い易い。

 

スキル

 

柔式 螺旋(らせん) 

無天式の防御技能。攻撃を受け、円運動に巻き込み受け流す。使い勝手がよく行動回数が多いが連撃の対応には向かない

 

 

存在強化(リミテッド・ブレイク)

【無為】による能力強化。《肉体強化(エンハンスド)》、《神経加速(アクセレート)》、《感覚拡大(リンカー)》の三つにわかれており。Lv1が平常でLv4まで強化できるがLvが上がるにつれて負担が増加し、Lvの合計が8になった時点で神剣魔法が並列使用出来なくなる。10を越えた時点で反動が体を蝕む