作者のページに戻る

第三章         異世界での目覚め

 

 

(…………)

「あらゆる対価を支払っても生きることを望むか。」

 

「ふふふふ。自分に忠実な貴様を我は主として認めよう。」

我は、永遠神剣第五位「陽淵」

 

確かに彼はそう言っていた。

 

確かに、僕は死んでいた。

僕は生かされたのだ、その声に。

 

目が覚めたとき、僕は砂漠にいた。

さっぱりと分からない。

僕の手には見たことのない形状の剣が、握られていた。

 

少年は、答えの出るはずも無い考えを巡らせながら、空を見上げていた。

吹き抜ける風に舞う砂に、僕は思わず目を閉じてしまう。

 

(ようやく気が付いたか、我が主よ。)

 

!?

頭の中に声が響く。

驚き、そして理解。

その二つが一瞬にして、少年を突き抜ける。

「君が……陽淵?」

(如何にも。貴様の命の恩人ということになるのかな。)

静寂が二人を包む。

先に声を発したのは少年だった。

「質問をしてもいい?」

(何なりと。)

「僕が生きているのは、君の力なの?」

(そう考えてもらって間違いない。)

「対価、それは何?」

(何かを得るために失うもの、とでも言えばよいのか。)

「…僕が聞いているのは、そんな上面の意味でじゃない。」

押し殺した声で、低く呟く。

(我にも説明するのは難しい。)

(ただ、主は命の代わりに、何かを払わなければならないのだ。それは我に対してではない。)

「なら、なぜあらゆる対価を支払っても…なんて言ったの?」

(…悪かったな、あくまで我の予想だ。)

(神剣を手にしたものに、まともな未来を送ったものなど居なかったからな。)

砂が舞う。

何だか、上手くはぐらかされたようだ。

これ以上は無駄。

そう感じた僕は、質問を180°変える。

 

「ところで、どこかに街はない?」

「何時までも、こんなところにいるわけにはいかない。」

 

(…左手の方角に人の気配がする。)

「じゃあ、そっちに行けばいいんだね。」

 

「あ、そうそう僕の名前は…ああ、考えていることが分かるからその必要は無いのか。」

(ふ、だが改めて互いに自己紹介するのも悪くはあるまい。)

 

(我は永遠真剣第五位「陽淵(ひえん)」)

「では、僕も…。」

「僕はヴィア・ゼヴィス。」

それが二人の長い旅の始まりだった。

 

 

 

 

 

パチ、パチ、パチ。

火の手が私の城を包む。

怒号が響く。

城門が突破される。

王は既に亡く、兄や姉も…もう居ない。

そんな中、私ひとりが生き残っている。

門が破られたということは、あの方も死んだということ。

生きる目的など、もう一欠片も残っていない。

 

黒衣の少女が私の前にいる。

冷たい瞳。

この少女が何者で、どこから来たのかも私には関係なかった。

 

「彼は生きています。」

 

虚無に支配されていた、私の興味を引くには十分な言葉。

ゆっくりとした動作で、少女は手を差し出す。

逡巡の後、その手を掴む。

歪みの序章…だったのだろうか。

今はそれすらも分からなかった。

 

 

 

 

作者のページに戻る