それはある日のこと、俺が姫花と出会ってから数日。
姫花と俺は(主に姫花が一方的に)喋りながら昼飯を食っていた。

「おおー。美味しい!これシン君が作ったの!?」
そのあだ名は固定なのか…

「ああ、金は貰ってるがバンバン使うのも悪いしな」
「へぇ〜、ねえねえ、私にも作ってきて!!」
「いやだ」
「えぇ〜〜〜」
途端に涙ぐんで上目づかいで見てくる。ク、反則だぞ…

「お〜ね〜が〜い〜」
「作ってやれよ」「可哀想だよ」「クソ、俺たちのヒメちゃんを!」「神凪がやらないなら俺が!!」
前には姫花、周りからは何故か非難の目、まさに四面楚歌だ。
なんで俺がこんな責められねばならないのだ

「仕方ねえなあ…」
「ホント!?」
「つーか、そう言わねえと俺は多分生きて帰れない感じだしな」
「いやった「神凪 真夜はどこだ!!」ふぇ?」
飛び上がりかけた瞬間勢いよくドアが開けられる。おかげで姫花は中腰で止まってしまった。

…また厄介ごとだな、これは













PAST〜outside stories〜
1.桜の乱













「なぜ貴様がここに呼ばれたかは分かるな?」
いや全く。いきなり校庭に呼び出され目の前には野郎の群れ。これから何を分かれと?

「貴様、近頃ヒメ様と仲がいいみたいだな」
姫様?ああ、あの暴走特急のことか

「しかもこの前は仲良く手を繋いで歩いていたらしいではないか」
初めて会ったときか。あれは無理矢理引っ張られていただけなんだが。

「ゲームセンターで遊び回り」
挑戦者をばったばった薙ぎ倒していくあいつを後ろから見てただけだけどな

「ペットショップで子犬とじゃれ合い」
あいつが見てたのはウーパールーパーだけどな

「あまつさえ一緒に喫茶店でお茶まで!!」
2200円と400円という圧倒的金額差にもかかわらず割り勘させられたな

「そのような所行が許されようか!!」
まああいつは一発ぐらい張り倒してやってもバチは当たらんと思うが

「それで、俺にどうしろと?」
「ヒメ様に近づくな」
んな無茶な。ほっといても勝手について来るんだぞ、あいつ。
しかし、そんな事を言っても聞き入れそうに無い空気が流れている。

「嫌だっつったら?」
「言えるのか?」
周りの男共が殺気立つ。数は…数えたくもない

「我ら、“ヒメ様ファンクラブ”でもって、貴様を叩き潰す!!!」
そう言うや否や周囲の野郎の大群が押し寄せてきた。
俺は素早く近くの会員とおぼしき男を捕まえ、オトリにして逃げ出した。

「ま、まてまて!俺だよ山崎だってギャーーー!!!」
すまん山崎君、骨は拾ってやろう。





教室に戻ると姫花とその隣の女子が窓から校庭を眺めていた。
「うわ〜、これはさすがのシン君も…」
「……、ご愁傷様です」
「え!死んだの?死んじゃったの!?」
「もしかしたら化けて出るかも」
「ど、どうしよう今晩眠れないよぅ…」
「誰が死んだって?」
俺の声に恐る恐る振り返る。

「…キャーー!!ごめんなさいごめんなさい!お願いだから成仏してーーー!!!」
「勝手に殺すな」
慌てふためく姫花をよそにもう一人の少女が近寄ってくる。
長い銀髪に青い瞳が特徴的で、メガネをかけている

「……教会?」
「いや、蘇生もしてもらってないから」



「沢渡 静音しおん。よろしく」
「神凪 真夜だ」
「知ってる。クラスメート」
さいですか。

校庭での大乱闘(というかリンチ)は生活指導の森下先生(45歳 妻子もち)の活躍で幕を閉じた。
つーかあの人異様に強くないか?

「じゃあシン君は身代わりを置いて逃げてきたんだ」
足を見てようやく生者と認識してくれた姫花が聞いてくる。

「ああ、名前は確か…」
「山崎君、会員bS5」
俺が思い出す前に沢渡が素早く答えた

「すごーい!見えてたの、シオリン?」
静音だからシオリンか。もうちょっとヒネれよな…

「うん」
「メガネなのによく見えたな」
「これは伊達」
何でつけてんだ?
「メガネっ娘萌えにはたまらない」
なんだそりゃ…

「まあでも、着けてない方がいいと思うぞ?」
そんなもん面倒なだけだろうと思うのだが。 すると沢渡は俺の顔をジーっと見た後

「分かった」
と言って外してしまった。
「いや、いいんだぞ別に」
「これでいい」
まあ本人が言うならそれでいいが

「ム〜〜〜〜」
「な、何だよ急に」
「別に!何でもない!!」
そう言うと姫花はソッポを向いてしまった。何怒ってんだ?





「おい」
「……」

「おーい」
「………」
それからずっとこんな感じだ。会った時と立場逆転だな

「何だってんだ…」
「ドンカン」
隣の沢渡がつっこむ。んなこと言われても女心と秋の空は俺の専門外だ

「何とかならないのか、沢渡」
「静音でいい」
「…何とかならないのか静音、お前あいつの親友なんだろ?」
そう言うと静音は少し考えた後

「デラックスジャンボパフェ」
とボソッともらした。まさか…

「真夜が奢ってくれるって」
「お、お前!」
他にあるの?という顔で見てくる。実際効果があったようで姫花の足は止まっていた。

「……本当?」
あれをか…正直あれを奢らされるのはキツイが他に手が思いつかないのも事実だ。

「…ハア、分かった」
「やった!」
軽くジャンプした後こちらに駆け寄ってくる。

「現金な奴だな…」
「えへへ」
そして気付いた、こいつが笑顔なだけでひどく安心している自分がいることに

「よーし、それじゃしゅっぱ〜つ!!」
「出発」
「分かった、分かったから引っ張るな」
歩む足は、なんだか少し軽かった











<後書き>
書いてしまった。しかし後悔はしてない(ぇー
しかも新キャラまで登場です。まあ静音(読みづらい?)は「夏」には出すつもりでしたから、いいっちゃいいんですが。
「桜の乱」は設定のみだったんですが、もったいないので書いてみました。
ここからはキャラ紹介

沢渡 静音(さわたり しおん)

hair:silver
eye:blue

真夜たちのクラスメートで姫花の親友。
肩まである銀髪のストレートの髪でメガネは気分で着け外し。
対極な存在である姫花とは何故か仲がよく一年の頃からの付き合いらしい。
どことなく不思議な雰囲気を漂わせているが、スタイル抜群なうえ学年主席。姫花と並ぶ校内3大美女の一人と言われ、ファンクラブもある。
やはり真夜の気苦労は絶えない






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