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イレギュラーズ・ストーリー

序章 イレギュラーな来訪者

・・・ある神社で・・・
「もうすぐでユートさん達がくる・・。」
巫女服を着た女性が嬉しそうな、それでいて悲しそうな表情で呟く。
(私にとって長年待ち続けた人。)
巻き込みたくは無いが私情を挟んで勝てるほど今回の相手は甘くない。決意を固め、その時を待つ。

一時間後、その神社には、高嶺悠人 高嶺佳織 岬今日子 碧光陰 倉橋時深の五人がいた。
その後その神社は光で溢れる。
「・・佳織!佳・・織・・・!か・・ぉ」
「お兄ちゃん!お兄・・ちゃん・・・!」
「クソー何なんだこれは!・・・今日・・子」
「何!何なの!ユウーー!・・・光・・・ぃ」
(すいませんユートさん。佳織ちゃん。今日子さん。光陰さん。)
そう思いながらもユート達が光に飲み込まれていく様子をじっと見ている。しかしその顔は次の瞬間、驚愕の表情に変わった。
(あれは!?)
ふと横を見ると、そこにはユート達と同じ制服を着た一人の男が立っており、今にも光に飲み込まれようとしていた。
(何故!?此処は結界が張ってあってユートさん達以外の人は入れないハズなのに!それに気配も感じなかった。)
あり得ない事態に慌てふためく巫女服の女性。
(考えてる場合じゃない。助けないと。)
しかし次の瞬間そのユウト達とその男は光に飲み込まれ消えてしまった。
「あっ!しまった・・・。・・・・・・どうしよう。」
愕然とする巫女服の女性。
(無関係の人を巻き込んじゃった。)
非常に不味い事態だが、もはやどうしようもない。このまま成り行きを見守るしかない。
(でもあの人は私の結界の中に居た。神剣の力さえあれば、たとえ低位の神剣でも入れる程の弱い結界だったけど、普通の人は入れないはず。ということはきっとあの人は何かある。それに私の知るどの未来にも存在しなかった。・・・イレギュラーかぁ。)
「とにかく私は積極的には介入できないから、今は見守るしかない。」
そう言って巫女服の女性も消えていった。






  
『・・き・な・・い。・・起き・さ・い。』
 遠くから女の声が聞こえてくる。徐々に大きくなる。
『・起きな・・さい』
(俺は一人暮らしで彼女はいない。何なんだろうこの声は?判らん、眠すぎる。)
『起きなさい!』
(・・うるさい。)
 仕方ないので意識を浮上させる。
「・・・ん。うーん。誰・・だ?あれ!?何してたんだっけ?ん!?ここは何処だ?」
 周りを見渡してみる。あるのは一面に広がる草原だ。なぜ自分がそんなとこにいるのか全くわからない。もっとよく見回してみると、自分のすぐ側に棒切れが転がっている。いや、よく見るとそれは槍だった。見事な槍だった。刃の部分は一片の曇りも無く鈍く光っており神々しさを感じさせた。しかしながらそれが現状を説明してくれるわけでも無し、依然として此処が何処なのかは解らなかった。
 「ひょっとして、俗に言う記憶喪失とかいうヤツか?・・・いや待て待て、ちゃんと自分のことはわかるぞ。俺の名前は如月 深だ。日本人。17歳。高校2年だ。」
 自分の事はわかるし、クラスの奴らの事も思い出せる。記憶喪失では無い筈だ。しかし何故こんなところにいるのか思い出せない。
 「落ち着け俺。落ち着いて思い出すんだ。」
 
(・・・今日はいつも通りに家を出て、いつも通りに学校にいった。つまらん授業も終わって家に帰る途中、いつも通りに帰り道にある神社に寄り道をしたんだよな。)
 そこで暇をつぶして家に帰るのが日課だった。別に神社で何かするというわけでもない、ただ神社の雰囲気が気に入っているだけだ。
「いつも通り神社でボケッとしてたんだよな?」
 取りあえず、思い出せる範囲で思い出していく。
(えーっと・・・神社に居て、そしたら神社の表の方から数人の声が聞こえてきたから覗いてみたら見知った顔がいたんだよな。俺はあまり他人には興味が無いがそいつらは学校でもわりと知られた顔だったからすぐにきづいたんだよな。高嶺 悠人とその妹だったはずだ。家庭の事情が複雑らしく、よく教員どもと話をしているとこを見かけるし、後ろにいる妹の事で、学校の問題児である秋月 瞬としょっちゅう喧嘩している。そして後ろにいたのはその連れの碧 光陰と岬 今日子だろう。碧は寺の息子で、体格もよく、頭もよく、性格が軽い。岬は碧の彼女で何時も元気と言うかうるさい奴だ。しかも何故だか常にハリセンを持ち歩いているという危ない女だ。この三人と高嶺の妹はよく一緒にいる。取り立てて目立つ奴らではなかったが、学校では不思議と存在感があるんだよな。
 後の一人は知らない女だったな。しかし巫女服を着ているのだからあの神社の巫女さんか何かなんだろう。
 奴らは俺に気づくことも無く何かを話していたみたいだったじけど、いきなりそいつらを中心に光があふれ出して行って・・・)
 
「そう、いきなりあいつらのいる場所が光りだして高嶺たちが消えて、その光が徐々に広がって・・・俺も飲まれちゃったんだよなぁ。あれにはビックリしたぞ。そういえば俺が飲まれる瞬間巫女さんが俺に気づいて何か焦っていたみたいだったけど。」
 とにかくここから記憶が無い。
(うーんこれは困ったな。面白そうな事態だが・・・どうしようかな。・・とにかくここが何処なのか判らないとな。・・しかし随分暑いが、今は冬じゃなかったか?ひょっとしてここは日本じゃないのか?)
「そう言えばさっきの女の声は誰だったんだろう?」
 肝心なことを思い出して改めて回りを見渡してみるが誰か居る気配はしない。しかし現状を説明してくれそうな唯一の人だ。何とか見つけたいところだった。だが残念ながらみつからない。大体こんな見晴らしのいい所、誰か居ればすぐに気づくハズだろう。取りあえず人家を目指して歩き出す事にした。
「人が居れば此処が何処だか解るはずだ。」
そう言って立ち上がるところでさっきの見事な槍が目に入る。
「この槍は持っていこうかな。最近は何かと物騒だしな。それになかなかの一品だもんなこいつは。ぜひ家に持って帰って飾りたい。」
そう言って槍を持ち上げる。すると、
『あなたは、私を、永遠神剣 第四位である私を観賞用の置物にでもするつもりですか?』
 先ほどの女の声が聞こえてきた。
「おっ!この声はさっきの・・。あれっ?何処にいるんだ?」
見渡すが周りにはやはり誰も居ない。しかし今の声の内容から推測するなら。
「まさか、この槍か?でも槍がしゃべるわけ無いしなぁ。あっ!?ひょっとして新種の槍型の携帯電話とか?」
そんなわけが無い。自分で言って、馬鹿らしくなってくる。そんな事を考えていたら先ほどの女の声がまた聞こえてきた。
『そんな訳が無いでしょう。』
「そうだよねぇ。」
あっさり返答する。
『・・・意外に落ち着いてますね。もう少し慌てるかと思いましたけど。』
「ああ。周りからはよく冷めてるって言われるよ。ところで、槍に向かって聞くのも変だけど、君は誰なんだ槍子さん?」
名前が解らないので、適当に呼んでみる。
『安易なネーミングで勝手に名前を決めないで下さい。』
(俺もそう思う。)
『私は、永遠神剣 第四位【真実】です。』
そう言われても何の事だかさっぱり解らない。
「永遠神剣 第四位【真実】?神剣って神の剣と書いて神剣?」
『そうです』
「剣じゃなくて、槍じゃないか。」
『揚げ足を取らないで下さい。永遠神剣とは総称であって、必ずしも剣の形をとっている訳ではありません。』
「ふーん。まぁそれはいいとして、それで結局なんなんだ?その、永遠神剣 第四位【真実】って?いや待て、そんな事より此処は何処なんだ?君なら知ってるんだろう?」
『そんな事って・・・重要な事なのですが。』
「まぁ、いいから、いいから。」
(今の俺にとってはこっちの方が重要だ。)
『仕方ありませんね。・・簡単に言えば、此処はあなたが居た世界とは別の世界・・つまり異世界です。』
「・・・えっ?・・異世界?えーっとそれは、地球じゃないって事?」
『地球ではないというよりも、世界そのものが違うのですが、有り体に言ってしまえばそういう事です。』
自分の住んでいた世界じゃないと言われても、いまいちピンとこない。
「それで何で俺はここにいる訳?まぁ、何となく予想はつくけど。」
おそらくあの光に飲まれてしまったからだろう。というかそれしか考えられない。どういう原理かはわからないが。
『あなたの考えている通りです。あなた達は門に引き込まれてしまったのです。しかし他の人達と唯一違う点は、あなたは巻き込まれてしまったという事です。他の人たちは必然的に引き込まれたのですが、あなた自身は完全に偶然です。言ってみればイレギュラーな存在ですね。運が悪かったしかいいようがありません。』
「ちょっと待て。整理させろ。」
自分に起こった現象を思い出してみる。
「門って言うのはあの光の事か?」
『そうです。』
「他の人達って言うのは、高嶺達のことか?」
『そうです』
もう一つ気になることを聞いてみる。
「俺は偶然、イレギュラーな存在で、高嶺達は必然って言ったな?どう言う事なんだ?」
『・・・それは、私の事を含めて後で話します。それより今はもうちょっと雨風を防げるところに行きましょう。もうすぐ夜になることですし。』
そう言われて気づいたが太陽はもう大分沈んでいる。確かに暑いとは言え風は強い。これでは風邪を引いてしまうかもしれない。
「・・・ふぅ。わかったよ。それで何処に行けばいいんだ?」
『北に向かってください。』
「北と言われてもわからんぞ。」
此処が異世界なら太陽が西に沈むという法則は必ずしも通用しない。
『太陽が沈むのは西なのですから、解るでしょう。』
(通用した。意外に単純だな。俺たちの世界と基本的な法則は変わらないようだな。)
とにかく北に向けて歩き出すシン。
草原を彩る見事な夕焼けがシンを包んでいた。


                      続く

あとがき
 作者のシンです。私の初の作品お読みいただいてありがとうございます。
 何か時深の性格に違和感あるような気がしますが、あまり気にしないでください。
 それからこの作品は、永遠のアセリアをプレイしていないとわからないと思いす。その辺をご了承ください。取りあえずオリジナルを二人ほど出しましたが、今後もっと増えるとおもいます。では最後までいけるか不安ですが、力の限り書かせていただきますので、どうぞよろしくお願いします。

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