―――刻み続ける時の中で―――
- 目の前で彼女が殺された
−大切だった彼女が
−護るって約束したのに
−どうして俺なんかかばったんだ・・・
−もう何も信じたくない
−大切なものなんてもう欲しくない
−もう俺は
−彼女の死と言う最大の苦しみを味わったから・・・
- でもここで悔やんでも始まらない
−俺は・・・もう大切なものを失っては・・・いけないんだ
「なんなんだよ・・この妙な感覚・・・いやな予感がする・・・」
【達也、確かに妙だしこの気配・・・】
「分かっている・・・愁達の戦闘のあった気配だな」
数十分前、自宅で異常な気配を感じ、急いで出てきたのだ
しばらく走ると達也は気配のあった公園に着いた
−気配は全くない
「・・・どこだ」
辺りを見回すが何もない
神剣を構えしばらく進むと
そこにあったのは
「愁・・・?」
そこに居たのは愁だった、しかし反応がない
「愁・・・何があった・・?」
「・・・親父?・・・セリアがっ・・・!!」
ふと達也が愁の手に目をやるとそこには
「それは・・まさか!!」
愁の手にはセリアが着けていたペンダントがあった
「俺はっ・・・どうしてっ!!」
状況からするに最悪の事態のようだ
「まさか・・・セリアさんが殺られたのか・・・!?」
いやな予感とはこのことだったのかと思った
「なあ・・・親父・・・俺はどうすればいい・・・?」
何もいえなかった
コイツは
俺と同じ苦しみを味わったんだ
まだ19と言う若さで
「とにかく・・・家に戻ろう・・・話はそれからだ」
すると愁は僅かに頷き立ち上がった
−自宅
戦闘で負傷したのか、愁は立つことすらできなかった
外傷はないし・・・多分精神的なものだろう
「・・・・愁、何があった?」
「・・・親父・・・教えてくれ・・・破壊者ってなんなんだ?」
その言葉に俺は驚いた
そう
愁の母親を殺し、俺の最愛の人の命を奪った奴等
破壊者
「・・・お前・・・破壊者を見たのか・・?」
「ああ・・・あいつはいきなり襲ってきて俺を殺そうとした・・・それをセリアがっ・・・」
バンッ!!
愁が思いっきり机を殴りつけた
すると達也は語るように話し始めた
「・・・破壊者・・・奴等はロウとは違い、目的もなく世界を破壊し、力にする奴等の名称だ」
「・・・え?」
俺は続けた
「そして・・・母さんを・・・恵美の命を奪ったのも・・・そいつらだ」
「そ・・んなっ!!」
信じられない事実を突きつけられた愁は驚いた
「お前が見たのは・・・影と名乗ってなかったか?」
「・・・ああ」
「影ってのは・・・奴等の分身・・・つまり僕のような存在だ」
「嘘・・・だろ?僕であんなに強いのかよ!!」
「奴等は既に数百の世界を破壊し・・・それを力にしている、そして奴等は5人で構成されている」
「たった・・・5人?」
「ああ、【虚無】を持つ「虚無の支配者」レイフィス、【快楽】を持つ「欲望鬼」リーファ、【撲滅】を持つ「終わりへの鐘」ジルド、【嫉妬】を持つ「惨殺者」ウェンディ、そして・・・【破壊】を持つ「破壊の支配者」ルシファー」
「・・・・」
「こいつらの神剣は常に力と欲望を持ち続け、しかも虚無、撲滅、快楽は2位クラス・・そして破壊は・・・」
俺は一瞬言葉をとめた
「1位・・・だ」
「冗談・・・だろ?」
「事実だ・・・しかも奴等は破壊した世界の絶大な力を5人で分けている・・・実質破壊に関してはカオスのローガスでも止められるか分からない」
「・・・・」
ローガスと言う人物がどういった人物か愁は分からなかったが・・・とてつもない人物だと言う事は分かった
「・・・セリアさんは・・・影に殺されたのか・・・」
「ああ・・・俺が・・殺られそうな時俺をかばってっ・・・!!」
ただ
心の中に悔しさと怒り・・・何よりも自分への絶望が強かった
「そうか・・・彼女の神剣・・・熱病は影に砕かれたのか・・・」
「・・・いや・・?奴が消えた時にセリアと一緒に消えたけど・・・」
おかしいと思った
「・・・ありえない・・!!」
「親父?」
「破壊者は世界の力だけじゃなくて神剣の力も吸い取るんだ、それに彼女が消えても神剣は残るはずなんだ」
「じゃあ・・・熱病は・・・?」
「分からない・・・こんな事は初めてだ・・・」
神剣が消えるという事例は過去に全くない
だとすると
熱病はどこにいったのか
「親父・・・俺は・・・どうすればいい・・・」
「俺には何もいえない・・・でもセリアさんなら・・・どう言う?」
「・・・・」
俺は少し考えた
セリアは俺の事をいつも考えていてくれた
もしここで
全て投げ出したら
セリアはどう言うだろうか
「俺は・・・そうだよな・・・俺はまだ護らないといけないものがあったな・・・」
悠人や皆を護らないといけない
奴らから、破壊者から
「・・・愁、お前は向こうの世界に戻る・・・だが辛くないか?」
「・・・・」
「お前は大切な人を失った、その苦しみにお前は今耐えた、だが・・・もし向こうの世界で大切な人が死んだら・・・お前は耐えられるか?」
「セリアは・・・護れなかった、でも俺は・・・
だからこそあいつの分も生きて・・・皆を護る・・・」
すると達也はふっと笑った
「そうか・・・いらない心配だったな、ただな」
「?」
「話を聞く限り破壊者はお前やエターナルだけじゃなく、向こうの世界の人も狙っているかもしれない・・・気をつけろよ」
「分かってる・・・もう・・・殺らせはしない」
そう強く言った
強き思いを込めて
翌日、悠人とは1日遅れだったが俺は向こうの世界に戻った
「死ぬなよ、愁・・・」
達也が呟いた
−???? 意識の彼方
ここはどこだろうか
私は確か
ふっと
目の前が眩しくなった
(私はどうしたのかな・・・)
周りは真っ白で
何もない
(・・・そっか・・・確か愁をかばって・・・)
何もない世界
(もっと・・・一緒に居たかったな・・・)
ただ
(ごめんなさい・・・愁、皆)
そこには1本の剣が刺さっている
剣は何も言わない
ただ時が来たら
目覚めるのだ
セリアは自分の運命を
まだ知らない
−ファンタスマゴリア ラキオス付近の森
悠人とは1日違いだったがなんとかこの世界に返ってきた
「・・・ついたか」
降り立ったのは森
セリアと初めてであった森だった
(皮肉なもんだな・・・またここから始まるなんて)
ふと歩きながら思う
もうセリアは居ない
そう思った
ただ、セリアの形見のペンダントは首から下げられていた
ガサっ!!
「ん?」
流石に敵ではないだろうと思ったが神剣を構える
「愁様!!」
「愁だ〜!!」
「だー」
現れたのはエスペリア、ネリーにシアーだった
「一体今までどこに!!」
「んー・・・悠人と同じでハイベリアに飛ばされてな」
とりあえず何があったかをラキオスに向かいながら説明した
「そうだったんですか・・・セリアはどうしました?」
ズキンと
胸を打たれた
「っ・・・――」
「愁ー?」
ネリーが心配そうに顔をのぞいてくる
「・・・んだ」
「え?」
「死んだんだ・・・」
その言葉に全員足を止めた
「どうして・・・ですか?」
エスペリアが驚愕した顔で聞いてきた
「・・・向こうで何者かの襲撃をうけて・・・俺をかばって・・・」
しばらくの間沈黙が流れた
「そんなことが・・・」
エスペリアが口を開くのを待っていたかのようにネリーとシアーに質問攻めされた
なんとか説明したが・・・心が重かった
ただ俺は
この人達も護らなければいけないのだ
―館
エスペリア達に案内されて
なんとか館に着いた
館に着くと全員にどこに行っていたか聞かれた
そして
セリアの事も
事情を話すとやはり皆驚いていた
ネリー達と同じように質問攻めもされた
しばらくして
なんとか皆は納得してくれた
多分・・・俺の事も考えてくれたのだろう
正直、皆に感謝した
そして俺が気になったのは
「所で・・・アセリアは?」
その言葉に皆はドキリとしていた
「・・・?」
「アセリアは・・・神剣に飲まれました」
・・・・・・え?
「神剣に・・・飲まれた?」
「愁様と同じでハイベリアから戻る時に・・・飲まれたそうです」
「悠人は・・・?」
「今はアセリアの部屋です」
俺は分かったと言いアセリアの部屋に向かった
コンコン
「はい?」
「悠人――俺だ」
「愁っ!?」
ドアを開けて中に入ると悠人はかなり驚いていた
「一体今までどこに・・・」
そして俺は同じように何があったか、そしてセリアの死を伝えた
「そんなことが・・・」
「・・・すまない」
「・・・・謝るなよ」
悠人が言った
ふと悠人の後ろに目をやると
「・・・・アセリア」
「・・・・・」
完全に神剣に飲まれているようだ
「・・・アセリアを元に戻す方法を見つけるしかないのか」
「・・・みたいだ」
そのアセリアの姿を見て
悠人も苦しんでいるのだと感じた
俺はその後悠人に一言言って
部屋を出た
―夜 丘
ここに来るのも久しぶりだと思った
(前は・・・セリアと一緒だったんだよな・・・)
その彼女はもう居ない
夜風が妙に冷たかった
【・・・やっぱ辛い?】
「・・・辛くないと思うか?」
【・・・・】
「でも・・・辛くても俺は・・・あいつ等を護らないといけないんだ」
ふと
首に下げているセリアのネックレスをぎゅっと握り締めた
俺は夜空を見上げていた
すると
ふと気配を感じた
「あ、いましたね」
「・・・ん?」
振り向くとそこには見覚えのある少女が
「ミューギィか・・・どうしたんだ、また」
前に一度俺と接触してきた少女、そしてロウのトップの少女だ
「今回は・・・私の個人的な事と言うか・・・」
「ん?」
彼女の青黒いストレートヘアーが風に揺れていた
「・・・破壊者と遭遇したそうですね」
「ああ・・・」
ふと地面に目を落とす
あの時のこと――鮮明に覚えている
倒れるセリア、影と呼ぶ奴ら―全て
「辛く・・・ないですか?」
何度も聞かれた質問、でも今彼女に聞かれてみると
「正直言って・・・辛い、凄く辛い」
「・・・・」
彼女は俺の横に座って俺の手の上に手を置いた
「・・・ん?」
意識だけ飛ばしていても手の感覚はちゃんと伝わってきた
それは――とても小さな手だった
ふと彼女の表情を見ると何か難しい顔をしていた
「ごめんなさい・・・私の力不足で・・・こんな事に・・・」
ロウのトップの少女でも――こんな表情をするのかと思った
そして自分のことを心配してくれているのだとわかった
彼女がどんな経緯で自分自身の体が眠りについているのかは俺は知らない
それに彼女は多分――セリアが死んで俺が無茶をしているのを悟っているのだろう
「・・・ミューギィ、君のせいじゃない、あれは・・・俺のせいなんだよ、彼女を・・・セリアを失ったのは」
そうだ
いくら皆を護るって強く思っても、いくら皆が心配してくれても
彼女の死は・・・・俺のせいだと
「俺のせ・・・「違うっ!!」・・・え?」
いきなりの声に驚く俺、でもミューギィの表情も険しかった
「私・・・思うんです、もし私が完全に目覚めていたら、もし力が戻っていたら、・・・そうすればなんとかなったのにって・・・」
「・・・・っ!!」
俺は僅かに怒りを覚えた
それは俺自身への怒り、こんな少女にまで気を使わせてしまった俺への怒りだ
それに―どうして彼女は自分をここまで責めるのか・・・それが分からなかった
「・・・運命・・・だったのかもな、あの事も・・・」
「運命・・・?」
「ああ、それに・・・今悔やんでも、誰を責めても、 ・・・アイツは戻ってこない」
「・・・」
「だから・・・君が自分を責めることはないし・・・悔やむこともないんだ」
そうだ
ミューギィは悪くない
悪いのは
全ての原因の俺だ
「そう・・かもしれませんね・・・逆に気を使って貰ったな・・・」
少し苦笑して言う
「いや、俺こそわざわざありがとな・・・気を使わせて」
そして俺は空を見た
これから始まる戦い、その先も・・・ずっと先も・・・俺は背負い続けなければならないのだ
・・・・そういえば
なんで彼女はここまで俺の事を心配してくれるのだろうか?
「ミューギィ・・・1つ聞いていい?」
「はい?」
「何でさ・・・俺の事そこまで心配してくれるの?」
すると彼女は少し下を向いていた
しばらくの沈黙が流れた
「えっと・・・その・・・」
「ん?」
いきなり慌てているような感じになっている
なんだか顔も赤い
俺が不思議に思う気持ちも
次の言葉で吹っ飛んだ
「・・・だから」
「え?」
「愁が・・・好きだからです」
・・・・・・え?
その言葉に驚いた
そういえば・・・前に最後に言っていたのはこういう事かと思った
隣で顔を赤くして下を向いている
突然の告白、そして・・・彼女の死、あまりにも出来事が多すぎた
彼女のことは嫌いではない、むしろ・・・好きなのかもしれないとさえ思った
それに
セリアと言う彼女を――俺には忘れられない
だから
「・・・ミューギィ、君の想いは嬉しいけど・・・今の俺じゃ何もいえない・・・」
「・・・・」
「俺には・・・よく分からないんだ・・・もし大切な人が居たらまた失うんじゃないかって・・・」
大切な人を失う苦しみ、悲しみ、・・・怒り
もし・・・ここで彼女を選んだら・・・また失うかもしれない
そして・・・自分を愛してくれた彼女を・・・セリアの存在を消してしまうのではないかと
「多分君の事は・・・好きなのかもしれないな、でも・・・今の俺には・・・何もいえない」
「そう・・・ですね、あんな事があったのにこんな・・・」
「・・・ごめん」
「謝らないで下さい、貴方に気持ちを伝えられただけでも良かったです」
ミューギィは少し笑って言った
「そろそろ・・・戻りますね」
「ああ」
ふと彼女は立ち上がり、戻ろうとした
その去り際に
「死なないで・・・」
そう呟いた
それは愁にはきこえなかった
ただ微笑んで
彼女は戻っていった
―翌日 城
ミューギィの突然の告白から1日
俺は突如レスティーナに呼び出された
「氷炎、話ってなんだろうな」
【んー・・・お説教】
それは勘弁してほしい
「それはないだろ、俺は何も悪いことは・・・」
そして愁の頭に浮かんだのは
そういえば・・・少し前に無断でヨフアル食べたのが原因か・・・?
【愁、言っておくけどあの王女様ヨフアルが絡むとボクでも防ぎきれないよ】
ヨフアルの恨みは恐ろしい
誰か有名な人がそう言った様な記憶がある
そして俺はおおそるおそる王の間に入った
「レスティーナ、久しぶり」
兵士も誰も居ないので普通の言葉だ
「そうですね、話はエスぺリアから聞きました、今日は紹介したい人が居て」
「誰だ?」
「この大陸で一番の天才の科学者ですよ」
「へぇー、楽しみだな」
俺も氷炎も心を躍らせ期待していた
そこに入ってきたのは・・・
タバコ、ぐしゃぐしゃの髪の毛、だらしない服装
「始めましてでいいな、ヨーティアだ、よろしく」
そしてしばらくの沈黙が流れた
「コイツが・・・」
【天才・・・?】
考えることは剣も主も同じだ
そして王の間にしばらくの沈黙が流れた
「・・・・ぷっ」
【・・・クスクス】
どうやらこれにはヨーティアはカチンときたらしい
「なっなんだその信じられないって言うような目は!!このボンクラああああああ」
「いや・・・だってれが天才って」
今にも笑い死にそうだ
「マナ定理も分からんボンクラに言われたくないわっ!!」
「・・・分かるんだけど」
「・・・え?」
「あれだろ、マナってのはまずこの世界自体を構成している粒子レベルのエネルギー体で様々な種類があり・・・例えば黒・赤・青・緑他、またマナはマナ自体を生物や植物に与えることによって成長や強化することが出来てそして・・・(以下略」
愁によるヨーティアも驚きの説明を淡々と20分も聞かされ流石のレスティーナは話の内容が分からず頭痛を起こし、ヨーティアは唖然としていた
「・・とまあ、こんなもんだろ」
「・・・素晴らしい」
「はい?」
「凄いよ君!!是非私の助手に!!いや、嫌とは言わせない!!」
「ちょっ・・・待った!!俺は嫌だぞ、絶対いやだぞ」
正直・・・学校の40点満点テストで全教科平均38だけどこれって!!
「そんな事いわずに!!イオ!!縄持ってきてくれ!!」
するとイオと呼ばれた女性が縄を・・・
「うわあぁああああああ!!待った!!レスティーナ、ヨフアル奢るから助けてくれ!!」
するとレスティーナの目が妖しく光った
「よ・・・よふある・・・」
「あ、アンタ何をしたんだい!!」
「・・・・ふっふっふ」
レスティーナの周りにマナが集まっていく
とんでもない力に危機感を感じて
「なら逃げる!!」
ヨーティアは縄で縛った愁を引きずり逃げようとした
が
「よ・・・よふある・・・」
「は、早い!!」
出口に先回りされた
イオは既に逃げたようだ
「ま、まつんだレスティーナ・・・話せば分かる!!」
「よふあるのため・・・消えていただきます!!」
大陸全てのマナが集結し始める
「文選たるわが魔力の胎動よ・・・」
「まっまてえええええ!!!!」
「これが真の裁き・・・砕け散れぇぇえええええ!!!」
チュドォォォオオオオオオン!!!
その後どうなったかというとヨーティアはすぐに医務室に運ばれ愁は解放された
実は氷炎が【あの力、絶対無位でも防げないよ】と震えた声で言っていた
また別の場所では
悠人の求めが今にも泣き出しそうになり
マロリガンでは空虚と因果が恐怖を感じ戦いを放棄しようかと話し合っていたそうだ
またサーギオスの瞬の所では瞬が恐怖で夜に眠れなくなり、誓いも恐怖を覚えたそうだ
ちなみに愁は・・・勿論ヨフアル奢らされました、奢らないと殺されます、いや砕け散ります
そんな事で・・・ヨーティアの紹介が終わったとさ、めでたしめでたし
「よくないわぁぁああああああ!!」
大怪我した人いますけどそれはおいて置きましょう
―館
さてさて、所変わって館です
実はレスティーナの一撃で城壁が粉々になったそうです
そして愁が思い出だしたのは
「戦況聞くの忘れた・・・」
ヨーティアに拉致されそうになったし・・・まぁ色々あったので戦況が聞けなかった
「とりあえエスペリアを・・・」
とりあえず戦況を知っていそうなエスペリアわ探すと案の定すぐに見つかった
「エスペリア、丁度いい所に、戦況が分からないんだけどさ、どうなってるんだ?」
悠人より随分遅くこの世界に着いてしまったので戦闘の状況はさっぱりだ
「はい、では居間にでも移動しましょうか」
そう言われ移動する
椅子に座るとエスペリアが説明を始めた
「まず・・・マナ消失を覚えていますね?アレが・・・人工的に発生させられていて現在こう着状態が続いています」
驚いた
自分にとっては大した事はないがあれは流石に不味い
「アレが人工的に使われているか・・・厄介だな」
「そしてもう一つ、マロリガンのエトランジェが接触してきました」
「・・・エスペリア、そいつらは二人で一人は女性、もう一人は坊主じゃなかったか?」
これにはエスペリアは驚いた
「そうですが・・・何故知っているんですか?」
「・・・実はな」
そしてマロリガンに行った際に起こった出来事を話した
「そんな事が・・・」
エスペリアが納得して何かを考え始める
「他には?何かなかったか?」
「いえ、完全に状況が膠着していて今はアセリアの回復方法と障壁の対策方法が考えられていますね」
「そっか・・・ありがとよく分かった」
椅子から立ち上がり居間を後にした
―翌日 館
何故だろうか
今日は妙に早く起きれた
何かあんのかな・・・
そう思った
着替えを済ませ下に降りていくとそこにはレスティーナとヨーティアの姿があった
ヨーティアはまだ杖をついていたが・・・
そしてその前には悠人の姿があった
「レスティーナ、ヨーティア、朝早くからどうしたんだ」
俺が居ることに気がついて二人がこっちを向く
「愁ですか、実はアセリアを元に戻す手がかりが見つかりました」
「本当か!!」
「ええ、サーギオスのソーリカにあるそうです」
すると悠人が口を開いた
「なら愁達を連れて・・・」
「それは出来ません」
「何故っ!!」
悠人が叫ぶ
しかし愁には大体の理由が分かっていた
「戦力の問題か・・・マロリガンとの戦闘が続く以上戦力は裂けない、そんなとこか」
「そうです」
確かにレスティーナの言っている事は正しい
「分かった・・・俺とアセリアだけで行く」
「・・・悠人、お前が決めたのなら俺は止めない、だが・・・死ぬな、絶対にだ」
「・・・ああ!!」
俺と悠人は握手を交わし悠人は数時間後サーギオスに向かった
その後すぐに俺はレスティーナに呼び出された
「愁、貴方もついていって下さい」
「・・・いいのか?」
「ええ、あの二人には・・・死んでほしくありません」
「・・・分かった、皆には説明しておいてくれ」
そして俺も急いで悠人とアセリアの後を追った
―サーギオス領内
数日後、悠人たちはソーリカに到着、資料を手に入れたようだ
俺は急いで向かったおかげもあったのかなんつか追いついた
「よし、急げよ二人とも・・・ん?」
ふと愁は妙な気配を感じた
「10・・11・・12・・・不味いな・・・追っ手か」
どうやら追っ手のようだ
「仕方ない・・・」
二人が進み見えなくなるのを見計らい道に出る
すると丁度敵のスピリットが目の前に来た
「お前たちの相手は・・・俺だ」
「お前は・・・ストライカーか・・・!!」
ストライカーと言うのは俺のこの世界のふたつ名らしい
実はこの世界の監視についてから色々やりすぎて各国からそう呼ばれるようになったのだ
「か、かかれっ!!」
敵の数十人が切りかかってくる
(テムに頼まれたのは監視だけだったのになぁ・・・)
【そんなこといって、本当は嬉しいくせに】
確かに言うとおりだ
正直俺はエターナルだが・・・この世界に愛着ができたみたいだ
(・・・話は後、さっさと決めるぞ)
スピリットが頭上で剣を振り下ろした
が
「ど、どこだ!!」
スピリット達の視界には愁の姿などなかった
そう
上だ
「じゃ、悪いけど消えてもらうね」
両手に持ったサブマシンガンがスピリットの頭上で乱射される
トッ
地面に足をついた時には敵は跡形もなかった
「ふぅっ・・・」
【主よ・・・揺れるのだが】
「悪い、ガラハム」
なんか久しぶりに声を聞いたような気がする
「とりあえず追うか」
悠人達を追おうとした時だった
キーン
「つっ!!」
またあれがきたのだ
そう
彼方のイメージだ
「まただよ・・・」
【最近頻繁だな、主よ】
【だよねぇ】
4日に一度くらいのペースでこれが来ている
「・・・とにかく追うぞ」
フルスピードで二人を追った
俺がついた時には求めはアセリアの近くにあった
悠人は・・・生身で兵士達と戦っているようだ
「くっそ・・・無茶しやがる・・・」
とりあえず回りに居たスピリットと兵士を一掃し洞窟に戻る
「氷炎、いい事考えたんだけど」
【アセリアを助ける為にコンタクトする、でしょ?】
「あってる・・・一字一句」
すると氷炎は分かったよ、と言ってコンタクトを開始した
【契約者はお前の為に戦っている】
「私のため・・・?」
【そうだ、我は契約者と懸けをした、我はお前を元に戻す、契約者は生き残る】
「私は・・・」
するとアセリアの後ろから声が聞こえた
「アセリア、君は悠人の事をどう思ってる?命を懸けて護ってくれる悠人を」
【氷炎の契約者・・・そして守護龍に氷炎か】
【やあ求め】
【久しぶりだな】
これは予想外だったようで求めは驚いていた
するとアセリアは口を開いた
「ユートは・・・私にいろんなことを教えてくれた・・・戦い以外の・・・色んな事・・・」
「アイツは・・・傷つきながら君を護ろうとしていた、あの目は・・・大切な人を護る目だった」
そして愁は言った
「アイツはまだ大切な人を護れる・・・俺にはそれが・・・もうできない・・・」
その言葉の意味を察したのか一瞬アセリアは表情を曇らせる
「・・・セリア・・・か?」
「・・・そうだ」
しばらくの沈黙が流れた
そして
「私は・・・ユートを護りたい・・・」
そして
アセリアは目覚めた
―洞窟付近
アセリアが目を覚ますとその手には存在と求めが握られていた
「ユートが危ない・・・求め、私に力を貸して!!」
【代償もなしにか?】
「私がお前を振るって満足させる」
【面白い!我を満足させるその力を見せてみよ!!】
すると求めは青く光った
「所で愁、なんでここにいる?」
「あー・・・ちょっと頼まれてな、悠人には俺が居たこと黙っといてくれ」
「・・・・うん」
するとアセリアは悠人の方向に飛んでいった
「よし・・・救護を呼びに行くか」
フルスピードでラキオスに戻っていった
翌日、愁はエスペリアを連れて求めと存在の気配を辿り救護に向かった
・・・・が、そこにあった光景は・・・
裸の悠人にシャツだけのアセリアだ
「「【【・・・・・】】」」
二人と一匹と一本は唖然とした
そして何か心の中ではじけた
パーン
「エスペリア、離れていて」
「はい」
かなり異様な笑顔を浮かべて下がり何か準備し始める
「ふふふ・・・悠人君♪朝だよっ♪」
「まてアセリア・・・そこは・・・」
「いいから起きろや」
怒りを込めて思いっきり蹴り飛ばす
「ごふっ!!しゅ、愁っ!!」
「さあて悠人君♪ちょっとお話しようか♪」
「ま、まてっ!!」
「待たない、正直これじゃあ求めが可哀相だ」
【それを言うな・・・】
「俺は何もしていないっ!!」
意義ありっ!!
突然大声が聞こえた
逆転裁判か?逆転裁判なのか!?
【アセリアに聞いたらいいと思うよー♪】
氷炎が一番酷い事を言った
「それだ」
すると隣で見ていたアセリアに悠人とは違い普通に笑って聞く
「アセリア、正直に答えてね、昨日はどうだった?」
「ん・・・気持ちよかった」
求め、献身、氷炎、ガラハムの殺気が向けられる
「あ、アセリアっ!!」
「どんな事をした?」
「ん・・・最初服を脱がせてそれから・・・・・して、最後に立って激しくした・・・」
「アセリア、ありがとう・・・さて悠人君立位か、中々大胆なことをするじゃないかっ♪」
「まったくですねぇ・・・♪」
この時愁が氷炎に散弾・装甲弾・高速弾を装填、エスペリアがマナを集中する
「アセリア、危ないから下がってー」
じわじわと悠人ににじり寄る
「まっまってくれぇぇぇえええ!!」
「問答」
「無用です」
満面の笑顔で言う
ドドドドドドドドドド!!!
ズサッ!!ガッガッガッ!!
「エスペリアー、金槌と釘持ってきて、指打つから」
「もうもってきてあります♪」
「ちょっ!!やばいって!!・・・うわぁぁああああああああ!!!」
悠人はこの後とんでもない目に逢わされたそうです
そして悠人は闇に落ちた
- 数日後
なんとか抗マナ化の装置が完成して進軍を再会した
実を言えば漆黒の翼ウルカが仲間になり戦力も上昇し、士気も上がっていた
そしてマロリガンとの全面戦争が始まった
今はスレギトに進軍している途中だ
「・・・暑い」
今は真昼間、砂漠は暑すぎた
「やばい・・・目眩がする・・・」
ふらーっと愁は倒れそうになる
「おいっ!!愁!!」
なんとか悠人に留められる
・・・・もうちょっとで楽になれたのに
「にしても暑いな・・・む?」
キーン
おかしな気配がした
【この気配、来るよ】
「わかっている」
瞬時に氷炎を弓に変える
今までずっと銃だったが流石に威力が低すぎる
そして考え出したのはこれだ
マナを矢に変えて戦闘体制をとった瞬間だった
スピリットが襲ってきた
「なんだこいつら!!」
悠人が叫ぶ
「くるぞっ!!氷炎補助!!」
敵は切りかかってくる
後数メートルで攻撃範囲内に俺を捕らえるだろう
「アブソリュート!!」
すると瞬時に全員をマナが包む
「マナが溢れてくる・・・」
「これなら・・・いけるっ!!」
補助を掛け終わり敵の方に向くと丁度頭上から切りかかろうとしたところだ
そして
「・・・ふっ」
弓に矢を番える
「消えてもらうよ」
ゼロ距離で放たれたマナの矢は切りかかってきた3人のスピリットを消し去り空の雲を切り裂いた
周りを見ると悠人達が援護をしようとした状態で唖然としていた
「・・・強い」
悠人が呟いた
そして次の瞬間
「おやおや・・・私の妖精を一瞬で消すなど・・・貴方がストライカーですか」
声の主の方を向くとそこには・・・
上半身裸にコートはおっていて、眼鏡掛けた変な親父が居た
「・・・誰だ、お前は」
「ふふふ・・・私はソーマ・ル・ソーマ、ただのサーギオスの人間ですよ」
「・・・そうか、なら」
瞬時に3本のマナの矢を放つ
直撃したなら跡形もなく消えるだろう
が
ドスっ!!
「なっ・・・・」
驚いたのは悠人だった
そう、ソーマはスピリット3人を盾にしたのだ
「・・・何者だよ、アンタ」
「おやおや、怖い怖い、まあ今日は挨拶だけですから、これで」
ソーマはそう言い残し帰って行った
スレギトを制圧が完了してマロリガンとの戦いが本格化した
マロリガンは大国と言うだけありかなりの戦力を持っていた
その為持久戦を強いられた
敵のスピリットが切りかかってくる
俺は瞬時に全員射貫き、マナを集中する
「降り注げ・・・天空の怒り・・・ストライクフォール!!」
強力なマナを込めた矢が空に打たれそれが数十の矢に別れ敵に降り注ぐ
その攻撃に耐えられずほとんどの敵はマナとなる
「今だっ!!フレイジー!!」
そこに悠人達が切り込み敵を殲滅する
流石に愁の攻撃が相当な痛手だったようで敵は退却を開始する
「敵が引いていくな・・・」
氷炎を降ろしため息をつく
悠人達も休息をとっているようでそこに向かう
「・・・」
悠人の顔色は優れなかった
多分理由はあれだろう
光陰と今日子
「悠人・・・」
「愁・・・俺はっ!!あいつ等を・・・殺したくないっ!!」
その言葉にあったのは確かな悲しみ
俺があの時味わった悲しみと同じだ
「ああ・・・殺さないさ、絶対・・・またあいつ等と笑うんだ」
そう言った
戦いたくなくても戦わなければならないのだと
そう思った
そして立ち上がったその時
ドクン
「!!!」
「愁?」
悠人が不思議そうに尋ねてくる
「悠人・・・感じないのか?」
「・・・何をだ?」
・・・馬鹿な
こんなデカイ気配なのに
悠人が感じ取れない?
だとしたら・・・
俺の頭に過ぎる記憶
「破壊者っ・・・!!」
セリアの命を奪い母さんの命を奪った奴等がここにいる
そう感じた
その時だった
「皆聞こえるか!!クェドギンはマナ消失を起こすつもりだ!!」
神剣通信でヨーティアが叫ぶ
「何っ!!」
悠人が叫ぶ
「こんな時に・・・悠人!!先に行ってろ!!」
「愁?お前は?」
「変な気配がする・・・すぐ戻るから先に行け!!」
「ああ!!死ぬなよ!!」
悠人達が走り出すのを見て俺は気配のある方向に全速力で走った
【この気配・・・間違いないよ】
「分かってる・・・もう・・・やらせないっ!!」
そして俺は駆け出した
―マロリガン 北の大砂漠
愁が全速力で走った所に居たのは
砂漠に立つ一人の青年だった
年は・・・見た目で15、6といったところだろう
だが身長が高く、禍々しい殺気を出している
「ああ・・・きたんだ、エターナル」
青年は呟いた
「お前・・・破壊者か」
「ご名答、ボクは【虚無】の持ち主レイフィス、悪いけど僕の邪魔はさせない、消えてもらうよ」
「それは・・・こっちの台詞だっ!!」
矢を番え放った
しかし
キィィイン
「なっ・・・」
「無駄だよ」
レイフィスは矢を蹴りで弾いたのだ
「ボクの虚無は剣じゃないガントレットだ、身体能力の爆発的に上昇させるんだよ」
「そうかよ・・・だが俺は負ける訳にはいかないんだ!!」
3本番えて同時に撃つ
「はっ!!」
バックステップで回避される
「・・・君か、こないだジルドが仕留め損ねたのは」
するとレイフィスはふっと笑った
「上等だよ、本気で行くよ」
すると瞬間的に距離が詰められて蹴りが飛んでくる
「くっ!!」
なんとか氷炎で受けるがとんでもない威力だ、直撃したらひとたまりもない
「ほらほら、遅いよ!!」
手と足からの連撃のせいで攻撃の暇がない
「・・・やっろぉ!!」
ドンッ!!
「・・・っと」
レイフィスが体制を立て直す隙わ見逃さなかった
「フォースブレイクっ!!」
1本の強力なマナの矢がレイフィスに飛んでいく
「っ!!甘いね!!」
レイフィスはそれを軽がる回避する
しかし
これを狙っていたのだ
「甘いのはそっちだ!!インターバルっ!!」
上空から数十本の矢が降り注ぐ
「なっ・・・!!」
それを弾くが弾ききれない
そのうちの数本かがレイフィスの頬を裂いた
「ふふふ・・・」
不意に笑い出すレイフィス
「何がおかしい?」
「面白いね、ならもう・・・容赦なしだね」
ドクン
やばい・・・・
直感でそう思った
何かが来る
次の瞬間レイフィスは距離を詰めてくる
「無駄だっ!!」
インターバルを打ち上げ矢を放とうとする
が
「甘いね」
ヒュッ
「なっ!!」
インターバルと放った矢は砂を射ただけだった
そしてレイフィスは
「しまっ・・・」
「遅いよ」
後ろに回りこまれたのだ、先程とは桁違いの速度で
「黄龍烈派!!」
レイフィスの周辺1メートルほどが強力な衝撃波でなぎ払われる
「ぐっ・・・!!」
直撃をくらい吹き飛ばされる
急いで起き上がるが
「終わりだよ」
「なっ・・・」
レイフィスの右腕にはありえない程のマナが集っていた
「アカシック・ソロゥ!!」
ドゴォォオオン
「うわぁぁああああっ!!」
また周辺一メートル程がなぎ払われるが今回は桁が違った
なぎ払った場所にはクレーターができ、その周辺のマナは消滅していた
(くっ・・・強い・・・)
立ち上がろうとするが力が入らない
「へぇ、これをくらってまだ生きてるんだ、驚いた」
「・・・・っ!!」
「でももう終わり、少しは楽しめたよ、じゃあね」
レイフィスの蹴りが俺に止めを刺そうとしたとした
くっそ・・・
もう終わりなのか・・・・
ごめんな・・・皆
そう思って死を覚悟した
が
「君が破壊者・・・だね」
するとレイフィスの足が止まる
「・・・アンタは・・・ローガス!!」
そこにはローガスと呼ばれた赤髪の青年が立っていた
見た目的に愁とはあまり変わらない年だろう
(アイツが・・・ローガス・・・?)
そんな事を考えているとレイフィスはローガスに向かって走る
「アンタを倒したら、相当なマナが手に入るんだよね」
レイフィスがまた先程の技を放つ
「危ないっ!!」
また周辺が消滅する
が
「・・・哀れだね」
「なっ・・・」
ローガスは無傷だった
「くっ!!」
レイフィスが蹴りを放つが
「遅い」
ヒュッ・・・ズサッ!!
ローガスはその一撃を軽々交わしレイフィスの腕を叩き切る
「うわぁぁあああっ!!」
左腕を消し飛ばされ下がるレイフィス
「くっ・・・引かせてもらうよ!!」
するとレイフィスは次元の空間を生成して逃げていった
「たす・・かった?」
ローガスがこっちに歩いてくる
「君が・・・愁君、だね」
「・・・なんで俺の名前を?」
「それは簡単、君のお父さん、達也さんは中立のトップだからだよ」
・・・・え?
「親父・・・が?」
「あれ・・・聞いてなかったのか・・・」
するとローガスはしまったと言う顔をする
「とにかく君に話があるんだ、でもその体じゃ動けないな・・・運命」
【分かっている】
運命と呼ばれた神剣に治療されあっという間に怪我が治る
「・・・ありがとう」
「いや、それより君に話したいことがあるんだ」
「ええと・・・ローガスさん?」
「ローガスでいいよ」
笑って答える
「ならローガス、話ってのは・・・やっぱり・・・?」
「多分察していると思うけど破壊者の出現は予定外なんだ、カオスにとってもロウにとっても」
「・・・つまり?」
「今まで僕達カオスとロウは世界樹って木を護るために対立を続け、争ってきたでも破壊者は護るために戦うのではなく力を手に入れるために戦っているんだ」
「・・・」
「そこで・・だ、今回ばかりは流石にロウと手を組もうと思っているんだ、流石に奴等相手だと世界樹がやられかねない」
「俺に何をしろと・・・?」
「本題に入ろうか、君に頼みたいのは僕をミューギィに会わせてほしいんだ」
「なっ・・・」
これは予想外だった
「俺には何ともいえない・・・それに俺は中立だ、ロウとは関係がない」
「・・・あるんだよ、それが」
「・・・え?」
「君はある意味特別な存在なんだ、彼方のイメージ、ミューギィが初めて好意を抱いた少年、そして・・・中立のトップの息子と言う存在が」
確かにそうだ
よく考えれば・・・・俺はおかしな所が多すぎる
「だけど・・・俺はロウじゃない、それに俺だけの意見では・・・」
「構いませんわよ」
いきなりの声に声の主の方向を向く
「テム・・・?」
どこから出てきたのかテムがその場に立っていた
「今回ばかりは・・・世界樹を護らなければなりませんわ、彼女の所に案内します・・・愁さん、貴方もついてきて下さい」
「・・・いいのかい?」
ローガスがたずねる
「ここで暴れても仕方ありませんわ、それに・・・いえ、なんでもないです・・・」
愁の方を向いていった
「さぁ、いきますわよ」
テムがゲートを開いてその中に入っていった
―ロウの世界 最深部
どれくらい進んだのか
俺はテムに案内されて最深部に向かっていた
そして
「ここですわ」
ついたのは1つの扉の前だった
俺は唾をゴクリと飲み中に入った
そこは広い部屋だった
正直言うと・・・広すぎるくらいだ
俺が唖然としている
その時だった
ブォン!!
「・・っ!!」
急に斧が振り下ろされるがなんとかそれを受け止める
「いきなり・・・何なんだっ!!」
身構えるがそこに居たのは
「あんたが姉さんの選んだ人か・・・中々やるね」
「・・・誰?」
年は15,6くらいか、黒髪に精悍な顔付きの青年だ
「いきなりごめんなさい、姉さんが選んだ人がどれくらいの人かと思って・・・見た限りじゃ俺じゃ勝てないな」
そう言い斧を下ろす
「テム・・・誰だコイツ・・・?」
「ああ、ミューギィの弟のトークォですよ」
「ミューギィの弟?!」
驚いた、彼女だけでも驚くのに弟が居たなんて・・・
・・・まてよ?
いきなりのローガスの出現、すんなりと同意するテム、さっきから何か心配そうに見ているタキオスさん、してこのトークォって弟・・・
何かあるよな
「・・・テム、いい加減にしたらどうだ?」
「・・・?」
「俺をここに呼んだのは・・・何か理由があるんだろ」
その言葉に諦めた様にトークォが言った
「ええ、貴方を呼んだのは・・・姉さんを目覚めさせてもらうためです」
「ミューギィを・・・?」
「はい、姉さんは・・・宿命の力を受け入れられず・・・ある事故を期に目覚めなくなったんですよ」
ある事件とは・・・昔彼女が言っていた事故だろうか
「でも・・・姉さんは今まで使おうとしなかった力をアンタに使った」
「俺・・・に?」
どういうことだ?
彼女が力を俺に・・・
すると俺の中にあるイメージがわいた
「ま・・・さか・・・」
「・・・破壊者との最初の遭遇・・・本当はあの時貴方も死んでいたんですよ」
ドクン
「そんなっ・・・」
じゃあセリアの死はなんだったのか
この思いはなんなのか
「じゃあ・・・ミューギィは俺だけを生かしたのか・・・」
「いや、姉さんはもう一人の彼女も助けようと力を使った、でも・・・彼女の運命には宿命の力が効かなかった」
「・・・え?」
「理由は多分・・・達也さんが言っていた所有者と神剣の同時消滅が原因と考えられます」
話を聞く限りセリアにはありえない何かが起こったようなのだ
「・・・で、俺は何をすればいい・・・」
「姉さんの意識にコンタクトして・・・目を覚まさせてほしい」
「・・・俺がそんな事できるのか?」
「可能です」
俺は少し考えた
ミューギィは・・・いつも俺の事を心配してくれた
俺の為に力を使ってくれた・・・
そして―あの時好きだと言ってくれた
なら俺は
今度は俺が彼女を助けようと思った
「分かった・・・やるよ」
「・・・ありがとう」
トークォが言った
そして俺はミューギィの眠る部屋に案内された
―ミューギィの部屋
どうやらトークォの話だと俺一人でやらなければならないらしい
部屋に入ると部屋の中心に彼女の眠るカプセルのような物があった
「いくぞ、氷炎」
【うん・・・・いいよ】
俺は宿命からいくつか話しを聞かされ、意識を同調し始めた
―ミューギィの夢の中
そこは真っ白な世界だった
何もない
無だけが存在する世界
「ミューギィ」
彼女は少し前に座っていた
「え・・・愁?どうしてここに・・・?」
目を丸くして驚くミューギィ
「そうだな・・・話があってきた、とでも言っておこうかな」
彼女に歩み寄り隣に座る
「愁の話って・・・いい話じゃないよね」
「・・・ああ」
しばしの沈黙が流れる
「なぁ・・・ミューギィ、トークォから話聞いたけど・・・俺とセリアを助ける為に力を使ってくれたんだよな・・・」
「・・・うん」
「君は・・・力を受け入れるのが・・・怖いんだよな」
「・・・うん」
頷くだけである
「・・・どうしてだ?」
その言葉に少し顔を歪める
「私は・・・自分の力のせいで・・・大切な人、関係ない人・・・皆殺した・・・だから力が怖い・・・」
「・・・」
その目にあったのは涙だった、多分彼女の言っていた事故とはそのことだろう
「俺もさ・・・自分の力のせいで・・・彼女を護れなかった・・・挙句の果てに君に力を使わせてしまった・・・だから俺はそんな自分が嫌なんだ」
「それは違うっ!!それは私がっ・・・「いや、違う」・・・え?」
「あれは俺の過ちなんだ・・・君は悪くない、前にも言ったよな」
「・・・うん」
「だから俺は・・・そんな過去を背負っていく、過ちを背負っていく、そう決めた」
「愁は・・・強いんだね」
「ん?」
「どこまでも人のことを考えられる、私は人を傷つけるのが怖いから考えられない・・・」
ぎゅっと拳を強く握るミューギィ
「それは違うな、君は俺の事をずっと心配してくれていた、俺はそれで傷ついたか?」
「・・・・っ!!」
「君は・・・多くのものをもう背負っている、人のことを考えられる」
「でもっ・・・また私は・・・大切な人を殺してしまうっ!!」
彼女の目は既に涙で溢れていた
「ミューギィ」
ふと俺は
幼い彼女を抱きしめた
「えっ・・・」
「そう思う気持ちがあるなら・・・過ちを犯さないようにすればいい、今度は皆を護ればいいんだ、それに・・・過ちを犯しそうになったら・・・俺が止めてやる」
抱きしめる力を強くする
「愁っ・・・」
胸の中で彼女は泣いていた
まだ俺は・・・大切な人をもう一度作れないけど
ただこの子も護らなければならない人だと感じた
「ミューギィ・・・帰ろう、皆の場所に」
「・・・うん」
そして
光に包まれた
―ミューギィの部屋
ミューギィを連れ戻し、俺は部屋でため息をついた
「ふぅ・・・」
「愁」
「ん?」
不意にミューギィに話しかけられる
「―ありがとう」
「・・・どういたしまして」
彼女は意識を取り戻した
新たな想いを持って
彼女の手には
短剣の形をした宿命が握られていた
彼女は皆を護るために
力を受け入れたのだ
「皆待ってるな、行こう」
「・・・はい」
笑顔で答えた
彼女に迷いは無かった
そして目の前にいるこの青年が
特別な存在だと言う事を再認識した
―ロウの中枢
ミューギィは連れて戻ってくると皆はかなり驚いていた
トークォに限っては俺に感謝していた
そして
話は本題に入った
「つまり・・・破壊者から世界樹を護るためにロウとカオスで同盟を組む、そういうことですね」
「そうなるね」
ローガスが言った
「分かりました、協力します」
強くミューギィが言った
「それは良かった」
ローガスも安心して言った
そしてここに
同盟が結ばれた
同盟が結ばれてから数時間後、俺は元の世界に戻る準備を済ませて旅たつ所だった
「愁、気をつけろよ」
「分かってるよ、親父」
「・・・トップの事、黙ってて悪かった」
「いや、きにしてないよ」
笑顔で答えた
「そうか・・・そろそろだな、彼女も話したいみたいだし行って来たらどうだ?」
「・・・そうだな」
俺は準備を済ませて部屋を出た
向こうの世界に繋がるゲートの前に待っている人影があった
「ミューギィ」
俺に気がつくと彼女は少し寂しそうな顔をしていた
「行くんですね」
どこか寂しげに言った
「ああ、あいつ等も・・・護らないといけない」
少しの珍問が流れる
「・・・じゃあ、そろそろ行くな」
「愁」
「ん?」
「生きて、帰ってきてくださいね」
その言葉に心を打たれた
「分かってる、君も無茶するなよ」
くしゃりと頭を撫でると彼女はくすぐったそうな顔をした
そして俺は向こうの世界に戻った
愁が旅立った後に
「愁、・・・ありがとう」
風に青黒い髪が揺れていた
戦いは
激化していく
続く
あとがき
今回も始まりました、後書き!!
実を言えば本編よりこっちのほうが力を入れていたり・・・w
今回はマロリガン戦やらミューギィの復活やらもう色々長く書かせていただきました・・・ごめんなさい
次回は日常の話とヒロインルート、後死んだあの人の話が・・・おっとここからは言えないww
毎回長くなっておりますがこれからもよろしくお願いします
2007年1月中旬 蓮