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イレギュラーズ・ストーリー

一章 契約そして始動

川べりの洞窟・夜

 パチパチッパチッ。
 火のはぜる音が洞窟内を反響する。広くは無いが雨風を防ぐには十分な広さを持った洞窟だった。焚き火の周りには一人の男が座って魚を食べている。向かいの壁には槍が立てかけてある。
 「それにしても、こんなに都合よく洞窟がみつかるとはねぇ。火をつける道具も無かったのに簡単に火も熾せたし、魚も簡単に獲れた。・・・これが神剣の、お前の力って事か【真実】?」
 洞窟には他に誰も居ないはずなのに男は誰かに問いかける。しかしそれに反応したかのように立てかけてあった槍がぼんやりとひかる。
『そうです。洞窟は遠見の能力を使い、火は神剣魔法を利用しました。あなた自身の肉体的な能力や感覚器官は常人を遥かに超えているので魚を取ることも簡単なはずです。シン。』
 「便利なもんだな。ともかくこれで飢えや渇きで困ることは無いな。だけど高嶺達はこの世界でやっていけてるのか。【真実】と違って【求め】なんかは強制力が激しいんだろ?」
『その通りです。ですが普段生活する分には大丈夫なハズです。【求め】がマナを欲しがるのは、マナを大幅に消費する戦闘の後でしょうから。』
「だが高嶺達はその争いをするために召喚されたようなもんだろ?」
シンは先ほど【真実】から説明された事を思い出す。

二時間前・・・

「おい。ほんとに北に歩いてよかったんだろうな?雨風を防げそうなところなんか全く見つからんじゃないか。」
一時間近くも歩き続けていたシンはいい加減だるくなり永遠神剣と名乗る槍にそう問うてみる。
『もう着きます。』
槍は静かに答え歩くよう促す。
 槍の言葉通り一分もしない内に洞窟が見えてきた。すぐ前には川が広がっており、少し冷たい風が吹き抜けている。
 早速シンは洞窟に入るが、
「暗いな・・。これじゃ何も見えないぞ。火を熾さないと。」
(しかしどうしたものか。俺はタバコは吸わないからライターやマッチの類は持ってないしなぁ。)
そんな事を考えていると槍がシンを呼ぶ。
『シン。私を胸の高さに持ち上げて、火を熾すイメージを描いてください。』
「あいよ。」
変な要求だったが何か意味があるのだろうとシンは解釈した。槍を胸の高さに持ち上げ、火を熾すイメージをする。すると槍がボンヤリひかり、洞窟の中央部分で火が爆ぜた。
「おっとっ!何だ?」
(おー火が着いたよ。漫画じゃあるまいし。まっ、火がつきゃ何でもいいんだけど。)
深く考えない。この世界の事が解れば恐らく判ることなのだろうから。
『私の力を使って火を熾したんです。正式にあなたと契約してませんから、あの程度しかできませんけど。とにかく座ってください。あなたや高嶺さん達に何が起きたのか説明しましょう。』
「待ってました。じゃぁ教えてくれ。この世界は何なのか。俺たちはどう関わっているのか。」
ようやく自分の置かれた状況が知ることができる。知らない事を知ることができる時の高揚感はなんとも言えないほど気持ちがいい。もちろん話の内容によっては知らないほうがいい場合もある。もっとも、この世界が何であれ、自分が何であれ面白そうであることには変わりはないので内心ウキウキしている。
『わかりました。』
槍が話し始める。
『まずは私の事、永遠神剣の事から話しましょう。これが解らないと他の事は理解できないでしょうから。・・・実のところ永遠神剣とは何なのか、それは永遠神剣である私達にもよく解っていません。』
「おいおい。マジかよ?」
いきなりの答えにあきれる。
『ハイ。しかし今回の事とはあまり関係が無いので気にしないでください。その事はまたおいおい話していきます。・・簡単に説明すれば永遠神剣とは持ち主に強大な力を与える、意思を持つ剣です。そして力を与える代わりに代償を要求します。』
「意思を持つ剣?・・・この場合お前がその意思とやらか?」
『そうです。そして永遠神剣にはそれぞれ位と名があり、司る事象が存在します。その事象と名は連動してる場合が多いんですけどね。例えば私の場合は位は四位で名は【真実】です。司っているモノは文字通り真実となります。位は数が小さくなるほど高く、大きくなるほど低くなります。意思を持つといいましたが、下位の神剣となると明確な意思はありません、本能のようなものだけが働いています。』
「なるほどねぇ・・・。それは判ったけど、それが一体何になるんだ?そもそも目的はあるのか?」
『永遠神剣の目的はそれぞれ異なりますが、私の場合で言えば真実を追究することが目的となります。』
「真実の追究とは言っても槍の姿じゃ難しいだろう?」
『その為の持ち主、契約者です。神剣は単一で動くことはできません。ですから自分の目的、意志に見合った持ち主を探し、自分の持つ力を契約者に貸し与える事で、目的を果たすのです。そしてそれが代償という事になります。』
「そんな都合よく持ち主が見つかるものなのか?」
『いえ、そう簡単ではありません。百年単位で待つのが普通です。』
「気の長い話だな。仮に持ち主が現れても、途中で目的が変わったりしたら振り出しだろう?」
『はい。ですがその可能性はほとんどありません。一度契約をしてしまったら神剣か持ち主が死なない限り、たとえ持ち主の気が変わったとしても、神剣が強制力をかけて持ち主を従わせようとします。』
「強制力?」
『言い方を変えれば、神剣が持ち主の魂を食べてしまうんです。真剣に魂を飲まれたら、生ける人形となり、二度と元に戻ることは無いでしょう。』
「おいおい。マジかよ?ひょっとしてお前もそうなのか?」
ちょっと引いてしまう話だった。自分が自分じゃなくなるなど考えたくもない事態だ。
『私はそんな事はしません。魂を飲もうとするのは、本能が強い神剣だけです。私のように四位ともなれば、明確な自我が発達しているためそんな事はありません。もっとも四位、五位といえども、本能の方が強い神剣はいくらでも存在しますが。』
「そうなのか。まぁ確かにお前は人間みたいだもんな。・・・判った続けてくれ。」
『おおまかでしたが、永遠神剣の事はとりあえずこれでいいでしょう。次はこの世界の事について話をしましょう。最初に言いましたが、ここはあなたが生きていた世界とは異なる世界になります。』
「違うと言うが具体的にはどう違うんだ?みたところ俺の世界とあまり変わらないようだが」
(歩いてる時も思ってたんだがここは本当に地球と同じような環境だ、異世界だと感じさせないくらいに)
『そうですね。違うと言っても別にあまり変わりはありませんね。ただ一つだけ大きく異なるモノがあるんです。それがマナです。』
「マナ?」
『はい。この世界、いえ、あらゆる世界を構成している物質です。世界そのもののエネルギーとでも言いますか、このマナが世界中を存在しているのです。。それは大地にも、大海にも、大気にも、そして人間にも・・・。・・あなたの世界ではこのマナが非常に希薄です。ですがこの世界ではマナが人々の生活の中に大きく関わっています。マナをエーテルと呼ばれるエネルギーに変換して様々な事に利用しているわけです。そして使ったエーテルは再びマナへと戻ります。』
「へぇー面白いもんだねぇ。じゅぁ、俺達の世界のようにエネルギー問題がのか?便利なもんだな。」
『残念ながらそう簡単にはいきません。マナは無限ではないのです。エーテルからマナへ戻る時、同じ量のマナには戻らず、わずかに減少してしまいます。そしてそれに気づいたこの世界の人間達はマナをめぐって争いを繰り返すのです。』
「戦ねぇ。何処の世界でも同じもんだな。つまらない・・・。まぁ俺には関係ないけどな。」
醜い現実を聞かされ少し冷める。
『関係なくはありません。あなたがこの世界に来た以上、争いに巻き込まれる事は必至です。』
「おいおい冗談だろ。意味も無くそんな事に巻き込まれてたまるかよ。戦争なんて興味ないしな。」
(戦争などに興味はない。そんな事するくらいならこの世界を延々旅でもしてる方が面白い。そして帰る方法を見つける。いや、いっその事この世界でずっと暮らしてもいい。とにかく俺には戦争をする意味を見出せない。)
『・・・・・・この世界の戦争は永遠神剣を持つもの同士による戦争です。しかしこの世界の人間では永遠神剣を扱う事はできません。それができるのは二種類しか存在しません。一つはスピリットと呼ばれる神剣と共に生まれ、神剣と共に戦い、神剣と共に死ぬ、その為にだけに存在する戦闘奴隷種族です・・・。』
「おいおい、いきなり何言い出してんだ。そのスピリットとやらに同情でもしろってのか?」
予想されうる発言をごまかすかのように口走る。
『・・・・もう一つがエトランジェと呼ばれる異世界からの来訪者、つまりあなたです。』
「・・・会話の流れから予想はしていたよ。だが俺には戦う理由が無い。戦う必要も無い。」
『今までの戦ならそれでも良かったかもしれません。しかし今度はそうはいかないでしょう。』
「なぜ?」
『異世界からの来訪者はあなただけではありません。』
そう言われて高嶺たちのこと思い出す。
「そうだ!?高嶺達はどうなったんだ?やはりこの世界に来てるのか?」
『はい。あなたより一ヶ月ほど早くこの世界に来たようですが、今はラキオス、マロリガン、サーギオスと言う国にそれぞれ散らばっているようです。』
「よく知ってるなそんな事。」
関心して聞く。
『神剣の力です・・。すでに彼らはエトランジェとして神剣を持ち、それぞれの国で戦に巻き込まれているようです。エトランジェは一人一人が単体で国を滅ぼせる位の力を秘めています。そのエトランジェがあなたを含め6人もいるのです。自分がどれだけ重要な立場にあるかわかるでしょう?あなたの存在もじきに気が疲れるでしょう。ここはラキオスとイースペリアの国境付近ですし。』
「逃げ場は無いか・・・。」
ため息をつく。別に逃げたいわけではない。戦うのが自分の意思では無いのが気に入らないのだ。
『はい。遅かれ早かれ巻き込まれるでしょう。』
ここでシンは一応聞いてみる。
「だけど俺には神剣が無いじゃないか。どうしようもないぞ。」
『・・はぁ。何のために私がここまでわざわざ話して聞かせたと思ってるんですか?用の無い人にはいちいち話しませんよ。』
「ハッハッハ。冗談だよ。ここまで言われて気づかないわけ無いだろう。お前が俺の神剣になってくれるんだろ【真実】?」
『もちろんです。あなたが望めばですが。』
「いいぜ。そのかわり俺は俺のやり方で今回の戦に関わるからな。そこんとこヨロシク。」
(どうせ巻き込まれるなら自分なりのやり方で面白くしてやる。)
『かまいません。私は真実を追究してますから。そして真実は一つではありません。いろいろと動いてくれた方がより多くの真実にたどり着く事ができるでしょう。では契約しますから私を持って胸の高さまで上げて、心で私に強く呼びかけてください。』
「わかった」
そういわれてシンは槍を胸の高さまで持ち上げ意識を集中し【真実】によびかける。しばらくすると、
(『聞こえますか?』)
(「ああ聞こえる。上手くいったのか?」)
(『はい。これから力を送り込みます。』)
【真実】がそう言うと槍が強くひかりはじめた。その瞬間シンの体にものすごい力が送られてくる。すべての細胞が目覚めたかのような全く未知の感覚だった。調子がいいとかそういう問題ではない。圧倒的にほとばしるエネルギーを感じる。
『これで契約は完了です。しばらくは力に慣れないでしょうが、我慢してください。』
「ああわかった。それにしても凄いなこれは。・・・国を滅ぼせる程の力か・・納得だな。」
軽く【真実】を振り回してみる。
「そう言えば一つ重要な事を聞き忘れてた。」
『なんですか?』
「お前は何故、俺達の事をそんなに知ってるんだ?何故、俺の力になろうとする?」
考えてみれば不思議な事だった。永遠神剣のことなんて全く知らなかったのに、神剣の方は自分達の事を知っていた。取り残されたような気分だった。
『私は永遠神剣の中でも特殊な方で、わずかですが異世界に干渉する力があります。と言っても別の世界を観察するくらいの事ですが・・・。私は長い間、私の持ち主としてふさわしい存在を探していました。そして様々な世界を長い間観察し続けた結果が・・・あなたでした。あなたの考え方は私に限りなく近かったのです。もっともこっちに召喚する術が無かったので、どうこうする事はできませんでした。しかし偶然にもあなたが巻き込まれる形でこの世界に召喚されてきたので助かりました。』
「そんな究極のご都合主義みたいな事があるのか?」
『ええ。私は運がいいんです。かつての持ち主達も同じような形で契約を結びましたから。』
「ふーん。まぁいいや。・・・それからもう一つ。」
『なんでしょう?』
「最初会った時お前は、高嶺達は必然的にこちらに召喚されたと言ったな。どういうことだ?」
『それは・・・。どう説明しましょうか。・・・高嶺さんはもともと、この世界に来る前から永遠神剣と契約を交わしていたみたいなのです。そしてその代償を支払うためにこの世界に召喚されてしまった。・・、簡単に言えばそういう事です。』
「碧達はどうなんだ?」
『高嶺さんの契約した神剣は【求め】と言うのですが、これに関連する神剣として【誓い】【因果】【空虚】があります。これらは四神剣と言うのですが、四神剣は互いに憎しみあっており、お互いを破壊する事しか考えていません。 四神剣は連動していて、どれか一でも神剣が契約すると残りの三本も契約をしてしまうんです。そしてその持ち主は必ず近しい者達と決まっているのです。』
「なるほどな、高嶺がその【求め】と契約を交わしてしまったから、それに近しい者達、つまり碧達が召喚されたわけだな。」
『その通りです。』
そこでおかしな事に気づく。
「あれ!?でもエトランジェだっけ?六人って言ってなかったか?高嶺、その妹、碧、岬、そして俺。五人しかいないじゃないか。」
『もう一人は秋月と呼ばれているようですが。』
「秋月!?秋月 瞬か?あいつもきてるのかっ!」
『はい。今はサーギオスという国にいます。』
「秋月と高嶺がこの世界にいるのか。・・・因縁だな」
(ハハハッ。面白くなってきたな。あいつら神剣を持ってどういう戦いをするのかな?どう考えても手を取り合って助け合いましょうって事にはならないだろうな。)
「それにしてもお前、何かといろいろ知ってるな?」
『私は真実を司る神剣ですから、知識はかなり豊富ですよ。私の能力もそういった事に関連したものが多いですから。』
「よし、それならもうちょっとこの世界の現状や、常識、戦いに関する事、お前の能力なんかについて教えてくれ。それからちょっと戦闘訓練でもやってみるかな。取りあえず何処とも手を組むつもりはないからな、一人でも渡り合えるように力をつけないとな。」
『わかりました。できる限り教えましょう。』
それから【真実】は様々なことを教えていった。自分の能力の事から始まり、スピリットやエトランジェの事、世界の現状、北方五国、マロリガン、デオドガン、サーギオス、ソーンリームについてのある程度の知識、それから四神剣の事に最後にはこの世界の言葉について教えていった。
『この世界の言葉は当然ながら、あなたのいた世界の言葉とは異なります。私の力を使えば言葉の意味は簡単に解りますが、なるべく早く自力で習得してください。』
「自分で言うのもなんだが学習能力は高いんだ。なんとかなるさ」
事実もとの世界では英語はマスターしていたし、ドイツ語や中国語などもやっていた。
『では続けましょう。』
「あいよ。」

そして現在・・・。

パチッパチパチッ。再び火がはぜる。
「さて今後はどうしようか?とりあえずはこの世界を見てみたいんだけど・・・。」
『何処にも属すつもりはないんでしょう?もっとも私も御免ですが・・・。こちらからは余計な手出しはせずに、向こうから接触してくるまで、あなたの言うとおり旅でもしてみるとどうですか?真実を掴むためには、まず見る事から始まるのですから。』
考え込むシン。
「いちばん近いエトランジェはラキオスの【求め】・・・高嶺だったな。・・・そうだなとりあえずはラキオス領を見て回るか。そのうち接触してくるだろう。よーしそうと決まったら今日はもう寝るか。お休み【真実】。」
そう言って眠りにつくシン。【真実】はそれに答えるかのように明滅していた。

翌朝
「ふぅーー。」
大きく伸びをする。
『それじゃ行きましょうシン。』
「よし行くか。まっこれからヨロシクな【真実】。」
『はい。共にいきましょう。』

始まりの朝を迎えたシンと【真実】。イレギュラーな存在である二人の物語がはじまる。

                                                     つづく

あとがき
ふぅー。第一章書き上げました。いろいろとつじつまを合わせるのに苦労しました。ひょっとしたらどっかで合ってないかも。その時は教えてください。さて第二章では戦闘を入れる予定です。主人公の初の殺しと、他の物語に関わってくる戦闘も入れるつもりです。十日くらいの割合で書き上げるつもりですのでよろしくです。

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