―終わらない鎮魂歌―
【第二話、戦い、そして決断】
―エルスサーオ 前線
エスペリアが意外な発言をしてからしばらくが経った
あれから二人は勿論、全員は口をむほとんど聞かなかった
今は、敵軍のスピリットと交戦中である
「はぁぁぁあああっ!!」
アセリアの【存在】が敵のスピリットを真っ二つにする
それに続くようにヒミカやヘリオン達もどんどん倒していく
(ラキオスの青い牙ってのは伊達じゃない、か)
そう思った
そう思っているうちに繕も4体の敵スピリットに囲まれた
(あらら・・・)
「流石のエトランジェでも4人に囲まれたら勝てないでしょ?」
敵のスピリットが笑いながら言う
(手荒い真似は嫌いなのになぁ・・・)
【嘘付け】
【刹那】が言う
(赤が二人に緑と青が一人づつか)
そしてニヤリと笑う
「何がおかしい?」
「いやいや、失礼、俺も舐められたなと思ってね」
笑いながら言う
「まあいい、皆、いくわよっ」
そう言いスピリットが向かってくる
「繕っ!」
悠人が振り向くがしかし動じない繕
「いくよ・・・」
そう言い周りのマナを収束していく
「集えマナよ、我に害をなす者を阻め、アースっ!!」
そう言うと周りにマナのシールドが張られる
しかし防ぐだけでは終わらなかった
次の瞬間、かまいたちが敵のスピリットを全員真っ二つにした
「な・・・に・・・」
すると4体のスピリットは霧へと変わっていった
「読みが甘かったね、アースは防御だけじゃなくサポートにも攻撃にも使えるんだよ」
そう言い放つ
その光景を唖然として見つめている悠人
「なっ・・・」
そう、その繕の戦い方、それはまさに
鬼神、いや死神だろう
その実力に悠人は恐怖さえ覚えた、何しろスピリットを4体一瞬で霧に変えたのだから
(俺も負けてられない・・・)
そう思い進軍していく悠人だった
「はぁぁぁぁぁあああっ!!」
【刹那】を振るい次々と敵をなぎ倒していく繕、そしてラキオスの青い牙のアセリアの働きによって進軍はスムーズに進んだ
とうとうリーザリオの目の前まで来たのである
「とうとう来たか・・・」
そう思った
「指揮官は人間だ・・・俺に切れるのか・・・?」
初陣だけでかなりの数のスピリットを切ってきたが人間を切ったことはまだないのだ
「繕・・・」
不安そうに悠人が言う
「皆・・・行こう!!」
そう言い進軍を開始した
―リーザリオ 内部
どれくらい切ったのか、かなりの距離を進んだ
悠人達とは別れ個人として行動していたのだ
「はぁぁぁぁあっ!!」
敵のスピリットが切りかかってきたがことごとくなぎ払っていった
しばらく進むと数対のスピリットと共に居る指揮官を発見した
ふと心に迷いが出る
(俺に切れるのか・・・俺にっ・・・)
そう思いながら道を阻むスピリットを切って行った
そして指揮官の下に辿り着いた
(やるしか・・・ないんだっ!!!)
そう思い振り上げる
しかし―――
「・・・・・っ!」
切れなかったのだ、指揮官が
その指揮官はまだ自分とそう変わらない青年だった
「どうしたエトランジェ・・・切れよっ・・・」
そう言う指揮官
「くっ・・・」
【刹那】を持つ手が震えて切ろうにも切れないのだ
「切れないのなら俺が切ってやるっ!!」
そう言い指揮官が剣を振り上げる
頭の中に色んなイメージが浮かんだ
―俺、死ぬのか・・・?
―嫌だ、死にたくない・・・
次の瞬間、繕は【刹那】で指揮官を真っ二つにしていた
スピリットとは違い、返り血が手に付いている
「あはは・・冗談だろ・・・」
力が一気に抜けていく
「俺が・・・殺した・・・」
覚悟していたのに、分かっていたのに恐怖と悲しみが身体の中を駆け巡る
「殺したくなんか・・・なかったのにっ・・・」
そう言い繕の意識は闇に落ちて行った
―??? 繕の夢の中
自分はどうしたのだろう・・・
確か自分は指揮官を切った、それだけははっきり覚えている
まだ血が手にこびりついている
気が付くと自分は自宅に居た
そして目の前には――
自分の父と母が倒れていた
そしてそこにはナイフを持ち死を嘲笑うもう一人の自分――
自分は、殺人鬼だ・・・
目の前で父と母を殺した奴と変わらない殺人鬼だ・・・
父と母を殺された悲しみと恐怖もあったがそれと同じ事をした自分が居た――
俺はどうすればいいんだろう・・・
不意に涙がこぼれた、いつも側に居る【刹那】は今は居ない
「俺は、どうすればいいんだろう・・・」
そう呟き、闇に落ちて言った
―リーザリオ 宿舎
変な夢を見た、でもそれは今の自分の夢・・・
悲しかった、でも悲しめなかった
自分は今何処に居るのだろう
そう思い目が覚めた
「ここは・・・」
目が覚めるとベットの上だった
「繕っ!!」
そう悠人が言う
「ゼン様っ!大丈夫ですか?」
エスペリアも言う
「大丈夫だ・・・俺は・・・」
思い出そうとすると指揮官を殺したこととさっきの夢がフラッシュバックする
「・・・・!!」
不意に苦い顔をする繕に驚く二人
「繕・・・?」
「悠人、俺は・・・」
どうしたのかと心配そうな悠人
「俺は・・・人を殺した・・・」
「っ!!」
悠人が驚く
「はは・・・俺、弱いよな・・・」
「繕・・・」
「皆護るって決めてたのに・・・こんなんじゃ誰も護れないよな・・・」
「違うっ・・・お前はっ・・・」
「違くない・・・俺はスピリットは迷わずに切った、でも人間は簡単に切れなかった・・・」
沈黙が流れる
「俺は切りたくなかった・・・それは逃げだって事は分かってる、でもっ・・・」
涙が溢れてくる
「悠人、エスペリア・・・すまないが一人にしてくれ・・・」
そう言うと二人は外に出て行った
「なぁ、【刹那】・・・俺はどうすればいいのかな・・・」
【・・・・】
【刹那】は何も答えなかった、今の繕の心のように・・・
―リーザリオ 繕の居る部屋
あれからもう結構経った
時々悠人やエスペリア、ハリオンが見舞いに来てくれるがほとんど話さない
あれから【刹那】は話しかけてくる事は無かった
しばらく経って進軍が再会される日が来た
―リーザリオ 前線
「・・・・ですから私達は――」
エスペリアが何か言っている
「皆しっかりして行こう」
悠人も何か言っている
でも自分には何も聞こえない、聞こえるのはあの時の悲鳴と光景だけ――
サドモアを制圧するまで時間が掛かった
不意をつかれ戻らなければならないこともあった
でも繕は何も感じなかった
あれこれ言って、首都を制圧し、ラキオスに戻った
―ラキオス、謁見の間
「良くやった、エトランジェよ」
王はご立腹だった
サドモアを制圧し、かなりのご立腹だった
「・・・・」
繕は何も喋らない
そして時間は過ぎていった
―第一所詰め所 繕の部屋
繕は部屋に戻ってきた
前線以来の帰宅だからかなり懐かしく感じた
風にゆっくりあたっていた時だった
コンコン
「・・・・はい」
素っ気無く返事をする
あの日からずっとこうだ
すると見慣れない二人のスピリットが入ってきた
「君達は・・・?」
「先日配属された、【熱病】のセリアです」
「・・・・【沈消】のナナルゥです」
二人がそう言う
「そうか・・・」
素っ気無く答える
「・・・・?」
どうしたのだろうとセリア達は思いながら部屋を後にした
しばらく経ち涙が出てきた
「俺は・・・弱いな・・・」
そう呟いた
しばらくして不意に外に出たくなった
(気分晴らすか・・・)
【刹那】を首に掛け、出かけていった
―スピリットの館 近くの丘
繕が丘に着くと心地の良い風が吹いていた
まるで自分の心を癒すかのように
(ここにくると落ち着くな・・・)
そう思った
でも、俺は・・・
ふと思い前方に目をやる
するとそこには一人の女性が居た
「え・・・?」
そこにいたのはネリーやセリアと似たポニーテールの青い髪の女性だった
(セリア・・・・?)
そう思い近づくと相手はそれに気が付いて振り向いた
しかしそこに居たのはセリアでもネリーでも無かった
「貴方は・・・・誰?」
「え・・・・」
わずかの沈黙が流れた
「君も誰なんだ・・・?」
そう尋ねる
「ああ、私はルナ、【月片】のルナよ、この前ここに配属されたの」
ルナが答える
「そうか・・・俺は神崎、この世界じゃ【刹那】のゼンって言うのかな・・・」
暗い声で答える
「そしてただの臆病者の殺人者だよ・・・」
暗く答える
ルナが気になったらしく聞いてきた
「何か、あったの・・・?」
ルナが聞いてくる
こんな子に心配されるなんて駄目だな、と思った
そしてルナの顔を見た、すると顔は目は強く優しく、そして顔はセリアと同じくらいなのにわずかに幼かった
「ちょっとな・・・」
「私で良ければ相談に乗るけど?」
嬉しかったのだ、心のどこかで
「そうだな・・・どこから話せばいいのかな・・・」
ルナの横に座り、自分がしてきた事を隠さず話した
「なるほど、ね」
話が終わりルナが言う
「笑っちまうよな・・・スピリットは切れて人は切れないなんてさ・・・」
今にも泣きそうだった、弱い顔は見せたことが無かったのに
「笑わないよ・・・それが普通だから」
「え・・?」
唖然としてしまう
「私はスピリットだけど人もスピリットも切ってきた、人を切るのには抵抗があったわ」
淡々と話すルナ
「私も抵抗があった、人を切るのは、殺すというのはその人の可能性を奪うことだから」
「でも、やらないと自分が殺される、怖いけどやらなきゃって思って」
そう答える
「そうなのかな・・・君は何の為に戦っている・・・?」
「自由になりたいからよ」
意外な言葉だった
「早く戦いを終わらせて、自由なりたい、それだけ」
「君は強いな・・・」
ふと呟く
「え・・?」
ルナがこちらを向く
「俺は・・・怖がってばかりだから・・・」
その目には涙が浮かんでいた
「誰も護れないのかもな・・・」
「違うと思うわよ」
「え?」
「誰かを護る為に戦う、それなら迷っては駄目、そうしないと自分がやられるから」
そう言うルナ
「俺に・・・戦えるのかな・・・」
そう言うとルナが繕に抱きついてきた
「〜〜〜〜っ!」
顔が真っ赤になる
「誰かを護るんでしょ・・・?その気持ちが、ううん思いがあれば、戦えるわよ・・・」
「ルナ・・・」
すると涙が溢れてきた
「泣いて・・・いいんですよ・・・」
ルナが言う
そして繕は自分より幼い少女の胸の中で泣いていた、そして決めた
もう迷わない、ルナも皆も、俺が護る・・・
そう決めたのだった
to be continued
後書き
皆様お久しぶりです、蓮です・・・
いきなりのヒロイン登場でスミマセンでした
とりうえず説明を・・・
ルナ・ブルースピリット
永遠神剣第5位【月片】の持ち主、長い髪が印象的、過去に人を切った経験がある
繕を復帰させたキッカケとなった人物である
こんなもんです。
でわお元気で