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「くっ、あと一人はどこにいった!」

一人の男がそこらをうろうろと歩き回っている。

顔には焦りが見られた。とにかく他のことを考えてる暇なんてない。

彼は苛立たしい表情で振り向くと、目にうつる人物に向かって怒鳴りつけた。

「おい! そこのスピリット! いない奴はどこにいる!」

彼は数時間前から同じ事を繰り返している。

呼ばれたスピリットは、訓練の手も止めずにただ、

「……しりません」

とだけ同じように答えた。


スピリット……それは、
永遠神剣を扱い、驚異的な力を発揮する女性のみしか存在しない種族……

永遠神剣を振るって戦うための存在……永遠神剣を握り、命尽き果てるまで……

スピリットは道具、スピリットは兵器、スピリットは国家の重要財産……

そのスピリットを失ったりすることになれば、


「くそっ! このままでは俺は殺されちまう。」










第一話 皆、同じ空を見ていた











私はエステル。

第八位『静空』のエステル・ブラックスピリット。

サーギオススピリット隊所属。

私の好きなこと…、スミレ樹海に行くこと…

木々に囲まれた、誰もいない静かな所…

それは私にやすらぎを与えてくれる。

人目を忍んでやってきては、いろいろな事を思い浮かべ、ぼーっとしている。






エハの月、黒よっつの日、

帝都サーギオスの方に雲を突き破り天へとまっすぐに伸びる光の柱が立つのを見た。

聞いた話では、城に伝説のエトランジェ様が現れたらしい。

………………

…………

……














「ううぅ……ここはどこだ……」


頭が痛む中、起き上がって周りを見回した。


(室内だな…)
(周りには着飾った連中…)
(僕はじゅうたんの上に寝ていた…)


「ニスサスゥ!?」
「ムスル・レナ?」
「キネ フォス!」

「ん……なんだ、その言葉は……」


聞き慣れない言葉…どうやら周りの奴らは僕の知らない言葉を使うようだ。

様子を見ていると、すぐに周りの連中の一部が襲い掛かってきた。

僕の腕や肩を掴む兵士達、押さえつけようとしがみついてくる。

「触るな」

強引に掴みかかられ、全身に痛みが走る。



ポケットを探る…コツン……目当てのものはあった。

不意にニヤリとわらう僕に押さえつけている兵士達の顔が恐怖で引きつる。



―――― ドズ

「かっ…!!」


僕は携帯電話を握りこんで腹を殴りつけた。


「うぐッ」


それに多少の護身術も知っている。


「ぐぁッ!」







―――― しん……







軽く痛めつけてやると動かなくなった。

「ふんっ、僕は触るなっていったろ。服が汚れるじゃないか」

嫌悪感をあらわにして、兵士を振りほどいた。





――――キ-ン――――





「うっ……」

突然、頭の中に痛みが走った。

「なん…だ……!? こ、この…痛み…は……」

痛みの示す正面を向くと変に豪華な椅子が目に入った。

そして、その椅子には一本の剣が刺さっていた。

「永遠神剣……ん?……なんで僕はそんなことを知っているんだ!?」

「我を……我を受け入れよ……」

頭の中にそんな声が響いた。


「早く奴を取り押さえよっ!」
「スピリット隊はまだかっ!」


いつのまにか僕は、まわりの奴らの言葉を理解できるようになったらしい。

しかし、今の僕にその言葉は聞こえない…

ただ…ただ、目の前の永遠神剣『誓い』しか見えない…

「汝の誓いを……」

「僕の誓い……それは………」



―――― バン!



僕が『誓い』を手に取った瞬間、扉が勢いよく開かれた。

「スピリットか……ちょうどいい……」

僕はすぐさま一番手前にいるスピリットに飛び掛った。





「ククク……アハハハハ……」










そのまま彼は部屋にいる人・スピリットに限らず、自分を除く全てを皆殺しにした。

そして今、ラキオスに同じく現れたエトランジェはバーンライト制圧にむかっている。

私たちは、命令によりその間にイースペリアに向かいます。

私たちは戦争の道具。

………………

…………

……















次回予告





異世界より伝説のエトランジェ現れ、新たな時代の波が起こる。

その小さなさざ波は、いつか全てを破壊するのか、何か生み出すのか…





予言………「鳴り響く爆音」………







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