―終わらない鎮魂歌―
【第三章、第一話、再会×永遠者】
佳織が拉致されてから数日後
レスティーナは帝国を討つべくマロリガンにやってきていた
今は和平会談の真っ最中だった
「では・・我々との同盟は結んでくれないのですね」
「申し訳ないとは思うがね」
目の前に居る男はマロリガンの大統領、クェドギンである
今回のレスティーナの護衛は繕とルナだけだった
悠人は自分も行くと言っていたが可能性がある最悪の事態を
あの二人がマロリガンにいるもしれないと言う事を
だから悠人を繕は思い留まらせた
クェドギンは淡々と話し始めていた
「一つ聴くが若き王女よ、戦争というのはどのようなものか考えたことがあるかね?」
「何?」
その質問に答えたのは繕だった
「私はこう考えている、戦いを行わなければ結論が出せない状態が発生した時の現象だと私は思う」
「つまり?」
「そうだな・・・ゼンと言ったか、君はもしどうしても戦わなければいけないことになったらどうする?」
「俺は・・・それが大切な人を護る為なら、避けられないなら、剣を振るう」
「でも俺はそんな事にさせてはいけないのだと思う、それが運命だったとしても、運命は変えられる」
そう繕が言うとクェドギンは苦笑いをして、言った
「ふっ・・・頭がいいな君は・・・まるでアイツのようだ・・・」
「アイツ?」
「いや、なんでもない、忘れてくれたまえ」
そう言うとまた口を開いた
「さて、話が逸れたが、戦争というのは最終的に平和を得る一つの方法なのではないか?」
「しかしその先には、滅亡しかありません」
レスティーナが言う
「そう、その通り」
「我々が今やろうとしていることは結局人減らしでしかない、ならば滅亡も必要だと私は考える、我々の責任ではない、根源的な問題なのだ、仕方なかろう?」
(何を言っている・・・?この男は・・・)
繕はそう思った
考えている間にもレスティーナとクェドギンは口論をしていたがその一言に繕は気を留めた
「貴女も分かるでしょう?戦わなければならないのは運命なのだよ」
(運命・・・?この男はどうしてそんな言葉を口に出来る・・・?)
疑問は積もるほど溢れた
「我が国は96時間後にラキオスに対して宣戦布告する」
そう言われるとレスティーナは出ようとしたその時だった
「レスティーナ、この人と話がしたい、いいか?」
「ゼン!!何を言っているのです!!」
「ちょっと聞きたいことがあるだけだ、心配するな」
そう言うとルナとレスティーナを先に行かせるとクェドギンのほうを向いた
「さてと・・・話と言うのは?」
「そうだな、まず一つ目、あんたは運命をどう思う?」
「やはり頭が切れるな・・・そうだな、運命とは抗えないもの、しかし私は運命に打ち勝つことが出来ると考えている」
「そうか、じゃあ本題といこうか」
そう言いクェドギンの座っているソファの前にあるソファに座る
「俺が聞きたいのは、いや、もう予測はついているが」
少しの間を空けて言った
「マロリガン、つまりここにはエトランジェが二人いますね?」
この質問にはクェドギンも驚きは隠せなかった
「どんな根拠を元にいっているんだ?」
「そうだな、まずサーギオスに一人、もし残りが居るとすればここと考えたんだ」
「ふ・・・どうやら君にはなんでもお見通しのようだな・・・入ってきてくれ」
奥の部屋から現れたのは見慣れた少年だった
「碧か・・・」
「よお神崎、久しぶりだな」
「ああ、再会を喜びたいがそうもいかないな」
苦笑しながら言う
「大将、見破られたな」
「仕方あるまい」
クェドギンが笑って言う
「碧が居るということは岬も、ここに居るんだな」
「そうだ、今日子もここにいる」
「何故今は居ないんだ?」
すると光陰は苦い顔をして言った
「永遠神剣を持って戦うお前なら分かるだろ・・・」
「まさか・・・!神剣に飲まれたのか・・・!」
ただ無言で、光陰は頷いた
「神崎、マロリガンに降る気はないか?」
「無い」
ただそれだけ言った
「やはり予想通りだったな、次に会うときは敵、か・・・」
「そうだな・・・」
「悠人にはこのこと黙っとくよ、それと大統領閣下、お時間ありがとうございました」
そう言い部屋を後にした
―数時間後 ラキオス
あの一件の後、繕達は無事にラキオスに帰ってきた
館に到着した後繕は光陰に会ったことを伏せようと心に決めていたが顔に出ていたようでルナに心配された
そして夕食前の時間に悠人が話しかけてきた
「なぁ繕、お前なんか隠してるだろ」
その言葉に驚く繕
「何がだ?」
「お前がマロリガンから帰ってきてから、なんか態度が違う、何があったんだ?」
「別に何も無いって」
そう言い去ろうとしたが悠人は
「嘘つくなよ!!なぁ、俺にも言えない事なのかよ!!」
「ゆ、悠人・・・」
もう駄目かと思い口を開きかけたときだった
「悠人あのな・・・「悠人様!!」」
横から入ってきたのはルナだった
「ルナ・・・?」
「私が話します実は・・・」
そう言ってルナはまるで嘘の話を悠人にした
「そんなことがあったのか・・・」
悠人は安心したように言った
「繕、それならそれで相談してくれればよかったのに」
「ああ、すまなかった・・・」
そう言うと夕食に着いた
―マロリガン戦まで後四日
マロリガンとの戦いまで後四日だった
繕はただ館の近くの丘でボーっとしていた
(碧と岬が敵、か・・・)
ふと思う
決断はしたがやはり自分も友達は殺したくなかった
「ふぅっ・・・」
ただ前を見ていたその時だった
「ゼン、なにしてるの?」
そこに居たのはルナだった
「ん、いや、考え事だよ・・・」
「ふーん、あのさゼン」
「ん?」
「今日予定とか入ってる?」
「いや、やる事も無くて暇だな・・・」
「ならさ・・・ちょっと買い物付き合ってもらっていい?」
「えっ・・・」
これは世に言うデートなのか、と頭の中によぎる
「駄目ならいいんだけど・・・」
「い、いや!駄目じゃない」
慌てて言う
「なら行こうっ♪」
満面の笑顔で言うルナ
なんだか自分も嬉しくなる繕だった
―ラキオス 城下町
城下はいつもどおりにぎわっていた
レスティーナの政権になってからはスピリットの差別もかなり減っていた
そしてルナは上機嫌だった
「それで何を買うんだ?」
「んー、ただ暇つぶしに来ただけだから特にはないな・・・」
「計画性が無いな・・・」
聞こえないように言う繕
「何か言った?」
「別に」
その後二人はただ何か食べたりそこらへんを歩いたりした
外から見ればただのカップル同然だった
かなり日も落ちてきたので二人は館に向かっていた
「なあ、ルナ」
「ん・・・?」
「今日さ、なんで俺を誘ったんだ?」
疑問に思ったので聞いてみる
「・・・マロリガンとの戦い、もうすぐでしょ、戦い始まったらもうこれないかもしれないって思って・・・」
「え・・・」
「今度の戦い、かなり大きいものになると思うんだ、だからもしかしたら死ぬかもしれないしだから「そんなことないっ!」・・・え?」
「あ・・・ゴメン大きな声出して、でもそんなことない、誰も死なせない、絶対に・・・」
「繕は優しいね・・・」
「ルナ・・?」
「ううん、なんでもない、帰ろう」
笑顔のルナに答えて帰ろうとしたその時だった
ドクンっ
(なんだこの感じ・・・)
「ルナ!!ゼン!!」
大声で駆けてきたのは悠人だった
「悠人?どうしたんだ慌てて」
「さっき大きな気配が二つ感じられたんだ、かなり大きい」
「国内でか?」
「いや、国境付近の北と南の森に二つだ」
「一つは俺とアセリアが行く、だからもう一つは二人が行ってくれ」
「分かった、ルナ!行こう!!」
「うん!!」
そう言うと二人は走り出した、この後何が起こるかもしらずに
どれらい走ったのか、しばらくして森に付いた
「ここからだったな・・・」
妙な胸騒ぎを覚えながらも【刹那】を構える
ルナも警戒して【月片】を構えている
はじらく進むとそれは居た
「あら、意外に早かったのですね」
目の前に居たのは小柄な少女だった
「君は?」
「ウフフ・・・誰でしょうね」
「なっ!質問に答え・・・【繕!!】」
いきなりの言葉に驚く繕
(なんだ?)
【この者の力・・・こやつはエターナルだ!!】
(なっ・・・なんでそんな奴が)
【分からぬ、ただ用心しろ】
そう言われ少女のほうを睨む
「お前・・・エターナルか・・・」
「正解ですわ、やはり【刹那】の主と言うことはありますね」
会話の内容が分からなくて戸惑っているルナ
「用件はなんだ」
「そうですわね・・・イレギュラーには消えてもらおうと思いまして」
「何?」
そう言うとその少女は神剣を構える
「っ!!やる気か・・・」
「ゼンっ!!来るよ!!」
ルナが叫ぶ
「先に名乗っておきましょう、私は永遠神剣第二位【秩序】の主、テムオリンですわ」
そしてここから、繕の本当の戦いは始まった
瞬時に繕がテムオリンに切りかかる
が、それは命中しない
「くっ!!速い・・・」
そう、力の差が有り過ぎた
「ゼン!!」
「邪魔ですわ!」
ルナが援護に来るが簡単に弾かれる
しかし弾いたその一瞬を繕は見逃さなかった
「はぁぁぁぁぁぁぁああっ!!」
懇親の力を入れて切りかかる
「な!!」
テムオリンは間一髪でそれを回避するが頬を切られ血がでている
「私に傷を・・・許しませんわ・・・」
テムオリンが秩序を構え詠唱を始める
「くっ!!いちかばちか、あいつにすべてをぶつけるぞ!!」
そして次の瞬間
【刹那】と【秩序】はぶつかりあって
辺りは光に包まれた
「なっ――何が起こったんだ!!」
「ゼンっ!!」
そして二人は光に飲まれていった
―西暦2008年 12月13日
自分達はどうなったのか
良く覚えてない
ただ覚えていることは
エターナルと戦い
そして負けた
しかし自分達は運良く
どこから飛ばされた
「・・・・うっ・・・」
少しづつ目を開けるとそこは神社だった
「ここは・・・」
傍らで眠るルナを気にしつつどこにいるのははっきり分かった
「まさか・・・帰ってきたのか・・・?」
そう、自分達は帰ってきたのだ
ハイペリアに
どれくらい経ったのか
とりあえずルナを背負って自宅に行くことにした
繕の住む家は小さいわけでもなく、どちらかと言えば大きいほうだった
久々の我が家を見て懐かしむ繕だった
「本当に懐かしいな・・・」
ただそう思った
しかし予想外の出来事が待っていた
家のリビングに入ったその時だった
「おかえり、繕」
「・・・・は?」
そこに居たのは父、神崎 修也 だった
数秒の沈黙が流れて繕が言った
「父さん・・・なんでここに・・?」
「何って、仕事が一段楽したから帰ってきたんだ」
父、修也は繕と良くにて髪の毛は少し茶色で眼鏡をかけている見掛けは30代前半だった
(しっかし何年たっても変わらないよな・・・)
ふと思う
「ところで背中のお嬢さんは誰だい?」
ハッとすると繕は戸惑った
「いやっ・・・これはその・・・」
「ははーん・・・」
父が目を光らせる
「つまりアレか、彼女か」
眼鏡の奥でニヤリとする目がなんとなく怖い
「ばっ・・!違うって!!」
「隠さなくてもいいぞ繕、でも彼女にコスプレさせるのは感心しないな」
父がルナの格好をそう判断してくれてある意味良かったと思った
「まぁ・・・うん・・・そうゆうことで・・・」
もう納得するしかない
しかしふと思ったので聞いてみた
「母さんは?」
「ああ、千恵は久々に帰ってきたから当分友達の家に泊まるとさ」
千恵と言うのは元々外国人と日本人の間に生まれたハーフの母親のことである
「ああ、そう」
そう答えて部屋に上がろうとすると
「ん?寝るのか?その子に手を挙げたらお前に明日は無いからな」
父が言った
「はいはい・・・」
そう言い上に上がっていった
「変わらないな、繕は、俺はもう・・・いや、止めよう」
そう呟く父、修也だった
「千恵、お前は今何を思ってるんだ・・・?」
―西暦2008年12月14日
次の日ルナが朝早く目が覚め、繕は色々と説明しなければならなかった
父のこと、この世界のこと、どうなったのか、などをだ
案の定、ルナは理解してくれた
問題はルナの服装だったが父が
「その格好で家まで帰れないだろ」
などと言って何故か繕の高校の制服を持ってきた
一体どこから出してきたのやら・・・
ルナも着替え終わり後は下に降りるだけだったので
【刹那】に話しかけてみた
(ふぅ・・・刹那、これはどうゆうことなんだ?)
【分からぬ、どうやらあの時の接触で門が開かれたようだ】
(戻る方法とかは?)
【まだ良く分からぬ】
(そっか・・・)
そう言い終わるとルナとリビングに下りていった
下に降りると父がルナを見て「可愛い」とか言って写真を撮ろうとしたが繕が即刻却下した
「所でルナさんだっけ?君はどこに住んでいるんだい?」
返答に困るルナ、それを見た繕が
「彼女は学校の近くの住宅街に住んでるんだよ」
と言い訳をした
「へー、そうなんだ、いつも馬鹿息子が世話になってるね」
ただ苦笑だけするルナなにしろこの世界の言葉は分からないからだ
「所で父さん、今日はどうするんだ?」
「そうだな、家で休んでるかな」
「そっか」
ただそれだけ言うとリビングを後にした
その日、繕とルナは【刹那】を頼りに戻る方法を探していたが
やはり見つからなかった
もう辺りは暗く、夜同然だった
「はぁ・・・帰る方法、見つからなかったな・・・」
部屋でぼやく
「そんな簡単に見つからないよ」
ルナも言う
「だよな・・・」
そう言って数秒のときが流れた
風が心地良く感じた
「ね・・・ゼン・・・」
「ん?」
ルナが少し切なそうにこちらを見ている
「私は・・・いいんだよ・・・ここでゼンと一緒に居ても・・・」
その言葉の意味は良く分かった
この世界に残る
そうゆう意味だった
「ルナ・・・俺は・・・」
答えようとした次の瞬間
ドクンっ
「「!!!!」」
「この感じは・・・」
そう、紛れもないあのエターナル、テムオリンのものだった
「ルナっ!!」
そう言い神剣を手にして駆けていった
どれくらい走ったのか森の中についた
ここなら人も来ないからだ
「きましたわね・・・」
テムオリンの顔には明らかな怒りの表情があった
「このあいだの傷のお礼をさせていただきますわ」
そう言い神剣を構えるテムオリン
「っ!!来るか・・・」
力の差は分かっていた
しかしこいつを倒さなければならないと言うことは良く分かっていた
「いくぞっ!!」
次の瞬間二人は連続的な攻撃を加えた
しかし
「うふふ・・・その程度ですの?」
テムオリンは簡単に弾き返す
「くっ!!ならっ!!」
「双覇陣っ!!」
繕の周り360度の間を消滅させる衝撃波が発生する
しかしテムオリンも簡単によける
「エーテルシンクっ!!」
ルナも援護魔法を使うが聞いていない
「つまらないですわ、そろそろ終わりにしましょうか」
テムオリンの周りにマナが集っていく
「くそっ!!やっぱり無理なのかっ!!」
テムオリンの詠唱が終わり神剣魔法が放たれる
「ごめん・・・悠人、皆、もう駄目だ・・・」
諦めたその時だった
「だらしないな、お前は」
神剣魔法が二人を消滅させる寸前にそれは弾かれたのだ
「なっ・・・」
そこに居たのは眼鏡が印象的な父、修也だった
「親父・・・?」
「全く、諦めて死ぬ気だったのか?」
「そう思ったよ・・・でも親父がなんでここに・・・」
一般人の父があれだけ大きな神剣魔法を弾き返せるとは考えられなかった
しかし父の手には一本の剣が握られていた
それを見て驚いたのは繕だった
「っっ!!それは・・・」
そう、それは紛れも無く、永遠神剣だった
「まったく・・・ロウ側には困ったものだ」
「あら、誰かと思えば【天成】の修也さんじゃないですか」
テムオリンが意地悪そうに言う
「誰かと思えばテムオリンじゃないか、身長は伸びてないみたいだね」
その言葉に腹を立てたテムオリンが怒り狂って何か言っていたが父は無視していた
「ま、俺の息子に手を出すなんて流石ロウだな」
「ふふ、そう言って頂けると嬉しいですわ、ということで・・・」
テムオリンの周りにマナが集まっていく
「貴方にも死んでもらいますよ、ローガスだけでさえ厄介なのに貴方がいるんですからね!!!」
そしてテムオリンのコレクションの下位神剣が父に降り注ぐ
「父さんっ!!」
しかし父はそれを見て笑い詠唱を開始した
「原初たるマナよ、オーラへと変わり真実の力を!!ディープロスト!!」
すると父の周りにオーラが集いテムオリンの攻撃をいとも簡単に弾く
「なっ!!」
テムオリンが驚愕したが遅かった
スバァアアアアアアアア
なんとテムオリンの左腕が切り落とされていた
正確に言えば粉々にされたのだ
「まだやるかい?」
「くっ・・・流石【天成】の持主だけありますわね・・・ここは引かせていただきますわ・・・」
そういってテムオリンは消えていった
それを唖然としてルナと繕は見ていた
そして思った
なぜ父が永遠神剣をもっているのかと
「まったく・・・ロウ側は厄介だな・・・」
そう呟く父
「怪我はないか?二人共?言うまでもないか・・・」
二人は先程の戦闘でもうボロボロだった
「なん・・・でっ・・・」
「ん?」
「なんで親父が神剣を持ってんだよ!!なんであんな力を出せるんだよ!!」
前触れも無くただ父の本当の姿を見せ付けられた繕はただ思った
「・・・お前にも話さなければならないな・・・永遠者の存在を知った以上は・・・」
父は少しうつむいて言った
「まず単刀直入に言おう、【刹那】をお前のところに送ったのは俺だ」
「なっ・・・!」
意外すぎる発言に驚く繕
「実はな、【刹那】は元々地位と言われる上位神剣だったのだが、ロウエターナルの干渉で力の一部、そして・・・」
少し間を空けて言った
「記憶が封印されているんだ」
「な・・・に・・・」
「【刹那】自身の力の一部を封印され、今は最大で二位神剣の力しか出せない」
「そしてもうひとつ」
しばらくの間が空く
「【刹那】の前の持主は俺だ」
その発言にはただ驚愕した
「そんっ・・・な・・・」
「すまなかった・・・繕、お前には俺達とは違ってただ普通の人生を歩んで欲しかった、でももう巻き込んでしまった・・・」
「父さん・・・」
「すまなかった」
ただその一言だった
でも繕にはその言葉に込められた意味が良く分かった
「いいんだよ、父さん、もういいんだ・・・」
自分でも最初は良く分からなかった、でもなんとなく分かっていたのだ
「父さん、【刹那】の力は一部封印されてるっていったよな、それを解く方法はないの?」
「それはな・・・持主の想いと精神力が封印を解けるほどなら解くことが出来る」
「そっか・・・」
「繕、それともう一つ辛い話だが言わなければならないことがある」
「何?」
「母さんは・・・千恵は・・・俺をかばって死んだ・・・」
辺りは木だけの森の中で数秒の沈黙が流れる
「嘘だろ・・・」
「・・・・」
「何かの冗談だよな・・・父さん・・・」
「事実だ・・・」
「・・・・っ!」
中学に入ってから父と母は海外に出ていたので会うことはほとんど無かった
でも繕には母の愛情や笑顔、たくさんのことを知っていた
「嘘だっ!!」
そう言い父の服を掴んだ
「嘘だろ!!あの母さんが死ぬなんて!!嘘だろ!!」
「あいつは・・・ロウ側の永遠者の攻撃をかばって・・・死んだ・・・」
「っ・・・!そんなっ・・・」
そして叫んだ
「うわぁぁぁぁぁあああああああああああっ!!!」
そして繕は泣いた、全て忘れよう、ただそう思って
ルナはただそれを悲しそうに眺めていた
―同日 繕の自宅
あれから繕はなんとか気持ちを整理して家に帰った
父に八つ当たりしても何も始まらないし
殺したのは父ではないからだ
「父さん・・・ごめん・・・」
「いいんだ・・・」
帰ってからそれだけ話してルナと部屋に戻った
部屋に戻っても二人は口を開かなかった
頭の中は整理をつけたはずだったのだがやはりまだ整理し切れていない
―父さんと母さんはエターナルで
―母さんは父さんをかばって死んで
―父さんはエターナルとして、そして俺の為に戦っている
―でもいきなり俺は父さんがエターナルってこと聞かされて
―混乱して、泣いて、
―そして、負けた・・・
―整理はつけたはずだ、でもっ・・・
どうしようもない悔しさと悲しさが身体の中でいっぱいだった
「くそっ・・・!」
ガンっ!
壁に手を叩きつける
「神剣持って、ただ護れるって思ってたんだ!!」
ルナも悲しそうに繕のほうを見ている
「結局俺は・・・何も気が付いてなかったんだ・・・」
「ただ護るとか理由つけて力を求めてただけだったんだ!!!」
何も出来なかった自分
エターナル相手に何もできなかった自分
力にうぬぼれていた自分
父に真実を聞かされて逆上した自分
そんな自分自身が頭によぎる
「俺は・・・一体何なんだよ・・・」
思考が完全に混乱してしまう
するとルナが口を開いた
「ゼンは・・・力にも溺れてないし・・・弱くもないよ・・・」
「え・・・」
不意に口を開いたルナに驚く繕
「でも俺はっ・・・」
「昔のゼンならそうだったかもしれない、【刹那】の力におぼれてただカッコつけてただけだつたかもしれない」
「・・・・」
「でも今のゼンは、必死に皆を護ろうとしてた、さっきの戦いでも私を護ろうとしてくれた」
「ルナ・・・」
「ゼンはただ考えすぎるんだよ・・・皆のこと考え過ぎて、自分は混乱してる」
「・・・」
「だからもっと自分を大切にしてよ・・・」
その言葉が心に染みた
「そうかもしれないな・・・ごめん・・・ルナ・・・」
「ううん・・・いいよ・・・」
ただそう言ってルナは部屋から出て行った
「俺のためにも・・・皆のためにもか・・・」
整理をつけて繕がたどり着いた結論は一つだった
「俺は俺に出来る事をやって、皆を護る」
そう呟き眠りに落ちた
―西暦2008年12月15日
翌日、自分の整理をつけた繕は覚悟と決意をして下に降りた
そこにはいつもの父、修也の笑顔が会った
「おはよう、二人共」
「おはよう」
「おはようございます」
そう
それはこれから始まる
本当の戦いだった
その後リビングで父とどうするか話し合っていた
「これからどうするんだ?」
「まず・・・向こうに戻ろうと思う・・・」
「そうか・・・それで手段は見つかったのか?」
「―――・・・」
「まだなのか・・・」
父が呆れて言う
「今日の6時に門が開く、その時に俺が門を開くからそこから行け」
「父さん・・・」
「行って来い、俺はお前を信じてる俺とあいつの息子なんだからな」
「分かってるよ」
そう笑顔で答えた
それからの時間は自宅や町で過ごしていた
ルナはなにかと楽しかったようだが
ちなみにルナの制服姿に父子共に見とれていたのはまた別の話である
そして時は経ち
もうそろそろ6時だった
「そろそろ門が開くな・・・」
「うん・・・」
名残惜しそうにハイペリアを眺める二人
「さて、そろそろ門が開くぞ」
父が言う
「繕、行く前に聞いてくれ」
「ん、何?」
「もしこの先どんなことがあってもお前の信じた道を進め」
「うん」
すると門が開き二人は門に飛び込んだ
父の笑顔を背中にして
「時期に時が来る、あいつもエターナルとして生きなくてはならないかもしれないんだ・・・」
最後に父が聞こえないようら呟いた
後書き
どうもぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおお
皆様お元気でしょうか蓮です!!
今回はハイペリア編と言う事でなんかもう・・・ごっちゃでごめんなさい・・・
次からはとうとうマロリガン戦です。それでは皆様お元気で。