ラキオス国王は尊を疎ましく思いつつその力が手に入ったことは大いに喜んでいるらしい
尊がリーザリオを1人で陥落させた事も彼の野心に火をつけようだ
ラキオスは龍退治からわずか一週間足らずでバーンライトに宣戦布告した
















─聖ヨト歴330年 エクの月  赤 いつつ日 昼
 第一詰所


バーンライトとの開戦が明日に迫った今日、尊とヒミカは作戦を立てるために第一詰所に来ている。
第一詰所から参加しているのは悠人とエスペリアだ。

ユー「それにしても、やっぱりなんか違和感あるよな」
ミコ「そうですか?僕は気に入っているんですけど」

そう言ってミコとは自分の服を見る。
今尊が着ているのはつい先日受け取ったばかりの悠人と同じ戦闘服である。
ただ、唯一悠人とは違う点は服の色がすべて黒だという事。
背は低め、性格はおっとり系、顔は中性的な美少年でどちらかといえばかわいいと表現されがちな尊と この戦闘服の色の重い雰囲気は限りなくミスマッチである。
本人は気に入っているようだが・・・・。

ミコ「まぁ、服の事はまた別の機会に。本題に入りましょう」

その一言で場の雰囲気も真剣なものに変わる。

エス「では私から簡単に現状の報告をさせていただきます。
まずバーンライトとラキオスの戦力とマナ保有量ですが、ユート様とミコト様が加わった事、 守り龍様のマナが開放された事、ミコト様が一度リーザリオのスピリット隊を壊滅させている事、 以上を考慮するとどちらも圧倒的にラキオスが勝っていると考えられます。
しかしスピリットの数という点では負けていますし何より相手にはサーギオスという後ろ盾があります。 油断はできません」
ミコ「確かに人数が少ないのは痛いですね」
ヒミ「はい。あまり部隊を分ける事ができませんし、部隊が少ないとできることも少ないですからね」
ユー「だけどやるしかないんだ。エスペリア、続けてくれ」
エス「では進軍経路を確認します。
首都サモドアにはリーザリオ、リドモアを経由していかなくてはなりません。
もう一つ山道があるにはあるのですがこちらは使えません」
ユー「なんで使えないんだ?」
エス「バーンライトによって封鎖されているからです」
ミコ「…………」
ミコ(バーンライト・・・・・・に封鎖されている……か )

ユー「ん?どうした、ミコト」

難しい顔をした尊の様子が気になった悠人が話し掛けてきた。

ミコ「いえ、なんでもないですよ。エスペリアさん続けてください」
エス「はい。ですからその道しかありません。
連戦になってしまいますが 戦力差から考えれば大丈夫だと思います」
ユー「進軍経路はそれで決まりか。じゃあ部隊編成はどうしたらいい?」
ミコ「主力部隊と攪乱部隊に分けたら良いんじゃないでしょうか?」
エス「そうですね、それがいいと思います。
真正面から行っても大丈夫だとは思いますが囲まれたり罠にかかれば苦戦は必至ですし」
ユー「だけど、ただでさえ少ない人数を分けて大丈夫か?」
ヒミ「そうですが、戦争という以上リスクはつきまとうものです。
この編成は無理をしなければリスクは少ない作戦だと思います」
ユー「……じゃあそれでいこう。
やっぱり攪乱部隊はブルースピリットとブラックスピリットで組むべきだよな」

つまりアセリア、ネリー、シアー、ヘリオンということである。

エス「そうですね。ですがそれでは戦闘経験が少ない者ばかりになってしまいます。
それに唯一戦闘経験豊富なアセリアも 防御に関しては疎いですし何よりリーダー格になって隊をまとめられるものがいません」
ヒミ「エスペリア、それならミコト様が適任じゃない?実力は皆が知ってのとおりだし、判断力もスピードもラキオス随一だと思うんだけど。」
エス「ミコト様は適任だと私も思うのですけれど、ミコト様の攻撃力は主力部隊に必要です」
ミコ「なら僕とアセリアさんを交代すればいいんじゃないですか?
ユートさんとヒミカさんにアセリアさんが 加われば主力部隊の攻撃力は十分だと思いますよ」
ユー「ミコト、いいのか?」
ミコ「はい。無理をしないようにしますから危険も最小限に押さえられますし」
ユー「じゃあそっちはミコトに任せる。頼む」
ミコ「わかりました。では今日はこんなところでよろしいですか?」
エス「そうですね。後は相手の出方をうかがわなければなりませんし」
ミコ「では僕たちは第二詰所に戻りますね。
エスペリアさん、お茶ありがとうございました。今度僕にも作り方教えて下さい」

尊は笑顔でそう言った。

エス「はい。いつでもいらしてください」

エスペリアもにっこりと答えた










―同日 昼
 第二詰所


ミコ「――――――――ということになりました」

尊は第二詰所のスピリットを集め作戦の内容を説明した。
どのスピリットも・・・・・・・・・いや、約一名のお姉さんを除いたスピリットたちがまとった空気は緊張からかどこか重い。

ミコ(こんな時でもお姉さんは健在ですねぇ)

とそんなことを考えている尊だが、そんなことを考えている時点で自分も十分緩い事には気づいていない。
この2人なら戦場の真っ只中で昼寝をする事も不可能ではないかもしれない。

ヘリ「あの・・・・・ミコト様は緊張とかしないんですか?」

顔もどこかしまりの無い尊を見てヘリオンが不思議そうに聞いてきた。

ミコ「う〜んそうですねぇ。でもほら緊張していると自分の実力を発揮できないじゃないですか。 それにヘリオンさんたちは僕が絶対守りますから心配しないで下さい」
ネリ「やったね、シアー。ミコト様が守ってくれるって」
シア「うん〜」
ヘリ「・・・・」(何も言わず顔を赤らめる)

三人は三者三様の喜び方をしている。
そして・・・・・・

ハリ「本当にミコト様は偉いですね〜」

ハリオンはお姉さん全開だ。
しかも今回は皆が見ている前でということもあって恥ずかしさは数倍である。
真っ赤なりんごに熟しきりました。
もう食べごろですよ〜♪

ネリ(ずるーい)
シア(・・・・)
ヘリ(いいなぁ)
ヒミ「こ、こら、ハリオン。ミコト様が困ってらっしゃるじゃない(か・・・可愛い)」

女性に囲まれて振り回されることは幸せなのかはたまた不幸なのかは尊にしかわからない。
そして女性に可愛いと形容されてしまう事も。
しかし今日も第二詰所は平和である。




















  ―同日 夜
 リーザリオ付近の森


明日は、もう戦争だというのに尊はラキオスから出かけている。

幻想『まったく、ミコトはもてるよね〜♪』
ミコ「そ、そんなこと無いです!」
幻想『その手の話の反応はまだ初々しいよね〜』
ミコ「・・・・・・」
幻想『あらら、黙っちゃった』
ミコ「幻想?」
幻想『ん?な〜に?』

幻想はよっぽど浮かれているらしくミコトの声がいつもと違うことのまったく気づいていない。

ミコ「真っ二つに折られるのと焼却処分されるの、どちらがお好みですか?」
幻想『・・・・・・・・・・ごめんなさい』
ミコ「冗談ですよ♪」




ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ




明らかに嘘だった。

ミコ「はぁ。まったく敵国に来てるんですから、もうちょっと真面目になってくださいよ」

ぴたりとさっきまでの擬音がやんだ。
尊のそういった感情の切り替えは人一倍速い。
ある意味天才的である。

幻想「は〜い」

尊はそのまま森の奥へ消えていった。













いまバーンライトのスピリット隊隊長は森に来ている。
ある人物と前からこうして密かに連絡を取っていたのだ。
あまりに待ち人が遅いのでタバコに火をつけた。

??「タバコ・・・・やめてくれませんか?」
隊長「・・・・・遅ぇぞ」
??「すみません」
隊長「まぁいい。・・・・・・・・そういやお前新しい役職に就いたらしいな」
??「そうですよ。まぁ、その方が便利かなと思って就いたんですけど特に利用しないまま終わりそうですけどね」
隊長「ふ・・・・お前らしいな。やっぱりお前は敵にはしたくねぇよ」
??「完全な味方じゃないですけどね。僕はただ戦争を早く終わらせたいだけですし。利害が一致しているから利用させてもらっているだけです」
隊長「食えねぇやつ・・・・・・・で?」
??「本題ですね?」
隊長「たりめーだ。他に何がある」
??「まぁ、そうですね。では、ラキオスの明日の作戦は―――――――」








思惑は交錯する。











後書き

シャオです。
この作品を読んでくださっている事、心より感謝します。
さて、物語の補足ですが、本来ならサードガラハム戦からバーンライト戦まで三ヶ月の時を要しますが 本作ではわずか一週間となっております。
これは尊というイレギュラーな存在が混じっているなら人々の行動もイレギュラーになるだろうという 作者の勝手な思い込みから成り立っています。
補足終わり。




早!
後書きなるものをあまり書いていないので不慣れなんです。
勘弁してやってください。

作品を読んでくださって批評、感想等ありましたら感想掲示板に書いてください。
とても励みになりますので。
そしてこれからもこの未熟者を暖かく見守ってやってください。