Eternal Strife 〜果ての彼方〜


―――――<幕間〜静観する影〜>


『……拙いな』
何処とも知れぬ闇の中。黒い外套を纏う者が、手にした水晶球を覗きながら呟いた。
その姿は、例えるならば中世の魔術師に酷似していた。外套は全身を覆い尽くし、フードを深く被っている為にその顔貌さえ判別は出来ない。唯一、声の感から、恐らくは男性であろうと言う事が伺えるのみであった。
『これは……失敗、か?』
あれの仕事は完璧であった。とすれば、その原因は彼の方にあると予想されるが―――。
『……蛙の子は蛙と言う事か……』
黒い外套がその結論に達するまで、そう時間はかからなかった。
つまりは、彼は彼女に似過ぎていたのだ。
その性格に在り方、姿形から顔貌に至るまで。髪色と瞳色、口調こそ違うが、その存在は生き写しとでも言えるほどに。
彼の銃を構える姿など、かつての彼女を想起させるほどであった。
そも彼(か)の―――【御影】の血の最たる能力は記憶と能力の継承である。
自己の生存・戦闘特化。それに関する記憶と経験を取捨選択して次代へと繋ぎ、次代はその記憶を擬似体験として所有し、その全てを生かす事の出来る資質を以て生を享ける。
遥か古の初代で既に基礎は築き上げられ、連綿と受け継いで先々代と先代で遂にその血は完成している。
炎の具象化能力も有するが、これは飽くまで付加的な異能に過ぎない。
彼女と同等、或いはそれ以上の力を持っているならば、或いは契約への干渉も―――。
『……然し、それでも全ては定めの中にある。偶然であろうと、それは予定調和を遂行する為の必然でしかない……』
確かに門と繋がれた世界は想定されていた世界とは異なる。時間軸も僅かだが違っている。
だが、それでも定めは変わらないのだ。

『それを識りながら、君は今も彼を護り続けると言うのか……?』

その声は、ただ静かに闇の中に響いて―――。