「マナの霧に還るその時まで、ラキオス王国に忠誠を誓います」
【精進】を掲げ、ラキオス王の前に跪く俺。
気乗りはしなかった。どちらかと言えば、今すぐにでも目の前の王を殺してやろうと考えていた。
下肢に、柄に力を込め、丸ごと王を叩ききってやろうかという考えが頭をよぎる。
しかし【精進】が邪魔をして、俺にそれを許さなかった。
何でも『この世界で、主殿は異分子なのです』とのこと。
「エトランジェ、【精進】のヤマトよ。そなたに第二館の管理と剣術指南役を命ずる」
「はっ。この【精進】、必ずやご期待に添いましょう」
こういけしゃあしゃあと嘘をつける自分に反吐が出る。
自己嫌悪に苛まれる中、俺は王族の言葉を待った。
「ついてはエトランジェよ。そなたはラセリオの防衛スピリットと合流し、すぐさまイースペリアの救援に向かうがよい」
王の横から、小柄な王女レスティーナが口を開き、俺に命を下してきた。
この王女は王とは違う雰囲気を感じ、素直に頷くことが出来た。
「了解致しました。時に、そのスピリットの名は?」
「【月光】のファーレーンと【曙光】のニムントールだ。」
名を確認し、俺は部屋を与えられた第二詰め所に向かい、準備を開始した。
 
与えられた部屋には何もなく、殺風景な部屋だった。
殺風景なその部屋は俺の心を語っているかのようで、何だか凄く虚しくなっていた。
その部屋の片隅に小さな十字架を立て、[ダーツィ戦没者に捧ぐ]と彫り込んだ、日本で言うところの仏壇を作った。
あの戦いで消えた様々な命を供養するために。
ダーツィで二人を失ってから、一月が過ぎようとしていた。
 

 創世の刃
永遠のアセリア another if story
act 4   運命の出会い

 
あれから俺は一時拘束され、ラキオス首都まで連行されていた。
抵抗しようと思えば出来たが、それをしなかったのは無気力に苛まれたから。
【精進】も取られていたとあっちゃあ、抵抗しようにも出来なかったが。
しかし、ラキオス城に連れてこられてから、気分は一変した。
牢獄に投獄され、俺は人として扱われなかった。
そんな中、ラキオス王がレスティーナ王女を引き連れ牢獄を訪れた事がある。
ラキオス王はそんな俺を見て、ニヤニヤと下衆な笑いを浮かべていた。
「どうだ?ダーツィのエトランジェよ。我が国のために神剣を振るってみぬか?」
こいつに罪の意識はなく、あるのは手駒や領土の増えた悦びのようだったと、俺はその時に直感的に認識することで怒りが湧いた事を覚えている。
その笑い顔が、再び俺の戦意に火を再点してくれた。
そして同時にこの時悟ったこともあった。
スピリットは悪くない。悪いのはこいつのような、戦いを強制する為政者なんだ、と。
そして俺は上辺だけの忠誠を誓い、再び命を殺める者として一歩を踏み出した。
「やむ終えますまい・・・・承知致しましょう。私が手を血に染めれば良いのでしょう?」
殺める事は苦しいこと。
しかし、誰かがやらなければならないなら、スピリット達では無く外部からの刺激、つまり俺や悠人がやることで少しながらも改変されていくんじゃ無いかと考えた。
悠人は妹のため。俺は今生きるスピリットのため、剣を振るうことを選択した。
ならば、あとは二人とも、その十字架を背負い続けるだけだった。
 
出立の三十分前 ラキオス城 レスティーナの執務室
 
俺は王女に呼ばれ、彼女の部屋の前に来ていた。
ノックをすると、毅然とした声が返ってきて、入室を促される。
「失礼します陛下」
部屋に入ると、そこには佳織も居た。
佳織は俺の顔を見ると少し複雑な顔をして、レスティーナを見上げた。
「楽になさい。少し話がしたい」
「お戯れを・・・。ならば佳織が関係するのですか?」
「いえ。カオリには無関係ですが・・・私個人の話です」
突然レスティーナ王女の口調が変わり、どことなく違和感を覚える。
「どういったものでしょう?戦場の話でしょうか」
若干の皮肉を込めて、苦笑いを浮かべながら話を促す。
すると突然、王女が頭を下げた。
「・・・・どういうつもりですか?」
「貴方はダーツィにて、スピリットのために剣を振るっていたとの報告が上がっています。・・・それを私の父の起こした戦争のため、無駄にしてしまいました」
王女の突然の謝罪。
その表情は真剣で、また同時に悲しげでもあった。
表情を見た俺は、この人なら信じられると直感的に判断していた。
今までみた為政者二人とは違い、スピリットの事に心を痛めていた。
それだけでも俺には十分信じられた。
俺は大きくため息を吐くと、そのまま王女の前に跪く。
俺の突然の行動に目を丸くする王女と佳織。
「陛下・・・・私【精進】のヤマト、貴女様に我が刃を捧げましょう」
【精進】を引き抜き、王の前でしたように宣誓して見せた。
「我が命は王国では無く、貴女様にお預け致します。・・・我が矮小なる命、貴女様のための剣となり、楯となりましょう」
今まで目を丸くしていた王女はにこやかな笑顔を浮かべた。
「時が来れば、そなたに十分な活躍をしてもらいます。それまでは、我が王国に命を燃やしてください」
一言に頷き、俺は部屋を出ようと扉に向かった。
「しかし、俺の命は貴女に預けました。もうすでにあの王に忠誠心はありません」
そういって部屋を出ようとした。
「あ、あの一條先輩!」
突然呼び止められ、俺は振り向く。
佳織が俺の足下まで駆け寄っていた。
「あの、お兄ちゃんをよろしくお願いします。多分、お兄ちゃん無理してるから」
どこまで健気な子なんだろうと思った。人質にされて、自分のために戦わされていると思っている。だからそれに罪の意識を感じ、俺にこんな事を頼んでくる。
俺は佳織の頭に手を乗せると、一つ笑って見せた。
少しぎこちなかったかもしれないが、ラキオスに来てから初めての笑顔だった。
そのまま俺は王女の部屋をでて、ラセリオに向かうべく城下の門を目指した。
 
同日 九時間後 ラセリオ
 
ラキオスからラセリオまではほぼ一本道だった。迷うことなくラセリオまで来ることが出来た。
遠目に見える入り口の前には、一人のスピリットが立っていた。
俺に気がつくと深々と一礼して、俺の方に駆け寄ってくる。
「ヤマト様ですね?」
「ああ、俺がヤマトだ。君は・・・?」
仮面を付けていて表情はよく判らなかったが、瞳が笑っていた。
どこかで見覚えのある笑顔だと思った。
「私はラキオススピリット隊、【月光】のファーレーンと申します」
「ん、ああ、よろしく」
ボーッとファーレーンの顔を眺めていたようで、俺はハッとする。
「??私の顔に何か付いてます?」
不思議そうに俺の顔をのぞき込んでくるファーレーン。
「え、あ、いや・・その、仮面とったら・・・綺麗なんだろうなって思って」
「え、いっいえ。私など全然!みんなに比べれば」
どこか聞いたことのある声で、以前どこかであったことのある人物の性格だった。
「なあ、ファー「お姉ちゃん!!」・・・・は?」
「あら?ニム」
ニムと呼ばれた少女は腰に手を当て、少し怒っている風な感じだった。
そのままツカツカと俺たちに近寄ってきて、俺を見るなり「誰コイツ?」と言った。
正直少し不思議な気分になった。
「・・・・いきなり、誰コイツ?・・・・か。」
いきなりコイツ呼ばわりされたのは二回目。
「ねえお姉ちゃん、誰コイツ?ヤマトって言う人?」
正直、こっちのチビッ子も近視感があった。
「こらニム!ヤマト様をコイツだなんて、この子はもう・・・・」
心の中に止め、戦うことを志した原因になった二人によく似ていた。
そう思うと涙が滲んできて、慌てて自分の頬を殴った。
「ヤマト様?」
「いや、何でもない。・・・・うん、何でもない」
「何?この変なヤツ?なんかめんどくさそう」
俺の不思議な言動に二人は目を合わせ、キョトンとしていた。
そして俺は何となく懐かしい二人に迎えられ、ラセリオに到着した。
 
夜 ラセリオ 駐屯地
 
夕食時、スピリットと人間は分けられ、俺もスピリット側だった。
そっちの方が心が軽い。ダーツィを滅ぼした国の人間と一緒に食える訳がない。
俺たちは食堂の片隅、小さなテーブルに座っている。
「さあ、ヤマト様。食事にしましょう」
ファーレーンは辺りを見回していた俺に声を掛けてくる。
睨み付ける様に俺たちを見る兵士達に異様に腹が立ったが、彼女たちの手前、キレる訳にはいかないとおもった。
「ヤマト、気にしてたらご飯食べられないよ」
「ん・・・ああ。わかってるんだけど・・・・」
ニムントールは俺の事をヤマトと呼ぶようになっていた。
ファーレーンはしきりに「ヤマト様と呼びなさい」、なんて言っていたが、俺が認めたとあっては何も言えなくなっていた。
そんな彼女に対してもヤマトでいいと言うと、「そんな失礼なこと出来ません」と一蹴されてしまった。
ファーレーンは口元のマスクだけ外し、食事を取っていた。
それでも俯いているのはご愛敬。
「済みません・・・。私、極度の人見知りで、これが無いとダメなんです」
とのこと。
そんなこともあり、同席というか、同じ時間に食事を取ることを拒んでいたが、俺が一緒に食べようと頼み込んだため仮面を付けたままの食事となった。
 
しばらくして事件は起きた。
原因は兵士たちの会話。
「あ〜あ、何で俺たちがスピリット達と同じところに居なきゃならんのかね?」
「確かに。俺たちとスピリットは違うもんなぁ」
「王は俺たちの事をなんだと思ってらっしゃるんだ〜」
兵は俺たちを見ながらニヤニヤと笑っていた。
ファーレーンもニムントールも気にした素振りを見せず、まるで日常の様に受け止めていた。
「おいおい、スピリットが飯食ってるぜ?何人間様と同じもの食ってんだ」
「そうだよなぁ。スピリットは戦ってるだけでいいのにな」
瞬間、俺が我慢の限界を超えた。
テーブルに拳を叩き付け、大きな音とともに立ち上がる。
大きな音に驚き、同席の二人も、周囲の兵士達も肩を竦ませた。
「今言った奴ら、誰だ?」
「何言ってんだエトランジェ?お前の事は言って無いだろう?」
しれっとして笑っている兵達。しかし引きつった笑いになっていた。
俺の怒りに反応し、神剣からオーラフォトンが漏れ出す。
「誰が言ったって聞いてんだよ!!名乗り出ろっ!!」
オーラフォトンが展開され、食堂内に振動が走る。
「ヤマト様!」
ファーレーンが止めに入るが、今の俺には効果が無い。
「お、おいエトランジェ。お前はスピリットの「黙れコラァ!」・・・ひっ」
柄に手を掛けた瞬間、爆発的にに膨れあがる俺のオーラフォトン。
突然柄と腰に手が掛けられ、身体を押さえつけられた。
「「ヤマト(様)!!」」
言われていた当の二人が俺を掴み、首を振っていた。
「何で!!」
「それがスピリットですから・・・・」
「これが当たり前なの!」
またこの言葉。来た当初からずっとレイアが口癖のように言っていた言葉。
「そうだ!これがこの世界の・・・・ひぃ!」
兵を睨み付け、膨れあがったオーラフォトンが食堂全体を揺るがす。
「・・・いいかお前ら。俺の前で同じ事を言ってみろよ?その時は・・・・確実に俺がお前らの身体コマギレにしてやる!!」
瞬時に刀を抜き放ち、近くにあったテーブルセットを丸ごと叩ききる。
それを置きみやげに、俺はこの屑のたまり場をでた。
二人も俺の後を追い、食堂を出てきた。
俺はもうアイツらの言葉を許せそうになかった。
 
未明 ラセリオ周辺
 
何となく星を眺めたくなって俺は外をぶらついていた。
こちらの世界は空気が澄んでいて、まん丸な月が綺麗によく見えた。
『主殿・・・あの妖精達が還ったのは貴殿のせいではない。あまり思い詰めるな』
「うるさい【精進】。そんなことは解ってる」
少し森の中に入り、開けた場所に出た。
中央に岩があり、腰掛けるのに丁度良い高さだったので、座って空を眺める事にした。
静かなその場所は誰にも邪魔されず、月を独り占め出来る。
手を伸ばせば掴めそうな星々の煌めきに、俺は消えていった仲間達を思った。
幼い頃、地球では死んだ人は星になるなんて教わっていたようなことを思い出した。
母のように優しく、時に厳しく、そして姉のように俺を心配してくれたレイア。
誰よりも勇ましく、何より綺麗な笑顔を浮かべ、最後に好きと言ってくれたエル。
他にも、様々なスピリットたちと出会い、別れが訪れた。
彼女たちはとても美しく、とても勇ましかった。
それを人間達の勝手な都合で戦わせ、散ることが当たり前だと言い張った彼女たち。
俺の胸の中には支えてくれたスピリット達への感謝と、謝罪が渦巻いていた。
「ここで何を思っても、何を言っても還って来ないものは還ってこない。俺がやるべき事は新しい仲間達を・・・守る事だ」
空に向かって伸ばしていた手を、きつく握りしめる。
その手を胸に下ろし、俺は静かに黙祷を捧げた。
彼女たちに届けば良いと。
彼女たちに安らかな眠りが訪れますようにと。
 
「ヤマト様?」
しばらく黙祷を捧げていた俺に、不意に声が掛けられる。
仮面を着けた黒スピリット、ファーレーンだ。
「・・・・ん、ファーレーン」
「どうかされました?」
手には神剣とタオルが握られていた。
「いや、ちょっとダーツィの仲間達の事を思い出していたんだ」
「あっ・・・・・」
仮面の下の瞳が少しバツが悪そうに歪む。
瞳は口ほどにものを言うと本当のようで、少し苦笑いを浮かべてしまった。
あれからしばらく話して解ったが、彼女の瞳は本当に表情豊かだった。
「申し訳ありません・・・・。その・・・」
「いいよ。俺はそのおかげで今こうして戦おうと思ってるわけだし。それより・・・」
俺は【精進】を掲げ、首を傾げて見せた。
「訓練、するんだろう?俺も身体を動かしたいから付き合っていいかな?」
「は、はい!お相手務めさせて頂きます」
彼女が礼をする姿は、やはりレイアによく似ていた。
岩から腰を起こし、うん、と伸びをする。そしてファーレーンから数メートル離れ、神剣を引き抜く。
「さあ、いつでも良いよ」
対照的に、ファーレーンは居合いの態勢を取った。
早さを生かすため、黒スピリットは居合いが得意な者が多いと聞いたことがあった。
・・・・無論、ダーツィにいたときのレイアの授業で。
「では・・・・行きます!」
瞬、と姿が消える。
(やはり・・・・速い!)
瞬時に右方向から来る斬撃を【精進】で受ける。
打ち込みが浅かった事を考えると、今のは小手調べといったところか。
素早いが、目で追えない事もない。
「今度はこっちからだ」
バックステップで飛び退いているファーレーンに向かい、瞬時に距離を零に詰める。
刀は納刀されていて、すでに居合いの態勢はとれていた。
「はあぁ!」
抜き放たれる刃。
しかしその刃は彼女をとらえる事無く空を切った。
踏み込みが甘かったか、中途半端な速度の抜刀にしかならなかった。
抜刀後の隙を見逃さず、すぐさま反撃に転じてくるファーレーン。
素早い居合いから連続する連撃。
寸分のズレも無く繰り出される急所への攻撃。
しかし、狙いが解っていれば返すのも他愛ない。
冷静に軌道を見極め、本当の狙いを絞り込み、それだけを打ち落とす。
こういうとき大概はフェイクで、本当の狙いを絞れないようにするもの。
しかし、訓練と言うこともあり、わかりやすく打ち込んできてくれる。
「つぅ・・・・ふっ」
攻撃を防ぎきり、反撃とばかりに突きを見舞う。
(どう出る?)
想像通り、ファーレーンは受け流そうと鍔許で刃を受けた。
巧みに力を流し、ここで俺に王手を掛けようということ。
その通りに動いてやる必要は無い。
決して全力の突きでは無く、緩めの突きを放っていた俺。
踏み込んだ左脚に力を掛け、急制動をかける。
ファーレーンの顔が驚きに染まる。
それからすぐに体を捌き反転、俺は当て身をお見舞いしてやった。
「きゃあ!」
鈍い衝撃の後、少女の身体が吹き飛ぶ。
そのまま俺は追い打ちを掛けるため、倒れているファーレーンに刀を突きつけた。
「ここまで・・・・かな?」
「・・・・・はい、参りました」
 
「ごめん。ちょっと卑怯なことしちまった」
倒れているファーレーンに手を貸し座らせると、そのまま横に腰を下ろした。
火照った身体を夜風が優しく撫でていく。
「お背中、失礼します」
ファーレーンは俺の背中に身体を預ける様に座り直した。
後頭部というかうなじというかに生暖かい風が掛かった。
「あ、あの・・・こちらを向かないで頂けますか?」
どうやら仮面を外したようだ。
極度の恥ずかしがり屋と言う事で仮面を装着している彼女。
しかし、素顔というものは気になってしまうわけで・・・・。
「なぁ・・・ファーレーン」
「はい?」
「少し、素顔見せてくれないか?」
直後、空気が凍り付き、ファーレーンの身体が固まった。
別に振り返った訳じゃないし、強要した訳でもない。
なのに何なのだろうこの雰囲気。
「いえ、そ、その・・・それはちょっと」
慌てて仮面を付け始めたのか、金具が擦れある音が耳に届いた。
「やっぱり・・・だめか?」
「えっ!・・・いえ、ダメでは無いですが・・・・」
「じゃあ、いいの?」
「そ、それは・・・・」
ファーレーンは困ってしまったか、黙り込んでしまった。
そのまま少しの間気まずい時間が流れた。
「「あの」」
「な、何でしょうヤマト様」
「いや、ファーレーン先どうぞ」
俺がそう言うと、彼女は意を決した様に口を開いた。
「あの、少しなら・・・・」
「本当!?じゃあ、振り向いて良いかな?」
「あの、少しお待ちください・・・・」
再びカチャカチャと金具が擦れ合う音がする。
その音がやんだと思えば、今度はファーレーンが深呼吸を始めた。
そして再び絞り出すような声で、「良いですよ」といった。
俺は振り向き、彼女の素顔を見てみた。
少し太めの眉に優しげな目元。短く切りそろえられた髪。透き通る様な白い肌。
ふとレイアの面影がオーバーラップしてきて、俺は泣きそうになった。
「あ、あの・・・ヤマト様?」
恥ずかしそうに俺を見つめるその目は、部屋割に困った時に俺に向けた目と同じ感じがした。顔に朱がさしていたところまで同じで、俺は少し押さえが利かなくなっていた。
「あ・・・あぁぁ」
俺はそのままファーレーンを抱きついていた。
違うと解っていても、同じ面影を持った彼女を抱きしめずには居られなかった。
「あ、あの・・・ヤマト・・・様」
一瞬困ったような表情を浮かべたが、俺の顔を見て深刻な顔になってしまった彼女。
「ごめん・・・本当に、ごめん。守ってあげられなくて・・・・俺が弱かったばっかりに、君が身代わりに・・・・レイア」
「ヤマト様・・・・・」
泣くまいと思っていたが、俺の意志は意外にも脆かったらしい。
面影が同じと言うだけで、これほどまでに揺れ動いてしまうものなのだろうか?
「ヤマト様。・・・・良いんですよ?許してくれますよ。泣いたって、謝らなくたって。私たちは人「それ以上言うな!」・・・・え?」
「君も彼女と同じ事を言うなよ・・・・。俺は何のために戦えばいいか解らなくなるから」
ファーレーンは俺の言葉に切実な何かを感じ取ったか、それからは何も言わなくなり、俺の頭をゆっくりと、優しく撫で続けていた。
 
 
 
同じ面影を持った少女に少年が出会ったとき、彼の中で何かが変わった。
再び同じ惨劇が繰り返されないように願うばかり。
少年は守りたい者を得て、少女は初めて特別な何かに目覚めた。
いつの日か、この思いが遂げられる日が来るのであれば、少年達は本当の強さに目覚めるのだろうか?
少年と少女の淡い思いは今はまだ気づかれる事無く、時が過ぎていく。
思いに気づいたとき、少年は全てを守るための力を望むだろう。
その時、私の名を喚ぶが良い。
我が名は・・・・・・・。
to be contenued