早朝、俺たちは兵士に会わないようにラセリオを出立することになった。
まだ眠そうなニムントールの手を引きながら、ファーレーンは俺の後ろを歩く。
悠人達はすでにイースペリア領内、ランサを奪還したと昨日の段階で報告があったと聞いている。
ならば急いだ方が良いと、俺とファーレーンで決めた事。
 
「起きてる・・・・・のか?」
「うんんん?」
「完全に寝惚けてますね・・・」
 
ちなみに、ニムには知らせていなかったため、こんな状態になってしまったわけで・・・。
イースペリアの救援は急を要すことで、俺たちには時間が無いのだから。
普通の光景として見れば、早朝からピクニックにでも行くかのような格好なのに、腰に提げたり、肩に担いだりしている神剣が違和感を醸し出していた。
悠人達との合流地点はダラムの街。
休み無しで歩くなり、走り続ければ今日明日中には着く予定になっている。
それまで、戦うことが無ければ良いんだけど・・・・そうもうまくは行かないだろう。
敵は何処に潜んでいるか判らない上に、待ってもくれないのだから。
横を見れば本当の姉妹なのでは、と疑えるほど仲の良い二人のスピリット達。
目をこすりながら歩いている緑スピリットのニム、それを優しい眼差しで見つめるファーレーン。俺はその微笑ましい光景を見ながら、自然と頬が緩んでいることを感じた。
それでも俺は頬を引き締め、一応周囲に気を張る。
サルドバルト軍が襲いかかってくる気配もなく、そのため俺には未だ戦闘前の緊張感は表れず、【精進】が周囲を警戒してくれている。
今のところは気になる気配などは感じない。
 
「ほらニム!そろそろ起きなさい」
「うぅ〜ん・・・まだ眠い」
「おいおい、そろそろ戦場近いんだけど・・・・」
 
苦笑いを浮かべながら歩いていく俺とファーレーンだった。
 
 
 
 
 
 

               創世の刃
             永遠のアセリア another if story
             act 5  イースペリア救援戦

 
 
 
 
 
 
予想通り、俺たちは出立してから約40時間後にダラムに到着。
ある意味予想外に時間を食ってしまったのは、途中敵の襲撃を受けたためだ。
途中ミネアの街で物資を分けて貰い、俺たちは街道をひたすら南を目指して歩き続けて来た。何度かサルドバルト軍のスピリットに襲われたが、俺たちは(自分たちで言うのもどうかと思うが)昨日出会ったとは思えないコンビネーションを発揮し、撃退していった。
着いた頃にはすでに夜中で、戦闘で少し足を怪我したニムは俺の背中で寝息を立て、あどけない表情を浮かべている。
(常日頃、こんな表情浮かべてくれたら、取っ付き易いのになぁ)
怪我をしてもなお、歩くと言って聞かなかったニムを強引に背負うと、相当疲れてたのかすぐに寝息を立て始めてしまった次第。
【精進】以外の荷物をファーレーンに持たせてしまったのだが、それでも俺が申し訳なくなるくらいニムの事で謝られながら歩いてきた。
まあ、それからはサルドバルトの連中も襲ってこなかったので良かったんだけど。
 
 
 
 
 
 
    未明 ダラム近郊 ラキオス軍スピリット隊陣内
 
 
 
 
 
 
ダラム近郊に設営されたスピリット隊の陣の一角、中央テントに足を踏み入れると、悠人と二人のスピリットが何やら真剣な表情で話をしていた。
特に俺に気づいた様子はない。
悠人もよく見れば、隊長然としていてなかなか頼りがいがありそうな気もする。
・・・・まだ多少心許ない気もするが。
尚も俺に気付きもしない三人に、流石に俺も痺れを切らした。
 
「悠人、状況を確認したいんだけど」
 
地図に意識を向けていた悠人が振り返り、あり得ない物を見たかの様な表情を浮かべて俺に歩み寄ってくる。
 
「大和!援軍って・・・・お前が?それに・・・やれるのか?」
「あぁ、やれるさ。俺にも戦う理由が出来たからさ。それに、佳織ちゃんにも「お兄ちゃんをお願いします」なんて言われたし・・・。力があるのに俺だけやらない訳にはいかないだろう?」
 
【精進】を軽く掲げて見せ、片目を瞑って見せる。
 
「佳織に逢ったのか!?」
 
佳織という単語に反応し、落ち着き払っていた態度から一転し、やれ怪我してなかっただの、俺より自分の心配をしろだのと言い出した。
 
「それだけお前のことが心配なんだよ。・・・・・彼女の表情を見ればそれくらいは判る」
 
奪還したダラムの街近郊に設営された陣で、俺と悠人は再会した。
ちなみに、ファーレーンとニムはそれぞれ仲間のところへ行くと言っていたので、途中で別れた。
それから俺と悠人は現状について、エスペリア・グリーンスピリットとセリア・ブルースピリットを交えて確認しあった。
 
「それで、明日はどういう作戦をとるんだ?」
「そのことなんだが・・・セリア、頼む」
 
セリアと呼ばれたスピリットが一歩前に進み出て、俺の事を睨むように見る。
俺はまだ睨まれることをした記憶もなければ、発言をしたわけでもないはず。
 
「はい。・・・今私たちはここにいます」
 
テーブルに広げられた地図のダラムをさして言う。
首都まではまだ若干距離がある。
 
「街道沿いには恐らく、サルドバルト軍が小規模のスピリット部隊を配置し、待ちかまえていると思われます」
 
そこで一旦話を切り、再び俺を睨み付ける。
 
(俺が何をしたんだろう?)
 
エスペリアが話を続ける。
(この娘は・・・・エルを討った・・・・・)
メイド的な格好をしている割には、中々の手練れという感じの印象を覚えている。
 
「そこで私たちは、このまま敵中突破し、イースペリアを救援に向かいます。そうすれば、恐らく明日の夕暮れ時にはイースペリア近郊に到着するかと」
「・・・・悠人の考えは?」
 
話を振られ、難しい顔になる悠人。
腕を組んで考える素振りを見せる。
 
「俺は・・・・エスペリアの案で良いと思う」
「ふーん。そうか。了解した」
 
素っ気なく返した俺に敏感に反応し、悠人は「アイデアがあったんじゃないか?」と聞き返して来たが、生憎俺にはスピリット隊内での発言権はない。
隊長である悠人が決めたことならば、俺はそれに従うだけ。
 
「生憎と、俺はスピリット隊の中でもお前みたいに隊長格の人間じゃない。ただの一兵卒で、それほど強い発言権は与えられていないんだ。俺の仕事は剣術指南役で、スピリットや悠人に平常時、または戦術会議時に戦闘に係わる知識を教えるだけだ」
 
エスペリアの長い睫毛が、剣術指南役という単語に敏感に反応して震えていたが、特に気にしないでおいた。
悠人は何か言いたそうだったが、俺は気にせず続ける。
 
「故に、隊長であるお前が決めたのなら、俺はそれに従うだけだよ」
「これは戦術会議じゃないのか?」
「言っただろう?状況確認を確認しに来たって。まぁ、それに自信が持てないと言うならアドバイスぐらいするが、ね」
 
そういって俺は立ちあがった。
戦術が決まっていたのなら、俺の出る幕はもうすでに無いのだから。
若干の睡魔に襲われ、悠人に割り振られたテントを借りて仮眠を取ろうと考えついた。
大きく伸びをすると、悠人に背を向けた。
 
「じゃあ、俺は疲れたんで少し仮眠を取らせて貰うよ。・・・悠人、テントを借りる」
「あ、ああ。セリア、案内してやってくれ」
 
セリアは渋々といった面持ちで頷き、俺の前を歩きした。
 
 
 
 
 
 
スピリット隊のテントの一角、少し大きめのテントに案内された。
さすがに隊長だけあって、悠人にはすこし良いものが割り与えられていた。
 
「それじゃ・・・・少し休ませて貰いますか・・・っと。ありがとう、セリア」
 
その場で大きく伸びをし、腰から【精進】を外す。
不機嫌そうな顔を俺に向け、また睨み掛かるように俺を見ている。
 
「・・・あのさ、俺、何かした?」
「いえ、別に。ただ・・・」
「ただ?」
「私は、貴方を上官だとは思えませんし、信用もしていません。・・・ましてやつい幾日か前まで敵だった人など」
 
口を開いたと思えば、随分とまあ、その・・・・・辛辣なこという子だね。
 
「奇遇だね、俺も君の事を部下だとは思って無いよ。それに、それが普通の意見だね」
「・・・・そうですか。それは」
「さっきも言ったけど、俺は隊長でも何でも無い。君たちと同じ一兵卒だから。君たちの仲間・・・いや、同類だと思ってくれて良いよ。まあ、これからよろしくって言うことで。それに、確かに何日か前までは敵だった。それは変えることのできない事実だから、否定はしない。信用も信頼も無くて当然」
 
セリアが目を見開いた。
何を言ってるんだこの人、と目が語っていた。
 
「つまりはそういうこと。俺は上官でもなく、部下でもない。つまり、君達スピリットの仲間。それに、その内信頼でも信用でもしてくれればいい。と言うか、行動で示す。そう考えてくれば俺としても助かるんだが?」
 
それだけ言うと俺はテントの中に入っていった。
 
「二、三時間したら起こしてくれ。頼んだ」
 
掠れる声でまだ居るであろうセリアに声を掛け、ベッドに入り込むなり俺は泥のように眠りについた。
 
 
 
 
 
 
自らのテントを目指して歩くセリアは混乱していた。
いきなり来て上官でもなく、部下でもない。仲間だ、なんて言われても訳がわからない。
そもそも信用していないときっぱり言ったのに、あの人はまるで気にしていなかった。
どんなつもりで私が言ったのか、どんなつもりで彼が言ったのか、まるで咬み合っていなかった。
 
「変な人もいるものね・・・」
 
そう呟くと、何故か笑えてきた。
ユートを始め、エトランジェは変わり者揃いなのかと思えてきていた。
伝承のエトランジェと違い壮絶な力を持った訳でもなく、来る前から戦士だったというわけでもない。ただ平穏な時間を暮らしてきた存在の人たち。
そう思った瞬間、少しだけ興味らしきものが芽生えた気がした。
ふと前を見ると、そこには友人であるファーレーンが座って空を眺めていた。
 
「ファーレーン」
「あ・・・・セリア」
「仮眠は取ったの?」
「ええ、ここに来てすぐ眠らせて貰ったから。もう平気よ」
 
久しぶりに出会った友人の顔は浮かなかった。
何か思い詰めている事でもあるのかと尋ねると、少し困った顔を浮かべ、訥々と語り出した。
珍しく仮面を外した彼女の声は、曇ることなく夜空に透った。
 
「ヤマト様がね・・・・ここに来る前、泣いていたのよ」
「え?」
「ダーツィで仲間だったスピリットが私に似ていたらしくて、「守れなくてごめん。俺が弱かったばかりに君が身代わりに」って抱きつかれ・・・しばらく泣き続けていたわ」
 
彼女の瞳は、酷く悲しげな瞳をしていた。
私は心当たりがあるだけに少しだけ考えたが、やがてそれについて意見を述べ始めた。
ヤマトが否定したのはこの世界そのものだから。
 
「でもそれがここでは当たり前でしょう?スピリットは人間の楯でもあるんだから」
「私もそう言ったの・・・。でも、そうしたら怒られたわ」
「何て?」
「君も彼女と同じ事をいうな、俺が戦う意味が無くなる・・・・って言ってた」
 
やはりエトランジェはどこかこの世界の住民とは、違うところがある。
それは根本的に違うものであり、本当にこの世界の在り方を否定するものだった。
 
「でもね、私その時思ったの」
 
突然、少し照れたような声が聞こえてきた。
 
「ヤマト様は本当はとても優しくて、弱い人なんだって。何もかもを自分のせいだって背負い込んでしまっているって。だから・・・」
「だから?」
「私はあの方の力になりたいって。スピリットだから、思い上がりだと言われるかも知れないけど、私はいつかヤマト様と並んで歩ける・・・そんな気がするの」
 
私は少しだけ、ファーレーンの言葉を疑問に思った。
(並んで歩く?人間と・・・スピリットが?そんなことあるわけが無いわ)
それでも、不思議とそれが言葉として出ることは無かった。
 
 
 
「・・・・ねぇ、ファーレーン。ヤマト様ってどんな人なの?」
「えっ?」
「ヤマト様って、どんな人」
「うん・・・そうね・・・」
 
ファーレーンはしばらく考えたが、やがて自分の感じたヤマトという人間像を語り出した。
その顔はどこか嬉しそうで、どこか悲しげな表情を浮かべていた。
(あぁ・・・・この子は)
私は直感的に感じた思いを心に留めた。
ファーレーンが何を思っているか、またこれからどうしたいのか。
手に取るように解る彼女の感情の変化を、セリアは自分の心の中だけにとどめた。
 
「ヤマト様はスピリットのために剣を振るうと言っていたの・・・」
 
その言葉を話すと、彼女が嬉しそうに笑った。
 
(この子はきっと、ヤマトという人が好きなんだろう)
 
ファーレーンがニム以外の誰かの事でこんな風に笑ったことは、記憶している中ではこれが初めてだった。
 
 
 
「そうだファーレーン」
「何?」
 
先ほどヤマトに言われた事、今は少しだけ仮眠を取りたいからファーレーンに押しつけることにした。
 
「ヤマト様が二、三時間したら起こしてくれって。端の隊長用のテントで仮眠を取ってるから・・・・よろしくね」
「えっ、でも」
「いいの。これから私は仮眠を取るから」
 
そういって私はテントに潜り込んだ。
スヤスヤと眠る仲間達を見て、私は新しく来たあのエトランジェのことを不覚にも思い浮かべてしまった。
あんな話を聞かされては、あの人の前に立ったとき、私はどんな顔をするか解らない。
 
「スピリットのために、命を張る人間か・・・・」
 
いまいちピンと来ない人間像に私はさらに頭が混乱して来てしまった。
 
「眠ろう・・・」
 
簡易ベッドに入ると、私は頭を落ち着けるために睡眠を取ることにした。
 
 
 
 
 
 
   三時間後 ダラム近郊 スピリット隊テント
 
 
 
 
「・・・・ト様。・・ヤ・・ト様。・・・・ヤマト様」
 
緩やかに現実に向かっていく意識が、聞き慣れた少女の声を耳にとらえた。
心地よく揺すられる振動に再び眠りに落ちそうになったが、気合いで眼をこじ開ける。
 
「おはようございます、ヤマト様」
「ん?ファーレーン?何で?」
「セリアに頼まれたんです。ヤマト様を起こしてくれって」
「そうか・・・。ありがとう、ファーレーン」
「いえ、構いません。それでは、中央テントでユート様がお待ちですよ」
 
起きあがった俺にダーツィ戦闘服を渡し、そのままテントを出ていくファーレーン。
俺はコートを羽織ると中央テントに重たい足を進めた。
あくびをかみ殺し、身体をほぐしながらトボトボと。
 
 
 
 
「すまん、少し遅れたようだ」
「いや、構わないよ。お前だって疲れてたんだ」
 
悠人はそう言うと俺に座るように促してくる。俺は黙って悠人の前の席に腰を下ろした。
 
「大和、ちょっと頼みがあるんだ」
 
座るなり、いきなり悠人は声を掛けてきた。続けるように促すと、悠人は頷いた。
 
「部隊を二つに分けようかと、エスペリアと話し合ったんだ」
「うん、それで?」
「意見を聞きたいんだ」
「そうだな・・・・」
 
部隊を二つに分けると言うことは、まずバランスを考え無くてはならない。
一方だけが勝利し、もう一方が敗北するので、わざわざ部隊をは分ける意味がない。
また、今回の戦闘に分ける必要があるかどうかだ。
特に分けなければならない理由が見あたらない。
 
「なぜ部隊を分けるんだ?」
「それは・・・」
「まず、今回の作戦には分けるべきという要素が見あたらない。それに、敵中突破をするならば、下手に分散するより火力を一点集中した方が崩しやすいはずだ。違うか?」
「それはそうだが・・・」
「では何故だ?」
 
悠人は少し黙って考えたが、やがて観念したかのように白状した。
 
「・・・・ラキオス王が大和の手腕を知りたいと言って、書状が降りてきたんだ」
 
書簡が俺に手渡される。書かれていた内容はこうだ。
軍備拡張が進み、戦闘参加スピリット数も十を超えた。
故に、戦闘の効率化を図るため、スピリット隊を二つに分けようと考えた。
そして片方には悠人を、もう一方には俺を隊長とし、その状態での戦闘力を計りたい。
 
「全く、これだから素人は・・・・」
 
書かれた内容の馬鹿馬鹿しさに、俺はあきれかえる事しかできなかった。
闇雲に戦力を分散し、その上で戦闘力を計る。
そもそも戦術というものは一朝一夕でできるものでは無く、長い月日を重ねて完成する。
今まで通り、三人一組で戦った方が遙かに効率的である。
ならば、今まで通りの方法からは若干違う、命令を簡易にした方法をとったと言えば文句は言えないだろう。
 
「悠人、隊を名目上、小隊制にしないか?」
「小隊制?」
「つまりだ、悠人隊・大和隊、何て感じで大きく分けるんじゃなく、スクランブル時にも対応出来るように、常に三、四人のチームを組ませておくんだ。そしてそのうち2チームを統合し悠人隊と大和隊を作る・・・・フェイクのな。実際としてその四チームを統括するのが悠人、お前の役目だ。そうすれば俺の隊も出来るし、俺の手腕も試せる」
 
悠人はしばらくの間考えたかと思うと、王の書状を眺めだした。
 
「幕末の剣客部隊を思い浮かべればいい。彼らは局長をトップとし、その下に副長、そしてさらにその下に組長を置いた。それで常時、組単位の行動を命じていたんだ」
 
理解したようで、悠人は身を乗り出してきた。
 
「解ったか?つまりだ、二分するのではなく、多分するんだ。バランス良くね。これなら従来のシステムからは変化無くできるし、王には若干の変更点を説明すれば、戦術に関しては素人だから納得するだろう」
「納得、ね。判った・・・・・うん、それで行こう」
「しかし、お前の命令は絶対と言うことは明言しておく。それで、今まで通りのシステムと何ら変わりなく出来るはずだ」
 
その話を聞くや、控えていたエスペリアとセリアを呼び、早速俺たちは小隊分けをしていくことになった。
開戦まで、あと二時間と迫った時刻の事だった。
 
 
 
 
スピリット隊は中央テントに集結し、発表を受けていた。
俺は簡単に先ほど俺と悠人たちで決めたことを他のスピリット達に説明した。
年少組はいまいちといった感じだったが、年長組は俺の意志をくみ取ってくれていた。
 
「まあ、根本的には今までと変わりはないから。ただ、君たちの中から小隊長を選抜するけどね」
「はーいはーい!質問!」
 
元気に飛び跳ねる青の少女、(確か)ネリーが手を挙げていた。
 
「しょー隊長って何?隊長はユート様じゃないの?」
「小隊長って言うのは、君たちが悠人の命令を聞けないくらい離れてしまった場合、悠人の変わりに命令を下す人。言わば、悠人の変わりだね」
 
未だに訳解らんといった表情だったが、あえて俺はスルーした。
そして、先ほど決めた小隊分けが悠人から発表される。
 
旗隊 隊長ユート 構成 アセリア エスペリア オルファリル
 
二番隊 隊長ヤマト 構成 ファーレーン ニムントール ネリー
 
三番隊 隊長セリア 構成 ナナルゥ へリオン
 
四番隊 隊長ヒミカ 構成 ハリオン シアー
 
基本的には奇数隊を連携させ、偶数隊を連携させる作戦を採ろうと考えている。
要するに、連携することを利用し、二つに分けたと王に錯覚させるための隊分け。
 
「当面はこの編成で行くことになると思う。しかし、折りを見て異動もあるから、今回の戦闘に関してはこの編成で行く。よろしく頼む」
 
悠人が言葉を締めくくり、俺に場所を空ける。
悠人の立っていた場所に今度は俺が立つ。言っておきたいことがあった。
 
「みんな良く聞いてくれ。君たちは道具じゃない。意志を持った一つの生命であることを忘れないでほしい。特に小隊長は自分の意志で自らの隊を守ることと、自分で考える事をしてくれ。そして、人間に命令されたとか人間がどうのではなく、自分に責任を持って行動して欲しい。君たちはエトランジェ、【求め】のユートの有能な部下なんだ」
 
悠人を指すと照れたように俯いてしまっていた。
 
「最後に言っとくけど、このシステムにしてもユートの命令だけは絶対であることは忘れないで欲しい」
 
それだけ言うと、スピリット隊の面々は神妙な面持ちで頷いた。
本当に有能な娘たちだと思った。だからこそ言っておかなければならないことがあった。
 
「付け足すけど、俺は君たちの上官じゃない。俺のことは君たちと同類と考えて貰って良いから。何より、俺も君たちを部下とは思わないから・・・その辺はよろしく。あぁ、この前まで敵だったって言う理由で信用ならないって言うなら、その辺は行動で示すから。ということで、俺のことはよろしく」
 
俺の言葉を人間らしくないと思ったのか、少女達はキョトンとしていた。
セリアだけは別に表情の変化もなく、俺の話を聞いていた。
とりあえずそう締めくくり、俺たちは各隊に別れ申し送りを始めることとなった。
 
 
 
 
俺の隊に配属された三人と顔を合わせる。
と言っても、二人はもうすでに知っているので問題ない。
 
「と言うわけで、よろしくな。三人さん?」
「はい。お力になれるかどうか解りませんが、精一杯務めさせていただきます」
「はぁ。めんどくさい」
「くーるにがんばりまーす」
 
三者三様で返事を返してくる隊の面々。
 
「ちなみに、主だってヤマト隊は遊撃をすることになるから」
 
申し送る事はこれだけだった。
と言うか、これぐらいしか見あたらなかった。
それからしばらく今回の戦闘に関しての確認と、戦術、目的の確認などをしていたところ、突然声を掛けられた。
 
「ヤマト様」
「ん、君は四番隊の・・・・確かヒミカ、だっけ」
「はい。連携などについて、少々確認が」
 
どこかで見たことがあるなと思えば、彼女は俺がダーツィで暴走したとき、
脇腹に風穴開けてくれた赤スピリットだった。
 
「ああ、そう言えばありがとうな。あの時俺を止めてくれて」
「はい?」
「ダーツィのヒエムナ制圧戦の時」
「あっ・・・・」
 
少し顔をしかめ、ヒミカは頭を下げてきた。
 
「あの時は申し訳ありませんでした」
「いいって。君は正しい事をしたんだ。傷もニムとエスペリアのおかげで完全に直って、戦闘には支障はないから」
「・・・・ですが」
「はい、それより戦術連携の確認!」
 
 
強引に話を打ち切り、俺とヒミカは連携などの確認を行った。
それと傷の事だが、あれは本当の事で、ラセリオに着いてすぐくらいにニムントールの(あまり得意ではないらしい)神剣魔法で完治している。でもなぜか傷跡は残った。
本来神剣魔法で治療した場合、傷跡も残るはずはないとファーレーンは言っていた。
ここに来て隊分けの最中エスペリアにも治療してもらったが、それでも俺の身体から傷が消えることはなかった。
エスペリア曰く、「心の問題ではないでしょうか?」とのこと。
俺があの戦闘を引きずり、あの戦闘に固執し続ける限り傷は消えることは無いそうだ。
しかし、あの戦闘は俺の記憶から消えることは絶対に無いと思う。
あれを忘れると言うことは、俺が彼女たちを忘れるという事になるだろう。
彼女たちの死を俺が忘れないために、神が残した記憶の象徴なのだろうと勝手に解釈している。この傷が消えるときは、俺の中から彼女たちが軽くなり、彼女たちより大事なものが出来たときとなるらしい。
 
「さあ、確認は終わりだ。もうまもなく出陣だから、準備に取りかかろう」
 
ラキオス・スピリット隊の面々はそれぞれ準備に取りかかった。
 
 
 
 
イースペリアへ向かう街道に集結し、悠人の号令を待つ俺たち。
各隊ごとに集結し、いつでも出陣できる状態にあった。
 
「みんな、生きて帰ってくるぞ!スピリット隊出陣!!」
 
号令とともに俺たちはイースペリア救援を目指し、戦場へと駆けだした。
身体を駆けめぐる【精進】の力が久しぶりに昂ぶっている感じがして、俺を若干ハイにしていく。戦場まではあと少し。
腰に提げた【精進】の重さが今日は嫌に心地よく、周り周りを見渡せば心強く感じるラキオスのスピリット達と悠人。
敵に回していて、彼らの強さは痛いほど痛感している。
 
 
 
「みんな!よろしく頼む!!」
 
 
 
 
俺は声を張り、周りを鼓舞する。
全く無意識だったが、エトランジェ特有の周囲の者達の身体能力を強化するオーラフォトンが展開されていたと後に悠人から話を聞いた。
【精進】を引き抜き、俺は刀身を眼前に掲げる。
特に気にも留めていなかったが俺のオーラは銀色の輝きを放っていたらしい。
目の前にはサルドバルトのスピリット一個中隊規模の部隊。
俺は再びこの死神が徘徊する、血風吹きすさぶこの場所に帰ってきてしまった。
 
 
「スピリット隊展開!各小隊ごと、戦闘を開始!一定の距離を保ちつつ、連携を忘れるな」
《了解!!》
 
小隊ごとに展開し、スピリット隊は突撃を開始する隊、神剣魔法を使用後各個撃破を目指す隊と、見事にそれぞれの持ち味を発揮し始めた。
 
「さぁて、俺たちも始めますか・・・・。ヤマト隊、突撃する!遅れるな!!」
「「「了解」」」
 
【精進】を握りしめ、俺は駆けだした。
右方向にはヒミカ率いる第四小隊がほぼ同時に動き出した。
 
「さぁ、スピリットのためだ・・・・許せ!!」
 
 
 
 
 
 
少年は自ら、戦場に立つことを選択した。
新たに仲間と決めた少女達を守るため、自ら刃を振るうことを選んだ。
少女達に自らで人生を決める悦びを与えるため。
与えられなかった、死別した仲間達の心を解放するため。
全ては自己満足なのかも知れないが、それは他人のための自己満足。
少女達が自由を得てくれるなら、少年はどんな汚名でも被る覚悟が出来ていた。
自らの振るう刃が明日を切り開く標になると信じ、少年は戦う。
それが全て、何者かの手のひらの上で踊らされているとも知らずに・・・・・。
                           to be contenued
 
 
 

 
 
 
あとがき
 
 
こんにちは。夜の方はこんばんは。
幸村と言います。以後よろしくお願いします。
・・・・なんだかんだで、後書きを書いていなかった私です。
まずは、ごめんなさい。
と言うことで、まずはヤマトの軌跡ですが・・・・・・。
正直、やっちまった感がぷんぷんです。今更ながらに自分の文才の無さを痛感しています。
一話から三話まで異様に展開が早く、そして読みづらいと思います。
四話に至ってもそれは同様で、それでも読んでくださった方々にはお礼の言葉もつきません。
 
と言うことで、五話からは文章構成を変更してみたのですが、どうでしょうか?
読みづらい等のご意見がございましたら、遠慮なくお申し付けくださいますよう、お願い申し上げます。
いずれ折りをみて、一〜四話も修正・加筆したいと考えています。
 
この五話を読み終えて、後書きまでたどり着いてくださった方、本当にありがとうございます。これからも頑張って書き続けようと思っています。
皆様が楽しく読んでくだされば幸いです。
 
 
ここでヤマトの成長ですが・・・
[虚空の太刀]が使えるようになりました。
説明は以下のようになります。
 
 
虚空の太刀
 
【精進】にオーラフォトンを流し込み、オーラを纏った太刀を振り抜く。
そうすることにより、鎌鼬を発生させ、その鎌鼬にオーラを乗せることで殺傷能力を上昇させる。一文字、十文字、回転剣と様々な派生バリエーションがあり、使い勝手も良好。
神剣魔法を持たない【精進】の中では、唯一の遠距離攻撃とも言える。
しかし、感情・オーラフォトンに左右されることもあり、ヤマトのコンディションによって威力が替わってしまう。
そのため、この技を使う際は心をフラットに保つことが重要。
 
 
 
 
以降、何個か技を追加してきます。
 
此処まで読んでくださった方々に敬意を表し。
                          幸村