時間の存在しない世界  暗闇の中
 
 
 
 
 
 
ココハドコダロウ?
 
(メダリオ、いい加減俺を追うのは止めろ。お前はお前の思うとおりのエターナルになれば良いんだ。俺のマネをする必要は無い)
 
コレハナンダロウ?
誰カノ記憶ナノダロウカ?
 
(・・・・・・何か思い残すことはあるか?この世界に未練はあるか?・・・・・・無いんだな?そうか。ならば律に従い、俺が全てを破壊し尽くしてやる。後悔はするな)
 
・・・・・・ヤメロ。
コレ以上俺ニコレヲ見セルナ・・・・・・!!
 
(泣くくらいなら俺とともに歩むのは止めろ。こんなバカげた戦いに介入するたび、一周期が過ぎ去るたび泣くのはよせ。そんなに泣きたいのならこんなバカげた戦いを早く終わらせる事だな、エリス?)
 
・・・・・・ヤメテクレ。
 
(良いか、時詠?俺はお前らみたいな偽善者が、一番大っ嫌いなんだよ!何が世界を守るだっ!!だったら、何で俺の世界は守ってくれなかった!?だから俺は【コイツ】手にした。それをお前達が咎める資格など・・・・・・無い!!)
 
アァ、誰カガ泣イテイル。
心ノ奥底デ泣イテイルノニ、ソレヲ表現デキズニイル。
 
(・・・・・・エリス!止め・・・・・・タキオス!!止めろぉぉぉぉ!!)
 
嫌ダ・・・・・・モウ嫌ナンダ。
コンナニモ悲シイ記憶ヲ繰リ返スノハ嫌ダ。
 
(タケルさん、貴方、カオスに来るつもりはありませんか?)
(・・・・・・もう、どうでも良い。俺は皆を・・・・・・エリスを失ったから。ところで・・・・・・時詠、頼みがあるんだが?)
(お力になれるなら、どうぞ)
(あぁ。お前にしか頼めないことだ。・・・・・・俺とこいつを引き離して、力が必要になるその日まで・・・・・・くれ)
(後悔はありませんか?その選択で、貴方は満足出来ますか?)
(あぁ。決めたことだ。そして関係のない場所へ、頼む)
(・・・・・・判りました。それではいきます。永遠神剣【時詠】の主が命ずる・・・・・・)
(済まない)
 
痛イ・・・体中ガ、頭ノ中ガ、心ノ中ガ。
何ガ起キタ?
暗闇ガ・・・・・・俺ヲ飲ミ込ンデイク。
俺ガ・・・・・・俺デ・・・・・・無クナッテイク・・・・・・。
 
 
 
 
 

       創世の刃
              永遠のアセリア another if story
               act 14 open your eyes

 
 
 
 
 
 
       スフの月 青よっつの日昼 ラキオス 城 謁見の間
 
 
 
 
あれからまたしばらく俺だけダーツィに駐屯し(と言うより静養だが)、しばらくぶりに報告に戻った俺は謁見の間にいる。広い空間が物寂しく感じるのは何故だろう?
ラキオスに戻ってくるまで見続けた夢のお陰で、俺は醒めやらぬ頭で此処に跪いていた。悪夢であったとも言える、しかし、何処か懐かしかった。
夢。同じ夢を見ていたはずなのに、起きるとそれがスッポリと抜け落ちている。
しかし、なぜだか人物だけはハッキリと覚えている。
それも出てくるのは必ず、[タケル]・[エリス]・[時詠]・[メダリオ]・[大きな剣を担ぐ黒い大男]、そして[錫杖を持った少女]。
これが俺に何の関係があるというのだろう?
 
「・・・ト。・・・ヤマト!ヤマト!!聞こえているのですか!?」
「えっ、あ、ハイ!!申し訳ありません」
 
レスティーナの声で現実に呼び戻された俺は、慌てて姿勢を正す。
腰に提げた【開眼】がひどく重く感じられ、俺は妙な違和感を感じていた。
今は報告すべき事を報告するときだ。
 
「原因は恐らく、私が交戦した[メダリオ]と名乗る男の存在かと・・・・・・思われます。その男はエトランジェと呼ばれる私が手も足も出せず、敗北するほどの強者です。・・・・・・お恥ずかしながら、取り逃がしてしまいました・・・・・・。申し訳ない」
 
ゆっくりと頭を下げ、俺はレスティーナにあやまることしか出来ることは無かった。
俺は何より、レスティーナの信頼に応える事が出来なかったことが悔しい。
今、俺はどんな表情を浮かべているのだろう?
レスティーナの瞳に映る俺は、一体どんな顔をして居るんだろう・・・・・・
 
 
 
 
 
 
報告の後、俺はレスティーナの自室に呼ばれていた。
なにやら話したい事があるとか無いとか・・・・・・。
俺は急ぎ足で彼女の部屋に向かった。
ドアの前に立ち、呼吸を整え、静かに、出来るだけ丁寧にノックをする。
 
「ヤマトです。お呼びでしょうか?」
「入りなさい。・・・・・・あ、やはり少しお待ちなさい」
「はあ・・・・・・」
 
しばらくして、入室を促された俺は、ドアを開けて入室するなり言葉を失った。
豪奢に装飾された室内に、大きな窓の向こうに見えるテラス。
城下を一望できる王族の自室には初めて入った。
しかし俺が絶句したのは、別の理由であって・・・・・・。
 
「・・・・・・え〜と、此処はレスティーナの自室ですよね?」
「はい。・・・・・・何か問題でも?」
「いや、部屋に問題があるのではなく・・・・・・」
「何でしょう?」
 
絶句した理由。
レスティーナの格好である。
長い艶のある黒髪を結い上げ、活発的な印象を与える服装を身に纏い、いかにも町娘然とした格好をしていた。
あまりに似合っていて、俺は誰だか解らなかったので、今の間抜けな質問が飛び出したわけだ。
 
「その格好は?」
「ふふふ。これから、お忍びで街に降ります。君は、今日は私の護衛ということで」
「いや、そうでは無くて・・・・・・街に降りるって・・・・・・ええ!?」
「さっ、行くよ?あっ、私のことは、レムリアって呼んでね。私も君のことはヤマト君って呼ぶから」
 
強引に手を引かれ、俺はレスティーナ、もといレムリアの秘密の通路をたどって街に繰り出した。
城内にこんな通路があったのかと感心するほど入り組んでいて、しかも薄暗く狭い。
何処をどう歩いたかなどは忘れてしまったが、いつの間にか景色は見慣れた町並みに変わっていた。
それより、何なんだこの強引な展開は・・・・・・?
 
 
 
 
 
 
        同日 城下町 市場
 
 
 
 
「どう!?美味しいでしょう、このヨフアル!わたしこれ大好きなんだ」
 
街に繰り出したレスティーナは、良く笑い、良く怒った。
普段の凛とした雰囲気ではなく、一介の女の子に過ぎない表情を浮かべ、とても幸せそうだった。
特にこのお菓子、ワッフルによく似たヨフアルを買ってからはすごく幸せそうだ。
これが本当の彼女なのかも知れないと、俺はしみじみ考えてしまう。
・・・・・・でも、ヨフアルにパク付く彼女を見ると、普段の彼女が嘘のように見えてくる。
俺が忠誠を誓ったあの凛とした彼女は何処に行ったのだろう?
しかし、当然と言ったら当然だろう。
王族であるが故、王族らしく、毅然とした態度を崩さずにあり続けねばならない。
それをも見抜けず、俺は女王である時のレスティーナに勝手な理想を作り上げていたのかも知れない。
俺の周囲をクルクルと回りながら歩くレムリアの表情を見ると、この人が本当にレスティーナなのかと疑いたくなるほどの変化だ。
見ているこちらが眩しいと感じるほど、にこやかな笑顔。
だがこの笑顔を美しいと思っても、俺は口に出してはいけないと思う。
・・・・・・俺の手は彼女をほめるには、罪で彩られ過ぎた。
 
 
「ん?わたしの顔に何か付いてる?」
「いや、なんて言うか、レムリアは・・・・・・何で笑えるんです?」
「・・・・・・な〜んだ、そんなこと。」
「そんな事じゃ無いでしょう?君は常に上に立つ人間です。だからこそ・・・・・・笑えないのは判りますが、どうしてレムリアとしてなら笑えるのです?」
「違うよ。レムリアじゃないと笑えないんだよ」
「えっ?」
 
前を歩いていたレムリアが立ち止まり、ゆっくりと振り返る。
雰囲気がレムリアのそれからレスティーナの一端を滲み出す。
その瞳にはうっすらと涙が浮かんでいた。
静かに頬を伝い始める雫に目を奪われ、俺は軽く放心してしまったのかも知れない。
俺は理由も判らず、ただ立ちつくすだけだった。
 
「わたしは、私じゃないから。レスティーナは笑っちゃいけないし、泣いてもいけないんだよ・・・・・・。だから、私はレムリアとして笑って、泣いて、怒るんだ。彼女が感情を表せない分、わたしがその感情の受け皿なんだ」
「レム・・・・・・リア」
 
ひと雫がこぼれ落ち、静かに石畳をたたく。
 
「レスティーナじゃないわたしを見て、ヤマト君は軽蔑したかな?だって、平気で君たちに友達と戦えって命令している人間が・・・・・・こんなに簡単に笑ったり、泣いたりしていたんだもんね」
 
あぁ・・・・・・、そうか。彼女はいつも泣いていた。
過酷な命令を下し、俺たちを命の遣り取りをする戦場に送り込むことに対して。
彼女はいつも笑っていた。
俺たちがラキオスに生きて戻ってくるが出来て。
俺は今更ながら、一人では無いことに気づかされる。
みんな、みんな戦っていたんだと言うことに気づく。
気づくのが遅すぎたのかも知れない。
勝手にみんなを守っていたつもりになっていた。
・・・・・・なんて勝手な独り善がり。
俺は身体が勝手に動いて、レムリア、もといレスティーナを抱きしめていた。
そしてそっと耳元に口を寄せる。
 
「えっ・・・・・・!?なっ!ちょっと、ヤマト君!!」
「ありがとう。大切なことを忘れてた」
 
今更になって自分の独り善がりに気づかされ、俺は少し自分を恥じた。
それを彼女から教えられた。
やはりこの人は忠誠に値する人物だ。
周囲の好奇の視線が集まり始めるが、それ以上に俺は重大なことに気づいた。
 
「・・・・・・これから俺は少しラキオスを離れます。その許可を貰いたい。だからこうしているだけです。・・・・・・他意は無いですよ」
「・・・・・・それは、戦場から離れる、っていうこと?」
「違う。俺の戦場に行きます。俺は俺をもっと知らなきゃならない」
「・・・・・・判った。いいよ。その代わり、早く戻ってね?」
「はい。了解しました。・・・・・・では、行ってきます」
「うん。行ってらっしゃいヤマト君!待ってるからね!!」
 
レムリアを腕の中から解放し、俺は振り向くことなくその場を立ち去った。
泣いている顔を見せるなど、ファーレーン意外にはもう見せられない。
・・・・・・いや、見せたくない。
俺は流れ続ける涙をそのままに、詰め所に駆け戻った。
 
 
 
 
 
 
        同日 深夜 城門前の草原 
 
 
 
 
誰にも言うことなく、俺はラキオスを出た。
誰かに知られて、それで何か起きたら厄介ごとになると思ったからだ。
心配は掛けるだろうが、それ以外の道を俺は選ばなかった。
ゆっくりと遠ざかっていくラキオスを背後に、俺は小高い丘の上まで来ていた。
振り返り、俺は少しの間離れる事になるであろう第三の故郷に別れを告げる。
 
「じゃあ、行ってきます」
 
みんなの眠るであろう街に一礼を臥し、見上げた夜空には蒼々と輝く月。
俺は再び振り返り、静かに一歩を踏み出した。
 
「・・・・・・何処に行くっていうんだ大和?俺たちに内緒とは、水くさいな。それに、隊長の許可無しで行くつもりだったのか?」
「えっ?」
「・・・・・・ん。ヤマト、何処に行く?まだヤマトとは勝負したことがない」
「悠人・・・・・・アセリア・・・・・・!何で!?」
 
振り向いた先にいた二人に驚き、俺はただ間抜けな表情を浮かべていた事だろう。
悠人は若干呆れた表情を浮かべ、アセリアには未だに表情がいまいちつかめない。
更に三人が悠人の後ろから歩み出てくる。
 
「いけませんよ〜、勝手に出て行っては〜。お姉さんがめっ!てしてあげますね〜。それとお弁当です〜。エスペリアとわたしで作りましたから〜美味しいですよ〜」
「・・・・・・ハリオン。うん、サンキュ」
 
ハリオンから手渡されたお弁当バッグに詰め込み、笑顔を浮かべる彼女に俺も笑顔を返す。
 
「ここで待っていれば来ると踏んでいましたが、まさか本当にそうなるとは思っても見ませんでした。・・・・・・やはり、あなたは単純な所がありますね」
「こらこら、セリア。・・・・・・ヤマト様、ラキオスはお任せください。お戻りになるまでは、しっかりと守りきって見せます。ですから、お早めに」
「判った。しっかりと・・・・・・いや、悠人を頼む。セリア、ヒミカ」
 
手厳しい讃辞を貰い、俺は苦笑いを浮かべながらも俺は二人と握手を交わした。
力強く握り返された手に、俺は喜びを感じる。
 
最後に一人、気まずそうに立っている人物がいた。
 
「・・・・・・ウルカ、か?」
「・・・・・・手前はここで、ラキオスで剣を振るう事を決めました。ヤマト殿、安心してください。手前が、否、悠人殿達と共にラキオスを守って見せます故」
 
おずおずと伸ばされる右手を見て、俺は嬉しく思った。
ウルカの実力を知っていればこそ、深い事情について俺は立ち入ったりはしない。
差し出された右手を、俺は堅く握る。
 
「それは心強い。心おきなく、俺も俺の戦場に行ける」
「それと、いつぞやの続きを。貴殿と再び刃を交えたい。こんどは殺し合いではなく、共に戦う仲間の研鑽として」
「ああ。戻ってきたら、必ず。今度は勝たせて貰うよ」
「・・・・・・承知。手前とて、負けはしませぬ」
 
ウルカと堅く握手を交わし、俺はみんなを見る。
 
「よし・・・・・・それじゃあ、みんな。行ってきます」
 
ここにファーレーンが居ないのは、俺の代わりに庶務を担当して貰っているからだ。
俺のためにレスティーナが別命を与えたと嘘をついてくれ、彼女に庶務を言いつけた。
そのため、年少組とナナルゥ、信憑性を持たせるためにエスペリアが残ってファーレーンの気を逸らしているらしい。
それにここにつれてこなかったのは、みんなの心遣いだろう。
 
「あぁ、行ってこい。早く戻って来いよ?俺だけじゃ光陰と今日子を相手できないからな」
「何を言ってるんだよ。今のお前は、俺なんかより全然強いよ」
 
冗談めかし、俺は少し笑って見せた。
アセリアが俺の横に進み出てきて、小さな声で呟いた。
 
「・・・・・・ん、ヤマトが戻ってくるまでは、私がユートを守る。だから、早く戻ってきて・・・・・・欲しい」
「了解。用件が終わったらすぐに戻ってくる。・・・だから、それまで悠人を頼む」
「・・・・・・ん、任せろ。ユートは、私が守る。だから安心してくれ」
「任せた。悠人も君なら心強いはずだ」
「・・・・・・任された」
「よし。じゃあ、行ってくるよ。悠人、戻るまでラキオスを頼む」
「任せておけよ。・・・・・・もしかしたら、戻ってくるまでにマロリガンとの戦いは終わってるかもな?」
「俺の見せ場、取っておいてくれよ」
 
俺たちは笑いあい、そしてなにより、俺はみんなに感謝していた。
最後に悠人と拳を合わせ、俺は再び歩き出した。
目の前に広がる草原を抜ければ、目的地はすぐそこだった。
会いに来てくれたみんなに感謝しながら、俺は思いを改めた。
 
「あの時、神社にいた女・・・・・・。確か時深だったか?あの人が何か知っているはずだ。それに恐らく、俺の考えが正しければ・・・・・・」
 
何故だか悠人は時深の事を覚えている様子ではなかった。
以前それとなく話題を振ってみたのだが、まるで始めから知らないといった様子であった。
俺はその事に疑問を覚えながら、ダーツィ方面へと足を速めた。
静かな夜の帳に包まれ、俺の心は自然と逸っていた。
 
 
 
    スフの月 赤みっつの日 旧ダーツィ領 ヤマトが発見された草原
 
 
 
 
「時深さん!見てるんだろう!?見ているなら、聞こえているなら出てこい!!」
 
大声を張り上げ、俺は時深の名を叫んだ。
俺の考え、それはあの時、時深は意味深な発言をして、かつ落ち着いていた。
これから起こるであろう事体を予測していたように。
ならば俺は彼女がこの世界に居るような気がしていた。
恐らく、俺たちとはなんらか別の形で。
 
「倉橋時深!!聞こえて居るんだろう!?」
《もぅ・・・そんなに叫ばなくても、聞こえていますよ。大和さん》
 
世界に響き渡る声。
静かに俺の前方に広がる光の輪が現れた。
 
《そこに飛び込んでください。話はそれからです。・・・・・・奴らに気づかれては許も子もありませんから》
 
怒りすら感じさせるその声に若干圧倒されながらも、俺は周りをぐるりと見渡した。そして一つだけ確認する。
 
「拒否権は・・・・・・無いよな」
 
俺は諦め、光の輪の中へと身体を躍り込ませた。
何があっても良いように、【開眼】の柄を握ったままに。
 
 
 
 
 
 
            時間不明 何処かの世界 
 
 
 
 
うねりを上げる光の本流を通り、洞窟の中に誘われた。
壁面の鉱石が光を放ち、昼間と何ら変わらぬ明度を誇っている。
ドーム状に切り抜かれた空間の中央、舞台の様に盛り上がる場所に、件の女性、倉橋時深は立っていた。
 
「来ましたよ、倉橋時深さん?」
「ようこそ。それで、私に何かご用ですか?」
 
こちらに振り返り、時深はニコリと微笑む。
片手に扇子を持ち、優雅に振り向くその様は、まるで俺がここに来ることを予測していたかのように、余裕をたっぷりと含んだ年長者の笑みだった。
俺はさらに柄を握り込み、その白刃を高速で引き抜き、振り抜いた。
 
「その余裕・・・・気に入らないな!!虚空の太刀!」
 
放たれた真空波は寸分の狂い無く、時深を襲う・・・・・・はずだった。
寸分の狂いなく岩を砕き割る音がドーム内に響く。
バックリとと穿たれた地面に、もはや時深の姿は存在せず、あるのはただの瓦礫だけ。
俺は目を疑い、すぐに周囲に意識を向けた。
 
『ふふふ、さすがは大和さんですね。・・・・・・いえ、破片とでも行った方が正しいのでしょうか?やはりあなたは門を開いた位では私のこと忘れませんか』
 
空間に響き渡る声。全周囲から聞こえてくるような錯覚を覚える。
 
「君は俺の何を知っている?何のことか解らないが、破片ってどういう意味だ!」
 
周囲を見回しながら油断無く刀を構える。
気配を感じることは出来るのだが、実体は視認することが出来ない
 
『さぁ?私はあまり貴方のことは識りません。ただ、貴方よりは、貴方のことに詳しい自信がありますよ』
 
不意に揺らぐ風が、俺に何者かが接近したことを告げる。
咄嗟に振り向きざまに吹き放とうとした柄を、凄まじい力で押さえつけられる。
 
「遅いですよ?その程度の攻撃、私には通用しません」
 
数秒前まで舞台の上に立っていた時深が、すでに俺の横に立っている。
オマケに俺の首筋には、時深の握る短刀が突きつけられていた。
 
「本当に気に入らないね・・・・・、あなたのその余裕の笑み」
「ほめ言葉として受け取っておきますね」
 
小さく舌打ちをし、足下に【開眼】を転がし、俺は両腕を頭の後ろに組む。
無抵抗をアピールするためだ。
 
『主殿!某を投げるとは何事か!!』
「スマン。しかしこうでもしないと、このまま殺されそうだからね」
「・・・・ふふふ。良くおわかりで。レディにいきなり手を挙げるなんて、失礼ですからね?」
 
くすくすと笑いながら、手に持った短刀を懐にしまう時深。
 
「その様子だと、何で俺がここに来たのかは・・・・・・判ってますね?」
「ええ。貴方は私の正体について、何らかの予測がついている。それを確認しに来たことと、メダリオに対抗しうる力が欲しい。・・・・・・違いますか?」
 
ズバリ確信をついた物言い。
俺はこの人がうすら寒い人物のように感じた。
実際、前者だけ確認できれば良かった。
後者については、この後山ごもりでもしようかと考えていたから。
 
「・・・・・・ご名答」
「えぇ、貴方と、悠人さんについて知らないことは無いですから」
 
にこやかに微笑みをうかべる時深。
実際薄ら寒い人物のようだ・・・・・・。
 
 
 
 
 
 
「では、貴方の見解を聞きましょう。私の正体、それは何だとお思いですか?」
 
俺から少し離れた位置に座る時深は、やはり余裕の微笑みを浮かべていた。
無性に腹立たしい笑みだが、俺はもう手を出すつもりはない。
考え続けた結論を、俺は確認するように口にした。
 
「俺たちをこの世界、便宜上、ファンタズマゴリアと呼ばせて貰うが、そこに送り込んだ人物だ。そして、そこから導き出せるのは、貴方がとんでもない力を有していること」
 
俺は正直に言うことにした。ここまで来て、歯に衣着せる必要はない。
 
「俺は、貴方があのメダリオと同等、または同系列の人間と踏んでいる。つまり、ヨーティアの言っていた、この世界外の人間。しかし、俺たちエトランジェとは似て非なる存在だ。・・・・・・・・・・・・どうです?」
 
少しだけ眉をひそめ、時深は口を尖らせる。
 
「メダリオ達とは同系列ではありません。・・・・・・まぁ、同等というのは否定しませんけど」
 
頬を膨らませながらぷりぷりと怒っている時深の表情は、俺たちと何ら変わらない只の少女なのではと思うが、漂う雰囲気は百戦錬磨の戦士のそれだ。
そんな時深を無視して、俺は続ける。
 
「それでいて、少なくとも俺よりこいつ、【開眼】に対する知識がある。それと、俺についても」
「何故そう思えるのです?」
「・・・・・・」
 
一瞬の逡巡の後、俺は意を決して口を開く。
必死に思い出した夢に出てきたタケルと【時詠】の会話を。
と言っても、うっすらと記憶に残っている程度のものしかないのだが。
 
「・・・・・・そんなことがあったんですか」
「ああ。そうでなければ、俺は君を呼んだりはしなかった」
 
そこで話を打ち切り、俺は居住まいを正した。
時深もそれにあわせて居住まいを正し、ピンとした空気がその場に流れる。
張りつめた空気を伝い、俺の緊張が時深に伝わるのではないかと言うほどに。
ゆっくりと頭を下げ、俺は生まれて初めて土下座と言うモノをした。
 
「頼む!俺にアンタの知っている全てを教えてくれ!いや、全てとは言わない。少しでも良いから教えてくれ!!」
 
静かだった空間に俺の声が木霊し、時深の凛とした空気が俺に伝わってくる。
【開眼】からは何故か、哀れみともとれる感情が伝わってきた。
俺は頭を上げ、俺を測るように見ている時深の言葉を待つ。
やがて時深は大きくため息を吐き、張りつめていた表情を少しだけ緩ませた。
 
「判りました。ただし、私が出来るのは【開眼】と貴方を鍛え上げることくらいです。・・・・・・それ以外は、貴方自身の手で勝ち取っていって貰うしか無いですから」
 
唐突に向けられる哀れみの表情。
俺はその表情に、胸がきつく締め付けられていた。
 
「なぜ、それしかできない?貴方は全てを知っているんじゃないのか?」
「あなたは他人から聞く言葉と、自分の目で見る物、どちらを信じますか?」
 
もっともな意見をありがとう。
本当にこの人は、俺や悠人のことなら何でも知っていそうな気さえしてくる。
再び顔を上げると、時深は輝かしいばかりの笑顔を浮かべていた。
 
「さてと・・・・・・それでは、始めましょうか?」
「はっ?」
「言ったじゃないですか、私が出来ることは貴方と【開眼】を鍛える事だけだって」
「拒否権は・・・・・・これも無いよな」
 
俺は時深に促され舞台の中央に向かうと、時深はなにやら呪文(?)を唱え始めた。
詠唱が完了すると、その場には黒い門が現れる。
禍々しく、そして何処か荘厳さを漂わせるそれは、やがて鈍い音を立てて開き始めた。
開ききったドアの向こうに見えるのは闇。漆黒の闇。
 
「ここに入り、あなたに降りかかる試練を克服してください。・・・・・・それが、あなたと【開眼】次の段階まで引き上げてくれるでしょう」
「一つ質問良いですか?」
「何でしょうか?」
「ここに入って、どれくらいで出られる?」
 
時深は腰に手を当て、なにやら考え始めた。
今、俺にはとてつもない不安と恐怖、そして一握りの希望を手にしている。
やがて時深は頷き、口を開いた。
 
「それはあなたの心の強さ次第です。あなたが本当に強い心の持ち主なら、すぐにでも出られます。しかし、一縷でも疑問や迷い、負の感情がよぎれば。最悪ここで一生を終える事になります」
 
時深の目は真剣そのもので、とても嘘をついているようには見えなかった。
俺は自らを奮い立たせ、大きく深呼吸をする。
まっすぐに前を向き、俺は一歩を踏み出した。
時深に軽く手を挙げ、俺は暗闇の中へと足を進めていった。
 
 
 
 
 
 
「あの時と同じ事しか言えない私を許してください。・・・・・・自分を信じてください。それがあなたの力になります」
 
静かに囁く時深の顔には、うっすらではあったが苦悩と後悔の色が浮かんでいた。
ぼやけたように明るいドーム内、その中にたたずむ時深はなぜか悔しげだった。
 
「大和さん・・・・・大和さんは、彼と同じ道は歩かないで。貴方を待っている人がいるのだから。貴方のように強い【想い】はここで途絶えてはいけない・・・・・・」
 
 
 
 
 
 
side by yuto 
スリハの月 青よっつの日昼 ランサ ラキオス軍本陣 
 
 
 
 
 
 
ついに待ちに待ったヨーティアの発明、[抗マナ装置]が完成した。
悠人達はそれを携え、ランサの本陣に到着していた。
これでやっとあの邪魔者を排除できる。
悠人はそのことに胸が躍っていた。
友達と殺し合いをしたいわけではない。
しかし、そんなことをしなくても済む状態にすることが出来るかも知れない。
悠人が喜んでいたのはそこだった。
 
「ユート様、出陣の準備が出来ました。後は、ユート様の号令を待つだけです」
「わかった。それじゃあ、行こうか」
 
エスペリアの声に、俺は考えを中断し、テントを出る。
予定では一気にスレギト近郊まで駆け抜け、[抗マナ装置]起動後、一息にスレギトを制圧する。
俺は予定道理に行くと信じ、未だ来ぬ友と、戦場で待つ友に思いを馳せる。
 
「ラキオス・スピリット隊、出陣!!大和に笑われないように、早くこの戦いを終わらせるんだ!」
《了解!!》
 
 
 
   スリハの月 赤よっつの日 昼 スレギト近郊
 
 
 
行軍を続ける俺たちは、破竹の勢いでスレギト近郊に迫っていた。
幸いにも、敵方のエトランジェ二人は現れず、ラキオス軍は特に大きな被害もない。
その背景には、神剣の声が聞こえるようになったウルカの存在が大きい。
大和が抜けた穴をカバーしつつ、周りをフォローしながら戦ってくれている、彼女が居ればこその勝利であるとも言える。
 
「さてと、エスペリア、[抗マナ装置]を起動してくれ。起動後、一気に突っ込む」
「了解しました。それでは、起動させます」
 
ブゥゥゥーンと低い唸りを上げて響く起動音。
俺は障壁が消えることを祈り、同時に大和に思いを馳せた。
 
(大和・・・・・・。俺たちはもうすぐだ。お前はどうなんだ?)
 
その時、俺の肩に触れる小さな、しかし暖かな手があった。
 
「アセリア?」
「・・・・・・心配、ない。ヤマトが戻るまでは、・・・ん、私がユートを守る」
「はっ?」
「・・・・・・ヤマトに、任された。ユートのこと」
 
自信に満ちあふれた表情で、アセリアは俺の横に立っていた。
俺より頭一つ分背の低いアセリア。
その彼女に、守ると言われてしまった。
 
「はは、俺も情けいところなんて見せられないな!これじゃ、大和に笑われちまう」
「ん、がんばれ」
「よし!アセリア、行けるか?」
「いつでも、行ける」
「じゃあ、行くぞ!!」
「ん!!」
 
力強く頷くアセリアと、俺は駆けだした。
もうすぐ・・・・・・障壁が!!
 
「ユート様!障壁が・・・・・・消えます!!」
 
エスペリアの声とほぼ同時に、それまでそこにあった障壁は、雲散霧消していた。
俺はアセリアと共に駆け、後ろのみんなに号令を出す。
 
「全隊、行くぞ!!」
《了解!!》
 
【求め】を強く握りしめ、俺はスレギトに躍り込んだ。
 
(大和!俺たちは、此処に居る。・・・・・・だから、早く来い!!)
 
 
 
 
 
 
side by yamato
     審判の門内 
 
 
 
 
 
 
何処までも続く暗闇が、俺の方向感覚、平衡感覚、時間感覚を奪い去っていた。
あの門をくぐってから、俺はこの暗闇の中をどれくらいの時間歩いて居るんだろうか?
はたまた、俺は何処を目指しているのだろうか?
漠然とした不安だけがそこにあり、押しつぶされそうになるが、そのたびに悠人たちとの約束が俺を前に進む勇気をくれる。
一歩、また一歩と俺は遅くとも確実に歩を進めた。
 
《・・・・・・何故、貴方はまだ生きているのですか?》
「えっ?」
 
突然聞こえてきた声に、俺は咄嗟に身構える。
【開眼】の柄を握り、腰を据える。
これでいつでも刃を解放することが出来る。
 
《拾った命だろう?捨てたって罰は当たらないぜ?・・・何でアンタは生きてるんだい?》
「誰だ!」
 
俺を前方から聞こえる声は二つ。
それはどちらも女性の声で、何処か聞き覚えのある声だった。
 
「これが、時深の言ってた試練なのか?」
『覚悟召されよ主殿。ここでは某の力は完全の解放することは難しい様だ』
「つまりは?」
『主殿の本当の力が試される・・・・・・と言うことです』
 
尚もゆっくりと近づいてくる気配に、俺は反応して刃を抜きはなった。
暗闇にきらめく白刃のまぶしさに目が眩む。
プレッシャーが俺の身体を押し潰さんばかりにのし掛かる。
柄を握る手がじっとりと汗ばみ、何度も柄を握り直しながら周囲を見張る。
それほどまでに俺はこの暗闇に不安を抱いていた。
 
(くそ・・・・・・。何でこんなに俺は畏れているんだ?)
『主殿?焦ることはない。今は自分の事だけを考えられよ』
 
冷静な【開眼】の声が、俺の中の理性をかき集め、冷静さを呼び覚ます。
・・・・・・そうだ。悠人の事はアセリアやエスペリア達が支えてくれる。
ならば俺はここで、戦うことができる。
 
《貴方は、こんな時でも仲間の心配ですか?》
《いい加減さ、仲間に依存するのは止めろよ》
「何だと・・・・・・?」
 
俺の心の中を見透かしたかのような一言。
静かに良く透る声だった。
 
《そう言ってお前は何を得たんだ?・・・・・・今の地位か?新しい仲間か?》
「何が言いたい!?」
《いつだってそうですよ。貴方は仲間を頼り、仲間に頼られ、守っている気でいた》
 
尚もゆっくりと近づいてくる二つの気配。
暗闇の中で姿も確認できず、俺の心は焦るばかりだった。
 
《・・・・・・実のところ、貴方は守られている側だった》
《そう。だからお前は今もなお生き続けている。だからお前は今も守っているつもりでいる。・・・・・・本当の偽善者は誰だろうな、ヤマト?》
「お前らは誰だ?何故俺の事を知っている!?」
 
募るばかりの苛立ちに、俺はついに悲鳴を上げた。
 
《誰、ですか?・・・・・・本当はすでに気づいていらっしゃるのではないですか?・・・・・・ねぇ、ヤマト様?》
「・・・・・・嘘だ!そんなことはあり得ない!!」
《現実を見ろよ。だったら、アタシ達は何だって言うんだい?》
「君たちは死んだ!俺の目の前で!!」
《ええ、確かに。貴方は、私たちの思いを裏切ってラキオスで剣を振るっている・・・・・・》
《その事にアタシ達は、少なからず怒りを覚えている亡霊なのかもね・・・・・・!!》
 
暗闇から躍り出てくる二つの陰。
俺は咄嗟に刀を立て、迫り来る二つの刃を防いだ。
近づく顔。俺にはその顔が見覚えがあった。
 
「レイア・・・・・・エル!!」
《さあ、何故貴方は生きているか、答えてください》
《お前は何を守っているのか、それを見せてみろ》
 
押し込まれた刃に、力をかけて押し返す事が出来なかった。
あの時と同じ美しい顔と容姿。
しかし、二人の瞳はドブ川の様に濁りきり、あの時の様な暖かさを微塵も感じなかった。
その瞳に威圧され、俺には二人を押し返すことが出来なかった。
 
「く、うぅぅぅ・・・・・・」
『気をしっかりもたれよ!そなたがそれでどうするのだ!主殿の思いの丈を、今度はこの二人にぶつければ良い!!』
「確かにそうかも知れないけど、まだ・・・・・・」
『迷いは心を曇らせる!主殿の畏れは我が畏れ!そなたと某は一心同体なのだ!忘れるな』
「く、そ・・・・・・!」
『某と契約したときの強き思いは何処に行ったのだ!?あの時の主殿は、少なくとも今に絶望などしていなかった!!』
「判ってる!!・・・・・・判ってるが」
 
俺は何故こんなにも恐怖している?何が俺を畏れさせている?
取り留めのない疑問だけが俺の頭に渦巻く。
煮え切らない心のまま刃を振るっていた心が、二度の敗北を経験することで完全に萎縮させていた。
 
《お仲間は支えてくれるヒトが居ますが!今の貴方には誰も居ない!!》
《一人のお前に何が出来る?仲間に頼って、自分が強いつもりで居たお前に何が出来る!》
 
必死の思いではじき返し、俺は後ろに跳んで距離を開けた。
 
《お前は一人だ。何も出来ないお前など、死んでしまえばいい》
《そうです。貴方には何も成せない。》
 
重くのしかかる言葉の重圧。
今の俺にはこの上ない罵声だった。
でも・・・・・・。
 
「いつまでも悩んで・・・・・・いつまでも引きずって・・・・・・いつまでも逃げて・・・・・・!いられるかぁぁぁぁ!!」
 
俺は歯を食いしばり、大声で叫んだ。
のどが破れても、肺が破れても良いと思った。
俺は闇に怯え、目隠しをしていた。耳を塞いでいた。
なぜなら、実は罪から逃れたがっていたのは他ならぬ俺だったから。
罪をかぶり続け、それをスピリットのためと言う逃げ口にしていたんだ。
今その事に気づかされたなんて、俺はバカだった。
これは試練。心の強さを試すものだと、時深は言っていた。
ならば・・・・・・。
 
「もう逃げるのは止めだ。俺は、俺と、正面からぶつかってやる!!」
 
俺は真っ直ぐと刃を構えなおした。
 
「言いたいことは判った。・・・・・・確かに今俺は一人だ。だがな、俺は一人じゃない」
《何を意味の判らないことを》
《一人を認めたなら、仲間に隠れる事は出来ないぞ》
 
俺はやっと頭の中がまとまった。
そう、俺は一人なんだ。・・・・・・でも一人じゃない。
 
「確かに俺はここに一人でいるさ。でも、俺は繋がっている」
 
そう、俺はさっき確かに聞こえたんだ。
 
「俺の中には届いたよ・・・・・・ありがとう、悠人」
 
聞こえないくらい小さな声だったが、俺には確かに聞こえた。
悠人が俺を励ます声が、みんなの俺を待ってくれている声が。
 
「だから、俺は一人じゃ無いんだ!!」
 
俺は駆けだした。
闇を振り払うように。今までの思いを振り払うように。そして何よりも、今までの弱い自分を追い抜くために。
 
「俺も此処に居るぞ悠人!・・・・・・だから、お前も負けるな!!」
 
 
 
 
 
 
 
 
少年は新たな思いに気づく。
虚勢を振り払い、今までを決算するために。
少年はやがて気づく。
これからの事を。今までの事を。
繋がる心がやがて広がり、世界を繋ぐ一筋の光明にならんことを。
畏れが晴れ、少年は刃をとるだろう。
妖精を口実にではなく、自分の思いを遂げるために。
汝が行く末に、マナの導きが多からんことを願う。
その手に栄光をつかみ取ることを信じている・・・・・・。
                           
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