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「お前もエトランジェだろう。力がありながら何故ラキオスに従う?」

     「・・・それから俺の事はシンでいい。」

「・・それが遺言でいいんだな・・・・?」

     「戦争を起こすためにか?戦争でスピリット達を殺すためにか?」








イレギュラーズ・ストーリー

第三章 相まみえる刻


《ラセリオ北東》

・・・その時マナが揺らいだ。

「っ!?」
『・・・・・。』
槍を持つ一人の男が眉をひそめ、槍を強く握り締める。
「・・・・・今の気づいたか【真実】?」
誰にとも無く呟く。
ボンヤリと槍がひかる。
『・・・・はい。どうやら大量のマナが解放されたようです、シン。』
シンと呼ばれた男は何かを考えるかのように眼をつぶり、集中する。
瞼の下では、何かを追うかのように眼がキョロキョロと動いている。
暫くすると、眼を開け、ため息を吐く。
「ここからじゃ見えないなぁ。何が起こったんだ?」
お手上げのポーズをとり、【真実】に聞いてみる。
『これだけ大量のマナが解放されたとなると、恐らくは、・・・・・龍でしょう。』
「・・・龍?」
シンの情報の中には龍についてのモノもあったが、もちろん実際にあった事はない。故に、どういう存在かイメージできない。
『はい。恐らく、ラキオス地方を古くから守ってきた守護龍、サードガラハムが討たれたのでしょう。』
眉をひそめるシン。
「となると討ったのは、やはり・・・・。」
『はい。間違いなくラキオスのスピリットと・・・・。』
何かを悟らせるかのように、余韻を残す【真実】。
「エトランジェ・・・、・・・・・高嶺か・・・。龍を倒せるほどまで力をつけた、と言う事か・・・。」
『単体では龍は倒せないでしょう。あくまでスピリットが協力してこその力だと思いますよ。』
「ふむ・・・・。まっ、いっか。」
少し考え込むが、すぐに顔を上げどうでもいい、とでも言うかのように口に出す。
「よっしゃ!ラセリオに帰るぞ。そろそろ接触してくるだろうしな。」
『接触したらどうするつもりなんですか?』
【真実】が接触後の方針を聞く。
「ん?うーん・・・そうだな。城にお呼ばれされてぇ・・・、後はまぁ、せいぜい引っかき回す、かな?」
特に考えてないと言った感じで答えるシン。
『はぁ・・。要するに、何も考えてないと・・・?』
【真実】がため息をつく。
「はっはっは。気にするな。少なくともラキオスに下るつもりは無い。安心したまえ【真実】君。」
芝居がかった口調で答え、ラセリオへと引き返すため南西へと進路をとる。
『まっ、いいですけどね。せいぜいラキオス王に弱みを握られないようにしてくださいね。』
【真実】も憎まれ口叩いて答える。

ラキオスの関所を越えて一週間が経過していた。


《ラキオス王城にて》

「よくやった、エトランジェよ。これでわが国は龍が保有していた大量のマナを得た事になる。」
王座に座る、白ひげを生やした初老の男が、目の前に跪くエトランジェに向かって、形式どおりの賛辞を言葉にする。ラキオス国王その人である。
「このように簡単にいくならば、もっと早くに邪龍をうつべきであったな。はっはっはっはっは。」
癪に障る笑い声を聞きながら王に礼をとるエトランジェ、【求め】のユートは思う。
(エスペリアたちがどれだけ苦労したと思ってるんだ。)

礼をとってはいるが、心の中では王に対して憎悪の感情しか持ち合わせていない。何せこのラキオス王は自分の大切な妹を人質に取り、人殺しを強要させているのである。そして既に、何人かのスピリットを切ってしまっている。
そしてここにいる連中は、いやこの世界の人間はエスペリアたちスピリットを道具か何かとしか思ってない。

この世界に来て何も知らなかった自分を支えてくれたエスペリアやアセリア、オルファのことを思うと、この世界の人間に対しては負の感情しか生まれてこない。

「エトランジェよ、お主をスピリット隊の隊長に任命する。これからはお主がスピリット共を率いるのだ。スピリット共もある程度自由にしてよい。せいぜい壊さぬようにな。見事ワシの期待にこたえて見せよ。」
「はっ。」
(何勝手な事言ってるんだ。俺は、お前やこの国の為に戦ってるんじゃない!)
憎憎しく思いながら、こんな奴に礼をとらねばならない事に腹が立つ。
 そうこうしている内に王が退出するために立ち上がり、隣にいたレスティーナを見る。
「レスティーナよ。例の事をエトランジェとスピリットにやらせるのだ。」
「わかりました、父様。」
レスティーナが答え、王が退出していく。

「さて【求め】のユートよ。準備が整い次第、スピリットと共にラセリオに向かいなさい。」
レスティーナは唐突に話し始める。
(用件を言ってくれないとな・・・。)
心の中で愚痴るユート。それを察してか後ろに控えていたエスペリアがレスティーナに問う。
「任務の内容は何でしょうか?」
王に報告をした時よりも若干和らいだ声で問いかけるエスペリア。

「先日、ラセリオの南の関所を、神剣を持った人間が通ったと報告がありました。恐らくエトランジェでしょう。」
平然と話すレスティーナ。しかしユートにっとては驚くべき話だった。
(他にもエトランジェが?ひょっとしたらコウイン達かな?あいつ等も光に飲まれたようだし、こっちに来ててもおかしくない。)
「その後エトランジェは何度かラセリオで目撃されています。そこで何をしているのかは判りません。
 任務はそのエトランジェをつれてくる事です。抵抗するようなら多少強引でもかまいません、なんとしてでも連れてくるように。失敗は許しません。」

 失敗も何もカオリのためには何でもするしかない。拒否権はないのだ。それにひょっとしたら、コウインたちかもしれないのだ。その事がユートにとって一粒の希望だった。
「解りました。」
了解の返事をし、謁見の間を出るユートとエスペリアたち。
残るレスティーナは思う。
(また父様の力が増大してしまう。二人もエトランジェを手にしたら、もう止められない。それなのに私は・・・)
そこには、暗くうつむいたレスティーナが佇んでいた。


《スピリットの館にて》

「なあ、エスペリア。関所に現れたエトランジェってのはどんな奴なんだ?」
準備をすすめるエスペリアにユートはもっと詳しい話を聞いてみる。 
「詳しくは私にも判りません。ですが、そのエトランジェは男性で、槍型の永遠神剣を所持していたという事は報告で聞いています。」
エスペリアの言葉を聞きユートは改めて、もしかしたらと言う顔をする。
「なぁエスペリア。そのエトランジェはひょっとしたら俺の知り合いかもしれないんだ。」
「ユート様のですか?」
エスペリアは準備する手をとめてユートに聞く。
「ああ。俺がこの世界に来たときの事は話しただろ。俺とカオリの他にも二人の友人が巻きこまれたってやつだけど・・・、その二人の内の一人、コウインって言うんだけど、そいつかもしれないんだ。」
ユートの言葉を聞き少し考えるエスペリア。

四神剣の伝承の事について知っているエスペリアには判っていた。
確かにこの世界にはユートに近しい者達も一緒に召喚されている筈だが、それは【求め】以外の残りの四神剣の持ち主としてである。しかし残りの四神剣の中に槍型の永遠神剣は存在しない。つまりユートの友人である可能性は極めて低いのである。
しかし優しいエスペリアにはその事を、今のユートに伝える事はできなかった。

「・・・・・そうかも知れません。・・・・でしたらユート様、急いでラセリオに向かいましょう。その方が遠くに行ってしまわないうちに。」
戸惑いながらも返事をし、準備を続けるエスペリア。
「そうだな、急ごう。」
特に考える事も無く素直にエスペリアに答える。
「じゃぁ、俺も準備してくるから、終わったら呼びに来てくれエスペリア。」
「判りましたユート様。」
そう言ってユートは部屋を出て行った。


《ラセリオ町はずれ》

ユート達がラキオスを出て三日後。
「おっ!どうやら来たみたいだぞ。」
遠見を使っていたシンが、ラセリオから南に四、五キロのところで、こちらに向かって歩いてくるユートと三人のスピリットを捉える。
『どうやらそのようですね。しかしスピリット三人にエトランジェですか・・・、随分派手な出迎えですね。』
「俺が、来ることを拒んだら力ずくでも、確実に連れて行くためだろ。実際一人でもきついのに、四人もいたらお手上げだからな。」
もっとも、最初からついて行くつもりなので、この際人数は関係ない。

『素直について行くつもりなんですか?』
何となく意外だとでもいう感じに聞く【真実】。
「まさかっ。ちょっち・・戦ってみるつもりなんだよねぇ。どれだけ力に差があるか確かめるためにな。」
最終的にはついて行くつもりだが、相手側だけに主導権を握らせないためにも、戦力差を確かめるためにも一戦交えてみるつもりなのである。

『まぁ、そっちの方があなたらしいですね。』
【真実】が納得と言った感じで相槌をうつ。
「あと一時間もしないうちにつくだろう。それまで休んでようぜ。」
そう言って寝転がるシン。
(さてどうなる事やら・・・。)



「あなたが、神剣と契約したエトランジェですね。」
神剣の気配を辿ったからだろう。エスペリアは問いかけると言うよりは、確認するといった感じで背を向けている男に声をかける。
「そうだ。」
背を向けたまま男が答える。その声にハッキリとした敵意は感じられないが、一筋縄では行かないであろう事をエスペリアは瞬時に悟る。

その隣でユートはがっかりしていた。
明らかにコウインとは違うのである。背格好も違うし、声も違うし、雰囲気も全然ちがう。要するに何もかも違うのである。
(コウインじゃないよなぁ。でもどっかで見た事があるような気がするな・・・・。)
考えながらも男に声をかけるユート。

「俺達はラキオスの者だ。王の命令で、エトランジェであるあんたを王都に連れて行かなくてはならない。勝手な言い分だとは思うが大人しくついてきてくれないか?」
単刀直入に切り出す、ユート。
「・・・ラキオスのエトランジェ・・・、永遠神剣 第四位【求め】の主。【求め】のユート・・・、いや高嶺だな?」
「なっ!?」
男が言った言葉に驚くユート。自分の事を知っているという事よりも、むしろこの世界では名乗っていない苗字で呼ばれた事に驚きを隠せない。
それを察してか男がこちらに振り返る。
その顔を見てユートは驚愕の表情になる。
「あっ、あれ!?、お前は・・・・如月 深・・・だよな?。」
「ユート・・、知り合い・・?」
アセリアがユートに聞いてくる。

確かにユートはその男を知っていた。知っているも何も、同じ学校に通っていた同級生である。そしてそいつはある意味学校では有名な奴だった。あまり人とは交わらず、いつも一人でボーっとして、何か話しかけても冷めたような口調でしか答えず、周りからは苦手意識をもたれていた。。

「ああ。向こうの世界で俺と同じ学校に通っていたんだ。・・・だけど何でお前が此処に・・・?」
アセリアに答え、シンに聞いてみるユート。

「・・・神社に居たら光に飲まれて気づいたらこの世界にいた。」
(むっ!・・・このスピリット達もかわいい・・・。)
シンは冷めたような口調で答えながら、内心では場違いな事を考えていた。

「お前もあの時あそこにいたのか・・・。」
同じ世界の人間、それも同じ学校の同級生がこっちにいた事は嬉しい事だったが、相手の事をよく知らないため複雑な表情するユート。

「ユート・・・」
暫くボーっとしていたユートに、後ろからアセリアが任務を思い出させるように声をかける。
アセリアの声で思い出したように我に返るユート。
「そうだった・・・。如月、さっきも言ったように俺達ついて王都まできてくれないか。頼む。」
「何故だ?」
「・・・・それが任務だからだ。」
不本意だが王の命令に背くわけにはいかない。カオリの身の保障がかかっているのである。

「そうじゃない。お前もエトランジェだろう。力がありながら何故ラキオスに従う?」
シンは前から疑問に思っていた事がある。それは何故ユートがラキオスに従うかと言う事である。四神剣の一つと契約しているとは言え、どう考えても大人しく人殺しを受け入れるような性格では無いだろう。

(「【真実】もその辺の事情は知らないんだろ?」)
(『はい。ですがおそらく彼の義妹が関係していると思います。・・人質にでもとられてるんでしょう。かつての【求め】の契約者もそうでしたし。』)
(「まぁ、そんなとこだろうな・・・。」)

「・・・・カオリを・・、義妹を人質にとられてる・・・。逆らえば義妹の身が危ないんだ。だから頼む、ついてきてくれないか?」
ユートは心の底から頼み込む。
【真実】とシンの予想は完璧に的を射ていた。

「・・・・悪いが、それは俺がついて行く理由にはならない。それに俺は束縛されるは御免だ。」
少し考えて口に出すシン。最終的にはついて行くつもりだが、やすやすと主導権を握らせるわけには行かない。どうすれば戦闘に持ち込めるかを考えたのだ。そしてユートの義妹の事を利用すればそれが出来るとふんだのである。

しかしそれに答えたのは最初に声をかけてきたスピリットだった。
「申し訳ありませんが、これは王の命令なのです。断わるのなら力ずくでも連れて行かせてもらいます。」
そう言って神剣を胸の前に持ってくるスピリットの女性。後ろのスピリットの少女達もそれに倣う。
「高嶺・・・、お前も同意見なのか?」
(上手くいったかな・・・?)
心の中で呟くシン。

「如月・・、お前には悪いが、そうだ。義妹の身の安全がかかってるんだ。・・・傷つけたくは無い。頼む、大人しくついてきてくれ。」
最後だと言わんばかりの口調でシンに頼みこむユート。
しかし、
「悪いが俺の答えは変わらん。帰れ。」
表情を変えず、冷たく言い放つシン。
「・・そうか・・・。なら仕方ない。カオリのためならば、力ずくでも連れて行くぞ、如月っ!」
【求め】を構えるユート。

「みんな、気合を入れろ。一気に片を付ける!インスパイア!」
ユートがスキルで皆をサポートする。
「ふぅー。俺は争いは好まないんだがな。仕方ない・・・来い!」
(「おっしゃ。上手くいったぞ。行くぞ【真実】!)
(『わかりました。ですが気をつけて下さい。後ろにいるブルースピリットの力は、今のあなたよりは上のようです。』
(「オーケー、オーケー。」)
【真実】を片手で持ち上げ、頭上でクルクルと回転させて、振り下ろし構えるシン。
(「ふっ、決まった・・・。」)
(『何やってるんですか・・・。』)

「・・ん・・、いく・・・。」
場違いな事を考えているとブルースピリットの少女が跳躍し斬りかってきた。
少女は大上段から一気に神剣を振り下ろす。
ガキーン。
それを何とか柄で受け止める。
受け止めたままシンは右足で前蹴りを繰り出す。少女は素早く剣を引き、一歩下がり蹴りをよける。
そしてシンが足を戻す瞬間を狙って、軸足の左太ももに切りかかる。
それをシンは、足を戻す勢いを利用し後ろに倒れこむ事でかわす。しかし完全にはかわせず浅く切られてしまった。

そのまま後転して起き上がるシン。斬られた影響は無いようだ。
「抵抗しても・・・無駄・・。」
そこへ再度ブルースピリットの少女が斬りかかってくる。
シンはその攻撃に、柄の方の突きでカウンターを合わせる。
少女はそれを体を回転させる事でいなし、その回転を利用し、そのままやはり足を狙って斬りつけてくる。
それを何とか後ろに飛んでかわすシン。

「いっけぇー!ふぁいあぼるとー!」
そこへレッドスピリットの女の子が神剣魔法で援護する。
シンを直接狙ったわけではなく、シンの足場を狙ってくる。
ドォーーーン!!!
魔法が地面に当たり、振動とえぐれた地面のせいで体勢を崩すシン。
「いきますっ!」
そこを狙ってグリーンスピリットの女性が足を払ってくる。
避けられないと判断したシンはそれを踏ん張るよりも、むしろ素直に転ぶ事で起き上がるアクションへとつなげた。

「うぉぉぉぉっ!!」「・・ん・・・もう一度・・。」
しかし起き上がったところをユートとブルースピリットの少女が左右から挟むようにして攻撃を仕掛けてくる。
(そう来くるか!それなら。)
シンは挟み撃ちをされるぐらいならと、二人の間合いに入る前にユートに向かっていった。後ろからはブルースピリットの少女が追ってくるが、シンは走る勢いそのままにユートと剣を交える。
ユートが剣を振り下ろす。シンはそれ受け止め、走ってきた勢いを利用して右に受け流し、そのままユートの後ろへ抜ける。
ユートが振り返る前に、向かって来ていたブルースピリットの少女にぶつける様にユートを蹴飛ばす。
ブルースピリットの少女は、それによって勢いを殺されてしまい立ち止まる。

いったん止まる相手側の攻撃。
シンは四人を相手に互角とも言える戦いを展開していた。相手の動きはついていけない速さではない。
「ふっふっふ。見える。俺にも敵の動きが見えるゾ!」
シンは不適な笑みを浮べながら、余裕の声を上げる。

しかし実は八割がた、ハッタリである。
(っく・・・、速い・・。関所での戦闘とは桁違いだな。はっきり言っていっぱい、いっぱいだ。)
確かについていけない速さではないが、何とかついていく事ができる、という程度である。やはり現時点では力は相手のほうが上だった。
(『そう言ったじゃないですか。』)
(「判ってはいたんだけどな。・・だが全くか適わないって程でもないな。手加減されてるとはいえ、こっちも真剣に戦ってるわけじゃないからな・・・。」)
しかし現時点では適わないだろう。一対一なら話は違ったであろうが・・・・。
(まぁ、もういいだろう。相手の力は十分ではないにしろ判ったからな。これ以上の戦闘は無意味だろう。)
しかし降参の意を表しない限り相手は止まってくれない。

「『理念』のオルファリルが命じる。その姿を業火と変え敵に降り注げ!ふれいむしゃわー!」
レッドスピリットの少女が再び神剣魔法を唱える。
(「まずい。範囲魔法か・・、・・・よけられんじゃないか。・・・防ぐしかない。【真実】!」)
(『分かりました。』)
「マナよオーラへと姿を変えよ。わが身を包む白き衣となれ。ハァー、白陣(びゃくじん)!」
シンの体の周りを白いオーラフォトンが包み込む。そこへ火の雨が降ってくる。
ボォボォボーボォ ボォーボボォ。
(あちっ!うおぉっ!あちっ、あちっ。っくぅー。抵抗力を上げても痛ぇーな。)
ダメージを受けひざをつくシン。

「うぉぉぉぉっ!!」
そこへ剣を振り上げ、切り込んでくるユート。
シンは避けることもできたが、ダメージで動けない振りをして、そのままの体勢でじっとしていた。
そしてユートはシンの眼前へと剣を振りおろし、止める。
シンに剣を突きつけるユート。

「・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・。」
お互い沈黙が続く。
「ふぅー。・・オーケー、降参だ。」
大きく息を吐き出し、負けを宣言するシン。
シンの言葉でその場の空気が和らぐ。ユートもホッとした顔をしている。知り合いを傷つけずにすんだ事に安堵しているのだろう。

「悪いな如月。」
そう言うとユートは剣を収める。
後ろの方からエスペリアがやって来る。そしてシンに話しかける。
「わたくしは、エスペリア。エスペリア・グリーンスピリットです。向こうにいるのがアセリア・ブルースピリットとオルファリル・レッドスピリットです。ユート様はご存知ですね。あなたのお名前をお聞きしてよろしいですか?」
丁寧な口調でシン対して言葉をかける。そこにはもう先ほどのような険呑な雰囲気はない。いつも通りのエスペリアである。

「・・如月 深だ。シンでいい。」
シンはエスペリアと名乗るの少女の問いに座ったままの姿勢で素直に答える。
「解りました、シン様。」
「別に、様はいらないんだが・・。まぁ、好きにしてくれ。」
様と呼ばれて、こそばゆいシン。
そこへユートが話しかけてくる。

「如月、悪いが神剣を渡してくれないか。」
もしもと言う事があるので、その為の処置である。普段ならこんな事は好まないユートだがカオリの身の安全がかかっているので、過敏に対処してしまう。

「それはできん!」
シンから間髪いれずに強い口調で答えが返ってくる。普段のシンからは考えられないほど真剣な表情である。
「どうしてだっ!如月!」
やはり過敏に反応するユート。
「落ち着いてくださいユート様。」
エスペリアがユートを制する。エスペリアの声に頭を冷やすユート。
「理由をお聞きしてよろしいでしょうか?」
エスペリアが落ち着いた声でシンに聞く。

「・・・こいつは俺のパートナーだ。この世界に一人放り出された俺を支えてくれた大事な相棒だ。たとえ殺されても渡す事はできん。それでも渡せと言うなら、・・・たとえ力及ばずとも闘うのみ。」
シンは静かに、しかし有無を言わさぬ口調で答えた。
(『はうう。感動です。涙です。そこまで私の事を想ってくれるなんて。』)
(「うっ、恥ずかしい事言っちまった。」)

しかしこれはシンの偽らざる気持ちである。実際【真実】がいなかったらどう考えても今まで生き抜けなかっただろうし、【真実】がいたからこそ、見知らぬ世界で孤独感に陥る事も無かったのである。
いくらシンがもとの世界では極力人と交わらず、独りで過ごしてきたとしても、それは十七年も過ごしてきた世界だからだ。見知らぬ異世界でそれを貫けるほど強くは無い。
もっとも【真実】を手にしてからは、もとの世界にいた時と対して変わらないと言える。

「・・・・解りました神剣はシン様が持っていて下さい。」
シンの意思の強さを感じ取ったのだろう。エスペリアは何も言わずにシンの要求を受け入れた。
「エスペリアいいのか?」
ユートが大丈夫なのかといった顔で聞いてくる。
「・・・ユート様、シン様は本気です。それはユート様のカオリ様に対する想いと同じだと思います。」
「っ!?」
エスペリアに言われユートは納得する。もし自分がシンと同じ立場で、対象が神剣ではなくカオリだったら、きっとシンと同じ事を言っただろうからである。
「悪かったよ如月。」
素直に謝るユート。
「ああ。・・俺も別に暴れるつもりはない。大人しく王都までついて行くさ。安心しろ。・・・それから俺の事はシンでいい。」
「じゃぁ、俺もユートでいいよ。」
お互い呼び名を確認し立ち上がるシン。残りの二人のスピリットとも名を交わす。

「・・ん。・・・【存在】のアセリアだ・・。」
アセリアがいつも通りの口調で自己紹介をする。その内容はユートの時と全く変わらない。その事に苦笑するユート。
「オルファはオルファだよ!オルファリル・レッドスピリット。【理念】のオルファ!お兄ちゃん、パパのお友達なのぉー?」
オルファもいつも通り元気に挨拶を送る。

「・・・・・・ユート。」
「何だシン?」
「・・・・・・お前、あんな大きい娘がいたのか・・・。」


《ラキオスへと続く街道にて》

街道を歩く五人。
ユートとエスペリアを先頭に、その後ろを、シンを真ん中に挟むようにしてアセリアとオルファとシンが並んでいた。

「ユート。」
今まで言葉少なげに歩いていたシンがユートに声をかける。
「どうした、シン?」
「ラキオスが何故俺を呼び寄せるかはわかってる。だから先に言っておこう。・・・、俺はラキオスに下るつもりはない。」
「それは・・・・。」
シンの話に言葉を詰まらせるユート。

ユートも、シンがラキオスに連れてこられる理由は勿論解っていた。自分と同じように戦いを強いられるのだろうと。
しかしシンには自分のように人質はいない。その事がどのように事態が動くかを判らなくさせていた。

「それは、俺にもどうなるか判らないよ。」
しかし、あの王が縛り付ける材料が無いからといって、簡単に諦めるとは思えない。
「エスペリアはどう思う?」
エスペリアに振ってみるユート。
「・・・わたくしにも、判りません。ユート様の時とは状況が違いすぎますから・・・。」
少し考えて答えるエスペリア。
「やっぱり、そーだよなぁ。」
おそらく自分と同じような考えに至ったのだろうと、エスペリアの答えに相槌をうつユート。

そこへシンが再び声をかけてくる。
「・・・ラキオスに下るつもりは無いと言ったが、暫くはラキオスに厄介になるだろう。・・・ラキオスが俺の力を欲すると言うなら、せいぜい利用させてもらうつもりだ。」
(「飯だってまともなのを食いたいし、いい加減風呂にも入りてぇーからな。魚や水浴びばっかりじゃ飽きちまう。」)
(『私の事もちゃんと洗って、磨いてほしいですっ!』)
(「任せたまえ【真実】君。ふっふっふっふっふ、ラキオスに留まる条件を色々と呑ませちゃる!」)

「頼むからあんまり無茶な事はしないでくれよ。カオリの身の安全がかかってるんだ。」
シンの不純な考えとは別にユートはかなり心配していた。
カオリとシンが関係ないとはいえ、同じ世界から来たエトランジェ同士というだけで、カオリにまで被害が及ぶかもしれないのだ。それだけは断固として避けたいユートだった。実際あの腹黒い王なら、そのくらいの事を平気でやりかねないのだ。

「わたくしからもお願いします、シン様。シン様にとっては不愉快な事がおありかと思いますが、どうかこらえて下さい。」
エスペリアも同じように頼み込む。
それに対してシンは、
「・・それはあちらの対応次第だな。・・・まぁ善処するよ。」
そっけなく答える。

実際シンにとってカオリは全くの他人である。はっきり言ってしまえばカオリがどうなろうが関係ないのだ。ユートには悪いが、シンは束縛されるぐらいなら、カオリを見捨てるだろう。勿論そうは言っても、カオリに危害を加えさせるようなマネを、簡単にラキオス側にさせるつもりはない。シンはそういう意味で善処すると言ったのだ。


《ラキオス王都》

シンたちは既にラキオスの城下町までたどり着いていた。
周りは行きかう人々であふれている。

(やっぱり、王都だけあって活気があるよなぁ。はぁー、いい匂いが何処からとも無く漂ってくる。)
何処からか香ばしい匂いが漂ってくる。こちらの世界にきてからまともな食事をしてなかったシンは、鼻をヒクヒクさせながら足を進めていった。

王城前につく。
そこには連絡を受けていたのだろう、十人近い兵士がシンたちを待ち構えていた。

「お前がエトランジェだな。王がお呼びだ。連れて行く!」
一人の兵士がシンに声をかける。
この世界についたユートを、最初に連行した兵士だ。ユートの時と同様高圧的な態度は変わらない。

「まずは風呂だ。それから次は飯を食わせてもらおう。王に会うのはそれからだ。」
シンは兵士の言葉を無視して、さも当然のように言い放つ。
隣ではユートとエスペリアが焦りを浮べている。まさかシンがそうくるとは思わなかったのだろう。

「ふざけるなっ!貴様等エトランジェごときが意見を言う権利は無い!さっさとついて来い!」
兵士が怒鳴る。しかしシンにとっては結構マジに言ったつもりである。別にふざけてなどいない。
「別にわざわざ会ってやる必要は無いんだぞ、こっちは?」
自分の立場を最大限利用し兵士に言い返すシン。
「だまれっ!口答えをするなっ。できんと言うのなら無理にでも連行するまでだっ!」
そう言って、ユート達のほうを見る兵士。
「おい貴様!こいつを王の前まで連行しろ!」
言われたユートとエスペリアはシンに向き直る。
「頼むシン。今は大人しくついてきてくれ。」
「わたくしからもお願いします。先ほども言いましたように、どうか堪えて下さい。」
二人の哀願にシンも折れる。
「・・・オーケー、分かったよ。」
仕方ないといった感じで、今は風呂と飯をあきらめる。

兵士とユート、エスペリアに囲まれ城の中へと入っていくシン。
アセリアとオルファは既にスピリットの館に帰っている。
(「はぁ、風呂と飯はお預けか・・・。」)
(『はぁ、お風呂が・・・』)
愚痴をもらすシンと【真実】。
何処までいってもマイペースな二人であった。


そこには十人程度の兵士と武官、文官、そして王座にはラキオス王が、その隣にはこの国の王女であろう女が立っていた。
シンは王座の前まで来ると無理やり座らせられる。ユートとエスペリアがその後ろに跪く。

「ふはははは。お主がエトランジェだな。」
ラキオス王は見下すようにシンを見る。
「だからなんだ。」
シンは礼儀もクソもない口調で答える。
「無礼者!」
後ろで兵士が怒鳴るが、シンは態度を改めるつもりはない。
「まぁ、まて。所詮こやつもエトランジェ。いくら歯向かおうとも王族には逆らえんのだ。」
「?」
シンはどう言う事だと、いった感じで王を見る。
「エトランジェよ。お主には後ろにいるもう一人のエトランジェと同様に、このラキオスの為に働いてもらおう。」
ラキオス王はシンの視線を無視し一方的に命令をくだしてくる。
「ワシの期待を裏切らぬようにな、せいぜい訓練に励むがいい。」
なおも続けるラキオス王。
しかしシンは明らかに、頭がおかしいんじゃないか?といった感じで王に答える。
「何故、俺がお前ごときの命令をきかねばならんのだ?お前に従う理由など爪の先ほどもないが。」
ラキオス王はシンの無礼な言動を聞きながらも、切り札はこちらが持っているのだと、余裕の態度はくずさない。
「お主等エトランジェが拒否できると思っておるのか?」
そこに隣に立っていた王女が前に出る。
「【求め】のユートよ。あなたの義妹の身の安全はこのエトランジェの返事次第です。嫌ならあなたの手でこのエトランジェを制してみせなさい。」
「なっ!」
ユートの顔が歪む。予想通りにカオリを盾のとられてしまったからだ。そしてカオリの事で少なからずレスティーナを信用していたにもかかわらず、その彼女の口からそんな言葉を聞き、ショックを受けていた。
勿論レスティーナとしては本気ではない。

しかしそんなユートを無視しシンは口を開く。
「おいおい。何を勘違いしてるのかは知らないが、俺とこいつの義妹は何の関係も無いんだぞ?そんな事で俺を縛れるとでも思っているのか?究極的に言えば、こいつの義妹がどうなろうが、俺にはどうでもいいことだ。だいたい人質ってのは無事だからこそ意味がある。それが解らないのか?」
しかしそうはいかないのがユートである。
「おいシンっ!」
大声で叫ぶユート。
「落ち着けユート。主導権を握らせないための芝居だ。」
シンが小声でユートに答える。

そう、シンは相手に主導権を握らせないためにあえて言ったのだ。暫くはラキオスに厄介になるつもりだが、一度拒否する事でなるべく自分の存在に価値を持たせたのだ。こうすれば後の交渉時に役に立つと判断したのである。

「分かっておらんようだなエトランジェよ。お主には選択肢は無いのだ。素直にわがラキオスに下るか、無理やり下らせられるかだ。」
ラキオス王が高圧的な眼で見下してくる。
シンは鋭い目つきで王を睨み、言った。
「いや、もう一つ選択肢がある。・・・今この場でお前達を殺せばそれでいい。それだけの力はある・・。お前達さえ死ねばユートがお前達に従う理由は無いんだからな。」

ユートは後ろではらはらして見ていた。しかしシンの最後の言葉で冷静になる事ができた。
それが出来るのなら自分がとっくにやっているだろうと。エトランジェは王族には逆らえないのだ。だからこそ今まで大人しく従うしかなかったのである。
おそらくシンはその事を知らないのだろうと、ユートは考えていた。

「はっはっはっはっは。エトランジェごときがワシに歯向かえると思っておるのか!」
ラキオス王も同じ事を思ったのだろう。余裕の態度でいい放つ。
その言葉を聞いたシンは静かに立ち上がり【真実】を片手にゆっくり王に近づいていく。

ある程度近づいたところでシンは体が急に重くなり、頭も割れそうなくらいガンガンし、方ひざつく。王はそれを見てニヤニヤした笑いを浮べた・・・・・・などというような事は無く、なんとシンはそのまま王の目の前まで近づき、【真実】をラキオス王に向かって突きつけた。

「ばっ、ばかな!どうなっている。」
強制力がかかるとばかり思い込んでいた王は悪態をつく。周りの人間も驚愕の表情を浮べている。
特に、強制力を味わった事のあるユートは眼を大きく見開いて、その様子を見ていた。

「ええいっ!なぜ強制力がかからんのだっ!」
なおも悪態をつくラキオス王。
(「強制力?なんか知ってるか【真実】?」)
(『・・・そうですね。・・・確かに四神剣のエトランジェは王族や統治者に対して敵意を向けた場合、神剣からの強制力によって体を蝕まれるようですが・・・・・、私には関係ありませんよ。私がシンに対してそんな事するハズありません。』)
キッパリと言い切る【真実】。
(「へぇー四神剣のエトランジェってのはそんな制約がつくのか、難儀だな。」)
どこか他人事のシン。実際のところ他人事なのだが。

「それで、言いたい事はそれだけか、髭親父。それが遺言でいいんだな・・・・?」
殺気をこめてラキオス王を脅すシン。
「ひっ!」
無様に怯えた声をだすラキオス王。
「言いたい事があるなら早くしろ。でなければ帰れっ!」

「おまちなさい!」
その時、隣から凛とした声を発したのは王女だった。
「なんだ?」
【真実】をラキオス王に向けたまま首だけ振り向くシン。
「先ほどまでの非礼はわびましょう。ですから剣をおさめてくれませんか?」
ラキオス王とは違い、この状況に気圧されることなく自分を真っ直ぐ見る王女に、シンは興味を覚えた。

「・・・・話を聞こうか・・・。」
シンは【真実】を下げ、体ごと王女に向き直る。
その隙に王はシンから離れようとするが、シンがそれを許さなかった。
「お前はそこにじっとしてろ。王女が堂々と立ち向かってるというのに、王が真っ先に逃げだしてどうする。」
(『自分で帰れって言ったくせに・・・。』)
(「ほっとけ。」)
その言葉に反応したからなのか、シンが怖かったからなのかは分からないがラキオス王は大人しく王座についた。

「私はこの国の王女レスティーナです。」
礼儀をわきまえているのだろう、自分の名前を名乗るレスティーナ。
「・・・・シンだ。」
礼儀をわきまえてないのだろう、そっけなく答えるシン。
「単刀直入に言います。先ほども言いましたが、わがラキオスに留まり力を貸して貰いたいのです。」
「何故だ?戦争を起こすためにか?戦争でスピリット達を殺すためにか?」
レスティーナを試すかのように問いかける。
「それは・・・・。」

答えに詰まるレスティーナ。実際のところその通りなのだから、ユート同様、普通の人間だったであろうシンに、それを肯定するような答えを出す事が出来ない。
勿論レスティーナ自身の目的は自分の父親のような強欲にまみれたものでは無かったが、それでも実際やる事はそれ程大きく変わらない。
それでも自分の理想を果たすために、シンの力はぜひとも欲しかった。

「図星か?悪いが俺は戦争など興味はないし、殺しも同様だ。そんな事で力を貸せと言われても、お断りだとしか言いようが無い。」
「・・・・・。」
何もいえないレスティーナ。お断りだと言われたら、もはやそれに従うしかないのである。ユートの時とは状況が違う。

「・・・・しかしだ。お前達が、これから俺の言う条件を飲むなら、ラキオスに留まってもいい。」
その言葉に反応するレスティーナと王座に座っていたラキオス王。
「その条件とは何なのだ?」
先に口を開いたのはラキオス王だった。条件さえ飲めばエトランジェの力を手にする事が出来るのだ、気持ちが急いていた。

「まず一つ目。生活の保障だ。まぁこれは当前の事だから特に文句は無いだろう?」
一つ目というか何というか、シンにとっては一番重要な要求だ。何と言っても風呂と飯である。
「よかろう。生活の保障はしようではないか。」
この要求については当然ながら呑むラキオス王。

「次に二つ目だ。俺はラキオスに留まるが、お前達の臣下となるわけじゃない。あくまでも俺は自由だ。お願いするのは勝手だが、不当な命令は受け付けんからそのつもりでな。」
この要求にはさすがに考え込むラキオス王。命令どおりに動いてくれないのでは、何ためのエトランジェだか分からない。
しかしレスティーナはラキオス王とは根本的に目的が違う。その理想からすれば、この要求を呑むのにはそれ程困りはしない。

「・・・答えられんなら先に次の条件を言わせてもらおう。三つ目は、これは二つ目ともかぶるが、実際戦争になった時俺は自由に動かせて貰う。とは言ってもラキオスにとって不利益になるような事はしないから安心しろ。」
(まっ、保障はしないけどな。)
「俺の条件は取り敢えずこんなとこだ。・・・・答えを聞こうか」

一つ目は何の問題は無いのだが、二つ目と三つ目の条件は、さすがに簡単には頷けない。
レスティーナとしては受け入れてもいいと考えている。ラキオスにとって不利益な行動をしないのならば今はそれでいい。
しかしラキオス王はなかなか返事をしない。

「はっきり言っておくが、俺は別にラキオスとこの契約を結ぶ必要はないんだ。今の条件を呑んでくれるのなら、今ラキオスが敵対しているバーンライトと結んでもいい。」
「「っ!?」」
その答えにさすがにまずいといった顔になるラキオス王とレスティーナ。
自分の思い通りにいかないのは困るが、今バーライトと組まれるのはもっとまずい。

「父様。条件を呑んでもいいのではないでしょうか。ラキオスにとって不利益になる行動をとらないと言っているのですから・・。今バーンライトにつかれたら危険です。」
「むぅぅぅ。わかったお前の言う通りにしようではないかエトランジェよ。そのかわり、他の国につくようなマネを起こさぬようにな。」
しぶしぶ答え立ち上がるラキオス王。
「後は任せたレスティーナよ。」
そういい残して足早に王座から立ち去っていった。契約を結んだとは言え、やはりシンが怖かったのだろう。

ユートとエスペリアは途中波乱もあったが無事に事が終わったことに安堵していた。特にユートは一度カオリを盾にとられたので、人一倍安堵感は強かっただろう。

「では、シン。あなたの住む場所は後ろにいるユート達と同じく、スピリットの館に住んでもらうことになります。何か解らないことや困った事があればエスペリアに聞くといいでしょう。」
「解った。」
レスティーナはシンの返事を聞くと謁見の間から退出していった。

シンはユートとエスペリアのもとに近づき声をかける。
「という事だ。これから厄介になる。よろしくたのむ。」
「ああ。ヨロシクなシン。」
「はい、シン様。こちらこそよろしくお願いいたします。何か解らない事がおありでしたら、わたくしに聞いてください。」

シンがファンタズマゴリアきて一ヶ月が経とうとしていた。


                                                           続く



あとがき
ふぅー。三章アップです。
ようやくユート達と接触しました。これから北方五国統一くらいまでは展開が速くなると思います。

文章中、エスペリアとかグリーンスピリットとか使い分けてる部分がありますが、それは一応ユート視点とシンの視点から書いたという事です。途中からは一緒になるので。でもどっかで間違ってるかもしれませんその時は勘弁して。

今後の課題はレスティーナとカオリをどうシンと絡ませようかということですね。一応レスティーナについてはある程度まとまっているんですがカオリが難しいところです。
それでは今後ともよろしくお願いいたします。
それから最後に、今回は文章中に色々なアニメのパロディーを存在させました。簡単だから、解ると思うよん。

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