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第3話  逃避行





俺は敵に追いつかれることなく、二人と合流できた。

すぐに早百合にノアのことを聞かれ、俺は事の顛末を話すしかなかった。

「…そうですか。彼女とは長い付き合いでした……」

バジルはつぶやきうつむくが、すぐ顔を上げ言った。

「参りましょう。追っ手はすぐ来ます」

「おい…」

そんなバジルを、俺は納得できなかった。

「何でしょう?」

「なんでそんなに切り替えがはやいんだ?親友だったんだろ!?悲しくないのかよ!?」

「親友でした。悲しくないわけありません。しかし、場合が場合です!
 ここで立ち止まっていたら敵に追いつかれます!」

言っていることは正しい。俺達は追われているんだ。

「だからって…!」

「拓真さん、分かってください!ここで捕まってしまったら、彼女は本当に意味が無くなってしまうんですよ!?
 それに、一番悲しいのはバジルさんなんですから!」

早百合が泣きそうな顔で叫んだ。

「………バジル、すまない…」

「いいえ、お気になさらず。…では、急ぎますよ!」





俺は神剣の力を解放し、走る。

早百合はバジルに抱えられ、飛ぶ。ウイング・ハイロゥって言ったが、便利だな…

鬱蒼と茂る木々の中をかなりの速度で駆けるため、何度ぶつかりそうになったことか…

「ひぃぃぃ〜〜〜!!??」

「きゃぁぁああぁぁ!?!?」

「あたるぅぅうぅ〜〜!?!?!」

…頭上から悲鳴が聞こえるが、どうしようもないため無視する。

いや、励ましたけど…。






時間にして十分ほど走ったか… 追っ手は来ない。

そういえば、早百合が静かになったな。慣れたのか?

見上げてみると、早百合はぐったりしていた。

………気絶していたのね(汗






「ここはユースラウム領内ですが、もうすぐで国境になります。アガパンサス領内まで行けば…!」

「ここ、敵領内だったのか?結構無茶するなぁ…」

「それは、ユースラウムとフドレアーにはすでに強力なエトランジェがいるからです。どちらの国も好戦的で、
 危険な国です。そんな国にこれ以上戦力を増やさせるわけにはいかなかったのです」

「エトランジェが…? どんな方ですか? 私達みたいな人ですか?」

いつの間にか早百合も聞いていたようだ。早百合のことだ、皆が心配で仕方ないのだろう。

もしかしたら、あいつらの誰かかもしれないし……

しかし、危険な国にいるのか。大丈夫なんだろうか…?

期待と不安が生まれる。


「詳しくは分かりません。噂では、フドレアーのエトランジェは極悪非道で数人のスピリットを一瞬で
 切り殺した力を持っていると言われています。また、ユースラウムのエトランジェは…」

「逃がしはしないさ。新しきエトランジェ…」

突然、聞きなれない声がバジルの言葉を遮った。

「なに!?」

「しまった!?先回りされた!」

神剣の気配に気付かなかった!

「うかつだね。その強力な神剣の力を探知して先回りさせてもらったよ」

俺の…この剣せいなのか!?

「…あと少しなのに…!」

「確かにその神剣の力は強大。だが、今の力は八位程度!この『弁天』の敵ではない」

《ぬぅ、たかが七位の神剣の主ごときが勝ち誇るとは… 屈辱!》


「増援ももうじき到着する。あきらめな『アガパンサスの黒き風』。
 あの『蒼き風』が消えた今、一人ではどうしようもあるまい。さっさとマナになりな」

「く………」




(どうする、このままじゃ本当にまずい…)

「(タクマさま)」

バジルが小声で話しかけてきた。

「(ここは私が隙を作ります。あなたはサユリさまを連れて国境を越えてください)」

「(まったく…却下)」

「(え?)」

「(どうしてかな〜。お前ら、簡単に命を捨てすぎだって)」

「(しかし…)」

「(同じ命を懸けるなら、皆で一斉に強行突破だ)」

「(…………わかりました)」

「(まずは………)」





「別れは済んだか。さあエトランジェどもよ、おとなしく拘束されるがいい」

「断る!」

「何?」

「俺達が今行ったらバジルを殺すんだろう?そんなの見過ごせるか!」

さっと周りを見回す。

……リーダーの黒スピリット、左に赤と緑のスピリットが一人ずつ、右に青スピリット二人…か。

「ふん………おとなしく投降するのならそれでいいと思ったが、やはりマナに還し、
 我らがエトランジェ様に献上することにしよう!」

「やらせるか!『覚醒』!!」

《承知した》

「うおおぉぉぉ!!『剛毅』!!!」

気合と共に飛び出し、正面の黒スピリットに切りかかる!

「太刀が遅い!」

キィン!!

上段から振り下ろされた刀は簡単に受け止められてしまった。

だが、狙いは別だ!

「今だ!走れ、早百合!!」

「ええ!」


早百合が背を向け、走り出す。

「なに!?逃がすんじゃないよ!」

黒スピリットはこちらの意図に気付き、周りのスピリットに指示を出す。

「行かせません!『居合いの太刀』!!」

キキキキィン!

「くっ!!?」

バジルの高速の太刀が4人のスピリットを牽制する。

「馬鹿どもがっ!」

「てめえは動くんじゃねぇ!!」

力で相手を押し切る。

「しまっ!?」

うかつに俺の刀を受け止めてしまったため、捌ききれずに飛ばされる。


さらに、バジルの神剣魔法が完成する。

「黒き縛鎖よ、彼の者どもに一時の拘束を!『テラー』!!!」

敵スピリット5人の影から伸びた無数の黒い腕が動きを封じ、

「もういっちょいくぜ!『アースブレイク』!!」

自分の足元の地面を破裂させて粉塵を巻き上げ、視界を遮る。


《何とかの一つ覚え、とはよく言ったものだ》

(ぐっ、うるさい!!)


「逃げるぞ!」

身を翻し、急いで早百合の後を追いかける。






「やられた!くそぉぉ!!!」

5人のスピリットたちが『テラー』の効果から脱した頃には、すでに土煙は収まり見通しが良くなってきていた。

「追いかけますか!?」

「当たり前だ!さっさと行け!」

「…もう追いつけない、あきらめな」

遥か後方から聞こえてきた声に、皆、萎縮する。

「!! あ、あなたは!?」

声の主は、ユースラウムで国王・教皇に次いで権力のある者。

「ふふふ、やぁっと見付けた… 拓真…」

「こ、これは…その、も、申し訳ありません!」

常に前線に立ち、勝利に導いて来た者。

「ふ、ふふ… 任務失敗。【浄化】してあげる」

「何卒、御容赦を!!」

そして、なにより


ドンッ!!!


「あ、あぁぁぁあぁ…」


ドンドンドンドンッッッ!!!


恐怖の存在。


「あは、あははははははっっ!!!」

血の様な紅い夕日を背に少女は、笑った。

金色のマナをあたりに漂わせながら。









「ここまで来れば安全です。お疲れ様です、タクマさま、サユリさま」

国境を越え、少しして町に入り、ようやく足を止めた。

「助かった〜」

「助かりました〜」

緊張と疲労でへたり込む。

「今日はそこの宿に泊まり、明日、城に入ります」

「「は〜〜〜い」」

「私は宿を取ってきます。お二人はここで休んでいてください」

「「はい〜〜〜」」

妙にハモった返事を聞きながら、バジルは宿をとりに行った。

日は既に沈んで、空には満月が輝いていた。







つづく










人物紹介B


『覚醒』のタクマ(更新)

ステータス
   レベル.9 マインド.100 シンクロ.15

スキル
   『剛毅T』
   防御を考えず、渾身の力を込めて敵を切り裂く技。早い話が、力任せの大振り攻撃。
   もちろん、行動回数は1回。(まぁ、今の拓真君に攻撃・防御云々は難しいと思いますが…)





バジル・ブラックスピリット
   永遠神剣第八位『鍛錬』の主。ノアと共にスピードを追求した戦法を取っていたため、
   『アガパンサスの黒き風』と呼ばれた。性格はお人よしの真面目。なぜかミーハー。伝説にあこがれる。
   得意技は、行動妨害用の『テラー』と高速の『居合いの太刀』

 ステータス
   レベル.38 マインド.75 シンクロ.70

 スキル
   ・『居合いの太刀W』
    黒スピリットの基本アタックスキル。基本ゆえに隙が無く、様々な場面に使える。やはり威力は低い。
    行動回数は4回。

   ・『トリーズンブロックV』
    黒スピリットの上級ディフェンススキル。与えられたダメージを与えたものへと返す。

   ・『テラーW』
    対象の影から無数の腕を出現させ、行動・攻撃・防御・詠唱の妨害をする。







あとがき


今回の感想「まだ城に着かねー!!」


………はい、その通りな第3話です。城までの道のり長すぎですね〜。っていうか敵国の領内だったんだ!?
自分で書いていながら驚きです。



それにしてもまだまだ設定が働いていません。その中、ちょっと出たもののひとつが時間です。

分かりにくいと思いますが、エトランジェの召喚された時間に差があるのです。

バジルは「ユースラウムとフドレアーにはすでに強力な…」とか、ユースラウムのスピリットは「新しい…」とか
言ってます。ちなみに、1人ずつです。

がんばって伏線いれてみたのですがどうでしょうか?

…………え?わかりにくい? 

…………すみません。次からもっと工夫します。


次回こそ城にたどり着いて、世界を視野に入れていただこうかと思っています。

これは城に着くまでの物語じゃないです。

せっかく創った世界観をもっと書いていきたく思ってます。



それでは、今回も読んでいただき、ありがとうございました。

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