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 イレギュラーズ・ストーリー

 

 

第十章after  決意 

 

世の中に失望していた。

何故、この世界はこんなにも醜いのだろうか。

何故、この世界はこんなにもつまらないのだろうか。

毎日がただなんとなく過ぎていく。

変わり映えの無い日常。

日常という枷にとらわれ、自分が少しずつ腐っていくのが実感できた。

そこから抜け出したいと思う自分がいた。

でも抜け出す努力をしようとしなかった自分もいた。

所詮自分では変えることが出来ない。抜け出す事などできないと、どこかで諦めていた。

周りからは孤立していたがそれでも良かった。

この、くだらない世界に囚われた奴等と、違う自分を演じる事で、自分が実感できた。

そうしないと、この世界はあまりにもつまらなかった。

世の中に失望していた。

・・・・失望しか出来ない自分に、・・失望していた・・・・・。

 

そんな時だった。

異世界に飛ばされ【真実】と出会ったのは。

・・・・世界は変わった・・・。

何もかもが喜びにつながった。

失望しか知らなかった自分が、こんなにも喜びに包まれていた。

見る事、聞く事、触れる事、考える事さえ新鮮だった。

もとの世界には無い刺激が数えられないほどあった。

【真実】はいろんな事をオレに見せてくれた。

【真実】はいつでもオレを支えてくれた。

そんな【真実】がいたからこそ素直に自分を出せた。

孤立し、冷めていた自分が、こんなにも感情をむき出しにしている。

もう一人じゃなかった。

【真実】は最高のパートナーだった。

生涯において、これ以上のパートナーが現れるだろうか。

【真実】が風呂好きと知った時には笑ったものだ。

【真実】は笑うオレを見て憤慨していたが、オレはそんな人間くさい【真実】をますます好きになった。

神剣として妙に悟っているような印象を受ける時もあれば、まるで人間のような感情や行動を表す時もあった。

オレも【真実】と二人の時だけ素直に自分を出す事が出来た。

【真実】とは常に一緒だった。

もとの世界の顔見知りだったユートと、行動を共にする事になった時も。

ヘリオンという大切な恋人が出来た時も。

どんな時でも【真実】とは一緒だった。

全てにおいて特別なヤツだった。

 

・・・・【真実】は失われてしまった・・・・。

いろんな事を知りたい、という自分の欲求を優先させて【真実】を失ってしまった。

自分が弱かったせいで【真実】を失ってしまった。

この世界で、オレがオレでいられる全てを失った。

また一人になった。

支えの無くなった人間など脆いものだ。

少しの衝撃で崩れてしまう。

それでもオレは崩れるつもりは無かった。

もう一度・・・、いや何度でも【真実】を手にするために・・・。

倒れるわけにはいかない。

諦めるわけにはいかない。

ずっと【真実】に支えられ、助けられてきた。

今度はオレが助ける番だ。

【真実】はこうだった・・・。【真実】はああだった・・・。

・・・・・【真実】の事を過去形なんかで語りたくない・・・。

再び【真実】を手にする方法があると言うのなら、・・・如何なる手段を用いてでも必ず成し遂げてみせる・・・。

たとえそれが血塗られた道だったとしても・・・・。

これで【真実】が助かっても、【真実】は怒るかもしれない。

説教するかもしれない。

・・・それでもいい。

何を引き換えにしてでも【真実】を助けてみせる。

だから待っててくれ【真実】。

 

                                                                            続く

あとがき

今回は十章のアフターですね。

十一章に入る前に書いておきたかったシンの決意です。かなり短いですけど、その辺は勘弁してください。

さて次の十一章の予告ですが、言える事はおそらくシンは、ほとんど出てこないだろうと言う事です。まだ完全には決まってないのですが、多分そうなると思います。

では次もよろしくお願いします。

 

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