prologue : Side White Wing














月すらその姿を隠す夜
漆黒の闇を翔ける二つの光が、軌跡を残しながらぶつかり合う
白光の輝きが一瞬天にまで伸びたかと思うと、影の一つは電柱に、もう片方は家屋の屋根へと降り立った

「来ないのか?」
「貴方が剣を引くのなら」

そう言う少女に男は一つ苦笑を漏らす

「そう言って、我が同胞の中で剣を収めた者はいたか?」

今度は少女が苦笑を漏らす番だった
カチャリッ、と油断無く剣を構え応える

「いえ」
「引けぬさ。お前が俺の敵である限りは」

男から溢れ出す力の放流に、空気が軋みを上げる

「こちらに来る気は?」
「ありません。少なくとも、今は」
「残念だ。首を縦に振ってくれれば、争わずに済んだものを」

男が纏う蒼色と、少女の純白のオーラが拮抗しつつ攻めぎあう
交渉は決裂した
その手に握るは互いを壊す、刃のみ

「いくぞ……【 暁光ぎょうこう 】―――!!」

均衡は、蒼が揺らぐと共に破れた




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