夜を月が照らすのは 神々が我等を見下ろすためだ
闇の中 目覚める我等の狂気を 静かに暴くためだ















黒白の翼 - Wings Black and White
1−4:闇を纏う














「遅い、遅いぞ【 暁光 】!!この程度か!!?」
「く、この!!」

振り上げられた蒼を纏う男の斧
それを受けようとアカツキは純白の盾を生み出す
が、弱すぎる
一撃を受けた盾は易々と砕け、そのままアカツキに振り下ろされた

「あうっ!!」

肩を掠めるに留まったが、打ち付けられた反動で華奢な体は吹き飛び、家屋の塀にぶつかる
一瞬息が詰まるがそれを無視
震える脚で空へ飛ぶ
破壊音と共にアカツキが今いた場所は粉々になっていた

【相性が悪すぎますね】
「はい、このままじゃ……」

【 暁光 】の声にアカツキが肯定を示す
あちらは接近戦重視のパワータイプ
こちらは遠距離、神剣魔法重視のサポートタイプだ
距離をとれば勝てないこともないが、そこは相手も分かっているようだ
こちらとの距離を離そうとせず、これでもかという位攻めてくる
こちらを見上げた男は、ニヤッと笑うと大きく飛び上がった
それはアカツキよりも遥かに、上

「な!?」
「跳んだままではいい的だぞ、【 暁光 】!!」


ズドンッ!!


強烈な爆砕音が響き渡る
咄嗟にシールドを張ったとはいえ、ほとんど受身も取れず地面に激突したアカツキは、体を起き上がらせる事が出来ない

「ふん、この程度か。戦乙女が聞いてあきれる」

頭上から声がする

「最後に覚えておけ。俺の名はギリオ。【 鉄壊 】の……ギリオだ!!」

風を切って【 鉄壊 】が迫る
蒼い光を纏った斧は、純白の天使を―――

「諦めるなよ」


ズガンッ!!


先程の爆砕音とは違う、固いもの同士がぶつかり合う音がする
アカツキが顔を上げると

「また会ったな」

漆黒の刀を手にした、青年が立っていた
男の掲げる左手からは、刀と同じ黒いオーラで出来た盾がギリオの斧を受け止めている

【お姉ちゃん、大丈夫!?】
【ええ、ありがとう宵闇。フフ、まさかあなたに助けられるなんて】

外部通話に切り替えた【 宵闇 】と【 暁光 】が会話を始めた
トウヤはアカツキを抱きかかえると地面を蹴って大きく後退する
そしてアカツキを電柱にもたれかけさせた

「大丈夫か?」
「あ、はっはい。どうして―――」
「どうして<真理>が出てくる。不戦協定は済んでいるはずだが?」

アカツキの代わりにギリオが続ける
それを聞くとトウヤは立ち上がって応えた

「ああ、確かに協定は済んでる。だからこれは俺の私闘だ」

【 宵闇 】の切っ先をギリオに向け、言い放つ

「女一人に大人げない奴だ。<混沌>の連中はみなこうなのか?」
「何?」
「自分より弱い者をいたぶって、自分が強いと満足したい奴ばかりなのかと言ってるんだ」

その言葉にギリオの顔が引き攣っていく
当然だろう、自分の事が弱いと言われているようなものなのだから

「この、小僧がぁ!!」

振り上げられた斧をトウヤは静かに見つめる
そしてそれを盾ではなく、刀そのもので受け止めた


ギャガン!!


凄まじい音を立ててあたりの建築物が衝撃で破壊される
しかし、【 宵闇 】はヒビ一つはいらず、斧を受け止めていた

「馬鹿な、そんな細身の神剣で…俺の【 鉄壊 】を……」

驚愕するギリオにトウヤは苦笑した

(そう言っても、俺もやってる事は同じか)
【トウヤはいいの】
(何故?)
【だって…相手がテムリオンでも、やっぱりトウヤは助けたでしょ?】

駄目だって言っても行きそうだもん、と言う【 宵闇 】にトウヤはもう一つ苦笑する
信じてくれているのか、俺を
ならそれに応えよう
何故なら俺たちは

「そうだな、行こう【 宵闇 】」
【我等に歯向かう者に、血と死の鉄槌を】

パートナーなのだから

力を込め、ギリオの斧を弾き飛ばす
敵は一人、護るは一人、果たす力は我が御手に

「祈れ、せめて痛みなく消え行く事を」

そして【 宵闇 】にマナを通すと、トウヤは静かに刀を振り下ろした
黒塗りの刀身をギリオは展開したオーラの盾で受けようとする
しかし

「何!?」
「脆いな。せめてタキオス程でないと、俺の剣は受けられないぞ?」

オーラを纏う【 宵闇 】が一撃で【 鉄壊 】の盾を打ち砕く
防御は無意味、そう判断したギリオが斧を振りかぶる
それに反応したトウヤはもう一度刀を掲げた


ドンッ!!


地面を揺らすほどの破砕音
しかしまたもトウヤの刀は振り下ろされた【 鉄壊 】を受け止める
しかしそれもギリオの作戦のうちだ

(俺の斧を受けている間、この男は無防備!!)

自分の力でなら素手でもこの男に十分なダメージを与えられる
そう考えたギリオは手の空いた左腕を掲げる
そして土煙に紛れたトウヤに振りかぶろうとした
―――が、ギリオはトウヤに集う力に背筋を凍らせる
晴れた土煙から姿を現したトウヤの左手には黒いオーラが集まっているのだ

「当たると痛いぞ、受けるか避けるかハッキリしろよ馬鹿野郎」

衝撃!!

腹部から来る強烈な打撃に、くの字になったギリオが吹き飛ぶ
一瞬意識が飛ぶが、それを更に背中から来る衝撃が覚まさせる
空に浮かんでいる、そう感じた瞬間月光を背にして一人の男が目の前に現れた

「最後に覚えておけ。俺はトウヤ……【 宵闇 】のトウヤだ!!」

そう言ってトウヤは技を放った


「“十六夜月下”」


刹那、ギリオの目に十六の残光が写る
避ける、無理だ
受ける、これも無駄だ
そして彼は理解した
トウヤがこの技を放った瞬間、自分の死はもう確定していたのだと
痛い、そう思うよりも早く、自分の体が消えていく
こちらを見つめる青年の顔を見ながら、ギリオの意識は落ちていった







「凄い……」

まさに一瞬
彼が刀を振りかぶったと思った瞬間には、ギリオの体はバラバラになっていた
これが、【 宵闇 】の力……

【いえ、違います】
「え?」

否定の声にアカツキが反応する

「どういう事ですか?」
【確かにあの破壊能力、及び防御能力はあの子の大きな特徴です。ですがさっき放ったあの“十六夜月下”はあの子の技ではありません】

つまりそれは、トウヤ自身の技だということを意味する
それを聞くと改めてトウヤの実力に息を呑んだ
地面に片足で着地したトウヤは、【 宵闇 】を鞘に収めるとアカツキに近付いていく

「大丈夫か?必要なら仲間に治療してもらうが」
「い、いえ。大丈夫です。魔法は【 暁光 】の専門分野ですから」
「そうか」

トウヤが見つめる中、アカツキは癒しの祝詞を唱える

「《ヒール》」

アカツキの周りに円陣が生まれ、そこから白い光が溢れ出す
その光が消える頃には、所々についていた傷は完全に消えていた

「ありがとうございました。その…助けていただいて」
「いいよ、俺は【 宵闇 】に頼まれて来ただけだし」
「そうなんですか?」
【勘違いしないでね。あなたじゃなくて、お姉ちゃんを助けるためだから】

二人の会話に【 宵闇 】が割ってはいる

「別に恥ずかしがらなくても」
【恥ずかしがってなんかない!】
「だって保険かけてるんだから、【 暁光 】は死んだりしないだろ?」
【そ、それは……イジワル】
「心外だ」

苦笑いを一つすると、トウヤはアカツキに言葉を投げかけた

「さて、それじゃ行くけど。付いて来ないか?」
「え?」
「いいもの見せてやる」

-Powered by HTML DWARF-