―終わらない鎮魂歌―
【第四話、想いと悲劇】
―ラキオス 繕の部屋
サドモアを陥落させラキオスに戻った膳達だった
早めに王との面談を終わらせ、休んでいたのだ
「疲れた・・・だるい・・・」
そうぼやく繕
【少し休め、当分戦いはないだろう】
そう言う【刹那】
「んー・・・ちと城下に出てみるかな・・・」
そう呟き部屋を出て行く
「悠人も誘うかあいつ城下行った事無いだろうし」
そう言い部屋を出た、勿論【刹那】は忘れてない
悠人の部屋の前まで来るとそこにはエススペアと悠人が居た
「あれ?二人ともどうしたの?まさかデート?」
ニヤリとして言う
「ち、違いますっ!!」
「そ、そうだ」
二人が必死に顔を赤くして弁解する
「冗談、んでどーしたの?」
ゼンが尋ねる
「エスペリアに城下案内してもらおうと思って」
そう言う悠人
「お、ナイスタイミング、丁度俺も誘いに来たんだ、一緒にいいか?」
「ええ、それはもう」
エスペリアが答える
そう言い三人は城下に向かった
―ラキオス 城下町
市場に付くとそこは人でにぎわっていた
「んー、ここらへんに来るのも久しぶりだなー」
繕言が言う
「お前・・・城下来たことあったのか・・・」
悠人が言う
「まあな、前にネリーとシアーと来たことある」
「そ、そうなのか」
悠人が言う
「ユート様、ここが市場です」
エスペリアが説明する
「へぇー、活気あるなぁー・・・」
悠人が言う
「おふたりの世界とは違うところが多いですか?」
「ああ、そうだなーワクワクする」
「子供かお前は・・・」
呆れる繕
なんだかエスペリアの表情も明るい
エスペリアが買い物に行っている間悠人達は待っていることになった
「ああ、やっぱいいなここは、なぁゆう・・・とって・・・おいっ」
悠人がフラフラとどこから歩いていく
正確には人に押し流されている
「あのバカ・・・」
そう言い悠人を追う繕
かなりエスペリアの居るところから離れた
「あれ・・・ここは・・・」
悠人がハッとする
「まさか・・・迷ったか!!」
「ご名答」
繕言が言う
「ったく・・・心配かけやがって・・・」
呆れている
「さ、行くぞ」
そう言い悠人をせかす
「あ、ああ・・・」
そう言い悠人が歩き始めたその時だった
ドサッ
「キャッ」
「わっ」
誰かと不意にぶつかる
「お、おいっ大丈夫かっ・・・って・・・君はレス・・・」
「あぁぁぁあああああああ!!」
そう言い繕の口を塞ぐ
それを悠人は呆然と見ていた
悠人は我に返り
「あ、すみません・・・」
「全く・・・鼻が潰れるかと・・・・あぁぁぁぁぁぁぁぁああああ」
突如として大声をあげる
「うわっ今度はなんだ!!」
悠人が言う
「ああぁぁああああーーー私のヨフアルゥ・・・・」
「ヨフアル・・・あ」
そこにはワッフルに似たお菓子が転がっていた
「ヨフアルが・・・・おおぉぉぉおお」
なんなんだこの声は
「ええ・・とその・・・」
「せっかくの焼き立てがぁ・・・」
「こんなにも美味しそうだったのにぃ・・・」
繕は呆れたと言うより唖然としてそれを見ていた
「弁償っ!ヨフアル買ってきて!」
女の子が言う
「え、ええっ!!」
「じゃあお金渡すから買ってきて、すぐそこのお店」
そう言われ悠人はしぶしぶ買いに言った
二人になると繕が口を開いた
「はぁ・・・何してるんですか、レスティーナ王女」
ギクッとしてしまう
「な、な、何言ってるのよ」
「バレバレですよ、全くなんで城下に・・・」
繕が言う
「私だって、息抜きしたい事もあります・・・」
「普通の女の子っぽいとこもあるって訳か」
すると頬を膨らませる、こう見ていると普段のレスティーナとは思えない
やれやれと呆れてみせる
あれこれやっているうちに悠人が戻ってきた
あれこれ二人が口論している末に路地の先のお気に入りの場所とやらに行くことになった
するとレスティーナは悠人を引っ張って走っていった
(元気だなぁ・・・)
そう思う
走っているとレスティーナが言った
「どこまで行くんだよ!えーと・・・」
「もうすぐだよ!私は、レムリア、レムリアだよっ!!」
そういった
「咄嗟に考えたな・・・」
聞こえないように呟く繕
しばらくすると広い場所に出た
「とうちゃーく」
レムリアが言う
「へえー、いい所だな」
繕が言う
「でしょでしょ!!」
レムリアが言った
「そういえばまだ名乗ってなかったな、俺は高嶺 悠人、こっちは・・・」
「神崎 繕だ、繕でいいよ」
自己紹介する、一応初対面ということになってるから
「ゼン君にユート君だね、変な名前」
レムリアが言う
「うるへー」
繕が意地悪っぽく言う
そう言いヨフアルを食べる
「お、美味い・・・」
そう言う繕
この世界にもこんなのがあったんだな、と思った
しばらく色々と喋っていて悠人が思い出した
「やばい!!早く城に戻らないと!!」
「だな」
しかし繕にもここは来たことが無いので良く分からない
「お城ならそこの道を真っ直ぐいけばいいよ」
そう言い二人は帰って行った
「題名、王女の意外な一面ってことで本でも書いてみるか・・・」
そう呟く繕だった
―ラキオス 居間
あれからダーツィ大公国が宣戦布告してきたが悠人や繕の活躍もあり戦いを早期終結にもっていけた
繕は平和を噛み締め休んでいた
(ああ・・・ダーツィを落として、もうクタクタだ・・・)
そう呟く
(多分、次はイースペリアか・・・)
そう言い目を閉じた
(とにかく今は休もう・・・)
そして眠りに落ちたのだった
どれくらい経ったのか、目が少しづつ覚めていく
「ゼン・・・起きて」
誰かが自分を起こそうとしている
「ん・・・ルナ、どうした・・・?」
起こそうとしたのはルナだった
「夕食、もうすぐだってさ」
「ああ・・・分かった」
そう言い起き上がろうとしたが力が入らない
「あれ・・・力が・・・」
「多分疲れてるんですよ、今は休んだほうが・・・」
そう言うルナ
「ああ、大丈夫、すぐ行く」
そう言い食卓に向かった
――食事が終わるといつものようにオルファがなにかやってエスペリアがそれを叱ると言う光景が見られた
いつまでこんな事が続くのかな、と思った
ルナやエスペリアと話して部屋に戻っていった
―第一所詰め所 夜
「疲れた・・・・」
自分でも疲れていることは良く分かっていた
「・・・・」
ルナに感謝すべきだろうと心の中で思う
【繕、疲れているなら風呂でも行ったらどうだ?】
提案してくる【刹那】
「そうだな・・・行くか」
そう言い大浴場に向かった
しばらくすると大浴場の近くまで来た
「ああ、やっとだよ・・・」
【うむ、そうだな】
「いやはや、疲れるな・・・」
そう言う繕、安心しきっていのだが・・・
キィィィィィイイイン
「っ!!!」
異常な気配に気づく
「【刹那】っ!これは・・・」
【間違いない、求めの気配だ】
しかもよりによって大浴場からの気配だ
「チッ・・・悠人・・・やられたか・・・」
そう言い急ぐ繕
ガラガラガラっ!!
繕が急いで大浴場に入るとそこには悠人とヘリオン、そしてルナの姿があった
「【求め】っ!!何をしている!!」
繕が言う
「チッ・・・【刹那】の主か、そこをどけ、いまからそこの濃厚なマナ・・・を・・・」
いきなり【求め】が苦しみ始める
「やめ・・・ろっ!!俺は俺だっ!!」
悠人の理性が勝っている
「悠人、負けるなっ!!【求め】に飲まれるなっ!!」
そう言う繕
「ぐっ・・・うわぁぁぁぁああああああっ!!」
そう言い悠人が地面にひれ伏す
「くっ・・・はぁはぁっ・・・」
息がかなり荒れている
「大丈夫か、悠人」
繕が心配そうに言う
「ああ・・・大丈夫だ・・・所でここは・・・」
「風呂だな」
「「・・・・・」」
二人の間に沈黙が流れる
「あ」
ヘリオン達のほうを向くと二人は真っ赤な顔をしていた
「きゃあああああああああっ!!」
二人が言う
「わ!!待て!誤解だっ」
そう言うが無駄だった
パァアアン
悠人が二人にぶたれ倒れる
「悠人っ!!」
「繕様もなにしてるんですかっ!!」
ヘリオンが言う
「わっ!!ごめんっ!!」
そう言い急いで大浴場から出て行った
その後、悠人はエスペリア達に助けられたが、繕は大浴場に来た理由を説明して汚名をはらさなければならなかった
また悠人が当分は二人に口を利いてもらえなくてユートに対するエスペリアの「行為」は今まで以上に熱を帯びたのはまた別の話だ
繕がよく部屋の前を通ると
「ユート様、私じゃ満足出来ませんか・・・フフフ・・・」
「ま、待て!エスペア!!ぎゃぁぁぁぁぁぁぁあああああっ!!」
こんな声が聞こえたこともあった
そして時が経ち、イースペリアとの戦いが始まった
―ヒエムナ 前線
イースペリアが宣戦布告してからまだ間もないときだった
繕は王の言葉に疑問を持っていた
(あの言葉の意味はなんなんだ・・・)
そう思ったが今は前線に集中することにした
―どれくらい経ったのか、ヒエムナから進軍し、ランサと言う街の近くまで来た
「ここを落とせば、攻めるにも護るにも重要な拠点となります」
エスペリアが言った
「イースペリアまでは距離がある、急ごう」
そう悠人が言う
少し進むと敵スピリットの集団が戦闘を仕掛けてきた
「俺が遠距離から援護する!!皆は行け!!」
繕が言う
「ああ、死ぬなよ!!」
悠人が進軍していく
前線には繕とルナ、そして新しく配属されたニムントールとファーレーンが残った
「はぁ・・・めんどくさい」
ニムントールが言う
「こらニム!!」
ファーレーンが注意する
「二人共油断するな、くるぞ!!」
すると敵が一気に切りかかってきた
「てぇええええええいっ!!」
ファーレーンの居合いが敵を両断する
そりに続く様にルナや二ムもどんどん倒していく
「マナよ、光の刃となりて敵を滅せよ・・・ホーリーランスっ!!」
繕の結晶が完成し空中に放たれた光の矢は分散して敵に降り注ぐ
敵に到達した矢は当たらなくても誘爆し敵を次々となぎ払う
「凄い・・・」
三人が目を丸くする
「ふぅ・・・あらかた片付けたな、どうやらランサも制圧したみたいだし」
悠人達がこっちに歩いてきている
「さ、行こう」
そう言い悠人達の方に駆けていった
―ランサを制圧し、進軍する悠人達だった、敵スピリットの妨害もあったがことごとく切り抜けてイースペリアまで辿り着いた
「ふぅ・・・やっと着いた、早く一般人の救援を・・・」
「繕様、先程陛下から緊急の命令が下りました」
エスペリアが言う
「なんだ?」
「イースペリアのエーテル変換施設を機能停止にせよ、とのことです」
「何?一般人はどうするんだっ!!」
声を荒げ、繕が言う
「ゼン様!!これは王の命令なのです・・・」
それがどうゆう意味か繕にも良く分かっていた
(くっ・・・佳織ちゃんか・・・)
「分かったよ・・・」
そうしぶしぶ言う
「仕方ないんだ・・・行こう・・・」
そう言い城のほうに駆けていく
エーテル変換施設を停止させるメンバーはアセリア、エスペリア、悠人、繕、ルナになった
他の皆は誘導を掛けている
(妙だ・・・静か過ぎる・・・)
しばらく走るとエーテル変換施設の中層部に着いた
そこにあるものに悠人と繕は目を丸くした
「こ、これは・・・」
繕が言う
「これがエーテル変換施設の源です」
エスペリアが説明する
(こんなデカイ永遠神剣があったなんて・・・)
そう思う、しかしこれはオーバーテクノロジーだと思った
エスペリアが作業を開始している間、四人は警戒をしていた
しばらく経った時だった
コツッ・・・
不意に足音が聞こえたのだ
振り返るとそこにはブラックスピリットが居た
アセリアも【存在】に手を掛けている
「チッ・・・敵か・・・」
繕が呟く
「悠人!!アセリア、ルナ!!ここは俺が抑えるからエスペリアを護れ!!」
そう言い【刹那】を弓へと変える
「お手並み拝見といこうか」
すると相手のスピリットが切りかかってきた
ガキィイイイイイイイイイイイン
敵の刃と繕のマナの刃がぶつかる
「遅いっ!!」
繕が隙を突き敵にマナの刃を振り下ろす
しかしそれは敵のスピリットの頬をかすめるだけだった
「っ!!速いね・・・」
繕が言う
「ならっ!!」
そう言い鍔迫り合いに持っていく
「この距離なら零距離だ、分かるな」
ニヤリとして言う、相手の顔に明らかな恐怖があった
鍔迫り合いをした状態で、零距離で矢を放つ
ドゴォォォォォオオオン
ブラックスピリットが吹き飛ばされる、普通のスピリットだったらこっぱみじんだろう
しかしその敵は立ち上がった
「出来るな・・・あの距離で矢を弾くなんて・・・」
しかも繕の頬からも血がでていた
「どうして帝国がここにいる」
繕が言う
「ゼン様!!あれは帝国の遊撃部隊最強の漆黒の翼ウルカです!!」
エスペリアが叫ぶ
「どうりで出来る訳だ」
繕が言う
「もうすぐ作業が終わります!!持ちこち耐えて下さい!!」
そう言い繕とウルカが再度斬り合いを始める
しかし、戦況は繕が圧倒的だった
零距離に持ち込まれても矢で反撃、かといって距離をとると連射の餌食になる
ウルカは確実に消耗していた
「どうした・・・速度が落ちているぞ・・・」
「くっ・・・」
焦るウルカ
「ゼン様っ!!作業が終わりましたっ!!急ぎ退避を」
エスペリアが言うと繕は引いた
「エトランジェか・・・?」
ウルカが尋ねる
「だったら?」
「この大陸で手前を凌ぐ者が居るとは驚きました、それにその力は」
「話したいのは山々だけど時間が無いんでね、引かないなら倒してでも行かせてもらうよ」
そう言い放つ繕
「手前の役目は終わりました、戦う理由はもう有りません」
「へえ・・・」
「なら消えてくれると有難いんだけどね」
繕が言う
「貴殿の名、聞かせてもらえませぬか」
ウルカが言う
「繕、神崎 繕だ」
そう言う
「感謝します、ではまた戦場で」
「願い下げだね、君の実力は計り知れなかったし、それに・・・」
少し間を空けていった
「あそこまで俺を焦らせたのは君が初めてだよ」
そう言い退却を開始した
―イースペリア郊外の森
ゾクッ
一瞬だが背中がゾクリとする
背後に膨れ上がる異質な気配が感じ取れた
ウルカとの戦闘からかなり経ち、イースペリアからはかなり離れている
(おかしい・・・なんだこの気配は・・・不安だけが膨れ上がるこの気配は・・)
そう思いながら進む繕
【繕・・・危険だ、この場から離れろ・・・】
【刹那】が言う、かなり不安そうだ
(何が起ころうとしているんだ・・・?)
【先程の神剣、あの者が死を選ぼうとしている】
【ここにいては巻き込まれる】
そう言う【刹那】
(ああ、分かった・・・)
そう言い返しエスペリア達のほうを向く
「皆・・・危険だ、急いで立ち去るぞ!!」
急な繕の言葉に動揺しながらも全員がそれに従う
しばらくしてかなりのところまで来た
ここまでこれば、と思い足を止める
イースペリアではまだ戦闘が続いているようだ
しばらく立っているとエスペリアが繕を呼んだ
「お二人にお伝えすることがあります」
「なんだ?」
悠人と繕が言う
「これは今回指示された停止方法です、そしてこれが・・・」
エスペリアが手帳を開き言う
「これはかつて私が教えられた消してしてはならない手順です」
「杞憂ならいいのですが今回のは・・・」
その時繕はハッとした
(まさか・・・・!!)
その瞬間、身体に不安が駆け巡る
イースペリアのマナが異常だ
「っ!!これはっ・・・」
悠人が言う
「やはりっ・・・あれは暴走の操作・・・」
「ユート様!ゼン様っ!!イースペリアの方向に守りの力を集中してくださいっ」
「みんなも速くっ!!マナ消失が来ますっ!!」
【繕っ急ぐのだ!!】
焦る【刹那】
「分かってるっ!!」
そう言うと同時に悠人と繕は結晶を開始した
―大地の力よ、今こそ我に守りの力を
―我等を害する者を遮断せよ・・・
―アースっ!!
繕のアースと悠人のレジストが完成し、全体が防御される
その瞬間マナ消は起こった
ピカッ!!!!!!!!
大きな衝撃が来る
「っ!!アースでもこの威力かっ・・・」
繕の額に汗が滲む
悠人もかなり辛そうだ
「くっ・・・駄目だ・・・手に力が・・・」
諦めかけたその時だった
「諦めたら駄目ですよっ!!」
ルナが繕の手を握る
「ここで諦めたら何もかも終わりだよっ!!」
ルナが言う
「そうだな・・・諦めては駄目なんだっ・・・」
そう言いマナを展開する
そしてマナ消失は去っていった
―どれくらい経ったのか
繕はそれを見た
それはとても残酷だった
悲しかった
城に向かうとき逃げていたあの子供達
あの子達は自分のせいで死んだ
―嫌だった、人に拒絶されて、憎まれるのが
マナ消失は去った、でもなんだろうこの悲しみは
護れなかった、何十万と言う人の命が
罪も無い人達を自分が殺した
そう、マナ消失が去った後には
何も無い、地面だけが残っていた
自然と涙がこぼれてきた
悠人も呆然としていた
繕は思った
二度と過ちは繰り返さない、俺が皆をどんなことをしても護ると
そう決めた
繕は【刹那】を握り締め、そう誓った
―ラキオス
「いったいどうゆうことなのだ!!」
王が怒鳴り散らす
「サルドバルドごときが我が国わ上回ってるわけが無い!!」
(・・・・)
冷ややかな目で王を見ていた
レスティーナが悠人に何か言っているが気にしない
ただ自分はどんな事をしても護らなければいけないと思うだけだった
「ゼン、そしてユートよ、サルドバルドを陥落させよ!」
レスティーナがそう言う
「敗北は許さぬ、実力以上発揮して見せるのだ!!」
王が怒鳴る
「ハッ」
「・・・・」
悠人が言ったが繕は気にしてない
そして戦いのときは来た
―サルドバルド戦 前線
悠人や繕はラキオスから少し離れたラースを拠点にして進軍していた
そして今はアキラィスを占拠しているところである
「情報にあったのと違うぞ・・・」
繕が言う
「ああ、予想以上だ」
悠人も言う
「でも俺は。迷っていられないんだ・・・どんなことをしてでも・・・」
そう呟く繕
「ユート様!!ゼン様!!敵が来ました!!」
エスペリアが言う
(【刹那】・・・一気に決める・・・)
そう言い力を開放していく
次の瞬間ゼンはそこにはいなかった
「繕っ!!無茶だ!!」
そう、繕は単体突撃していたのだ
切りかかってくるスピリットを切り捨てる、そして射撃体系に入る
(悪いけど、死んで・・・)
そう言い結晶を開始する
―マナよ、光の矢ととなりて敵を滅せよ・・・
―ホーリーランスっ!!
いつもより異常なほどの威力の光の矢が敵に降り注ぐ
一瞬にして敵陣は血の海に変わった
その圧倒的な力、そして今までとは違う繕の目に悠人達全員は恐怖を覚えた
(あの目は・・・)
悠人は思った、あれは明らかに殺すことに違和感、感情すら感じない目である
そう思っているうちに拠点を制圧していた
しかしその場に居たルナは心の中で確実な恐怖があった
このまま力に飲まれないかと
アキラィスを制圧しバートバルトに進軍していた時だった
この時、あんな事が起こるとは誰も知らない
いつも通り進軍していると敵が出てきた
「多いな・・・」
悠人が言う
「ああ、でも負けてられない・・・」
そう言い構える
そして繕は敵陣に飛び込んだ
「ホーリーランスっ!!」
光の矢を放ち敵を一掃しようとする、だが当たらない、焦っているのだ
(くっ!!【刹那】!!俺に限界まで力を!!)
【無茶を言うな!!そんなことをすればお前は!!】
「くっ・・・」
そう言い敵のスピリットを切ったときだった
悠人達も敵と交戦していた
―もっと・・・力を・・・
繕が心の中からそう思うと増悪が身体を駆け巡る
(どんな事をしてでもいい!!俺に力を!!!)
するとどんどん力が沸いてくる
【止めろ繕!!その力は!!】
しかしその言葉は届かない
「アハハ・・・【刹那】・・・これが力なんだな・・・」
すると悠人がこちらを向く
ゾクリ
悠人に感じられたのは明らかな恐怖だった
繕は【刹那】を大鎌に変えるそして一瞬で敵に接近して
ズサッ
刃が敵に突き刺さる
「おいおい、鈍いなぁ・・・こうしたら苦しまないかな?」
微笑を浮かべながら突き刺していく
「ぐぁああああっ!!」
敵が悲鳴をあげる
その光景に近くに居た悠人、ルナ、エスペリアは目を丸くした
あのアセリアやオルファさえ恐怖を感じていた
その絶対的な破壊の力に
繕が自我崩壊しているのは目に見えていた
そう言っている内にどんどん敵を倒し、殺戮を繰り広げる繕
明らかに楽しみの表情があった
そして次の瞬間
「悠人・・・お前も消えるか・・・?」
そう呟き悠人に切りかかる
キィィイイイイン!!
二人の神剣がぶつかり合う
「くっ!!バカ剣!!どうなっているんだ!!」
【契約者よ、これは危険だ、【刹那】の力ではない】
「どうゆうことだ!!」
【あの者の憎しみが力を暴走させたのだろう】
そうひう言っていると繕が結晶を開始する
―破壊の力よ、我に混沌の力を・・・
―アース・グランデっ!!
するとマナの力が集まった球弾が飛ぶ
ドゴォオオオオオオオン
大爆発が起こり悠人が吹き飛ばされる
怪我はほとんどないもののかなり焦っている
「っ・・・なんだよあの力は・・・」
【契約者よ、駄目だ後せいぜい3発、いや4発を耐えるのが限界だ】
【求め】もかなり焦っている
「さ、終わりにしようよ、悠人」
繕がそう言い真っ黒な【刹那】を構える
キィイイイイン
1発、2発、3発
なんとか耐えているがもう限界だった
悠人ももう諦めかけたのだ
「遅いっ」
一瞬の隙をつかれ振り下ろされる、悠人は真っ二つになる筈だった
「悠人様っ!!」
そう言い悠人をかばったのはルナだった
ズサッ
鈍い音を立てて【刹那】がルナに突き刺さる、致命傷ではないがかなり深い傷だ
「ゼン・・・元に戻ってよ・・・」
そう言うと繕に変化があった
「ル・・・ナ・・・」
その時繕は気づいた、自分のやったことを
―俺は何をしている
―なんで俺がルナを傷つけてる?
―なんで、どうして・・・
―ただ俺は護りたかっただけだった
―いや、それはただの過意識だったのかもしれない
―俺は結果的に憎しみと怒りで皆を傷つけただけなのかもしれない
―結果的に【刹那】も苦しませて自分の大切な存在も傷つけた
(俺は何をしていたんだろうか・・・)
そう思うと繕は現実に戻った
ドサッ
「ルナっ!!」
傷が深かったルナは地面に崩れ落ちた
「良かった・・・元・・・に・・・戻ったんだ・・・」
虚ろな目をしながら言う
そう言ってルナは目を閉じた
急いでエスペリアとハリオンが走りより治療を開始する
「ははは・・・悠人、俺は・・・」
繕が消え入りそうな声で言う
「繕・・・」
「結果的に俺はお前も傷つけた・・・」
繕が言う
「【刹那】も、エスペリアやアセリアやオルファも!!俺が傷つけたっ!!」
「ただ俺は拒絶されるのが怖かっただけなのかもな・・・」
そう言い目を伏せた
吹く風が妙に冷たかった
どれくらい経ったのか
ルナの治療が終わった
すると繕が口を開いた
「悠人、エスペリア・・・ルナをこんな風にしたのは俺のせいだだから・・・」
少し黙る
「俺がルナを拠点まで連れて行く」
決意と悲しみが混じった言葉だった
「繕・・・」
「ゼン様・・・」
二人が言う
「俺はただ皆を護ろうとした、でも逆に傷つけてしまった」
「だから・・・今は償おうと思う」
ゼンが言った
「悠人・・・頼む・・・」
鳴きそうなほどの声で言った
「分かりました・・・」
先に口を開いたのはエスペリアだった
「ゼン様はただ私達を護ろうとした、それは良く分かっています」
「ですからルナのためにも自分の為にも行って下さい」
エスペリアが言った
「すまない・・・」
繕は悠人のほうを向き言った
「悠人・・・すまなかった・・・後は頼む・・・」
「ああ、分かってるでももう力に飲まれるなよ、絶対に怒りで力を使ったりしたら駄目なんだ・・・」
「俺もお前もな・・・」
悠人が言った
「分かった・・・」
そう言いルナを背負うとアキラィスに向かっていった
その背中を全員が見守っていた
―アキライス 宿舎
繕は急いでアキライスに戻り、宿舎に急いだ
案の定、すぐに着きルナをベッドに横にさせた
「ふぅっ・・・・」
ふと呟き椅子に座る繕
そして自分は何をしたのか振り返った
―俺は自分の手で皆を傷つけた
―それだけじゃなくてルナに傷を負わせてしまった
―怒りや憎しみに囚われた自分が居て
―今悲しむ自分が居て
すると突然なんだか泣きたくなってきた
「はは・・・ルナは寝てるし今は泣いていいよな・・・」
目に涙が溢れて来た
「俺はっ・・・力に溺れていただけだったんだっ・・・」
「どうしてだ!どうして俺はあんな事をっ!!」
泣きながら言う
バンッ
自分の拳を壁に叩きつける
手は血で滲んでいた
「くそっ・・・」
「俺はっ俺はっ・・・」
泣きながら言う
その時だった
「・・・・ゼン・・・」
「っ!」
・・・目が合わせられない。
護りたい存在を、自分の手で傷つけてしまった重圧に心が押しつぶされそうだった。
「元に戻ったんだね・・・良かった」
「良かった・・・?俺が傷つけたのに?」
「うん、だって誰も死ななかっ「何でだよ」・・・え?」
「何でだよ! 俺は、君を傷つけた! 護りたい存在を死なせかけたんだよッ!!護るって決めたのに!! なのに・・・っ!!!」
涙腺が壊れたように涙が止まらない。
自分の非力さがただ悔しくて、虚しさと後悔で心が塗りつぶされる。
握り締めた手から血が滴るが、その痛みも感じなかった。
「あの、ね・・・・上手く言えないけど・・・護るって、ただ敵を殺すことなの?」
「・・・・・」
「私はそれって違うと・・・思うんだ! 自分の心を殺して、敵を殺して、それで全て護れるんだったら・・・こんな風に失敗しないんじゃないの? 私の言ってること、違う!?」
「知るかよッ!そんなこと!!俺はただ・・・護る為の力がいると思って!」
パンッ!!
頬に鈍い痛みが走る。
「ゼンは、ゼンらしくいればいいんだよ! 無理して力を手に入れようとして、その力で自分も周りも傷つけてる、そんなの・・・今のゼンは・・・・ゼンじゃないっ!!!」
「俺が、俺じゃない・・・」
頬の痛みよりも、彼女の目から落ちる雫と、その一言が深く突き刺さった。
「だからっ!・・・・っ・・・・あれ・・・?」
「・・・!?」
まだ本調子でないのだろう、グラリとベットからバランスを崩し、頭から落ちそうになる。
ガタッ!トサッ・・・
体が勝手に反応し、気がつくと彼女は俺の腕の中にいた。
「大丈夫か!?」
「あはは・・・・もう少し休んでないとダメかな・・・」
「無理するなよ・・・」
「・・・それ、ゼンのことでしょ?」
「・・・・・・・・」
「・・・ね、今みたいに、ゼンは護れるんだから・・・傷つかなくてもいいし、これ以上力なんていらないんだよ・・・」
ルナの言いたい事が、今やっと分かった。
何かから頭が開放されたように思考がクリアになっていく。
「・・・ゴメン、それでも、俺は戦って敵を殺さなくちゃいけない。」
「うん、わかってる。でも無理しなくていいから、ね」
「サンキュ・・・」
「あ、後もう一つ・・・もうちょっとだけこのまま、休ませて・・・・」
そう言うと目を瞑り、静かな寝息を立て始めた。
(まだ完全な答えになったわけじゃない。それにまだ護り切ってない)
でも、俺は力で全て護れると思うように、心が弱いから成長しなきゃいけない。
そしてその為に焦ってもどうにもならないのはよく分かった。
でも大切な存在を護る為なら、いくらでも頑張る覚悟はある。
そしていつか俺は、彼女を護れるような存在になれる、と思う。
自信があるわけじゃない。でもそれは確信に近かった。
俺のことを助けてくれる人がいる限り、きっと出来る。
そう思えた。
俺は少しの間彼女を強く抱きしめた。
決意と感謝を込めて。
いつの間にか、涙は止まっていた。
その後、サルドバルドは悠人達の活躍により陥落させられた
to be continued
後書き
皆様お久しぶりです、
やっと書き終えました、にしても長い・・・
次は佳織の帰還と日常とマロリガン戦前の話です
でわー。