―終わらない鎮魂歌―
【平和と終わり】
サルドバルド陥落から数時間後
陥落の知らせは繕とルナにすぐ伝えられた
その後悠人達と合流しラキオスに向かった繕だった
顔には、もう迷いは無かった
―ラキオス 謁見の間
「ハッハハハハハハハ」
王はサルドバルドを陥落したことにより上機嫌だった
「うぜぇ・・・」
繕が呟く
「エトランジェよ、良くやった、これで北は我ら王家の血筋のみになった!!」
王が言う
「何が良くやっただ、ふざけるな」
また呟く
しっかりとレスティーナには聞こえていたが
「今回の働きに褒美を取らそう!!」
王が言う
悠人はいやな顔をしている
するとレスティーナから
「父様、この者の妹を解放してはどうでしょうか?」
(なんだって!!)
(おっ・・・)
繕と悠人が心の中で言う
「ならぬ、開放すればこの者は国に謀反を起こすやも知れぬ」
王が言う
「父様、この者はエトランジェ、どちらにせよこの国で戦い続けないと帰れないのですから」
レスティーナが言う
「それに王族には逆らえません」
止めの一撃
「ぬぅ・・・よし、この者の妹を解放しよう・・・」
王が言った
(佳織!!佳織が帰ってくる!!)
悠人が心の中で思う
(良かったな、悠人)
繕が心の中で呟き悠人達と謁見の間を後にした
帰り際に悠人が喜びすぎで柱に顔面強打したのは別の話だった
―第一所詰め所
謁見の間での出来事が終わり、悠人達は一所詰めに着いた
本当に悠人はうれしそうな顔をしていた
(あんな表情見せるのはこの世界では初めてかな・・・)
心の中で繕が思う
「おめでとうございます、ユート様」
エスペリアが言う
「ありがとう、エスペリア、これで心配事が1つ減ったよ」
笑いながら言う悠人
「ふふ、ユート様。とても嬉しそうです。なんだか私も嬉しくなってきます」
エスペリアもとても喜んでいた
サルドバルドでの繕の暴走、そして戦闘後には不幸なことなどほとんど無かった
ただ平和な時間が過ぎていった
「悠人、良かったな」
「ああ、やっと佳織に会えるんだ・・・」
悠人が言った
「今日はカオリ様の歓迎会です。腕によりをかけて作りますね」
エスペリアが言う
「ははっそうだな」
繕も笑って言う
そうして時間は経って行った
しかし会話終了約10分後にもう悠人が落ち着きをなくした
「ユート様・・・少しは落ち着いてはでうでしょうか・・・」
エスペリアが言う
「うぅ・・・流石に落ち着けなくてなぁ・・・」
悠人が言う
「仕方ありません、もうカオリさまとは数ヶ月お会いしてないのですから」
エスペリアが言う
「まーそうだけど少し静かにしてくれ、気が散る」
この世界でのトランプ?のようなものでタワーを作っている繕が言う
(コイツは暇人だ・・・)
悠人の心の中でそう思う
「ああああっ!!待ちきれんっ!!」
そう言いウロウロしていると繕が使っていた机にぶつかる
バラバラバラ
「「あ」」
二人同時に言う
「悠人〜」
繕が身体に殺気を宿らせ悠人を笑いながら見る
「後1枚で完成だったのになぁーククク・・・」
まさに不気味、ある意味暴走時より怖い
「ま、待てっ!!あれは事故だ!!!」
悠人が弁解する
「問答無用、エスペリア、こいつ借りるね♪」
にこやかに言う繕
「ま、待て・・・ぎゃぁアアアアあああああああああああっ!!!!」
繕に引きずられ隣の部屋に連れて行かれた悠人から悲鳴が上がる
それをエスペリアは心配そうに眺めていた
数十分後悠人はまさにこの世の地獄を見たと言わんばかりな状態になっていた
最後に繕が「今度やったら極刑ね♪」
と言っていた事が思い出される
しばらくすると
ドンドン
「エトランジェの妹を連れてきた、ここを開けろ」
兵士が言う
悠人が出ようとすると繕が出た
すると予想どうりの事が起こった
「ほら、連れてきてやったぞ」
「連れてきてあげました、だろ?」
繕が不機嫌そうに言う
「なに!エトランジェの分際で!!」
「黙れ♪」
ゴフッ
兵士に会心の一撃がヒットするすぐさま兵士は帰っていった
(教訓・・・繕は怒らせると怖い・・・)
悠人は思った
「神崎先輩・・・何かあったんですか・・・?」
「別にー♪何も無いって」
そう言うのが聞こえた
あれこれしていると佳織が中に入った
そしてすぐさま悠人に駆け寄った
「お兄ちゃんっ!!お兄ちゃんっ!!」
「佳織っ!!」
まさに感動の再会シーンを黙って見ている繕だった
(これで一安心、だね)
【うむ、そうだな】
【刹那】も言う
しばらくして感動の再会が終わる
しばらくすると佳織が一所詰めメンバーに挨拶する
「これからよろしくお願いします」
ペコリと頭を下げる佳織
「ようこそカオリ様、元の世界に返るまでこの館を自由にお使いください」
「それでは、この館に住む者を紹介します」
そういって紹介を始めた
「私はエスペリアです、この館の家事全般を受け持っています」
「何かあれば私にお申し付け下さい」
「よろしくお願いします、エスペリアさん」
佳織が言う
そう言いながらアセリア、オルファ、ルナの紹介が終わる
最後に繕の番だった
「最後だけど、久しぶり、佳織ちゃん、元気だった?」
学校のときと変わらない笑顔で言う
「はい、なんかお兄ちゃんが迷惑ばかり掛けていたみたいですけど・・・」
「あ、気にしない気にしない、悠人の本当の恐怖はこれからだから♪」
ポツリと最後に言う
「は、はぁ・・・」
佳織は悠人は後々地獄を見る、そう確信した
そうしてもう一度全員の方を向くと
「よろしくおねがいしますっ!!」
と言い、勢い良く頭を下げる
そして佳織を加えた生活が始まり、永遠に続くはずだった
―第一所詰め 夜
「ククク・・・悠人ぉ・・・恐怖はこれからだ・・・」
繕はかなり復讐心に燃えていた、理由はあれだ
佳織が来る前のトランプだ
「後1枚で俺の記録が達成されたのに・・・」
かなり根に持っているのだった
そしてどう復讐しようかと考えているとオルファが歩いてきた
(・・・・!)
その時ひらめいた
「オルファ、いいこと教えてあげるよ」
「え?何々!!」
興味心身に聞いてくる
「あのな、お風呂に行ったら悠人の股間の物をおもいっきり握るといいぞ、嬉しくて失神するから♪」
繕が変な知識を教え込んだことにより【刹那】は呆れ気味だ
「え!本当?」
「うん」
にこやかに笑い答える、悠人の恐怖はここから始まった
―数時間後
数時間後、悠人が風呂場でオルファにやられ、倒れたことが分かった
内心、かなり嬉しい繕だった
しかし、怒られているオルファに関しては本当にすまないと思った
風呂場での一件の後繕と悠人は部屋に戻り眠りについた
しかし繕の復讐はまだ終わらなかった
翌朝、朝食を終えて悠人と繕とエスペリア以外は出払っていた
ピカーン
するとエスペリアを呼んだ
「エスペリア、ちょっと・・・」
「なんでしょうか?」
「実はな、良い情報があるんだ」
「なんですか?」
興味津々に聞いてくる
「あのな、ユートはハイペリアで言う『ローション』を使うと気持ちいんだとさ」
「『ろーしょん』、ですか?それは一体・・・」
「それはだな・・・ゴニョゴニョ・・・」
エスペリアは顔を真っ赤にしたと思った次の瞬間、何か閃いたような表情をして『献身』の能力MAXで自分の部屋へと飛んで行った
(・・・・ん?何をする気だ)
バタン
数分後、謎の液体の入ったコップを持って、エスペリアは先ほどの二倍くらいの速度でユートの部屋へと突撃した
「・・・・・何やら面白そうな予感が・・・」
早速俺はユートの部屋の前で聞き耳を立ててみることにした
「どうしたんだ、エスペリア・・・?」
「ユートさま、今日は『秘策』を持ってまいりました・・・フフフ・・・」
「え・・・エスペリア?何なんだそのコップの中の【七色の液体】は?しかも何か、変な煙出てるし・・・」
「ユートさま、ズボンを脱いで下さいませ」
「ちょ、待て話を!」
さっきはエスペリアがありえない速度で走っていたためわからなかったが、どうやら七色で煙が出ている液体らしい。
さらば、悠人。お前のことは忘れない。
「え・・・エスペリア・・・何なんだこの液体・・・クッ、体が・・・」
「フフ、どうです?私がユートさまの為だけにブレンドした『ろーしょん』なる物ですよ?」
(こ、こんなこと教えるのはアイツしかいないッ!)
「待て、ちょっと俺の知ってるローションとは明らかに規定が違うんですけどおおおおお!!!」
「大丈夫です、全身の神経を敏感にする成分がたーーーーっぷりですから♪」
「・・・・・・・何か間違ってないか?」
「どこがです?」
「いや、エスペリアの性格が・・・ってまて!ちょ、動かすな!・・・いやもういいや・・・【求め】、終わるまでだけでいいから俺の精神を乗っ取ってくれ・・・」
【契約者よ、我はしばし眠りにつく。この戦いは汝の戦い。我の予定にはない】
「酔狂でお願いしまあああああああす!」
・・・求めの気配が消えた。グスン
その後、悠人はとことんエスペリアにやられたのであった
そして悠人に繕への怒りが芽生えた
数時間後、悠人が形相を変えて繕の元にやってきた、案の定、繕は館前の平原にいたためすぐ見つかった
「繕っ!!お前よくもあんなことをしてくれたな!!!」
「ん?なんのことかな♪」
「ふざけるな!!エスペリアにローション教えたのはお前だろ!!」
「え、だってお前がトランプ崩すから悪いんだぞ」
「よし、なら決着を着けようぜ!!!」
そう言い【求め】を構える
「ククク・・・僕に勝てると思ってるのかィ?」
「それは4章の瞬の台詞だああああああああああっ!!!」
訳の分からんことを言い二人の勝負は始まった
キィィィイイイイイイン
2本の神剣がぶつかり合う
【刹那】と【求め】は呆れてそれを見ていた
【求め、おぬしも大変だな・・・】
【それはお互い様だ・・・】
そう言っている内に二本はぶつかり波動を生む
―同時刻 サーギオス
「ハクシュンっ!!」
勢い良くクシャミが出る
「誓い、僕絶対誰かに噂されてるだろ」
【だろうな、それに今遠くで求めと刹那がぶつかっている】
「そうか・・・所で刹那ってなんなんだ?」
【それを言うと作者に迷惑が掛かるので言えぬ】
こんな事が起きていた
―場所は変わりラキオス、スピリットの館前
ドゴォオオオオオオン
悠人と繕の戦いはまだ続いていた
それを見たエスペリアや佳織は心配そうに見ている
「うるぁぁぁぁぁぁああああ」
悠人の怒りの一撃
「見える、僕にも敵の動きが」
お前はニュー○イプか?
「くっ!!赤い○星か!!」
悠人も壊れ始める
「ハハハハ、悠人、君じゃ僕には勝てない」
繕が言う
「ど、どうしましょう」
佳織が言う
「カオリ・・・任せろ・・・」
横にアセリアが立っていた
その手に握られていたのは
オーラをまとった【存在】
「あ、アセリア・・・それはやり過ぎでは・・・」
「・・・ん大丈夫」
アセリアが狙いを定める
そして次の瞬間
オーラが二人に放たれた
ドーーーーーーーーーン
「ぐはぁっ!」
「ぶほっ!!」
二人に命中して倒れる
「・・・・ん、これでいい」
アセリアが言いどこかに行った
一体あの力はどこからもってきたのやら・・・
ちなみにその後二人はアセリアにまたやられるかもしれないと言う理由で和解したのであった
―その後 夕方
悠人と繕は佳織と一緒に食卓に居た
食事には早すぎる時間だったが、夕焼けが印象的だった
「悠人・・・すまなかったな・・・」
「いや・・・気にしてない・・・」
どうやらアセリアの攻撃がよほど効いたらしい
そしてしばらくの間沈黙が流れた
沈黙を破ったのは佳織だった
「ね・・・お兄ちゃん、神埼先輩・・・」
「「ん?」」
「お兄ちゃんと先輩はまだ・・・神剣を持って戦わないと駄目なの・・・?」
予想外の言葉に沈黙する二人
分かっていた、佳織に聞かれるのも時間の問題だということも
佳織が自分達の事を考えていたのも
全部知っていた
「私ね・・・別に帰らなくてもいいんだよ・・・」
「え?」
佳織の発言に驚く悠人
「お兄ちゃんが居て、先輩が居てくれれば・・・この世界でも変わらないから・・・」
「・・・・」
それは真実だった、でも繕は思ったのだ
もしそうだとしてもそしたらエスペリアやアセリア、そしてルナはどうなるのかと
「私は・・・二人に戦って欲しくない・・・」
下を俯き言う佳織
でも思う、悠人はどうかは知らないが
(悠人はどうかは知らないが、俺は皆を見捨ててまで逃げたくない)
そう思った
「俺は・・・戦いたくないけど・・・」
悠人が言う
「佳織ちゃん・・・」
繕が口を開いた
「あのな、俺は思うんだ、もし逃げたとしてもそしたら皆はどうなるんだ・・・?」
「・・・・っ!」
佳織が下を向く
「俺はアセリアやエスペリア、オルファ達を見捨ててまで逃げたくない、それに・・・」
その時頭の中に浮かんだのは自分にとって最も大切で、愛しい少女の顔だった
「俺は皆を護りたい」
そう言ったのだ、強く、どこまでも誇り高く
「先輩・・・」
佳織が口を開こうとした次の瞬間だった
カーンカーンカーン!!!!
それは何の予兆も無く、ただ来た
「なっ!!」
「侵入者だと!?」
一瞬で二人は警戒に入る
「お兄ちゃん!!この音って!!」
「ああ、何かあったみたいだな・・・」
(【刹那】!!何事だっ!!)
刹那に尋ねる
【どうやら敵が来たようだ・・・数も少なくない・・・】
(くっ・・・)
歯を噛み締める繕
(敵はどこにいるんだ?)
【城のほうだ】
(分かった・・・もう誰も死なせない・・・!)
「二人とも・・・行くの?」
「大丈夫だ、すぐ帰ってくる」
「そうだよ佳織ちゃん、だからここに隠れていて」
そう言い佳織をなだめる
そして駆けた、城に
その時気づくべきだったのだ、館は無防備だと言う事を
―ラキオス城
「ひどいな・・・」
そこにあったのは血の海
まさに地獄絵図だった
「くそっ・・・一体何が・・・」
繕が言う
(スピリットは人を殺せないんじゃなかったのか・・・?)
悠人が思う
「ぅ・・・うぅ・・・」
「!!」
なんと兵士が一人生きていたのだ
「大丈夫か!!何があった!!」
「くっ・・・エトランジェか・・・」
「はは・・・様がないな・・こんな有様で・・・」
兵士が言う
「スピリットが・・・レスティーナ様の所に・・・」
「姫を・・・頼む・・・」
そして兵士は倒れた
「くそっ!!」
どうしようもない虚しさが身体を駆け巡る
「行こう・・・悠人・・・」
そう言い駆けて行った
駆けながら繕が言った
「俺は変換施設に行く!!お前は謁見の間へ!!」
そう言い別れた
しばらく走るとアセリアの姿が見えた
「アセリア!!」
「・・・・ん!」
声に反応して振り向くアセリア
「悠人は謁見の間に向かった、急いで変換施設を護るぞ!!」
「・・・うん!」
アセリアが言うと丁度敵の集団がこちらに向かってきた
「いくぞ・・・」
弓へと変えた刹那を引き絞り敵の集団に狙いを定める
(迷うな・・・チャンスは一度・・・そこを突けば・・・)
精神を集中させる、その間にアセリアは敵のスピリットを倒していく
(今だっ!!)
そう思い光の矢を放つ
高威力の矢は敵に大きな穴を空け、貫いた
そして辺りは光に包まれそして・・・
辺りが元に戻ると敵の姿は無かった、最後の一撃で全員死んだのだ
「アセリア・・・おかしい・・・敵が少なすぎる・・・」
「うん・・・」
確かにおかしかった、敵の気配は少なくても十以上は確認していた
そして気が付いた
(まさか!!!)
最も最悪の事態が胸によぎる
「アセリア!!急ぐぞ!!悠人達の所に!!」
アセリアはなんだか分からないまま繕についていった
しばらく走ると謁見の間についた
そこには悠人とエスペリア、オルファの姿があった
「悠人っ!!」
「ぜ、繕、どうしたんだ?」
あまりの剣幕に引いてしまう悠人
「敵の狙いは・・・変換施設じゃない!!」
「え?」
「敵の狙い、それは王と王女の命だ!!」
「何!?」
そして思い出した、兵士の最後の言葉
「急ごう!!王達が危ない!!」
そう言うと王の部屋に向かった
バタンっ!!
勢い良くドアが開かれる
そこにあったのは
数人の兵士の死体と王と王妃と見られる者の死体だった
「っ!!」
悠人やエスペリアは絶句した
「くっ・・・遅かったか・・・」
繕が悔やむ、しかし何かおかしい
「レスティーナはどこだ!!」
そう、レスティーナが居ないのだ、死んだのなら死体が有るはずだ
「逃げたのかな・・・」
悠人が言う
「可能性はあります」
「エスペリア?」
「この城にはいくつかの館に通じる隠し通路があります、そこから逃げたのかもしれません」
「なら館へ急ごう」
悠人が言い駆けて行った
(王よ、あんたは死ぬまで欲深い奴だった、でもせめて安らかに眠ってくれ・・・)
繕は心の中でそう思ったのだった
そして自分の弱さで殺してしまった兵士達、あの兵士達にも護るべきものがあったのに
自分はそれを護れなかった
兵士にはいつも何か言われ、時には八つ当たりをした事もあった
でもあの時見た兵士の顔は笑っていた
憎かった兵士ではなかった
いつのまにか繕の中では兵士達も王もただのかけがいのない物になっていた
そして心から願った
ただ護りたい、もう失いたくないと
すると、どこからか
力が沸いてきた
「繕・・・【刹那】が・・・」
走っていると不意に悠人に声を掛けられる
「え・・・?」
【繕、お主の想い、しかと我にも聞こえたぞ】
(刹那・・・?)
【あの時のように念じろ、お主に力を与えよう】
(ありがとう・・・刹那)
そして念じた
護る力が欲しいと
あの時少女に言われた言葉を思い出し念じた
(俺に護る力を・・・)
すると
辺りが光に満ちた
館の近くにも係わりなく
光が満ちた
そして手に握られていたのは
二本の青白く輝く双剣だった
「なっ・・・これは・・・」
体内を駆け巡る力のおかげなのか
辺りの気配や動きまでが完全に見える
「繕・・・それは・・・」
「分からない・・・とにかく今は急ごう」
そう言うと再び走り出した
しばらく走ると敵の部隊が迫ってきた
「いくぞ・・・皆・・・」
繕が言う
「うん!!」
「はい!!」
「・・・ん」
そう言うと敵が切りかかってきた
(俺は無力だ、王も兵士も護れないほど無力だでも・・・)
ただ護る為のイメージを創造する
(俺は俺の出来る事をやるんだ!!)
二本の青白く光る剣を構えると切りかかってきたスピリットを切り払った
その時剣から光が溢れた
(えっ・・・?)
その光景に目を丸くした
振るった双剣からは光のマナが溢れ、剣自体がオーラに包まれている
その一撃は同時に三体のスピリットをマナに帰したのだ
「これなら・・・」
この力なら護れると思った、前のように力に支配されるのではなく繕が力を支配していた
悠人達は襲い掛かってくる敵と交戦していた
(もう誰もやらせない・・・!)
そして詠唱を開始した
それは普通の神剣魔法ではなかった
足元に白く光る円陣が現れる
「マナよオーラへと変われ、我らを包み害をなす者から護る力を・・・」
「グランディオーソ!!」
すると放たれた光は悠人やアセリア達を包んだ
「なっ・・・力が溢れてくる・・・」
「マナが溢れてくる・・・」
いきなりの援護魔法に驚きつつ敵に攻撃を加える悠人
そして驚いた
「なっ・・・」
今まで速く感じていた敵がスローに見えたのだ
「いける・・・」
そして悠人の一撃は
一陣の刃となって敵を貫いた
気が付いたときには敵は全滅していた
「繕・・・お前・・・」
「ああ、もう大丈夫だ」
笑顔で答えるといきなり真剣な顔つきになった
「話は後みたいだ、敵さんのご登場だ」
そして一斉に上を向くとそこには見覚えのある姿があった
「漆黒の翼・・・ウルカ・・・」
悠人が言う
「再び剣を交えることもまた縁・・・」
「帝国が何のようだ、吐かないなら無理矢理でも・・・」
そう言い繕は青白く光る双剣を構える
「我々の任務を果たす為にお手合わせ願おうか、ラキオスのユート殿、アセリア殿」
「どうやら・・・やる気みたいだな・・・」
もう一度強大なマナを創造する繕
「待ってくれ繕」
「悠人?」
「こいつは俺がやる・・・」
その一言で察したように
「分かった、でも危なくなったらすぐに援護に入るからな」
「ああ、すまない」
そう言いウルカと対峙する
「手前はウルカ、漆黒の翼ウルカ」
そう名乗りをあげ戦闘態勢に入るウルカ
「いくぞっ!!」
そう言うと悠人達はウルカに切りかかった
どれくらい経ったのか
しばらく切りあったウルカや悠人達は構えたまま対峙していた
繕はいつでも援護に回れるように準備している
しばらくにらみ合いが続いた
「ここまでとしよう、手前には別の使命がある上」
そう言い立ち去ろうとしたその時だった
「せやぁっ!!」
エスペリアがウルカに切りかかった
「止めろ!!エスペリア!!」
そう叫んだときには遅かった
「フ・・・」
ウルカはその攻撃を軽くかわし刀を抜いた
「あ、あくっ!!」
エスペリアに致命傷ではないが大きな傷が入る
「ウルカ・・・っ!」
普段冷静な繕もその目には確実な怒りがあった
「よくもっ!!」
そう言い【刹那】を振るう
その速すぎる一撃にウルカは驚愕した
キィィィィィイイイン!!!
「っ!速いっ・・・」
「それにその神剣は一体・・・」
ウルカは繕の連撃を防ぐのが精一杯だった
「くっ・・・ここは引きましょう、手前にも指名があるゆえ」
そう言うと距離を置きハイロゥを展開する
その姿を繕はただ見守っていた
「使命ってなんだ・・・」
悠人が呟く
するとエスペリアが
「館の方角です!!カオリ様がっ!!」
「しまった・・・!」
そう、館には今は誰もいないのだ
ルナやセリア達は今、国の付近の警戒に当たっているのだ
「急ぐぞ!!」
悠人が言い走った
しばらく走ると館の前に着いた、既に屋根は燃えていた
そして次の瞬間
【繕、上だ】
そう言われ上を向くとそこには漆黒の翼を広げたウルカの姿があった
その手には
「先輩っ!!お兄ちゃんっ!!」
「佳織っ!!」
「佳織ちゃんっ!!」
その光景に歯をくいしばった
(【刹那】っウルカを打ち落とすことは出来ないか?)
【可能だが、あの少女も巻き込まれる】
(くそっ・・・)
そう思いウルカを睨む
そして気づいた、悠人の異変に
「かお・・・り・・・」
「悠人?」
「佳織ぃぃいいいいいいいいい!!!」
ドクンっ!!
「この力はっ!!」
そう、繕が少し前に使った大きな力、しかしそれは繕が暴走したときの力に似ていた
「不味いっ!!」
「悠人っ!!止めろっ!!!」
「うわぁぁぁぁぁあああああああっ!!!」
そして円陣が現れる、しかしそれは黒い邪悪な力だった
「馬鹿野郎っ!!目を覚ませっ!!」
しかし悠人はとまらなかった
「くそっ!!許せ悠人!!双覇迅っ!!」
二本の青白い双剣からオーラの刃が放たれる
ドスッ
その刃は悠人に直撃した、手加減なので気絶はしたが
「ぐふっ・・・」
悠人がそう言って倒れる
「ご助力、感謝する」
「俺は悠人の暴走を止めただけだ」
そう言いうるかを睨む
「ユート殿に我が主からの伝言がある、伝えていただけませぬか」
「なんだ?」
「佳織は僕の物だ、取り戻したければ追って来い、僕が居る場所まで這ってでも辿り着いて見せろ」
「・・・・秋月か・・・」
ハイベリアに居た頃、一番気に食わなかった奴だった
「シュン殿は我らの主、手前らはシュン殿の剣」
「そうか、分かった、じゃあ俺からの頼まれてくれ、伝言だ」
「なんでしょうか?」
「うーん、そうだね・・・」
少し考えると淡々と言った
「秋月は俺がこの世界に居ることを知らないはずだから言ってくれ」
「権力に縋っている狂人の君じゃ俺には勝てないよ、秋月君、って伝えてくれ」
「分かりました・・・」
そしてウルカは飛び立った
「何も出来ないのぉ!!」
オルファが言う
「今は耐えるんだ・・・オルファ・・・」
繕がオルファを宥め、悠人を背負い城に戻っていった
―第一所詰め所 悠人の部屋
館の火はたいしたことはなく、すぐに消された
佳織が拉致された事を知ったネリーやシアーは悲しんでいた
ルナやセリアも例外ではない
数時間後悠人が目覚め、繕が拉致したのは瞬だと言うことを話した
すると悠人はすぐにサーギオスに行くと言った
丁度その時だった
バキィッ!!
繕の拳が悠人を殴り飛ばした
エスペリアは心配そうな顔をしている
「目は覚めたか?」
「何するんだっ!!だからサーギオスに!!」
バキィッ!!
また繕の拳が飛ぶ
「死にに行くのか!?」
そう言われ悠人は気が付いた
自分はただ怒りに飲まれていたのだと
繕はただ自分のように力に飲まれて欲しくないのだと
それを知った悠人はただ悔しかった
その悠人を宥め部屋を後にした
数時間後、レスティーナが悠人に佳織は助けると約束した
数日後、レスティーナはラキオスの最高権力者として名乗りをあげ、
帝国に宣戦布告をした
南下しつつ、帝国を打つと
悠人や繕はそのレスティーナを見て信じようと思った
そして時間は過ぎた
―館周辺の泉 夜
辺りはもうすっかり暗くなっていた
しかしこの泉はマナが光になって幻想的に明るかった
繕は良くここに来ては考え事をするのだった
「秋月が帝国に居るとするともしかしたら・・・」
最悪の事態が胸をよぎる
しかし考えるのは止めた
そして泉を眺めていると
「・・・・ゼン?」
不意に声を掛けられて振り向くとそこにはルナが居た
「ルナか・・・」
「ゼンもここに来るんだね」
「ん?」
「私もここに良く来るんだ」
そう言い繕の横にむ座る
「そっか・・・なぁルナ・・・」
「ん・・・?」
「今度の戦い、いつまで続くのかな・・・」
今度の戦いは長くなることは分かっていた
でも誰かに答えて欲しかったのだ
「分かんないよ・・・でもきっと長くなると思う」
「でもね、私は・・・」
ふとルナに目をやると頬を赤くして下を向いていた
「ルナ・・・?」
「私は・・・その・・・ゼンが居ればいいから・・・」
「えっ・・・」
いきなりのその言葉に顔を赤くする
そして繕はそっとルナの手を握った
「俺も、皆が居て、ルナが近くに居てくれれば、それでいい・・・」
「ゼン・・・」
そしてしばらく二人は手を握ってそこに居た
マロリガンとの戦いは近い
to be continued
後書き?それとも言い訳?
あーども、蓮です。
テストが帰ってきました
結果?あははは、決まってるじゃないですかー
全滅。
はい・・・一応受験生ということでしっかり勉強しなければ・・・でわー。