─聖ヨト歴330年 エクの月  緑 ひとつ日 昼
 リーザリオ付近の森


バーンライトの戸の戦争が本格的に始まった。
攪乱部隊の尊、ヘリオン、ネリー、シアーの4人はリーザリオに向けて進軍している。
3人がウイングハイロゥを展開して飛んでいるスピードにミコとは走ってついていっている。
スピリットの3人は緊張しているのか口も開かずに飛んでいる。
あのネリーの顔も険しかった。

ミコ「皆さん、大丈夫ですか?」

尊はあえていつもの調子で言ったのだが
ヘリ「…はい」
となんとも頼りない返事が返ってきた。

ミコ(あらら。このまま行って大丈夫ですかねぇ?)

そんな悠長に考えていた尊だっだが、そう言うわけにもいかないことを悟る。
4人は進行を止めた。
リーザリオのスピリットの異変に気がついたのだ。
正確にはその数の異常さに。
10…20……優に30は超えている。

ネリ「ミコト様ぁ……」

ネリーの声には恐れが混じっていた。

ミコ「4人でこの数に当たるのは危険ですね。一旦戻ってユートさんたちと合流しましょう」

4人はすぐにその場を離れた。




















─同日 昼
 リーザリオの塔


リーザリオのはずれ、戦争がはじまるほんの一週間ほど前にできたばかりの塔の中で机についている男がいる
彼こそリーザリオスピリット隊の訓練士にして隊長である。
部屋の中に一人のスピリットが入ってきて彼になにやら耳打ちをした。
男の顔に笑みが浮かぶ。

隊長「へぇ〜。ホントにあいつ・・・が言ったように来たか。よし、作戦通りにやれ。へまるんじゃねぇぞ」

スピリットは礼をして出て行く。

隊長「情報が筒抜けの敵ほど恐くないものもねぇなぁ。俺のために踊ってもらうぜ」




















―同日 昼
 リーザリオ付近の森


尊達は主力部隊と合流し、再びリーザリオ付近まで進軍してきた。
人数が増えた事もあり、先程よりゆっくりになってしまっていた。
やっとの事で気配をはっきりと感じられるところまで来た。

ユー「だけど何でまたこんなに数を集めるんだ?ここで全面衝突でもする気か?」
エス「わかりませんが、その可能性もあるかもしれません。 わざわざ戦争を長引かせる事もありませんし」
オル「じゃあ敵さんいっぱいいるんだね♪たっくさん倒しちゃうんだから♪」
エス「オルファ、少し静かにしなさい」

陽気なオルファをエスペリアが叱る。
オルファは頬を膨らませてふてくされた。
そんなオルファを見ていた悠人だったがその隣にいるヘリオンの様子がおかしいことに気づく。

ユー「どうしたんだ?ヘリオン」
ヘリ「いえ、ちょっと……。勘違いかもしれないんですけど……」
ミコ「いえ、勘違いなんかじゃありませんよ。8…いや、9人減っています」

そう、リーザリオの神剣の気配が減っているのだ。

エス「本当ですか?!」
ミコ「えぇ………急がないと」
ユー「どういうことだ?」

未だ状況が飲み込めない悠人が聞く。

ミコ「わかりませんか?ラキオスのほとんどの戦力が今ここに集中しています。これが敵の思惑によるものだとしたらその9人はラキオスに向かっているはずです。 今ラキオスを攻撃されたら…………」

その先は言われなくてもわかった。
悠人の頭に、襲撃を受けるラキオスが浮かぶ。
もちろん心配なのは妹の事である。

ユー「カオリ!!」

悠人は走り出した。
が、数歩も行かないうちに悠人が見ていたのは空だった。
ドスン
直後、軽い衝撃が来る。
尊に足をかけられて投げられたと気づくには数秒かかった。

ミコ「ユートさん、落ち着いてください」
ユー「落ち着いてなんていられるか!カオリが……カオリが危ないかもしれないだろ!!」
ミコ「だからといって1人では何もできません」

確かにスピリット9人相手に勝てるとは思えない。
そんなことはわかっている。
だが、これは理屈ではない。

ユー「だからって何もしないわけにいくか!」
ミコ「だから落ち着いてくださいといっているじゃないですか。 1人では・・・・、ですよ」

その言葉に自分が冷静になっていくのがわかる。

ミコ「大丈夫ですか?」
ユー「あぁ、悪い。じゃあどうすればいい?」
ミコ「少し時間を下さい」
そう言って尊は感覚にすべてを集中させる。

ミコ(頼みますよ、幻想)
幻想『オッケー、まっかせて〜♪』

感覚の網を地域一帯に張り巡らせる。
数秒で目的のものがかかった。

ミコ「!いました。やはりラキオスに向かっています。 速度は遅いです。気配を消しているからでしょう。 十分今からでも間に合います。ユートさんと僕とアセリアさん、ヒミカさんで行きましょう。 他の皆さんはここで待機していてください」
エス「わかりました」
ユー「よし、いくぞ」

4人が離れていくのを残されたスピリットは見送った。
忍び寄る影にも気づかずに…………………




















―同日 昼
 ラキオス付近の森


ユー「ふぅ、これで全部か?」

悠人たちは9人のスピリットを退けた。
敵があまり強くなかった事もあり、時間がかからないですんだ。 しかし、何か違和感が残った。

ユー(……何だ?この感じ。
何かを見落としているような…………)

しかし、しばらく考えたが何も浮かんでこない。

エス「ユート様。どうしました?」
ユー「あぁいや、なんでもない。皆のところに戻ろ…!」

悠人の言葉は途中で途切れた。
スピリットの気配が近づいていたからだ。
神剣を握りなおす。
ザ……ザ……
一歩一歩近づいてくるのがわかる。
その遅さも不気味である。
神剣をを握る手にも力が入った。
スピリットの1人が木の陰から姿をあらわした。
その正体は…………

ユー「ヘリ…オン?」

そう、謎のスピリットの正体はあの場に残してきたはずのスピリットたちだった。
しかし、味方だとわかった悠人の顔が安堵の表情に変わることは無い。
なぜなら、現れた6人は誰一人として無傷ではなかったからだ。
エスペリア、ハリオン、オルファにいたっては意識も無い重症だった。
ここに来て初めて悠人は違和感の正体を知った。
先程のスピリットがあまりにもあっさりひきすぎていた事。
まるで本当の目的がラキオスではないかのように。
つまりそう言うことだ。
尊がすぐに神剣魔法で回復する。
6人の傷はみるみるうちにふさがっていく。
意識が無かった3人も今は規則正しい寝息を立てている。

ユー「どうしたんだ?何があった?」

6人の傷が治った事もありいくばかりか落ち着いて悠人は聞いた。

ヘリ「ユート様たちがこちらに向かった後、リーザリオから来たスピリットに襲われました。 エスペリアさんとハリオンさんは身をていして私たちを守ってくださって……」
ネリ「オルファは逃げてる途中でやられちゃったんだよ……。」
ユー「…………」
ユー(傷が治ったって言っても皆精神的にも肉体的にまいってるな。 これ以上はきつい)
ユー「今日はラキオスへ戻ろう。エスペリアは俺が運ぶ」
ミコ「では、僕はハリオンさんを。ヒミカさん、オルファさんをお願いします」
ヒミ「はい」

戦争初日、ラキオスは惨敗を喫した。




















―同日 夕方
 レスティーナの部屋


ラキオスについた一行は王への報告を終え、それぞれの詰所に戻った。
ちなみに、エスペリア、ハリオンはラキオスにつくころには目がさめていた。
オルファは結局目が覚めなく悠人が詰所までおぶっていった。
その寝顔はとても幸せそうだったが……。

目が覚めたばかりのエスペリアは今レスティーナの部屋を訪問していた。

レス「どうしたのですか?エスペリア」
エス「はい、今日の結果は先程報告した通りなのですが、その……気になる事がありまして…」
レス「気になること?」
エス「はい。今日のバーンライトの動きは私たちの動きが事前にわかっていたような動きでした。 内通者がいるのかもしれません。そして……ミコト様がどうやら夜にラキオスから外出されているようです。 更にミコト様は今日、ラキオス軍の中で唯一平静を保っていた方といっても過言ではありません。」
レス「…………ミコトが内通している……と?」

部屋の空気が重くなる。

エス「可能生は高いかと……」



疑問は渦まく。