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永遠のアセリア
Meaning of War -Little Soldiers Company-
序章第三話[異世界-Other-]





――ブロォォォォォォ


平原の一本道。
緑の中にある筋をエンジンのうなり声上げて疾走する集団。
その数といったらさながら民族大移動だろうか。

「それで、いきなり町に近づいて大丈夫なのかな?」
「それは心配ありませぬ。部下を一人伝令に走らせましたので、今頃報告が届いているはずです」

先頭のジープ。
普段アタシが乗る位置ではないのだが、現地語が話せるのが自分だけという状況なので常に隊長であるルージュに張り付いている。
そして今向っている町、バーンライト領リーザリオ。
聞けばここがウルカたちの国ではなく、同盟国に遠征しているとのことだ。
そこに遠征軍指揮官がいるのでとりあえずそこへ報告らしい。

草原の心地良い風がほほをなでる。
天気も申し分ない、こんなときでもなければここでピクニックとしゃれこみたい所だ。
元の世界でも初夏の心地よい季節であったが戦争中にそんな季節を満喫する暇は無かった。

(しかし本当に気持ちの良い風だなぁ……)

昨日から全然寝てないことを思い出す。
そして戦車の荷台とちがってジープの多少なりともまともなシート。
これで眠くなるなというほうが無理だろう。

(いやでも……一応ここも…油断は…………)

次の瞬間にはシュネアの意識は沈み「くー」とかわいらしいねいきを立て始めた。
いきなり寝始めたシュネアに戸惑い起こそうとしたウルカをルージュは「シー」と言い止める。

「寝かせてあげて」

通じないながらもルージュの言わんとした事がわかったのかウルカはコクリと頷き自身も目を閉じ瞑想を始めた。

車列は草原の街道をただひたすらに走り続ける。
その先頭のジープの中でルージュはこれから起こるであろう苦難を静かに感じていた。










――夢の中にいた。










――夢だとわかる夢も珍しいと思う。もっとこうおいしい食べ物とか出てきてもいいのに










――しかし夢の癖にただ何も無いとはいささか夢っぽくない。











――浮かんでいるのかどこが上か下か判らない、漂っている感じ。変な夢





「…………」





――……ん?





「……た、……え……す…!?」





――声?





「…す……、きこ………?」





――ひどくノイズ交じりでよく聞こえない。





――そこに誰かいるの?





「ああ……えた、ボ…は……」





――ゴン!!
「ぎゃう!!!???」

気が付けば地面に叩きつけられるという乱暴な起こし方で目覚めさせられた。
いや、ただたんにドア開けられてそれに寄りかかっていたアタシが倒れただけなんだけど……
(くっ……首がぁ……)
でも…と思う。
今の夢はなんだったんだろう。
やけにリアルな感じがする夢。
皆が集まっているのが見える。
それを見たとたん夢のことは忘却のかなたへ消えていったのだった。






そして指揮官との顔合わせということで下車し整列したアタシ達は皆例外なく不愉快な気分になっていた。
原因は目の前の男。
ウルカ隊とは違うスピリット、おそらく彼の部下だろうが、その前に立ち自己紹介を始めていた。

「私はソーマ・ル・ソーマ、サーギオスに属するただの人間です」

と、べとつく様ないやらしい声でしかもやたら人間という部分を強調していた。
その服装は半裸に長いコートを着たあるいみ変質者的な様相を呈していた。
そしてその視線は我々を値踏みするような、特に女性隊員に対して向けられていた。

「過去、これほどの数のエトランジェ殿が来訪したことはないんですがねぇ」

相変わらず嘗め回すような視線を我々(特に女性隊員)に向けて演説ぶっている。
ルージュの通訳をするために前に出ているアタシだが正直ここから逃げたい気分だ。
おまけに後ろに控えさせたスピリットで威圧しているつもりなのだろうか?
まぁ大陸間戦争を戦ってきたアタシ達にはたいした効果はないだろうが。
履帯軋ませ迫る戦車に生身で向うほうがよっぽど怖い。
しかし奴の部下は誰も彼も生気の無い顔をしている。
まるでただの人形のように……
ラキオスの二人やウルカ隊の面々とは全然違う。

「しかしエトランジェだというのに神剣も無しとは……いやー不幸なことですねぇ」

そういっている割にはそのことを嬉しそうに言う。

整列し休めの体制をとっている隊員の前をやはり変わらぬ視線で各列ごとに見て行く。
その表情はまるで遊び甲斐のあるおもちゃを手に入れた子供のようだ。
一通り見終えたソーマは先頭にいるアタシとルージュの前にやってくる。
さっきから見ていたが、こいつの女性を見る態度は男の隊員を見るのとは明らかに違う。
まるでスケベ親父そのものだ。
アタシの前にやってきたソーマはアタシをそのヤラシイ目で見た後、肩に掛けたライフルに目をやる。

「これが、あなた達の武器ですか?」

アタシのライフルを撫で回しながら聞く。
翻訳しながらアタシは顔をしかめる。
銃は自分と一心同体。
もちろん戦いの場限定ではあるが、機嫌を損ねジャムなどを起こせば、それは己の死という形で降りかかる。
その表情をみてソーマはいやらしく笑う。

「なぜ、一々通訳するのです?あなたでも答えられることでしょう?」

もちろんその通りだ。
しかしルージュは指揮官としてあらゆる情報を知ってなければならない。
こんな些細なやりとりでも相手の真意を見抜き的確な対応をとるのだ。
当然、翻訳するアタシにも重大な責任がある。

「自分は一介の下士官にすぎません。よって些細なことでも隊長がお答えになります。ちなみに先ほどのご質問は「はい」です」

ひどく他人行儀に答えてやった。
正直吐き気がするこいつの態度にアタシの我慢も限界なのだ。
「ふむ」と答えソーマは離れてゆく。ちょっと落ち着く。
そして再び自身の部下達の前に立つと咳払いをしこちらに向き直る。

「いずれあなた達の実力を見せていただくとしましょう。今日のところは私も多忙なので失礼します」

と一礼する。しかしそれは見かけだけであってけっして心からではない。

「ああ、しばらくはこの辺にいてください。それだけの大人数ですと町人に"無用の不安"をあたえますから、なにかあればそこのスピリットにもうしつけください」

とウルカを指し示し自身は踵を返して町へと向っていった。
やたら引っかかる言い方をしていたが、無用の不安……?

「なんなんだよありゃ……」

だれかがぼやく
ルージュも同様らしくいつものポーカーフェイスが少しゆがんでるように見える。
しかし深呼吸ひとつして隊員達に向き直る。

「野営に備えテントと見張りを立てる。第1、第2小隊はテント設営。第3小隊は物資の確認、第4小隊は付近の見張りを」

皆がそれぞれの役割のために散らばる。

「うっあーだるいわねぇ」

と、皆とは行動せずこちらに歩いてくる人影、我が分隊の火力クリル・リグフィードだ。

「って第一小隊はテント設営って言われたのになんでこっちくるのさ」
「おやおや〜?あなたもたしか第一小隊ではなかったのですかぁ〜軍・曹・殿」
「アタシはいいんだも〜ん。先任軍曹だし中隊長付きの通訳だから」
「あれ〜それって職権乱用じゃないのかなぁ」
「そんな細かいこと気にしてるからアンタの胸いつまでたっても――グェ!?
そ・ん・なことを言うのはこの口かぁぁぁ!!

すごい笑顔でこめかみに青筋を浮かべながら両手で口が裂けるほどこじ開けられる。

「ひゃける!ひゃけるぅぅ!!!」(裂ける!裂けるぅぅ!!)

かなり間抜けな顔になり手足をばたばたさせる。
ていうか痛い、かなり痛い。
このままじゃ口裂け女になってしまう。

「ひょ!ほんひょひゃけるぅぅ!」(ちょ!ほんとに裂けるぅぅ!!)

――ジダジタバタバタ
それはもう某幼稚園児のごとく伸びる頬。

いっつもいっしょにいて!似たようなもの食べてたのに!なによこの差はぁぁぁ!!こんのこのこのこの!!
ひゃいぃぃぃぃ!あひゃひひゃひのへいひゃなひぃぃ!!」(痛いぃぃぃぃ!アタシのせいじゃないぃぃ)

アタシら3人の中じゃ一番ヒンヌ……もとい慎ましやかな胸の持ち主のクリル。
ちなみにルージュ→アタシ→クリルである。

ちくしょう!ちくしょう………ところで…ルーはなにしてるのよ?」
「私もなんかこのコントに参加したくなって…」

と言いながら無表情で後ろからクリルの両耳をつまんでのばしている。
一人はアタシの口を限界まで伸ばし、一人は耳を伸ばしている。
はたから見ると危ない宗教だ。

そんな三人を見つめる視線。
その視線に気付いたアタシたちがその方向を見やると……

ウルカ隊の面々がどう言っていいのか判らないという顔であえて見ないでいる者も少々

「「「ぷっ……!」」」

三人が噴出す。

「「「あははははははははははははははははは!」」」

そこからは爆笑の渦。
アタシ達はまさに抱腹絶倒。。
その後数分間笑い続けて三人とも腹筋が痛くなったのはまた別の話だったりする。





とりあえずアタシ達もテント張りの作業に加わる
ただすべては張れない。
まだ移動するようだしなんたってこっちは大所帯なのだ。
最低限仕官用、本部用、トラックに納まらない奴ら用などを張りのこりは空いたトラックなどを使うことになるだろう。

「ふぃぃ、つかれたぁ…」
「軍曹、後から来たくせに……」
「そうですよ、わたし達が必死にトラックからテント引っ張り出してたのに軍曹達は高笑いしてぇ〜」

フロイドは不服そうに、サリアは頬をふくらませて抗議してきた。
あのあとアタシもみんなと一緒に作業するように言われテント張りにきたのだが、一張りをクリルと二人でやらされたのだ。
一張りといっても数人が寝泊りできる大型のものだ、それをたった二人で立てるのだからたまったものではない。
案の定何回か倒してしまい"他の皆"が立て終わってもこっちはまったく終わらなかった。
というか終わるはずが無い。

「大体二人なんだからできるわけ無いわよ!」

とクリルのぼやき。
たしかにあれをたった二人なんてひどすぎる。

「仕事中に遊んでたんですからとうぜんでしょう」

とジョン。
ごもっともです…

「「……ごめんなさい」」
「「「よろしい」」」

激しく謝ってしまった。
なんとも情けない下士官二人組みであったのでしたっと……





一時間後……
倒れて突っ伏している二人がいた。
何とかテントは張り終わったのだが、全力で謝った後も待遇は改善されること無くその後もクリルと二人でやらされたのだ。
おかげでアタシ達は精も根も使い果たし現在に至る。

((許してくれたんじゃなかったのか……))

突っ伏したまま思う二人。
つき合いが長いだけに思考も同じというなんとも妙なシンクロだがそこのところは突っ込み無しで。
ともかく、いつまでたっても誰も助け起こそうとはしてくれないので二人は起きることにした。

「とりあえず荷物おこう…」
「そだね」

二人でテントに自身の背嚢などを置く。
四人で優々使えるテント。
簡易ベッドに荷物を載せ一息。

「とりあえずは待機……ってことかなぁ」
「そういうことだね」

ふぅっとため息をつく。
昨日からいろいろなことが起こりすぎた。
まぁ新たな命令は下ってないからしばらくは自由時間ということになる。

「さてと」
「?」

そう切り出したのは対位置にいたクリル。

「そろそろ話してもらえるかな、シュネがそうなった訳を……」
「そうなった?」
「とぼけないでよ、ここの言葉が話せる理由、知識、etc、etc」
「ああ」

なるほど、一段落ついでに聞いておきたいというわけだ。
でもどう答えれば?
自分にもわからないのに。

「いやーだからね。あの時言ったと思うけどさ、本当によくわからないのよ」
「むぅ?」
「ウルカ達に囲まれた時、頭にこうビビビっと……ね」

ジトーっとした目で見ているクリル。
そりゃそんな『電波が来て私は知識を得た!』なんてことを言えば当然だろう。

「本気で言ってるの?」
「あはは……」
「だってさ、ルー」

と、クリルが言うと入り口から入ってくるルージュ。
なんてジャストタイミングだと思う。

「………」

普段から無口な性質だが、また今回は無口だ。困りごとがあるといつもだが、その原因はアタシだろう。

「ここに来てから判らないことだらけ、剣と魔法の世界だしデタラメビックリだしもう…なんていうか……むぅ」

口ごもるクリル。
正直混乱はアタシも同じだ。
判っていることは、ここは異世界で、国に帰る方法は皆無ということだけだ。
信じたくないけど……

「……とにかく今は慎重に行くしかないわね……」

ルージュの言葉に頷くアタシ達。

「なぁに心配ないって、きっと帰れるわよ」
「クリルのそのポジティブ思考をみんなに分けて上げられたらいいのにね」
「……本当ね」

無表情なルージュの顔にも笑みが表れる。

――バタバタバタバタバタ
はるか遠くから聞こえる爆音。

「あれって……」
「ヘリ?」

まさかと思ったがやはりヘリのようだ。
でもなぜヘリがいる?
たしか輸送隊は地上兵器だけだったはずだ。

「二人にはまだ言ってなかったわね、この世界に来る直前頼んだ救急と援護のヘリが四機」
「いっしょに!?」「きてるの!?」

「うん」とルージュ。





――ババババババババババババババ!!
爆音と暴風を起こしながらゆっくりと着陸するヒューイ三機とカイユース
一機は武装ヒューイだが二機はレスキュー仕様なので武装は無い。
カイユースも偵察仕様なのか武装は見当たらない。

――ヒュンヒュンヒュンヒュン……
エンジンを止めたのか徐々に風とエンジン音が収まってゆく。

「な……なんなのですかあれは……?」
「大きな箱が空を飛んで…きた?」

ウルカとルシアを含め現地出身が驚愕した表情でヘリを見ていた。
この世界にあんな飛行機械は無いのだろうか?
いや、ないからここまで驚いているんだろう。
自動車でさえ珍しがられる場所だ、無くて当たり前。
アタシはむしろ驚きすぎなのではないかとおもうウルカ隊一同にかいつまんだ説明をした。
皆判ったんだか判ってないんだかという顔をしていたが気にしないでおく。
今ここで重要なのはヘリという機動兵器が手に入ったことにより生存確率が上がったことだ。
正直ここまで戦力がそろうとは思っても見なかった。
希望がさらに強くなる。
あとは帰る方法さえ見つかれば万々歳だ。





「とまぁ…これがお祈りの流れだよ」

ちみっこ3人+ルシアを前にして約束していたキリスト教についての簡単な説明した。
具体的にはキリスト教はどんなものなのか朝晩のお祈りや礼拝などを。
まぁ自身もそれほど敬謙ではないし神父様でもないのだからいいと思う。
まぁ後はお守りを持てば完璧だがる。
そのうち何とかしてあげよう。

「毎日お祈りを欠かさず、神様に感謝するんだよ」
「「「はい」」」「は〜い」

最後に付け加えると皆それぞれに返事する。
四人とも(一人は謎だが…)やけに気合の入った表情をしている。

「そういえば、さっきレイハイの中でサンビカを歌うと言ってましたけどサンビカってなんですか?」
「ああそれは神様を称える歌だよ」
「う〜ん、どんな風に歌えばいいんですか?」
「賛美歌を集めた本があるからそれに載っているのを歌えばいいんだけど……うーん今もってないからなぁ」
「そうなんだぁ……」

残念そうな表情をする四人。
まぁいくつか暗記できてるものはあるんだけど、この流れで行くと歌ってくれといわれる可能性大だ。

「まぁ、いくつか知ってはいるけど……」
「お〜ぜひとも聞かせてほしいです〜」

やっぱりキタコレ!
億目も無く聞いてくるルドミラもさすがだ。

「いやぁ……その……アタシ音痴だからあははは……」
「大丈夫ですよ。お願いします!」
(ていうかルシア…今のは何気にひどくない…?)

音痴というか人前で歌うのが苦手なのだ。
なんというかすごく恥ずかしいだけなんだけど。
学校での合唱とかでさえばれないように小声で歌っていたくらいだ。
でも歌が嫌いってわけじゃない、むしろ大好き。
一度自分の部屋でノリノリで歌ってた時、不意に入ってきた母さんに見られ苦笑いを返されたときは本当に凹んだものだ。
まぁともかくこの流れで行くと歌うまで返してくれなさそうだ。

「むぅぅ、じゃあ……ちょっとだけね」
「やたー!」

と喜ぶルーティア。
他の三人になぜか正座を促し自身も正座する。
いわゆる聴く体勢というやつだろうか。

「んーと、じゃあアタシが一番好きなやつを」

すぅっと息を吸い


――Amazing grace How sweet the sound


――that saved wretch like me


――I once was lost


――But, Now I'm found


――was blind, But now I see……



「「「「………」」」」

ポカーン…
その擬音が良く似合うだろう。
四人とも呆然として座っていた。
たった一節歌っただけであるが、今まで堪えてた恥ずかしさがこみ上げてくる。

「……だ……黙ってないで…なんか言ってよ……」
「…きれい」
「は――!?」

一瞬ルーティアが言ったことが理解できず間抜けな返事を返す。

「な…なななな何を言って!?」

突然のことにカタリナ語で返してしまう。

「意味は解らないけどきれいな歌……いえ、シュネア様の声がきれいです」

――ポォォォォォ!!
ルシアの言葉にまるで笛つきヤカンのような音を立てて両耳から蒸気が噴出す。
いまアタシの顔は茹でた花咲ガニのように真っ赤になっている。

いたたまれなくなったアタシは置いといたヘルメットを深くかぶり後ろを向く

「きききききれいって……その……ありがとう

最後のほうはもう相手に聞こえたかわからないくらい小さくなった。
今まで人前で歌ったことが無い上、それをきれいだなどといわれたらもうね……
しかしこんなところ部隊の仲間に見られなくて良かったよ、とくにあの二人(ルージュ+クリル)に見られた暁にはもうはずかしくて…
振り向いた先にある二人分の足、アーミーブーツを着けたそれは見覚えがある。
恐る恐るヘルメットを指でつまみ上げその顔を確認する。

「ギャース!!」
そこにいたのは考えてた最悪の二人だった。

(いつからそこにいたの!?忍者かあんたら!!ジャポニズムも大概にしろ!!)

自分でも何考えてるんだかわからなくなってきていた。

「シュネって歌うまかったんだねぇ〜」
「初めて聞いたわね」
「そんな歌声なら恥ずかしいことないじゃない」
「いつも一人で歌うのは壮大に拒否ってたわね」
「本当……そんなんだったらいっしょにカラオケとか来てほしかったなぁ」

なわなわと震えているシュネアの顔はすでに花咲ガニを通り越して某ロボットアニメの大佐並に真っ赤だ。

「ば……ば…ばかぁぁぁぁぁぁぁ!!

この時シュネアは音速を超えた。
生まれて以来最大の恥辱は彼女に人間の限界を超えさせたのだ。
とにかくものすごい速さで逃げていくシュネア。

「あはははははは、照れてる照れてる」
「久しぶりね、あんなシュネを見るのも」

それをほのぼのしく見送る彼女の親友二人。
歌の余韻にひたるスピリットたち。
そう…彼女の味方は誰もいなかったのだ………





「ゼェゼェゼェ……」

キャンプの反対側まで全力疾走だったのでさすがに疲れた。
「ハァ…」とため息しトラックに寄りかかる。
ラキオスまで続く街道が見える。
(この先に敵がいるということなのかな?)
まだ戦争は始まっていないということだが、いつはじまるか……
胸ポケットからまだだいぶ入ってるわりにくしゃくしゃになったタバコの箱を出す。
まだ従軍して二箱目。
禁煙者でもなくまた常習喫煙者でもない、その中間といった感じだと自負している。
しおしおになった一本を取り出し、ジッポで火をつける。

ため息ついでに煙を吐き出す。
(またエサあげちゃったかぁ……)
エサというのは当然いじりネタのことである。
最近はめっきり影を潜めたがこれを気にまた昔みたいに復活すると思うと気が滅入る。
もう一度ため息……

――ガサリ
物音をしたほうを見ると、黒いレオタードのような戦闘服にカタナ型の剣、兜をしたスピリット。

「……たしかウルカ隊の――」

名前が思い出せない。

「フィアナです」

とこちらの考えを見透かしたようにしかし無感情な声で返される。
前もあるが、やっぱり何か怒らせる真似をしただろうか…

「そ…そう。アタシは――」
「知ってます。シュネア様ですね」
(う゛……)

ひどく淡々されて言葉が続かない…
というかフィアナも無表情だからなおさらなのだ。

(なにこれ、いやがらせ……?)
「う…うん、それでなにかアタシに用でも?」
「ひとつ申し上げておきたい事柄がありまして」

正直この子は苦手だ。
前回に引き続き引き攣った笑顔を向けながら次の言葉を待つ。

「先ほどのあれは、一体何のおつもりでしょうか?」
「は?」
「ルシア達に教えていた神頼みのことです」

妙に言葉を荒げるフィアナに疑問を持ちつつも納得する。

「はっきりと申し上げます。戦場では神頼みなど無意味です。余計なことに気を取らせて死なせる気なのですか?あなたは!」
「なっ!?」
「余計なことをしないで下さい。あなた方人間は私達に命令していればいいのです!」

特に最後のは唖然とする言葉だった。
この子は奴隷であることを受け入れている。
そしてそれが当然だと言い張っている。
自分達さえ差別しているのだ。

返す言葉が見つからずポカーンとしているアタシを無視してもう言うことは言いましたとばかりに踵を返すフィアナ。

――ザザザザザ
街のほうから響いてくる音。
それが人だと解るのに時間はかからなかった。

「あれは……?」
「バーンライトのスピリットたちです。おそらく国境警備に行くのかと……」

独り言のつもりだったが、フィアナが疑問を解決してくれた。
15人ほどだろうか。
隊列を組んでアタシ達が来た方向へと歩いてゆく。
服装はルシア達と同じだがカラーリングが少し異なっている。
その中の一人と目が合う。

(まるで死人みたい……)

生気が無い。
これから死にに行くような…そんな目をしている。

(なんなんだろう?)

その疑問をぶつけようとフィアナを見たときアタシは出しかけた言葉を飲み込んだ。
さっきまで声を荒げてアタシを非難してた彼女が一転悲しそうな表情をしているのだから。
見られてることに気付いたフィアナは慌てた様にぷいっと今度こそ踵を返して行く。
なぜあんな顔をしていたのかこのときはわからなかったが一つだけ解ったことがあった。

(ツンデレ……?)

台無しだった……





「国境警備隊の援護……ですか?」

翌朝、二時間前に歩哨を終えて眠りに就いていたアタシは突然の来訪者のおかげでたたき起こされていた。
その人物とは、何を隠そう変態親父(第一印象)ソーマ・ル・ソーマその人であった。

「ええ、昨日国境へ向った部隊がラキオス軍と小競り合いを始めたのですが、どうやら深追いしすぎたようでしてねぇ」

おそらく昨日見た連中のことだろう。

「バーンライト軍から要請がありましてねぇ、せっかくなのであなた方の実力も見せていただこうと言うわけなのですよ」
「バーンライトは自分達の尻拭いもできない国なのですか?」

少々皮肉を込めて言葉を返す。
こちとらいきなり実戦なのだ、たまったものではない。
まぁこっちにきてすぐ一戦やらかしたのだが、あれは奇襲だったからなんとかなった。

「クックッ…まぁそうおっしゃらずに、スピリットは貴重なのです。ところで彼女達の現在位置なのですが……」

とまぁ勝手に話は進んでいくわけで、ルージュもここで実力を示しておいたほうが良いと考えたのか作戦を承認した。
しかし前回と違って奇襲の効かない場所だ。
開けてるし森などの遮蔽物も無い。
まだこちらの素性がが割れてないことだけが助けか

一通りの説明が終わり三十分後には出発すると告げソーマは戻って行った。

「どう思う?」
「無茶だよ。スピリットの戦闘能力聞いたでしょ?一人で要塞攻略できるって、所詮人間なんか相手じゃないってことだよ。」
「04分隊は勝ったって報告もらったけど?」
「暗い森の中、スピリット本来のスピードは殺されこっちは万全の迎撃体制、勝てないことは無いでしょ」
「こちらの武器が効くだけ救いがある話ね……」

それでも不安はぬぐいきれない。
今回の作戦区域を見たところ平原だ。
ということは奇襲も効かないし、撤退時も身を隠すことができない。

「作戦を立てようにも現地の状況がわからないと…」
「そうだね、全員でゾロゾロ行くわけにもね」
「うん、とりあえず戦闘経験のある04分隊を含む第一小隊でむかうわよ」
「了解!……ってことは当然…」
「私も同行するわ。この目で見ておきたいから」

なるほどそれもあったのね。

「オッケイ、んー…一応ヘリの支援も考えたほうがいいかな」
「そうね、万全を期して損は無いわ」
「じゃあそっちの手配はお願いね、アタシは装備と車両の手配するよ」
「わかった」

よろしくといって中隊本部のテントを出る。

ブルル…
そういえばたたき起こされてすぐ来たため上着もなしでシャツ姿だった。
さすがに常春な気候でも朝方は冷える。

「おー軍曹!早いなぁ何かあったんすか?」
「フロイドか…今日は忙しくなるから準備しときなよ」
「了解……フーム」

フロイドはアタシをまじまじと見つめうんうんと唸ってる。

「な…なに?」
「いやぁ、これもいわゆる一つの萌えかと思いましてね」
「は……?」
「無骨な戦闘服ながらもその少しきつめのアンダーにうき出るボディラインがたまりませんなぁ」
「……(アングリ)」
「いやいやしかしもともと軍曹のスタイルがいいのもあるんだろうけど。胸は適度だし腰もいい具合だしおしりも――アボ!?

永遠と他人のスタイルについて語り始めたフロイドに長州○顔負けのラリアットが決まる。

「こんのエロ大王がぁぁ!!」

顔が熱いのでたぶん赤くなってるがそんなことは問題じゃない。
なんかゴキリ!って音がして首の骨がスライドしたように見えたが気にしない気にしない。
ビクンッビクンッと泡吹きながら痙攣してるフロイドをほっぽりだして自身のテントに戻った
上着を着るためにね…





――ゴォォォォキュラキュラガガガガガガ
仮設キャンプは前日とは一転して騒がしくなっている。

「ジープの機銃に弾無いぞ!」
「アパ〜ム、弾をもってこーい!!」
「聞け!武器弾薬以外は置いていけ、ただし背嚢に予備の弾薬が入ってる場合は持っていってよし」
「第一小隊は二号車と三号車に分乗しろ、急げ!!」

ジープ二台とトラック二台、支援のためのカイユースヘリで現地へと向う。
ヘリは先に発ち国境で待機する。

「じゃあ少尉、後を頼む」
「了解!御武運を!」

ビシッっと敬礼して残るものが往くものを送る。
これがこの世界に飛ばされた我々初の作戦なのであった。





あとがき
どうも、ここまでおよみくださりありがとうございます。
最初の軍事作戦まで描こうかなぁって思ったのですけどここまででやめときました。
次回戦闘……うまく描けるといいなぁ…
異世界へ来てしまったという主人公の戸惑いと各キャラの性格断片を垣間見せてみました。
もうフロイドはエロスで行きます!!
クリルはアバウトな性格で胸がコンプレックス、ルージュはくーる!
フィアナはセリアっぽくなってしまった_| ̄|○ナンテコッタイ
そしてルシアあまり出せない_| ̄|○
もうちょっとしたらいやってほど出せるヽ(`∞´)ノ
シュネア、歌がうまい!

さてさてえがきたかったことその一、アメージンググレースを歌う完了!
一番好きな賛美歌ですね。詳しいことは劇中で描きたいので省略。
この歌のとの出会いは小学校低学年のころに見た「メンフィス・ベル」という映画です。
第二次大戦中の重爆撃機のクルー達を描いた映画なのです。
出撃直前、自分達の気へ向う途中のジープで一人が歌いだしみんなが歌っていました。
そのときにビビビってきましたね(*´ω`*)
高校に来てキリスト教系の学校だったので、歌の生まれた背景なども知りさらに感動゚+.(゚∀゚*)。+.゚
では次回もよろしくお願いします(`・ω・´)ゝ



用語解説

◆ヒューイ
正式名称UH-1(UH-1 IROQUOIS・イロコイ、愛称:HUI・ヒューイ)は、アメリカのベルエアクラフト社が開発した汎用ヘリコプターである。アメリカ陸軍に採用され、ベトナム戦争などで活躍し、大量生産された。また、アメリカ空軍も過去に使用している。現在は後継機種のシコルスキーUH-60 ブラックホークに置き換えがすすんでいるが、日本の陸上自衛隊を始めとする多くの国々では現役である。
メインローター直径:14.69m
胴体長:12.69m
全高:4.53m
自重:2,787kg
最大重量:5,080kg
エンジン:T53−K−703 (1,800軸馬力(shp))一基(UH−1J)
最大速度:230km/h
武装:標準搭載はなし。キャビンに機関銃等を搭載することが可能。

◆武装ヒューイ
機関銃を左右の後部に装備したのと違いミサイルポッドやミニガンなど純粋な攻撃ヘリとして改造されたものの事をこの物語では指します。
「ワンスアンドフォーエバー」や「地獄の黙示録」などでも登場。
しかし元が輸送ヘリなだけにあまり性能は期待できない間に合わせのもの。

◆カイユース
正式名称OH-6、アメリカ合衆国の航空機メーカー、ヒューズ社が開発した小型ヘリコプター。アメリカ軍における愛称は「カイユース」(Cayuse)。
丸っこく卵みたいなのでフライングエッグと呼ばれてたりもします。
北海道ではよく上空をバタバタという爆音ではなくヴァァァァァァァァンといった連続音で飛んでてしかも早い。
回転翼直径:8.05m(5枚ブレード)
胴体全長:7.23m
全高:2.73m
自重:538kg
全装備重量:1,361kg
最大速度:281km/h
巡航速度:239km/h(MD500は254km/h、他は同じ)
航続距離:430km
実用上昇限度:4,450m
乗員:1名(乗客3名)

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