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永遠のアセリア
Meaning of War -Little Soldiers Company-
序章第一話[遭遇−Contact−]






近くまで来るとさらに困惑する事態に陥った。
爆発の原因は手榴弾や迫撃砲ではなくなんと巨大な火の玉だったのだ。
赤い髪の少女が何か唱えると魔法陣のようなものができそこから炎が発生していた。
討ちあっているいるのは五人。いずれも少女のような娘たちでそれとは不釣合な剣や槍をもっている。

「うそでしょ…まさか剣と魔法の世界に迷い込んだのアタシ達……」

シュネア自身、そういう類の物語などをいくつか読んだことがあったが、まさか実際に起こるなんて夢にも思ってなかった。
俄かには信じられない。しかし目の前の光景が現実だと言っている。
皆も信じられないといった顔つきで目の前の光景に見入っている。
しかし記者さんだけはそんな顔をしながらも写真を撮っている、さすがにフラッシュをつけるという愚行はしていないが…
ジャーナリストってやつはそういう生き物らしい………

討ちあっている少女たちの勢力は三対二、当然のことながら二人のほうは押されている。
二人はピッチリとした色の違うレオタードのような服に腰布といった服装
もう一方はスリットの長いワンピースに色の違う縦のラインがはいった
服装から見てもお互いが違う勢力にいるであろうことはわかった。
と、押されていた方の赤い髪の少女が多数のほうの青髪の少女に腹を一文字に切られた。
切られた少女は腹を押さえ吐血しながら崩れ落ちるように倒れる。
すると信じられないことが起こった、切られた少女から金色の煙が上がったかと思うと跡形も無く消えたのだ。

「なんだありゃ…」

人が死ぬところは山ほど見てきたがあんなことが起こったことは無かった。

仲間がやられたことに動揺したのか残り一人の青髪の少女の太刀筋が乱れる。
すると相手はそれを見抜いたのか剣を下から振り上げ少女の剣を撥ね上げる。
剣は弧を描いて数メートル先に突き刺さった。

「あっ――!」

衝撃で少女は後ろに倒れる。
相手はもう余裕だと思ったのか剣を構えながらゆっくりと近づいていく。

倒れた少女は後ずさりしながら逃げようとする。その表情には恐怖が浮かんでいた。
何とか後ずさっていたが木の幹にあたり逃げ場をなくす。

「ひ――!?」

状況を把握しさらに絶望の表情が宿った。
シュネアは怒りにふるえていた。
もはや相手は無抵抗である、それを猫が鼠をなぶるように追い詰めていく。
その残酷さが許せなかった。

そして相手はもう逃げられない少女に向ってその剣を振り上げる。
その表情はにやけていた。
シュネアは我慢できず飛び出していた。






目の前で先輩がマナの霧に返された。それに気を取られた隙に神剣を叩き落された……
いや、元々未熟な私には時間の問題だったのかもしれない。
剣を失いもはや抵抗する術をうしなった。

「ひぁ――!やだぁ……たすけて……」

無様に命乞いをしながら後ずさる。けどそれも長続きせず木の幹にあたり後退不能になる。
相手の顔を見た。笑っていた。
顔から血の気が引いていく。
ああ…もう助からない…
いやだ…まだ、死にたくない…消えたくない…
そんな思いなんかわかってくれるはずも無く無情に相手は剣を振り上げる
回りの時間が緩慢に感じる。
そして振り上げられた剣が振り下ろされ――なかった
甲高い乾いた音が三回ひびき振り上げていた相手の体に三つの血煙の花が咲く

「――えっあっ!?」

苦痛より驚愕を感じさせる悲鳴を短く上げて相手は崩れ落ちた。まるで糸が切れたかのようなあっけなさだった。
相手は何が起きたか解らないままマナの霧に還る、それを見ながら呆然として音のした方向を見やる。
筒のようなものを構えた緑を基調とした服を着て頭には兜をかぶった一人の人間がいた。(神剣の気配がしないので人間だと判断)
筒の先からはうっすらと煙が上がっている。

Put down your weapon!!

残り二人のほうに向くとその人は叫んだ。
聞いたことも無い言葉。意味はまったくわからない。
呆気にとられていた敵のスピリットたちもその人を敵と認識したのか武器を構え飛び掛っていった。






やってしまった…兵士として指揮官として一番やってはいけないことをしてしまった。
一時の激情にまかせての行動。これがどれだけ自分のみならず部隊全体を危機に陥れるか。
頭ではわかっていたはずだった。でも我慢できなかった。
こんな自分は部隊長として向いていないのではないかとさえ思える。
しかしもう後には引けない。

武器を捨てろぉ!!

残り二人に武装解除を迫る。

「……ラスト、イハーテス!?」

しかし返ってきたのはそんな意味不明の言葉。
当然こちらの言ったことも通じなかったようで二人は武器を構え間合いを取った。
そして赤色の少女が飛びかかろうとした瞬間
――パラララララララ!
軽い連続音、MINIMIの射撃だ。
赤色の少女の周りの地面から土柱が上がると同時に短い悲鳴をあげて少女自身も穴だらけにされていく。文字どおり蜂の巣だ。

「バカシュネ!」

怒鳴るような叱責の言葉とともにいつのまにか射撃位置をとっていたクリルがMINIMI。
それに続き残りのメンバーも武器を構えながら飛び出してくる。
それを見て不利と悟ったのか残りの緑色の少女が逃げようと背を向ける。
しかしフロイドの射撃でその少女も背中に弾を受け前のめりに倒れる。
二人とも先ほどと同じように金色の煙となって消えていった。

「周辺確認!」
「「クリア!!」」

それぞれから安全確認の返事が返ってくる。
それを聞いて小さく安堵のため息をつく。

「ミリィ、あの娘を見てあげて」
「はい」

先ほど追い詰められていた少女をみやりミリエスに状態を見るよう指示する。
まだ14歳前後といった年頃だろう、その青いセミロングの髪を頭の右でポニーテールにしている。
その髪の色と同じ青いレオタードに白い腰布、青いニーソックスといった格好、そしてサーベルを思わせる大きな両刃剣
ミリエスが近づくとビクリとふるえて恐怖していた少女もミリエスの安心してというジェスチャーにすこしだけ安心したのか体をまかせた。先ほど剣を撥ね上げられた際に腕も切られたのかだいぶ出血している。
ミリエスはすばやくペニシリンと包帯で応急治療を開始する。
そんな自分の腕とミリエスを交互に見ながらまだ不安と驚きの顔をしている少女に向って歩き出した。






それは一瞬といえるような出来事だった。
あっという間にあの人たちはスピリット3人を見たことも無い武器(?)でマナの霧に還した。
そして最初に飛び出してきた人が兜に赤い十字印のある人に何か言うとその人がこっちに走ってきた。

(私も殺されちゃうんだろうか)

と思ったがその人はほかの人と違い両脇に鞄を持っているだけだし
言葉はわからなかったけど両手を広げて何もしないよといってくれているようだった。
私の少し切られた腕を見て何か粉の入った紙包みと包帯を出した。
粉をふりかけガーゼを当てて包帯でとめてくれた。やさしい手つきだった。

また近づいてくる気配がある。私を助けてくれた人だ。
治療してくれた人となにやら話した後、武器を肩に掛け兜を取った。
私と同じ青い髪をうなじが少し見えるくらいショートにしている女の人。
(ブルースピリット……?でも神剣の感じがしない………人なの?)

「You are all right?」

そんなことを考えているといつの間にか屈んで私の顔を覗き込むように言ってきた。
なんていっているかはわからない、でもなんとなく「大丈夫か?」と聞かれてる気がした。
こくりと頷いてみる。
すると優しい笑顔を浮かべて頭をなでてくれた。

初めてだった。人間にこんなに優しくされたのは。
今まで人間は私に暴力しか教えてくれなかった。
罵倒、罵声、殴る、蹴る、そして処刑。
役立たずの私が処刑されなかったのはバニッシュ能力が高かったからただそれだけ。
神剣にものまれずだから厄介払いも含めてウルカ隊長の『遊撃隊』にまわされたのだ。
いつ死ぬかもしれない『遊撃隊』の任務。初任務で死に掛けた、もしあの人たちが来なければ間違いなく
私はマナの霧に消えていただろう。そんなことを考えてたら今まで溜め込んでいたものが急にあふれ出してきた。

ひ……ひっく…ひっく…うぅ…うえぇぇぇぇぇぇん

私の心のダムは決壊しひたすらに溢れてくる涙を抑え切れなかった。そして目の前のこの人に抱きついた。
いきなり泣き出し抱きついてきた私に困惑した表情をしながらもぎこちなくだきしめて頭をなでてくれた。
初めて感じた……温もりだった。






焦った…………マジで焦った。
頭をなでた直後突然この娘の目が潤んだかとおもうと泣き出してしまったからだ。
そして抱きついてきた。オロオロしてるアタシを尻目に状況を知らない皆からはジト目で見られたが……
自分には抱きしめてあげることしかできなかった。
この娘をみてると思い出した。
入隊の日、妹がいかないでと泣いて抱きついてきた事を…普段アタシの言うことなんかききやしなかったあの娘がはじめて見せた姿
戸惑いながらも大丈夫だよと抱きしめ返してあげることしかできなかったあの日……もう3年も前になる…
戦地に出て一年半、あの日のことが遠い日に感じた。

そうしていると突然少女がビクリと震え、あたりを忙しなく見渡す。

キネ、ヤァ、イハーテス!

アタシにすがるように訴えてくる。
何を言っているかわからないがなにか切羽詰った感じがあるのはわかる。

「軍曹!何か来ます!!」

見張りについていたサリアが叫ぶ。
見ると遠くの茂みがガサガサと音を立てていた。
切羽詰ったこの娘の様子と近づいてくる集団……理屈というより直感で判断した。

「全員防御円陣!ミリィたちを中心に射撃用意!!」

非戦闘員のミリィたちを中心に射撃姿勢をとる。
もしかしたら中隊の誰かか銃声を聞いて駆けつけてくれたのかもしれないとも思ったが
しかしあんなに音を立てては撃ってくれといわんばかりである
民兵ならいざ知らずあまりにも雑な行軍にそれは無いなと自身で取り消す。

「撃て!」

いっせいに四方八方に向って射撃する。
蜂の巣にされた相手が茂みから飛び出しながら倒れていく。
服装はさきほど倒した三人と同じなので、この娘を助けに来た仲間ではないようだ。
フロイドが茂みの一部に向って手榴弾をなげこむ。
爆発とともに軽い悲鳴を上げながら二人吹き飛んで地面に転がる。

「撃ち方やめ!撃ち方やめ!撃つな、もういい撃ち方やめ!」

ハンドシグナルもあわせて撃つのをやめるように言う。
あたり一面金色の煙で覆われていた、その幻想的な光景に目を奪われながらも殺してしまったという罪悪感が湧き上がってくる。
事情も知らず一方的な虐殺まがいの行為をしてしまったのだ、もしかしたら助けたこの娘の方が悪人かもしれなかったのだ。
そんなことを考えながら目の前の光景に見入る、そうしてなければ気がついたかもしれない。
自分の銃剣にその金色の煙の一部が吸い込まれていることに……





手榴弾に飛ばされて地面に転がってる二人以外は金色の煙になってしまった。
そのことから考えてあの二人はまだ息があるということだろう。
サリアとフロイドに様子を見るように指示する。
二人は近くに落ちている剣をこちらに放り、ライフルを構えながら倒れている二人を調べ始めた。

―――つんつんつん
銃で体をつついて意識の有無を確かめる。
反応がないのでうつぶせになっている体を起こして上を向かせた。

「軍曹〜特に外傷はありません、ただ気絶しているだけのようです」
「こちらも、気絶しているだけで怪我はしていません」
「わかった。ミリィ手伝ってやって」
「はい」

至近距離で手榴弾が爆発してもそれほどの怪我を負わないというのはよくある話だ。
映画などでは大の大人が2、3人大きく吹っ飛ぶ描写があるが、あれは演出であり実際は一人をわずかに浮かせる程度である。
しかし閉鎖空間におけるこれの威力は絶大であるが…
ミリエスが駆け寄っていき軽く二人を軽く診察した後、サリアとフロイドに運ぶように指示した。
フロイドは緑色の髪腰まで届きそうな髪を途中で束ねた娘をいわゆるお姫様抱っこで(死語)
サリアとミリエスはセミロングの赤い髪の娘を二人で協力して運んでいく。
助けた青髪の娘を休ませている木の隣の木に二人を寝かせる。
ジョンがその二人の剣と槍を重そうに運んできた。

「こんな重いものをあんな自在に振り回すなんてすごい馬鹿力っすね」
「うわっ本当だ……」

ジョンからダブルセイバー型の方を手渡され自身もその重さに驚く。とりあげた二つの武器を青髪の娘を休ませてる木に立てかけた。
と、クリルがはね飛ばされた青髪の少女の剣を拾って持ってきた。表情からその剣もかなりの重さなのだろう。
それを持ち主に返してやると、その少女は愛しむように抱きかかえ「ウレーシェ」と発した。
意味はわからなくともお礼の言葉というのが雰囲気としてわかるのでクリルは照れ隠しをしながらその場を離れていった。
アタシとしてはあんなクリルを見るのは久しぶりなので笑いをこらえるのが大変だった。






さてとこれからどうするか………
現状、分隊隊員は全員無傷、弾薬は余裕あり、お客さん4名、記者さん+青髪少女+捕虜二名
現在位置不明、本隊との通信も不能、おまけに何かわからない勢力に喧嘩まで売ってしまった。
まとまらない考えに口がさびしくなりポシェットに入れていたチョコレートを出す、それを一口かじって…

……………………………(汗)

じ〜〜〜〜〜〜〜〜―――

二口かじってその視線に気がついた。

じじ〜〜〜〜〜〜〜〜……

恐る恐る視線の方向を見ると青髪の娘がアタシの食べるものを凝視してるのがわかる。
漫画で表せばアタシの後頭部にはでかい汗がでているだろう。
少し考えた後アタシは大きな塊を折り取ると屈んで少女の前に出す。
しばらくアタシとチョコの欠片を交互に眺めていた少女だったが、恐る恐るチョコを受け取ると一口かじった。
モグモグと口を動かしていた少女はおいしかったのかにっこりと微笑み返してくれた。

「けっこうおいしいだろ?」

アタシもそういいながら微笑み返した。しかしけっこう神経図太いのねこの娘………
この娘をみてるとなぜか和む。助けてよかったと、本当に思えた。

ふと、アタシはこの娘の名前を知らないことに気がついた。
そこで通じないながらもこの子と意思疎通を図ることにした。
まずは名前からである

「アタシの名前はシュネア、シュ・ネ・ア」

身振り手振り、自分を指差しながら言う。
たとえ言葉が通じなくてもこれくらいなら疎通できるはずだ。

「シュネア…?」

アタシを指差して呟く。アタシは頷いて肯定する。
何を言おうとしているか察してくれたのかその子も今度は自分を指差し

「ルシア。ルシア、ラ、ニノウ、セィン、ヨテト…」
「ルシア?君の名前はルシアだね」

ルシアと名乗ったその子を指差しながら言う。するとルシアはパァっと明るい表情をして何度も頷く。
流れに乗ってきたのでアタシは分隊のメンバーも紹介しようとクリルから順に指をさしながら

「クリル、それとフロイド、サリア、ジョン、ミリエスそれと…あー」

それぞれを指し示して紹介していった。皆もそれぞれ手を振ったり頷いたりして自身をアピールした。
ここでアタシはまだ記者さんの名前を知らなかったことに気がついた。
それを察してか記者さんは自分で自己紹介をする

「フランクだ。フランク・マッキンレー」

といってルシアに握手を求めた。差し出された手にびっくりしながらも、ルシアはおずおずと手を出し握手に応じた。

「さてと、自己紹介も終わったところでこれからどうす――!?」

アタシの言葉は背後から発せられた猛烈な殺気によって遮られた。

「なっ!?」

アタシは背に掛けてある銃に手を―――掛けれなかった。
正確には掛けるのを許されなかったというべきだろうか……

アタシの首には刀が突きつけられていたのだ。
突きつけているのは鉄っぽいヘルメットに黒のレオタード、白い腰布……
どう見てもルシアの黒バージョン。しかしその表情はヘルメットに隠れてよく見えない。

「なっシュネ!?」
「軍曹!!」
「くそったれ!」

皆それぞれの銃を構えようとしたがそれは茂みから出てきた他の人影によって遮られた。

「うわっ?!」
「ちょっと……!!」

銃を構えることは叶わず…全員に剣、槍、双剣、刀などなど
非戦闘員のミリエスやフランクにまでつきつれられている。
その数は6人、皆色とりどりの髪や瞳その色に合わせたと思われる服を着ている。

「みんな動くな!いいか絶対に動くんじゃない!様子を見よう」

早まった行動をしないように釘を刺す。

「まずは武器を下ろしていただきましょう」
「!!」

茂みから出てくる黒い影、7人目は銀色の髪に褐色の肌服装はルシアたちと同じ
そして聞こえたのはわれわれの言葉。
否、発せられたのはルシアが話していた言葉だが聞こえた瞬間それがすばやく頭の中で翻訳されている感じだ。
キィィィィィィィィィン!!
激しい頭痛と同時に様々な知識が流れ込んでくる。
スピリット、永遠神剣、マナ、エトランジェなどなど
そして人間がスピリットに生身で勝つにはかなりの力量差があることも……

「…………わかった、言うとおりにしよう…」
『みんな武器をおろせ』

アタシが聖ヨト語を話した瞬間、分隊のみんなは一様に驚いた顔をしたが、アタシの指示に銃をおろす。
こちらが武器を下ろすと同時に目の前の指揮官らしきブラックスピリットが合図をすると皆に突きつけられていた剣がおろされた。
おろされたといっても突きつけていたのをはずしただけでありいまだ彼女達の剣は構えられたままだった。

「手前の名はウルカ、ウルカ・ブラックスピリット、サーギオス帝国≪遊撃隊≫を率いております。
   まずは部下を助けていただいたこと礼を申し上げます」
「アタシはカタリナ連邦陸軍歩兵師団第4レンジャー大隊所属、シュネア・カルロン軍曹
 あの娘を助けたのは気まぐれだ、礼は特にいらないよ。ウルカさん」
「ウルカで結構です。しかし助けられたことには変わりない、お礼は申させていただきます」

と、ウルカと名乗ったこの人は深々と頭を下げた。

「まぁ気持ちは受け取っておくよ」
「ありがとうございます」

第一印象は武士。しかもカタナ携えてるんだからますますそう見えてくる。
しかしこうして軽い会話を交わしている間もウルカは隙をまったく見せない。むしろ威圧のようにさえ感じてくる。
アタシの握った手は汗でびっしょりになっていた。アタシが判断ひとつ間違えただけで部下たちは死ぬ、そう思えた。

「で…このままルシアを引き取ってさよなら〜ってわけではないんだよね?」
「はい…手前たちとともにシュネア殿たちエトランジェの皆さんにもご同行願います」
「アタシたちがエトランジェだとどうしてわかる?もしかしたら通りすがりの旅人集団かもしれないのに」
「それはありえませぬ。手前たちスピリットに太刀打ちできる人間はエトランジェだけです。
       それなのに神剣もなしにスピリットを倒せる道具を持つ人間はこの世界には存在しませぬ」

的確な分析に恐れ入った。

「なるほどねぇ〜……で、いやだといったらどうなるのかなぁ?」
「そのときは力づくにでも……それでも叶わなければ…………」

そういってウルカは刀に手を掛ける。それと同時にウルカの部下たちも武器を静かに構える。
威圧がぐんと大きくなった。額から汗がたれる。
ちらりルシアを見ると、アタシとウルカを交互に見ながらオロオロとしている。
そして自分に刀を向けている少女を見やる。
先ほどと違い兜からその表情が読み取れる………目が本気だった。

「わかった……従おう」

根負けしついにアタシはウルカに従うことにした。
ここは命を懸けるべき戦場ではなさそうだ。

「かたじけない」

といってウルカは刀に掛けていた手を下ろした。

「なに、こっちとしてもいきなりこんなところに飛ばされて困惑してたところだし、
   おまけにルシアを助けるのに正体不明の勢力を攻撃してしまった。ここはそちらにつくのが安全だろうしね」
「シュネア殿たちが排除したスピリットたちはラキオスという国に属する者たちです。あの二人も…」

そう言ってウルカは捕虜にした二人を見る。
既に気がついたグリーンスピリットの娘がまだ気絶中のレッドスピリットの娘を庇うように抱きしめていた。
それを囲むように立つウルカの部下二人とアタシの部下サリアとフロイド。
フロイドは捕虜を見張りつつウルカの部下への警戒も怠ってない。
サリアは場の雰囲気に怯えながら捕虜よりもウルカの部下に注意が行っているようだ。

「まぁ先に言っておくけど、あの二人はアタシ達が捕らえた捕虜だから手出しは無用に願いたい」
「承知しました。ではこちらへ、手前たちの駐屯地があるバーンライトまでご案内いたします」

ウルカの部下たちの雰囲気から処置を任せれば間違いなくあの二人は殺されるだろう。
敵とはいえ抵抗もできない者を殺すことには大きな抵抗がある。殺されるのを見ることにもだ。


一通りの悶着が終わり皆のところへ戻る。

「シュネ……なんで言葉わかるようになってんのさ…」

一連の緊張が去りクリルが話しかけてきた。

「アタシにもわからない…急に…なんていうか、頭の中に色んなことが流れ込んできて」

クリルは腑に落ちないという顔をして首を掻く。
どうやら隊のみんなにはアタシとウルカの会話は理解できなかったようだ。

「それで…これからどーなるわけ?」
「あー…とりあえずは彼女たちについていくことになった」
「それ本気!?あんな得体の知れないアマゾネス連中についていくと?」
「そりゃアタシだってゴメンだけど、有無を言わせないって雰囲気読めたでしょーが」
「私だってあの威圧感くらい感じたさ。でもこっちには銃があるんだから何とかなったかもしれないでしょ」

それを聞いたアタシは首を横に振りながら。

「いや…たぶんこっちが撃とうとした瞬間やられるよ…全員ね。それくらい常人ばなれした連中さ」
「……」
「だけど、前向きに考えよう。こっちとしては情報が無いに等しい。おまけにあの二人のお仲間にも喧嘩売っちまって…
 ラキオスって国の兵隊らしいけど……」
アタシは顎をしゃくりながら捕虜の二人を示す。
「ふぅ…」っとクリルは軽くため息をし

「まぁ指揮官はシュネだし、あんたの人を見る目はたしかだしね…」

ニヤリと笑いながら肩をぽんぽんとたたいてくる。
アタシは苦笑いしながらたたき返した。
ってどこが!?






気を取り直しアタシは隊員を集め今までの経緯、そしてこれからのことを話した。
皆、反応はそれぞれだったがほとんどが不安のためか難しい顔をしていた。

「とりあえず皆装備を確認。ジョンはもう一度本隊と連絡できないか試してみろ」

それぞれ荷物を確認する。
ジョンは何度か本隊を呼んでいたが2、3回呼んでちからなく首を振った。
アタシはそれに頷いて答え自身の荷物確認を終え背嚢を背負う。

ふと顔を上げると先ほどアタシにカタナを突きつけた少女がこちらを見ている。
先ほどと違い兜を上げていてその素顔が良く見えた。
ルシアよりちょっと上くらいの歳であろうか、軽蔑するような鋭い目つきでアタシを見つめている。
一瞬ぎょっとしたアタシ
ちょっとまて……アタシなんかしただろうか?
ここまでの経緯内で検索中
wait…wait…wait…wait…wait…not find
無い……
とりあえず笑って手を振ってみた。正確には苦笑いとなったが……

「ふんっ」

と、それを見た彼女は軽蔑&呆れまじりのため息ついてきびすを返して行った。
あとに残されたのはどうリアクションすればいいかわからないかわいそうなくらい真っ白のアタシだった。

大いなる悲しみを乗り越えて涙を拭く。こんな屈辱は生まれて初めてだ。
と、アホな考えにもだえていると「あの……」と声をかけられた。
見ると助けたスピリット、ルシアが縮こまるように立っていた。

「あの……その……助けていただきありがとうございました……」
「いや…さっきも言ったけどただの気まぐれだからお礼を言われるほどじゃないよ。
 普通なら、あんな部隊を危険にさらすことはしないからね」
「でも…私は生きています……あなたのおかげで」

といってルシアは深々と頭をさげる。

(隊長さんと同じで生真面目だねぇ……)
「まぁ……無事でなにより……」
「あっ……」

そういいながら頭をなでてあげるとはにかみながら俯いてしまった。
あっ……ちょっとかわいいかも






「さぁ行くぞ…ぼやぼやしないで立った立った」

荷物をまとめ終わった隊員たちを煽り立てる。

「では手前たちについてきてください」
「了解した」
『一列縦隊、フロイド…先頭に立ってウルカに続け』
『了解』
『サリア、記者さんの後ろについてお守りしてな』
『は、はい!』
『よし行くぞ』

一列に並んだシュネア達を囲むようにウルカの部下たちが囲む。
一見守るように囲って見えるが、実際は逃げられないようにするためだろう。
ここから東のリーザリオという町へ向って皆が歩き出す。

異世界……後にファンタズマゴリアと呼ばれる世界に飛ばされた第04分隊
現地時間”聖ヨト暦329年エハの月黒いつつの日”異世界へエトランジェ―高嶺 悠人―が召還される一年ほど前であった。



第1話[遭遇−Contact−]終



あとがき
第一話終了です。お読みいただき激しく感謝です。
話の区切りって意外と難しいんですね。一話と二話の境目がどーも……
やっとスピリット登場です。現在位置はリュケイレムの森です。
異世界に来て初の戦闘です…が、奇襲だったこともあり一方的ながらもすぐ終了。
銃撃戦でもこうなんだからスピリット同士の戦いなんて表現できるのだろうかと不安になります。
話変わって、カタリナ連邦の公用語はぶっちゃけ英語です。
この話わかりにくいかもしれませんがシュネア視点とルシア視点からのがあります。
当然シュネアたちは聖ヨト語はわかりませんし、ルシアは英語がわかりません。
なのでそれぞれの視点の時にはそれぞれの言葉で表してみました。
聖ヨト語および英語に変な点があるかもしれません。なにせ英語の成績2……ごほんげふん
途中で「」と『』で囲ったセリフありますが「」の方が聖ヨト語、『』が英語で話している風にあらわしてみました。。
文の人称もおかしいですね。一人称だったり三人称だったり……反省です。
まだまだ精進が必要なようです。



用語解説
◆迫撃砲
物は登場してませんが……
ご存知の方多いと思うけど一応解説。
迫撃砲(はくげきほう)は、歩兵が携行できる支援兵器。
曲射砲の一種で大型のものには牽引式、自走式もあります。
「45度以上の角度(曲射弾道)で砲弾を発射する、前装式の火砲」と定義される事が多いのですが、近年では、ミサイルや、誘導装置の付いた砲弾、地雷等を発射する物もあり、また後装式の曲射弾道砲も登場しており、厳密な定義は難しいらしいです。
よく戦争映画で数人で筒囲んで砲弾を筒の先から入れてポンポン発射されてるあれです。
プライベートライアンの最後のほうでは発射筒が壊れて使えないため迫撃砲弾を手で投げて使ってました。

◆一列縦隊
歩兵の基本的な隊形です。
部隊を一列に並ばせて先兵のすぐ後ろに分隊長がつき指揮をするというものです。
一人一人の間隔は10メートルほどで敵の一撃で全滅しないようになっています。

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