「というわけでコッチには戦りあう意志はないから」
「今こちらのエターナルが消えたのは気のせいかしら」
「トウヤは非戦闘主義だし、ルーシェは彼の許可なしに戦ったりはしない。手癖が悪い部下を持つと大変ね?テムリオン」
両手を挙げて<真理>のエリアスは「ヤレヤレ」のジェスチャーをする
「……まあ構いませんわ。近頃エターナルになった新米ですし、戦力になるとは思ってませんでしたから」
「それで、不戦協定は?」
「いいですわ。唯一つ」
「何?」
「トウヤについてはこちらの好きにさせてもらいます。よろしいかしら?」
「駄目」
テムリオンの質問にエアリスは即答した
「何故ですの?彼以外の活動には干渉しないといってるのです。悪くない条件でしょう?」
「コッチの要求は“あらゆる活動に干渉しない”だったはずよ?何?生き過ぎて頭の回転悪くなった?」
ピクリ、とテムリオンの眉が引き攣る
「ならこのまま全面戦争でもしてみます?【 旋渦 】」
「あら好戦的。別に構わないわよ?結果が見えてる戦いだけど」
お互いの手に杖型の【 秩序 】とブーメラン型の【 旋渦 】を構える
そして―――
「そこまでです。両者神剣をお収め下さい」
黒白の翼 - Wings Black and White
1−5:神々の記憶
突如二人の前に一人の女性が現れる
白と黒のメイド服に身を包んだ銀髪銀眼のショートカットの女性
その両手には腰丈ほどのライフルを持っており、二つの銃口はそれぞれエリアスとテムリオンに向けられている
「何のつもり、アイリス」
ブーメランを手にしたままエリアスが言葉を投げかける
アイリスと呼ばれた女性は一つ礼をして答えた
「はい。トウヤ様より、もしエリアス様が交渉を決裂させようとしたら止めてくれ、と言われましたので」
「あいつ、私のこと信用してないの?」
「その証拠に今まさに戦闘を行いそうでしたが?」
「………反論なし」
そう言うとエリアスは【 旋渦 】を腰に収めた
それを見たアイリスは片方の銃口だけを下ろし、テムリオンに向き直る
「申し訳ありませんが、不戦協定を受諾していただけないでしょうか?」
「こちらの要求は?」
「構いません。トウヤ様の許可は下りています」
「さすが、<真理>の機械人形は仕事が速いこと」
「機械人形ではありません。メイドロボです」
そう言うとアイリスはもう片方の銃口を下ろした
「それでは、こちらも急いでいますので。失礼します」
「それじゃねー」
ダンッと地を蹴ると、<真理>の二人は駆け出した
少し離れるとエアリスはアイリスの方を向く
「いいの、あんな約束して?あんな協定じゃまずトウヤ襲われるわよ?」
「構いません。ルーシェ様より『神々の記憶』の発見確認の報を受けました。後は回収して帰還するだけです」
「あんたいい性格してるわね……トウヤの影響かしら」
「お褒めに預かり光栄です」
公園に白と黒、二つの光が落ちる
トウヤとアカツキだ
それを見たルーシェが手をブンブンと振る
「お疲れっす、お師匠!!」
「どうだ?『ロストレコード』は」
「はい、問題なしっす。リュインダム先輩の力はいらないっすね」
「そうか。エリアスは?」
「さっき連絡が付きました。アイリス先輩と一緒みたいっす」
「やっぱりあいつに交渉は無理か……」
ハア、と溜息をつく
すると隣にいたアカツキがオズオズと話し掛けた
「あのぉ、イマイチ状況が掴めないんですけど」
「ああ、ゴメンゴメン。仲間が来たら分かるから」
と言った瞬間、二つの光が降りてくる
「ごめん遅れた!」
「遅くなりました」
一人はポニー、一人はメイド服の女性
オーラの残光を残しながら三人に近付いていく
エリアスはアカツキを見ると訝しげな表情になった
「何その子?<真理>に入りたいとか?」
「い、いえ。そういうのじゃ……」
「チョッとした縁でな」
それからジロジロと見ていたが、「ま、いっか」と言ってエアリスは離れた
そして全員が一つのほうを向く
そこにはどこにでもあるような噴水があった
「それじゃ、始めるか」
そう言うと、トウヤは鞘から【 宵闇 】を抜刀する
そして―――
「シッ!!」
噴水の中央にあった像を縦に一文字、叩き斬る
真っ二つになった像からは、一つの小さな光が現れる
「あれは……?」
「我々は、『ロストレコード』と呼んでいます」
アカツキの疑問に隣に立っていたアイリスが答える
「<混沌>と<法>、この二つが結成される以前。否、エターナルなる存在が生まれる以前の記録があの中に眠っていると言われています」
「そんなものが……」
「あります。しかし、記憶の解放は全ての『ロストレコード』の回収が必要のようです。その証拠に現在回収した13個は全く記憶の解放が行えませんでした」
「それが<真理>の?」
「そう、目的です」
二人の会話が終了すると、トウヤは回収した『ロストレコード』を持って向き直った
「それじゃ、退散しよう。これ以上ここにいればテムリオンもだし、<混沌>も来るかもしれない」
「何したの?」
「チョッとな……」
苦笑いを一つして、トウヤはアカツキの方を向いた
「でだ」
「え……?」
「来ないか、コッチに」
そう言って手を差し出す
【 暁光 】は【 宵闇 】と仲は良いらしいし、それ以上に
(この娘は、優しすぎる……)
別に<法>が悪人揃いという訳ではない
しかし、その目的の根本は「神剣の帰化」
つまり世界の破壊である
この少女はそれをするには余りに優しすぎるではないか、とそう思ったのだ
しかしアカツキは首を横に振る
「ごめんなさい。でも、私にも戦う理由があるんです」
「……そうか」
分かった、とトウヤが言うと門を開いた
「それじゃ、今度会うとき敵でないことを祈る」
「はい、私もです」
そして光と共に四つの気配がこの世界から消えた
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
<後書き>
第一部終了です
辞書っぽい物も書いてみました
オリキャラ多数なのでこれを見ると一発で分かる…かも?
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