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 見知らぬ世界であなたは生き延びなくてはならない。

 死ぬことはゆるされない。それは約束。それは誓い。

 もうすぐ出会える私の一部。私の器。私の翼。

 さあ、もうすぐ目覚めの時。共に暴れ舞いましょう。

 

 

 現在位置不明

 

 「ん…………ッ………………?」

 朔夜は右手に不自然な重量を感じ、目覚めた。

 「なんだ……?」

 「剣……?………紅い………、……剣?」

 寝ぼけているのか、状態を理解できていない。

 「うおッ!」

 ごん

 滑って、ついでに頭をぶつけた。樹に。

 「いった〜……何、…木?つーか、ここ何処だ?…………森?」

 見渡す限りの木々はここが森であることを示している。…林かもしれないが。

 「なんで、俺、こんなところで寝てたんだ…?」

 「………………」

 「……………………………」

 ぎゃあぎゃあぎゃあ――――なんかの動物の声。

 「………………ッ!」

 寝ぼけた頭が一瞬でクリアになる。

 「やばいな、ここ……。なんか絶滅したニホンオオカミとかいそう…」

 わおーん―――――なんかの遠吠え。

 冗談も深刻な状況に早変わり。

 「!!やっぱ、いるんだ…。えっと、こういうときは……」

 「…………………えっと……………」

 「そう!この前読んだ『だれでも簡単、サバイバル〜無人島でも死にません〜』によれば、こういうときはまず落ち着くんだ」

 そうとう胡散臭い本を読んでいる。

 「それに『誰でも使える催眠術〜自己催眠編。あなたもウハウハ〜』には混乱した場合、まず現状を把握せよ、とあったな…」

 なんでそんな本を読んでいるのか。というか何処の馬鹿がそんなものを書いたのか。

 「よし、まずは現状把握だ!」

 凄まじい思考だ。朔夜はきっと今までもこうやって生きてきたに違いない。

 

 「まず、俺の名前は吾川朔夜、17歳。8月6日生まれのしし座で血液型はB型、一人暮らしで彼女募集中………」

 自分のプロフィールを赤裸々に森の真ん中で語る男。…少なくとも絵にはならない。

 「特技は反復横とび、好きな食べ物はあんみつ、嫌いな食べ物はピーマン、それから……………………」

 「………………趣味は一人カラオケ、特技はジャンケンの後出し、ええと他には………じゃなくて、何を言ってるんだ俺は…!」

 「『どんなときもうろたえるな』という師匠の教えを忘れたか!明鏡止水だ!」

 一人叫ぶ。師匠は言わずと知れたマスター○ジアだ。

 「ふう……とりあえず、一番新しい出来事を思い出せ……」

 一人カラオケ。

 「違うッ!…たしか…放課後なんとなく神社に行って、よくわからない光に包まれて…気づいたら剣を持って森の中で寝てたんだ……終わり」

 早速行き詰まった。

 「俺、適当すぎだろ………」

 「むしろ、ヤクザの抗争に巻き込まれて、剣持たされて特攻したけど善戦むなしく捕まり、ここに放置されたとかの方が………マシだ。たぶん」

 「俺、生きてけるのか………?」

 無理っぽい。

 

 「とりあえず、どうしようか」

 朔夜がこれからのことを考えていると、

 「ぐ〜〜〜〜っ」

 腹が鳴った。

 すばらしい生命力だ。

 朔夜は知らないが、実はここに来て半日程度経過している。

 「ん?俺、そういえばコンビニでメロンパン買ってたよな。」

 こんなときだけ準備がよかったりする朔夜は、微妙に効率がいい人種だったりする。

 勉強道具などロクに入っていないカバンからメロンパンを取り出す。

 「おお、あったあった。それじゃ、いただきまーす」

 そして、今まさに摂取せんと口を開け―――

 ドォォォォォオォォォオォォォォォォォォン

 爆風と共に吹っ飛んだ。

 「……………………………………………?」

 あまりにも理不尽な目の前の出来事に彼の脳内は混乱しきっていた

 

 『隊長、重要なエネルギー源が原因不明の爆風により消失しました!!』

 『何!?どういうことだ二等兵!』

 『分かりません!情報が錯綜しています!』

 『くそ、どこの手の者だ!』

 『隊長、エネルギー供給作戦は失敗に終わりました、退避を!』

 『くそ……信号弾放て!』

 …………ってなカンジだ。

 

 「…………………………………。」

 「……………………………………………………。」

 「…………………………………………………………はっ!?」

 「そ、そうだ………俺のメロンパン……………」

 何よりもメロンパンのことを考えるのか。

 目の前には泥水にひたりとても食べられそうな状態ではない何かが無残にも転がっている。

 「…………………………………………!」

 「……………だ、誰だよう…俺のメロンパン、返せよう…」

 「くっ………ちくしょう…………っ。俺の、俺にとってのエメラルドを……」

 涙(パンに捧げた)はすぐに怒りに変わる

 「このやろう、怒りのパワーは俺を金髪の戦士に変える!出てこい、くそったれがぁ!」

 爆風のあった方向を睨む。

 その声に導かれて、赤い影が朔夜に迫る。

 当然、金髪の戦士にはなっていない。

 ………………………………………………………………………………………………………………………………

 

 『ラスト・イハーテス?(敵か?)』

 突如、空から赤い少女が降りてきて、問う。

 「あ………………?」

 (敵か、って?つーかメロンパン……いやそれより…何コイツ?周りに何か浮いてるし…赤いし…。それに、なんで俺は知らん言葉がわかる?)

 混乱している朔夜を無視して少女は、さらに問う。

 『ラ・エノウィ…ラスト・デウネ・ラナ・レナ?(おまえは…人間ではないのか?)』

 (人間じゃない?コイツ、何言ってんだ?見るからに人間だろ。おかしいんじゃねえの)

 朔夜が後ずさると、少女は剣を構え、呟いた。

 『クー・エノウィ・ラレーネ、ソサレク(逃げるなら、殺す)』

 (そりゃ勘弁)

 「いや、まて、待ってくれ」

 「………………?」

 首をかしげる赤い少女。

 どうやら通じていない様子だ。

 「いや、その、だから、剣をおろしてほしいというか」

 ジェスチャーも交える。

 「…………………………!」

 うなずく少女。

 「そうそう、やっぱ人間コミュニケーションは大切だ………え?」

 剣を構える少女。

 「いやそうじゃなくて」

 再度ジェスチャー。

 戦ってはいけません、とアピール。具体的には、手をバツの形に合わせているだけだが。

 「…………………」

 こくこく。

 頷き、剣を振りかぶる

 「わかってねえじゃん―――!」

 命をかけたツッコミ。

 当然無視。

 そして、赤い少女は朔夜に向かい剣を振り下ろした――。

 

 振り下ろされる剣を見て、朔夜は思う。

 (なんで…こんなことに)

 答えはない。

 (俺は…死ぬのか)

 それは恐怖。

 (死にたくない)

 生への執着。

 (死んでたまるか)

 それは、生きる意志。

 右手には――剣。

 (そう、俺は――)

 剣を強く握り――

 「まだ死ぬわけにはいかないんだっ!」

 全力で――構えた。

 

 目の前の敵の攻撃を――『防ぐ』。

 「つーか、無理!速い!見えねえ!」

 そう、少女はすさまじく速かった。普通の人間のはずの朔夜が初撃を防げたのが不思議なほどに。

 「何、コレ!?赤いから通常の3倍なのか!?俺、全然ダメじゃん!カッコ悪ッ!!」

 叫びながら逃げ回る。だが――

 「…………………………………」

 ちゃき。

 剣――双剣を構える。無表情で。

 「怖っ!ちょ、まて、まってくれ、…っとぉ!」

 樹に足をとられ、転ぶ。

 少しはなれた場所からこちらを見つめる、無常な悪魔のような少女。

 ニヤリ

 こころなしか少し笑ってるような――

 ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ

 コワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイ

 「ヤバ………」

 相手はこっちより明らかに上手。

 「…………………………」

 無言で近づく赤い少女。はっきり言って、怖い。

 状況は絶望的。力、速さ、剣技。全てが圧倒的。

 推定される未来、現在ナンバーワン―――死。

 (マジ勘弁…けど……何にも出来ねえ………)

 「くそ………。どうにもならねえのかよ…だれか、助けてくれ……!」

 絶望の中、苦し紛れに放った朔夜の声は――――――――。

 偶然にも『彼女』の目覚めの鍵となる。

 

 

 

 ――主の危機、及び要請を確認。

 ――封印レベル第四位まで開放。それにともない記憶も一部凍結を停止。

 ――マナ充足率、60%突破。通常戦闘可能。熱量増加。

 ――神剣の疑似名称『灼熱』で固定。

 ――現時点、契約不履行。長期プロセス省略。全工程完了。

 ――ただ今より主たる朔夜への接触及び救済を行います。

 

 

 

 『力が…必要ですか……?』

 突然の女の人の声。

 「え…!?」

 それに驚く朔夜。

 『ですから…力、必要ですか?』

 少し投げやりになってる気がする声。

 「あ、はい…。だ、誰…ですか…?つーか、何処に…?」

 当然の疑問に、

 『あなたが右手に持ってる剣です』

 その声は、当然でない答えを返した。

 「え…、コレ…?」

 『はい、『灼熱』といいます。さっきからなんか勝手に戦ってたのでうるさくて目がさめちゃいました』

 「………………………………」

 そんなこと言われても…という表情になる朔夜

 (つーか、剣です。って言われても………なあ。それに『灼熱』ってなによ。名前?)

 「なあ、真面目に答えてくれ」

 『真面目に答えてます』

 はっきりと断言される。

 「いや、でもさ、普通剣は喋らないだろ?」

 『永遠神剣ですから』

 自信満々に答える、自称、剣。

 「永遠神剣…?なんだ?それ」

 『そのことはまた後で。それよりも、なんかこっちに向かってきてます』

 「は!?」

 警告どおり、さっきの少女がこっちに向かってきていた。

 「うわ、ヤバ。なあ、なんか手はないのか、……ええと、『灼熱』?」

 『はい、まあ今の状態でも少しだけなら力を貸せますし、それならなんとかなります…たぶん』

 なんか不安だ…

 「たぶんって…なんとかって………っ!?」

 突然、朔夜の身体に力がみなぎる。 

 その力は、今まで感じた全ての快感に勝る。

 「おお!凄い、これならいける!」

 『はい、その状態で……《逃げてください》。こちらも可能な限りフォローしますから』

 「え?逃げるの?」

 朔夜の疑問に、剣は当たり前のように、言う。

 『はい。その程度の力を手に入れたところで勝てるわけありません。相手は神剣に心を飲まれてるんですから。』

 (神剣に心を飲まれる?つーか、コレでこの程度?)

 「よくわからんが…勝てないんだな?」

 『はい。ですが、相手のハイロゥは幸いウイングハイロゥではないですから逃げるだけなら可能でしょう』

 (ハイロゥってなんだよ。ウイングは…翼だよな。それって……………もう、いいや。とりあえず言われたとおり逃げよう)

 朔夜はこの状況で、ベストな答えを導き出す。つまり――――――気にしないこと。

 (さて、ちょいとがんばりますか)

 そうと決まれば、

 「よし、じゃあ、逃げるぞ―――!」

 妙に元気っぽい朔夜。

 『はい!行きましょう!ダッシュです!』

 剣もノリがいい。

 

 絶体絶命の絶望の世界に、仲間という名の希望の光が注す――

 

 

 

 リュケイレムの森 北部

 

 「この辺りですかね〜スピリットの反応があったのは〜」

 森の中を歩く影が――二人。

 「ハリオン、遊びにきてるわけじゃないんだからお菓子を食べながら歩かないでちょうだい」

 ハリオンと呼ばれた間延びする喋り方の少女は、それでも食べるのをやめない。

 「まあまあ〜ヒミカもひとつ、どうですか〜?」

 「けっこうです。それよりもう少し緊張感を持ちなさい。もしかしたら、いきなり襲われるかもしれないんだから」

 ヒミカという赤髪の少女は、真面目な性格であるようだ。

 それに対し、ハリオンはのんびりしている。

 「でも、激しい気配は感じませんし〜」

 「それでも、用心に越したことはないわ」

 「それもそうですね〜。いきなり襲われても困りますし、そろそろ片付けます〜」

 お菓子の入った袋を片付け始める。

 「そうしてちょうだい。それで、何処にいるのかしら…」

 「近くには、いないようですね〜」

 遠くを感じるように見据える。

 「いないわね…ハリオン、あなたは?」

 「ん〜………見つかりません〜。もう少し、歩いてみません〜?」

 「そうね…そうしましょうか」

 

 「あ、見つけました〜あっちです〜」

 そう言って、森の奥を指差す。

 「あっち?……ん、いたわ。どうも眠ってるみたいね…ちょうどいいわ」

 「そうですね〜どんな子でしょうか〜」

 「さあ…まあ、もうすぐわかるわ。急ぎましょ、ハリオン」

 「はい〜」

 二人の少女は向かう。新たに現れたスピリットの元へ。

 

 

 

 リュケイレムの森 南部→北部

 

 「まだ、走らなきゃいけないのか、『灼熱』!?」

 森を疾走しながら、走る男が一人――――朔夜である。

 『ん〜そろそろ、いいですかね。』

 その声を聞いて、走るのをやめる。

 「た、助かった…。もうクタクタだ。いくらなんでもあの速さはキツイ。道路交通法違反だ。」

 『や、ここ道路じゃないですから。それに、もっと速いのもいますよ』

 「勘弁してくれ……」

 うずくまる朔夜。かなり追い詰められていたようだ。

 

 「それで、なんなんだこの状況は」

 『もうちょっと具体的に聞いてください。何から答えればいいかわかりません』

 「じゃあまず、ここは何処だ。」

 『此処はラキオス王国の南部にあるリュケイレムの森です』

 「ラッキー♂……?流刑レム……?」

 わけのわからない単語に混乱する朔夜。

 『違います。ラキオスっていう国のリュケイレムっていう森の中にいるんです』

 「知らねえ…どこだよ?日本……じゃあねえな………ヨーロッパ?」

 『いいえ、地球上ではありません』

 「は?……………他の星とか?」

 冗談交じりに聞く。

 『いいえ。…分かりやすく言えば、異世界です』

 「………異世界?」

 『はい。アナザーワールドです』

 

 「異世界…ねえ……。それはまた……」

 『信じられませんか?』

 「正直、信じたくはないな。けど、反論することもできない。とりあえず、信じる」

 真剣な表情で言う、朔夜。

 『ありがとう。こんなに物分りがいいとは思いませんでした。他に、質問は?』

 失礼なことを言う、『灼熱』。

 「どういう意味だ、それは。………まあいい、次の質問はあの赤い女について。なんだ?ありゃ。」

 『彼女はスピリットと呼ばれる、この世界に存在する妖精のようなものです』

 「………妖精?」

 『はい。ですが、この世界では人間が妖精を支配しています。そして、彼女たちは戦争の道具とされるのです』

 「あんなに、強いのに?」

 『はい。妖精は人間に逆らえないように教育されているのです』

 「……そうなのか。変な話だ」

 『……はい』

 「ところで……妖精にしては、アレ、恐ろしかったぞ」

 おびえた様子の、朔夜。

 『それは、神剣に心を飲まれているからです』

 「そう、その神剣……永遠神剣とか言うのは、一体なんだ。おまえも、永遠神剣なのか」

 『はい。…永遠神剣とは簡単に言えば特別な力をもった意思のある剣のことです』

 「特別な力って……いきなり体が軽くなった、アレか」

 その感覚を思い出すように体を動かす。

 『…それは力のほんの一部です。炎や風、氷などを操ることも出来ます。それらは神剣魔法と呼ばれます』

 「神剣魔法……。永遠神剣は、誰でも使えるのか?」

 『いえ。神剣を扱えるのはマナによって肉体が構成されたスピリットかエトランジェだけです』

 「マナ……?エトランジェ………?」

 『マナとは、万物に宿る生命エネルギーのようなものです。まあ、これは口で言ってもわからないでしょうからこのことは後回しで』

 「……ああ。で、エトランジェって何?」

 『異世界から召還された者のことを示す言葉です』

 よぎる予感。

 「異世界から召還された…?それって…………」

 『はい。あなたのことです朔夜』

 

 「えっと…それじゃあ、俺にも永遠神剣が使えるのか…?」

 (あの赤い少女のように?)

 『はい。しかもエトランジェは普通のスピリットよりも強い神剣と契約するので、強いんです』

 「でも、あの女の子の方が強かったぞ」

 『それは、まだあなたが私と契約してないからです。契約すれば、余裕で楽勝です。私、強いんですよ』

 えっへん、という声が聞こえそうなくらいの自信である。

 「そうか……」

 考え込む朔夜。

 『………あの、『それじゃあ、契約しよう!』とか言わないんですか?』

 「ん?ああ、その前に、質問。」

 『何です?』

 朔夜は、少しためらいつつ、言う。

 「契約すると、神剣に……つまり、お前に…心を、飲まれるのか?」

 『……ああ、そのことですか。本能が強い神剣は契約者を支配しようとしますが、私は大丈夫です。…そんなことをしても、楽しくないですから』

 「……そうか。…まあ確かにお前は大丈夫そうだ」

 安心したように、言った。

 『そうですか。…それに、心を強くもっていれば簡単に支配されることはありません』

 「そうか、それじゃあ………契約、するか」

 『はい………、……!この気配、さっきの…………!』

 「どうした?なんか、あったのか?」

 『はい、さっきのスピリットがこっちに向かって来ています!このままでは、追いつかれる………!』

 ざわざわとした気配が、近づく。

 「……契約するぞ」

 『え………?』

 「契約すれば、勝てるんだろ?だったらそれ以外、道はない」

 『そうですね…………、分かりました……!今、此処に契約しましょう、朔夜!私は、永遠神剣第四位『灼熱』――――――』

 『灼熱』の喜びの声と共に、契約が、行われた。

 

 

 

 ――――アイツの気配はこっち。

 ――――スピリットじゃないのに、人間じゃない、アイツはこっち。

 ――――殺したくて仕方がない。どんどん近づいてる。

 ――――早く、殺して、マナを奪って。

 ――――ほら、見えた。あと少し。

 ――――何?アイツの気配が大きくなってる。

 ――――すごい、力。怖い。殺される。死にたくない。

 ――――死にたくないのに、体は止まらない。

 ――――怖いけど、戦いましょう、とってもとっても強い、アナタとワタシ。

 

 

 

 『………契約、完了です。どうですか、調子は?』

 「くっ………スゴイ、力だ。それに、全身が、熱い………!」

 『なにせ『灼熱』ですから。炎、操れたりしますよ』

 「ん…そうか……敵は?」

 『ん……来ます』

 赤い少女が現れる。朔夜との距離は30メートル程度。

 「『灼熱』、相手と会話、できるか?」

 『私自身は出来ませんが、今の朔夜ならできます』

 「そうか………おい、お前、今度は逃げねえ……来い!」

 「………………」

 コクリ

 うなづく、少女。朔夜は、笑う。

 そして、赤い少女は剣を構え、突っ込む!

 朔夜も『灼熱』を構える。

 

 「アアアアアアアアアアアアアア!」

 「はああああっ!」

 森中に響き渡る二人の声。

 ガギィィィィィィン!!

 交わる剣。その力は、圧倒的に朔夜が上。

 「よし、これなら……!」

 数回斬り合うと少女も不利を理解する。

 「クッ!」

 少女は放れ、唱える。

 「《永遠神剣の主の名において命じる……マナよ、その姿を火のつぶてに変え敵を焼き尽くせ…ファイアボルト…》」

 「なっ!?」

 朔夜に向かって炎の弾が飛来する。

 『朔夜、上に跳んで!!』

 「くっっ!」

 炎が、爆発する。

 「……危ねぇ!そうか、この技が俺のメロンパンを……」

 『メロンパン?何言ってるんですか!それより、第二波、来ますよ!』

 「《………マナよ、その姿を炎の球に………》」

 少女は再び詠唱を始めている。

 「マジか!なんか方法は!?」

 『………こっちも使うんです!神剣魔法を!より大きな炎で相手の炎を包み込みます!』

 「こっちも!?どうするんだ!?」

 『……こうするんです!!』

 「!?……………なんだ?この感覚は…………」

 朔夜に、ある神剣魔法について、炎を操る術について、それらについての感覚が一気に流れ込む。

 「……便利な能力だな……」

 その間にも少女は詠唱を終える。

 「《敵を包み込め………ファイアボール…》」

 炎の球が朔夜に迫る。

 『いいですから、早く!!』

 「そうだな、……『灼熱』の主、朔夜が命じる!マナよ、全てを包む炎弾となれ――」

 そして、炎は放たれる。

 「――ファイナリティ・フレア!!」

 

 

 

 

 

 あとがき

 はい、全然内容進んでませんね。すいません。許してください。

 どうでもいいですが、主人公普通のリアクションばっかり?と思ってもそこは無視で。

 あれだけピンチになれば誰だって余裕なくなります。

 ちなみに朔夜が今回異常に物分りがいいのは疲れきってるからです。

 それと、最後の神剣魔法、オリジナルですので。念のため。

 がんばって書いてるので、生暖かい目線で見守ってください。では。

 

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