「フォルト」
地球と酷似したそう呼ばれる世界
何もない空に光が迸ったかと思うと、そこから三つの光が地面へと落ちていく

その光が収束すると、中から一人の青年と、二人の少女が現れた

「またココぉ?マナ薄いのよねー」

一人は腰に二つのブーメランを差した、エメラルドグリーンの髪をポニーテールにした少女

「まあそう言うな。今回は結構自信あるってリゼも言ってたから」

一人は黒いコートに身を包んだ青年

「そうっすよ。頑張りましょうエリアス先輩!」

そしてもう一人は黒髪をショートカットにした少女
拳には手甲がはめられており、頭には猫のような耳が生えている

「ルーシェの言うとおりだ。それじゃ、エリアスは<法>との停戦協定を頼む。俺が行くとまず話にならないから」
「了解。トウヤじゃまず戦闘になるもんね」
「ルーシェは俺と、『神々の記憶ロストレコード』の探索を」
「了解っす!!頑張りましょう、お師匠!」
「それじゃ、散!!」














黒白の翼 - Wings Black and White
1−3:鉄拳剛姫













黄色と黒のオーラを纏った二人は高速で夜の闇を駆けて行く

「お師匠と仕事するのは久しぶりっすね」
「そうだなあ…ニ周期ぶりだったか?」
「そうっすねー。この前の仕事から大分あったからそれぐらいっすね」

そこまで言うと、トウヤはスピードを落とし、電柱の上でストップした

「確かこのあたりの筈なんだが……」

キョロキョロと辺りを見回す
神々の記憶ロストレコード』には明確な形はない
剣であったり、本であったり、あるいは世界そのものであったりもするのだ
【 宵闇 】の力で広域まで索敵範囲を広げてみたとき、トウヤはある異変に気付いた

「お師匠」
「ああ」

近付いてきてる
別の、エターナルが……
刀に手を掛けたとき、一つの影が地面に降り立った

「おんやぁ…?<混沌>じゃねえのかよ」

目つきの悪い双剣を持った男がトウヤとルーシェを見て呟く

「ああ、<真理>だ。<混沌>とは停戦協定は済んだ。<法>とは今交渉中だ。だから引け」
「おいおい、そんなつまんねぇ事言うなよ。折角会ったんだしよぉ、楽しくいこうぜ?」

そう言うと男は群青色のオーラを生み出し始めた

「こいつ―――」
「お師匠。ここはアタシが」

【 宵闇 】を抜こうとした前にルーシェが立つ
その身にはもうオーラを纏いだしていた

「……分かった。無理はするな」
「大丈夫っすよ!これでもアタシ、前より強くなってるんすから」

ニコッと笑うルーシェに一つ頷くと、トウヤは地を蹴って走り出した
それを一瞥し、男は双剣を抜く

「そんじゃ、俺が勝ったら楽しませてもらうぜぇ?お嬢ちゃん」
「いいっすよ?」

下卑た笑みを浮かべる男にルーシェは即答した
少々面食らった男にルーシェは続けてこたえる

「ただし、アタシに勝てたら・ですけど」

広げた拳を、体の真ん中でぶつけ合った
手甲からは火花が迸る
そしてルーシェは構えをとった

「おもしれぇ…俺はロウエターナル、【 蹂躙 】のディオン!!楽しくいこうぜ!!」
「トゥルーエターナル、【 鏡天 】のルーシェっす!御胸お借りします!!」







【よかったの?あの娘一人にして】
「ん?ああ」

夜を駆けるトウヤに【 宵闇 】が問いかける
しかしそれにトウヤは笑って応えた

「ルーシェの成長力は半端じゃない。本人が言ってたんだ、何も心配はないよ」
【でも―――】
「それに」

反論しようとする【 宵闇 】の声をトウヤが遮った

「あいつは自分が大して強くないと思ってるみたいだけど、強いよ。あいつは。少なくとも俺が思う限りは」







「剛拳・一閃!!」

黄色の光を帯びた拳が、ディオンの頬を掠める
突き出した左拳を引きつつ今度は右
甲高い金属音と共に手甲型の【 鏡天 】と双剣型の【 蹂躙 】がぶつかり合う

「―――チッ!!」

舌打ちをしながらディオンは回避行動にでた
ダンッ!!と地面を蹴ると、その瞬間には彼がいた所には小さなクレーターができる

(ったく、なんつーパワーだよ!まともに喰らったらヤベエぞ)
「遅いっす!!」

打ち付けた拳はそのまま、体を捻って空中のディオンに蹴りを放つ
それをオーラの盾で防ぐと大きくバックステップし、距離をとった

「どいたんすか?さっきから防いでばっかっすよ?」
(うるせえな。防ぐしか出来ねえんだよ)

その場で軽く飛びながら構えるルーシェにディオンは心の中で悪態をつく
リーチとスピードはほぼ同等
しかし、彼女の方には全く隙が出来ない
流れるような拳と蹴りの嵐に、ただただ防御をとるしかないのだ

(くっそ、得意の接近戦でココまで押されるなんてなぁ……)

だがココまでの戦いで分かった事もある
この女は神剣魔法を使わないのだ、一回も
罠ということもありえるが、今までの戦闘スタイルから考えるとその可能性は低い
ならば取る手段は一つ―――

「マナよ、永遠神剣の主―――」

遠距離から叩き潰すのみ!!

ディオンが詠唱に入ったのを見て、ルーシェは【 鏡天 】オーラを集中させ、駆け出す
その表情には焦りの色が見える

(ビンゴ!!)

やはり彼女には神剣魔法に対する耐性がない
そう判断したディオンは危険覚悟で詠唱を続行した
ルーシェの拳が届く前に、ディオンの足元に魔方陣が浮かび上がる

「終わりだ、お嬢ちゃん!!」

そう言うとディオンは力を解放した



―――筈だった

「なに!?」

ルーシェの向かって撃ち出された筈の群青の光が、上空へと伸びている
拳だ
ルーシェが突き出した拳が、神剣魔法を上空に弾き上げたのだ

「あなたはアタシの【 鏡天 】の能力を勘違いしてるっす」

弾き飛ばした拳を大きく振りかぶり、体を捻りこむ
大きく、大きく。敵に背を見せるように

「【 鏡天 】の能力は反鏡。同質以上のマナを込めることで、あらゆる神剣魔法を弾く事が出来るんっす」

そう言うと捻った体を独楽のように回転させた

(しまった!!)

咄嗟に回避しようとする
その間僅か0.3秒
しかしそれでも、遅すぎた

「スピニングブローーーォォォ!!!」

ドゴンッ!!と腹に響くような打撃音
強力な力の塊を腹に受けたディオンは、家屋を数件破壊し、道端に止まっていた車を巻き込み、100mほど吹き飛ばされた後ようやく止まった
その体は既に崩壊が始まっている

「アタシの体をどうにかしていいのは、少なくともアタシより強い人だけっす。また出なおしてきてください」

今は誰もいない先を見つめ、一つ礼をするとルーシェはトウヤの元へと駆け出した







「やりすぎだ……」

轟音の方を見ながら、トウヤが呟く
先程の男の神剣の気配が消え、代わりに【 鏡天 】の気配がこちらに近付いてくる

「あっちは大丈夫だな。それじゃ―――」
【トウヤ!!】

再び駆け出そうとしたトウヤに【 宵闇 】が叫んだ
その声色からは明らかな焦燥が見て取れる

「どうした?」
【今すぐ四時の方向に向かって!早く!!】
「何だ、どうしたんだ?」
【いいから!早くしないと―――】

そう言うと【 宵闇 】は言葉を紡いだ

【早くしないと、お姉ちゃんが死んじゃう!!】


-Powered by HTML DWARF-