「何でですの!?何であの男があそこに!!?」

法王の間に幼い声が響き渡る
白いローブに身を包んだこの世界の主・【 秩序 】のテムリオンだ

「あわ〜。苛立ってますねぇ」
「ああ、今は近付かんほうがいい」

表情には出ていないが額に冷汗を浮かべる【 無我 】のタキオスに【 暁光 】のアカツキが苦笑する

「そんなに嫌いなんですか?トウヤさんのこと」
「昔、奴がエターナルになる前に接触していてな。その時に色々あったそうだ」
「へぇ…色々と……」

普段冷静なだけに、あの怒りっぷり
一体何したんだろう……

(そんな失礼な人ではないと思うんですが……)

「それより、今日は行かんのか?」

そう言われてハッとする

「そ、そうでした。それじゃあ、私はこれで」

甲高い声をバックにアカツキは門を開いた
帰還すると必ず帰ってくる場所
大切な人がいる場所に

門をくぐると、アカツキは微笑を浮かべ言った

「ただいま……」














黒白の翼 - Wings Black and White
1−2:ホントに自分のこと「僕」って言う女の子がいるなら一度でいいから会ってみたい













「おかえり〜」

真理トゥルー>本部「千里の間」
<法>との戦闘後、こちらに帰還したトウヤにソファーに座っていた二人の少女の内の一人が言葉をかける
<真理>創設者にして、永遠神剣第一位【 千里 】を持つリゼリルである

「お疲れ様。大変だったね〜」
「見てたんですか?」
「うん、【 千里 】使って」

彼女の神剣は全世界を見ることが出来る
今はここに残り、自分達の目的のためにその力を使っているのだ
まあ、時々こうやって仲間たちの行動を見ていたりもするわけだが

「エリアスは?」
「帰るなり『疲れたから寝る。報告よろしく』だそうです」
「ハズレだったんだよね?」
「はい」

ごめんねぇ、というリゼリルからカップをもらうと、トウヤは静かに腰を下ろした

「まあそれはいいんですが…何でユキナさんがココに?」
「いやねぇ、邪魔者扱いしないでよ」

そう言う問題じゃない、とトウヤがつっこむ
それもその筈
この人。ユキナは<混沌>の一員
ぴこぴこハンマー型の第二位神剣【 縁思えにし 】をもつ、れっきとしたエターナルである

「リゼちゃんから美味しいクッキーがあるから、一緒にどう?って誘われたんで来たのよ」
「はあ……もういいです」

ちなみに似たような理由でユキナは何度もココを出入りしていた
リゼとはリゼリルのニックネームである

「まあ、ユキナさんなら何もしないだろうから、いいんですけどね」

これはトウヤの本心である

「流っ石トウヤ君!分かってるじゃない!!」
「傷にひびくから止めて下さい」

バンバンと肩を叩くユキナをトウヤはやんわりと止めた
想像以上に傷が深かったようで、叩いた部分から血が滲み出す

「あらら、ゴメンゴメン。回復魔法かけようか?」
「いえ、【 宵闇 】のこと信じてますから」
「あらあら、熱々ねぇ」

ちなみに【 宵闇 】の精神は今別の場所にいる
この会話を聞いていたら顔を赤くして(比喩)怒るだろう
それを見ていたリゼリルが俯く

「ごめんね。僕も戦列に出てれば―――」
「それは言わない約束だろ」

口調が変わる
さっきまでは上司と部下
今は対等な友だ

「リゼは『神々の記憶ロストレコード』を探す。俺はそれを回収に行く。それでいいだろ?」

そう言うとトウヤはクシャッとリゼリルの長い髪を撫でた
リゼリルのほうは顔を真っ赤にして俯いたままだ

「あらあら、モテるわねえ」
「何言ってんですか」

ニヤニヤと笑うユキナにまたもつっこむ
一息つき、リゼリルがコホンと一つ咳払いをすると一つの紙を取り出した

「次のか?」
「ううん、世界は同じなんだ」
「もう一回か…それはいいんだけど、テムリオンがいるのはなあ」
「それは……もう一人メンバー増やすよ」

仕方ないな、と一言漏らすとトウヤは立ち上がった

「行くの?」
「はい。チョッと休みたいんで。ユキナさんも早く帰ってくださいよ?」
「はいは〜い」







「ふう」

自室に帰り、ベットに倒れこむ
傷はさっき話している間に大分よくなったようだ

【ただいま】
「お、帰ってきたか」

「精神図書」から帰ってきた【 宵闇 】にトウヤが返事をする
「精神図書」とは思念だけを飛ばす特殊な空間であり、神剣、エターナル関係なく入る事が出来る図書館である

「研究熱心だな」
【だって…私がもっと色々知ってれば……トウヤが怪我しなくて済むでしょ?】
「………」

【 宵闇 】の声にトウヤが目を見開く

【な、何!?】
「いや、何でもないよ。ありがとう」
【か、勘違いしないでよね!?私の契約者に死なれたら困るからってだけだからね!!】
「はいはい」

そう言って一つ苦笑

「それじゃ、俺は一旦寝る。リゼから連絡があったら起こしてくれ」
【……了解】

戦闘による疲労が大きかったのか、すぐにトウヤは眠りに付いた
トウヤの寝息だけが部屋に聞こえる

【……おやすみ】



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