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 これから紡がれるのは何処かにあった本当の物語

 それを見ることが出来るのは夢の中のみ

 それでは、『夢の中の物語』、どうかお楽しみください――

 

 

 あるところに、いがみ合う男女がいました。

 彼らは『永遠者』と呼ばれる存在でした。

 一人は『王子』、もう一人は『姫』と呼ばれていました。

 二人は多くの者たちに疎まれていました。

 

 ある日、『法皇』という者達が現れ、姫を襲いました。

 姫は逃げ延びましたが、傷を負い、弱っていました。

 そんな中、王子と姫が出会いました。

 姫は傷を隠し、王子は何も知らず戦いました。

 

 王子は呆気なく戦いに勝ちました。

 戦いの後、王子はなぜ怪我のことを隠したのかと聞きました。

 姫は今を変えたかったから、と答えました。

 姫は、戦い、疎まれ、それでも生き続けるのに疲れていました。

 

 王子は、嘆きました。

 貴女がいない世界に、何の価値があるだろうか――。

 姫は微笑み、答えます。

 なら、価値をわたしがあたえてあげる、

 貴方の枷を、その戒めを解き放って頂戴――

 私は、あなたが王になったそのときに目覚めるから――。

 いつか、また、あうときまで………

 

 

 ――おしまい、おしまい。

 この物語の続きはまだ誰も知りません。

 なぜなら、続きはこれから始まるからです。

 さてさて、すべてはあなた次第。

 どうか、あなたに良い物語がありますように――。

 

 

 

 ラセリオ〜王都ラキオスへの道

 

 「ふぁ………」

 朔夜は眼を覚ました。

 彼は粗末な馬車の上で眠っていた。

 王都まで距離があり目を離せないとはいえエトランジェに立派な馬車を使わせるわけにはいかないらしい。

 どういうプライドなのかわからない。

 「かったるいなぁ……」

 おかげで変な夢を見た、と文句を言っている。

 

 ラセリオを出て、3日目。

 ようやく今日王都につくそうだ。

 走ったほうが速いと思えるほど馬車(古)は遅い。

 あと一時間はかかりそうだ。

 そのことを確認すると朔夜はゆうゆうと二度寝をはじめた。

 

 

 4時間後 ラキオス城 謁見の間

 

 「ふむ、待たせたなエトランジェよ」

 (うわー、むかつく面だなー)

 朔夜は一番初めにそう思った。

 なんせ謁見の間に通されそれから一時間近く待たされていたのだ。

 忍耐の限界に加えあの顔。 さわやかにブチギレそうになった。

 しかも周りの奇異なモノを見るような視線。

 「………………」

 (我慢、我慢だ…!耐えろ……!)

 『まあ、いざとなったら一撃必殺ですよ』

 さりげなく恐ろしいことを言う『灼熱』。

 王は上機嫌で、憮然とした(ように見える)朔夜の様子など気にもとめていない。

 だが、重臣連中は文句があるようだった。

 「なんだあの態度…」とか「エトランジェ風情が…」とか微妙に聞こえるので朔夜はますます不機嫌になっていく。

 (ああ、このまま『灼熱』の言うように一撃必殺しちゃおっかな〜♪)

 そして、そんなふうに危険思考に頭が汚染されていくのだった。

 

 朔夜がかなり危ないことを考えていると、王の隣に一人の女性が現れた。

 (わお………)

 落ち着いた物腰、気品溢れる態度、聡明さが見て取れるほどの澄んだ瞳、美しい顔立ち………

 そう、あらわれたのはまさに“お姫様”だった。

 

 

 「おお、レスティーナよ。アレが例のもう一人のエトランジェじゃ」

 「……彼が、ですか………」

 ……謁見の間に入ってすぐに眼についた。

 ものすごく不機嫌そうな表情でお父様を見る、私と同年代の男の人。

 まあ、不機嫌になる理由はわからないでもない。

 いきなりこんなところに呼び出されて、居心地の悪い雰囲気の中一時間も待たされたのだから。

 私だって不機嫌になるだろう。

 ……けれど、彼は私に気付くと不思議なものを見るような眼で私を見た。

 何かおかしなところでもあるだろうか?

 不安になってくる。

 あのユートというエトランジェとも違う雰囲気。

 一体なんなのだろうか?

 そうして考えていると、ふと眼が合った。

 ……びっくりした。

 とりあえず、私は彼のことが知りたくなって

 「エトランジェよ、そなたの名は?」

 ……そう、聞いた。

 

 

 「おお、レスティーナよ。アレが例のもう一人のエトランジェじゃ」

 「……彼が、ですか………」

 (へえ、レスティーナ、ね……)

 朔夜はその名前の部分にのみ反応した。

 別段、朔夜は女好きなワケではない。

 どこぞのヘタレのような朴念仁ではないが、特別色好みでもないのだ。

 だが、そんな朔夜でも目を奪われた。

 それほど美しい。ついジロジロ見てしまう。

 ……と、そうしたら偶然、眼が合った。

 互いに驚き、そして少しの間があき、やがて沈黙は破られる。

 ……姫君は尋ねた。

 「エトランジェよ、そなたの名は?」

 その声は澄んでいて、とても綺麗だった。

 

 「………………」

 朔夜はぼんやりとしてまるで何も聞こえていないようだ。

 『朔夜!名前名前!』

 「……あ、ええと…朔夜だ。吾川朔夜」

 (いかんいかん、ぼんやりしてた。これがお姫様パワーか)

 そう考えて気を引き締めなおす。

 『いろんな女の子に色目使いすぎです、もっと自制してください』

 そんなツッコミすら飛ぶ。

 (いやしかし……、お姫様ってやっぱすごいねぇ……)

 朔夜の世界でお姫様なんてものを見る機会などほとんど存在しない。

 だから姫様っていうものに若干の美化が施されるという側面もたしかにあるだろう。

 だが、レスティーナは彼女自身が問答無用にキレイだし、完璧だとさえ思えた。

 (……一部を除いて、な………はあ……)

 不意に少し目線を下げ、見なかったことにしてため息をつく。

 ビックウゥゥッッッッッ!!

 (!!!……すごい殺気だ………!!)

 恐ろしい寒気に朔夜はあたりを見渡す。

 「あ」

 眼が合った。通算二度目だ。恐ろしい目で睨んでいる。

 だが、その視線よりも朔夜はまるで思考が読まれているかのような反応に慄いていた。

 (これがウワサのニュー○イプか!?)

 その答えは、誰も知らない…。

 

 「で、サクヤ、といいましたか」

 「あ、はい」

 先程の一瞬のやりとりはどちらが上位者であるかを一瞬で決定した。

 レスティーナ>>>朔夜 だ。

 「我が国にエトランジェとして仕えなさい」

 反射的にはい、と答えそうになった。

 恐るべし条件反射の法則。朔夜は忠実な犬になりかけていた。

 だが簡単に肯定するわけにもいかない。代わりに、問う。

 「なぜ?」

 「理由など関係ない、わしらに従うのだ!」

 王が横から口をはさむが、

 「うっさい、髭は黙ってろ」

 そう言って、あしらう。

 シッシッってカンジの手の動きはまるで犬を相手にしているようだ。

 「ぬ………!!……貴様………!!!」

 王がなんか怒ってるけど無視、無視♪

 「答えを、レスティーナ王女」

 「……………」

 少しの逡巡を、姫が見せたような気がした。

 

 「……我が国は今、隣国との関係において緊張状態にあります」

 朔夜の問いに答える王女。

 その顔にはもはや先程一瞬見せたようなためらいはない。

 「……どのような事態にも対処できるようにするためには力が必要なのです。そのためには……」

 「強力な力を持つエトランジェが必要、ってわけか……」

 王女の話の先を感じ取り、言う。

 朔夜は、何か考え事をしたかのようなそぶりを見せると、再び尋ねた。

 「もし、その話を断る、と言えばどうなるんだ?」

 王女の表情に、苦渋が浮かぶ。

 「………従うつもりがないなら、実力行使をせざるをえません」

 「……エトランジェ相手に、か?」

 と、そこで髭(王)が再びでしゃばる。

 「ふん、ぬかりはないわ。……『求め』のユートよ、来い!!」

 「…………はっ」

 「だからぁ、髭は黙ってろって……ってユウト?」

 そう、そこに現れたのはあの、悠人だった。

 

 「おいおい、マジかよ、高嶺がエトランジェって……」

 「吾川も、エトランジェなのか……」

 この世界で初めての同じ世界の人間との、日本語による会話。

 それだけで、朔夜は昂揚していく。

 「吾川……」

 「ははっ!久々の日本語だ…!」

 「………え?」

 「こんなにうれしいのは校長のヅラを奪い取ったとき以来だ!」

 素行の悪さ、此処に極まり。

 「……ああ、アレか…アレはひどかった…入学式だったか?」

 「ああ。校長一人怒ってるんだけどみんな笑ってた……いや、いい笑顔だった」

 「あの日からお前は校内で知らぬものなしの有名人になったんだったなぁ……」

 「たしか俺は叫んだんだ、ヅラを片手に『お約束ッ!!マンセーッ!!』…てな」

 「あのときのお前、間違いなく輝いてたよ……」

 二人で遠い眼をしている。

 会話の内容はそりゃあもうヒドイものだが。

 ちなみに朔夜はその日以来校内ブラックリスト第一位もとい、天位を不動のものとした。

 

 「ええい、何を話している!!『求め』のユートよ、そのエトランジェをどうにかしろ!!」

 昔の思い出にふけっている二人に、王が怒鳴る。

 「……っ!…そうだ、吾川、俺はお前とは戦いたくない…。抵抗は、しないでくれ」

 「……高嶺……なんで、あの髭に従うんだ?」

 朔夜が王をチラッと見て、言う。

 「…………妹が、佳織が、人質にとられてる。それに、エスペリア達を見捨てるわけにもいかない」

 「人質、ね……そりゃあまた……ところで、エスペリアって誰?」

 「ああ、スピリットで、異世界に飛ばされて混乱してた俺の世話をしてくれた女の子だ」

 「へえ……」

 そこまで話して、再び沈黙。

 朔夜は少し考えた後、言った。

 「……お前には悪いが、タダで従う気にもなれない。俺を仲間にしたいなら、その力と、意志を見せてみろ」

 「な……!?」

 「ようするに、俺と戦えってことだ…!」

 朔夜は『灼熱』をかまえ、悠人に切っ先を向ける。

 「くそっ……!」

 戦いが、始まる。

 

 「……なんで、オーラフォトンを纏わないんだ?」

 二、三度打ち合った。

 互いにオーラフォトンを纏うことなく、少し剣の力を借りる程度で。

 「………『求め』は、面倒なことが嫌いなんだ」

 苦虫を噛み潰したような表情の悠人。その顔を見て、

 (嘘、だな)

 そう、直感した。

 (なんらかの影響で神剣を使えないのか……?)

 『一応、目覚めてはいる……みたいですね。でも、力をほとんど感じません』

 「なら、こっちが本気を出せばやる気になってくれるか?」

 「…………」

 悠人は答えない。

 (まあ、とりあえず力を見せつけてやる。いくぞ、『灼熱』)

 『りょーかいです、っと』

 「高嶺、見ろ。これが俺の力ってやつだ」

 そう言うと、『灼熱』から朔夜を覆うように紅いオーラフォトンが出る。

 熱気を孕んだ、炎のような光。

 それは、悠人を焦らせるのに十分すぎる力だった。

 

 「はあっ!」

 「くうぅぅぅううっっ!!」

 辛うじて朔夜の攻撃を防ぐ悠人。

 朔夜は紅いオーラフォトンを纏っているのに悠人はほとんど力を発揮していない。

 ゆえに、力の差は歴然だった。

 だが、唯一不思議なことはこれだけ発している力に差があるのに『求め』が折れない、ということ。

 どうやら『求め』も折られるのはイヤなようだった。

 「はああぁぁっ!!」

 「ぐうぅっ!」

 ただ、剣を振り回す。速く、より速く、打つ、打つ、打つ、打つ、………

 それでも悠人は倒れず、それどころか少しずつ順応してきている。

 (『求め』が悠人に力を貸しはじめているな……)

 『まあ、こんな状況ですから』

 そう考える。だが、

 (それでいい)

 そうも考える。朔夜は悠人の意志を見極めたいのだから。

 

……………………………

…………………………………………

……………………………………………………………

 

 どれくらい打ち合い続けたか。

 10分以上たった気もする。数分しかたってない気もする。

 とにかく、二人は打ち合い、悠人は攻めに転じれるほどに『求め』から力を引き出している。

 だが、朔夜は本気を出していないし、悠人ももっと力を引き出せるはずだ。

 そして、そのことを双方が理解している。

 「はぁっ!」

 「あぁぁっ!」

 打ち合う。

 だが二人はそれ以上の力を出そうとはしない。

 やがて二人の剣が離れ、距離を保ち、静寂が訪れた。

 

 「………スピリット、か」

 朔夜が呟く。

 背後には、3人のスピリットが並んで立っていた。

 (王女の仕業か……)

 「サクヤよ。いくらエトランジェとはいえ4対1では分が悪いでしょう。剣を、引きなさい」

 「……………」

 「聞こえなかったのですか。剣を、引きなさい」

 「吾川………」

 王女の勧告に、悠人の意思。

 それは、戦いの終焉を告げる。

 「……ちっ……しょうがないな。…………けど、このまま終わりってのは……なあ!」

 朔夜は剣を向け、神剣魔法を放つ――王に。

 「マナよ、炎のつぶてとなれ。……ファイアボルト!!」

 「……っ!!アイスバニッシャ――!」

 神剣魔法は青のスピリットにあえなく打ち消された。

 だが、今の魔法は周囲に動揺をもたらした。

 それもそのはず、朔夜は知らなかったが、みなエトランジェは王に逆らえないものと信じていた。

 その前提を、一瞬でブッ壊したのだから。

 「ほお、なかなかの反応速度だ。まあ、かなり威力を絞ったんだけど」

 そんなことを言って頷く朔夜は明らかな異端だった。

 

 「お、お前、どうやって……」

 悠人が信じられないものを見たかのように尋ねる。

 それもそうだ。悠人は今迄神剣の強制力に苦しまされてきた。

 それを無い物の様に――まあ実際ないのだが――王を攻撃したのだ。衝撃的だったに違いない。

 「?どうしたんだ?」

 強制力なんてカケラも知らない朔夜はただ首をかしげるだけだったが。

 『あー、朔夜、普通、エトランジェは王族に逆らえないんです。『求め』が強制力を発してるから』

 (強制力って、あの、頭痛いアレのことか?)

 『そうそう、で、いきなり朔夜が王様に攻撃したから、驚いてるんです』

 「おー、なるほど」

 朔夜は納得し、そして同時にマズイことをしたことに気付いた。

 (……あ〜、ど〜しよ〜)

 心の中で、朔夜は自分の軽率さを呪う。

 

 「ど、どうなっておるのだ!」

 王が悲痛な声で叫ぶ。なにせ絶対的な優位に立っているという自信を失ったのだから。

 「エトランジェは王族に逆らえんはずではなかったのか!!」

 そんな王様に対して、朔夜は

 (あー、なんか叫んでるなー)

 もうどうでもいいやー、みたいな、なげやりな態度だ。

 『他人事みたいなこと言ってないでどうにかしたらどうですか?』

 見かねて口をだす『灼熱』。

 (どうにか出来るならとっくにしてるって……もう、神頼みしかあるまい)

 『神様が何をしてくれるっていうんですか』

 (……例えば、選択肢を用意してくれる。とか)

 

  1  つい、うっかり……

  2  わざとですが何か?

  3  一瞬だけ、神剣に支配されていた……ような気がする。

  4  俺は君達を信じていた

 

 「うおおおおぉぉぉぉ!!」

 神は、降臨した。

 朔夜に4つの選択肢が与えられた。

 (さて、どれにするか……悩むなあ。個人的には2番がステキだと思うが……)

 『なんですか、3番は!!私はそんなことしませんっ!』

 (1番もお約束で捨て難いし……4番は、なんかカッコイイな)

 『ていうか、《つい、うっかり……》の内容が気になりますね……いったいお前は何をしようとしてたんだ、って思います』

 (いや、それが逆にイイんだ。……だが2番も妙に強気な所がいいな……迷う……そして4番はよくわからんがカッコイイ)

 『ていうか素直に本当のこと言ったらどうですか?』

 (それはダメだ、おもしろくない。……やっぱり2か……いや4………それとも1……よし、決めた…!)

 そして世にも愚かな言い訳が始った。

 

 「……ふう、実はな、神剣が強制力を働かせるには条件があるんだ」

 「「「…………?」」」

 もっともらしく語り始める。

 朔夜は嘘があまり上手くはないが、それでも髭程度なら騙せると思っている。

 「それは、『悪意』を以って王族に危害をはたらくことだ」

 「「「……………………」」」

 「故に、過失により結果的に危害が加えられた場合、強制力は発動しない」

 と、そこでレスティーナが口を開く。

 「………私にはあなたが故意に攻撃したように見えましたが?」

 「ああ、そのとおり、俺は故意に攻撃した。だが、威力は低かっただろう?」

 「……ええ、そうですね。容易にバニッシュされていました」

 「つまり、意識的にこのレベルの攻撃は効かないと思ったから攻撃できたんだ」

 「………それは、つまり……」

 「そう……………」

 朔夜は息をおもいっきり吸い込み、そしてスピリット達の方へ向くと、

 「俺は君達を信じていた!!」

 そう、叫んだ。

 

 「「「「………………………………」」」」

 一同、沈黙。

 そりゃそうだ。彼らにしてみれば、何言ってんだコイツ、って感覚だろう。

 だが、そんな空気を『ノー問題』ってカンジで全て無視して語り続けようとするのが、朔夜だ。

 「俺がこの国に仕えるようになれば、彼女たちの仲間になるだろう?」

 「え、ええ……」

 少し顔が引きつっているレスティーナ。

 「仲間の力を信頼することが出来ないようなヤツは戦いに勝つことはできない、違うか?」

 「そ、そうだな……」

 かなり顔色が悪い悠人。

 「……まあ、要するに俺は彼女達の仲間になるんだから、今後実力だけでも信じられるように腕試しをしておきたかったんだ」

 「ふむ………!」

 朔夜がこの国に仕える気だと知って、正常な思考が出来ない王。

 つまり、王は騙されかけてます。

 そして朔夜は後ろをふりむきながら尋ねる。 

 「驚かせて悪かったな、エスペリア」

 「は、はい……ってどうして、私の名前を?」

 驚くエスペリア。もう朔夜の術中にはまりはじめている。

 「ああ、高嶺……いや、悠人が言ってたんだ『異世界に飛ばされて混乱してる俺を優しく世話してくれた女の子だ』ってな」

 『優しく』をさりげなく入れるあたりがなんとなくせこい。

 「君を見た瞬間、すぐにわかった。ああ、この娘がエスペリアだな、って…」

 とても綺麗な笑顔だ。

 「そ、そうですか………?」

 嬉しそうなエスペリア。朔夜の作戦は完璧に成功した。

 『いや、朔夜ってすごいね』

 そう言ってる『灼熱』はとりあえず後回しにして、審判は下される。

 

 

 「ふむ、エトランジェ、サクヤよ」

 「はっ!」

 王の声に鋭く反応する。誰が見ても忠誠心を誓っているように見えるふるまい。たしかに、朔夜は天才かもしれない。

 「貴様の先刻の言葉、嘘偽りはあるまいな?」

 「全て真実です」

 内心は、(嘘じゃない……ただ全て結果的にそうなっただけだ!)とか考えてる。

 そう、事実朔夜はエスペリア達の実力を知ることが出来たし、ラキオスに仕える気もある……王に仕える気はないが。

 「よかろう、先刻の無礼、なかったことにしよう。だが、次はない。心しておけ!」

 「はっ!ありがとうございます!」

 こうして、朔夜の作戦は大成功を収めた。

 ちなみに、他の方々の心境を一部語ると、

 

 レスティーナ(お父様……なんであんな嘘に……馬鹿ですか?)

 悠人(相変わらず、やってくれるな……しかし、王、馬鹿だろ…)

 エスペリア(サクヤさま、ですね……おぼえておきましょう)

 

 などなど、一部の人以外はおおむね、『はあ?こいつらありえねぇよ』ってな感想だった

 

 

 ところで、このあとすぐに王は「ふぅ……後は任せたぞ、レスティーナ」とか言って退出した。

 かなり心臓に悪い出来事が起こったのでしょうがないのかもしれない。

 そして、王の代わりにレスティーナが問う。

 「さて、サクヤよ。この国に仕えるということでよいのだな?」

 「はい、……まあ欲を言えば王女様に専門的に仕えたいですが」

 「……それは、どういう意味ですか?」

 「だって、『お姫様に仕える騎士』って格好いいでしょ?」

 「……………………………」

 沈黙。王女の視線が痛い。

 「ま、まあそれは冗談として、先程言ったことで何も問題はありません」

 「……そうですか。では、命じます。エトランジェ、サクヤよ」

 「はっ!」

 「エトランジェユート、エスペリア、アセリア、オルファリルと共にリクディウスの魔龍を討伐しなさい」

 「はっ!………って、魔龍?」

 魔龍――聞きなれない単語。

 「ええ。出発は明後日、今日明日は館で身体を休めなさい」

 「はあ…」

 「話は以上です。詳しいことはエスペリアに聞きなさい」

 それだけ言うと、レスティーナは奥に行って見えなくなった。

 「ええと……」

 朔夜は4人の方を向くと、ニヤッと笑って

 「とりあえず、よろしくな」

 そう、言った。

 

 

 

 

 

 あとがき

 

 全然話進んでないですね……

 いや、もうしわけないです。

 思いつくがままに書いてますので、変なところ多数だと思いますが生暖かい目で見てください。

 本編では、朔夜の馬鹿さとかをメインに書き出してます。

 ですから、こんな話になりました。ごめんなさい。

 いつか、シリアスになります。

 そのときまでは、よろしくお願いします。

 

 

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