真の夜が 砂漠の空に舞い降りる
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31.each fight each thought
ヨーティアが作り出した抗マナ発生装置。
それによって遂にマナ障壁は解除された。
そこで悠人の取った作戦は、デオドガンを制圧し、資源の供給をストップ。
更に部隊を二つに分け、北の街道にあるニーハスと、まん真ん中のミレーユを落とすというものだった。
両サイドに敵の目を集中させ、主力の第一詰所のメンバーと悠人でミレーユを潰すというのである。
デオドガンにて。。。
「行くわよヒミカ!!」
「ええ、任せて!!」
セリアとヒミカが【熱病】と【赤光】を共鳴させ、【熱病】が焔色のマナを帯びる。
背中のハイロゥをめい一杯広げ、最高速で加速。
マロリガン稲妻部隊に殺到した。
「「“ディスラプション・ノヴァ”!!!」」
斬戟の瞬間、堰を切ったように赤のマナが爆発し、誘爆する。
マナの欠如を助けるためネリーが唱えた《サイレントフィールド》が作用し、その爆発は半径五メートルまでにも及んだ。
「この、舐めた真似を!!《エクスプロ―――」
「いつも華麗に!!」
「いつもくーるに〜」
対抗し神剣魔法を行使しようとするレッドスピリットに対し、ネリーとシアーが神剣魔法を発動させる。
「「《アブソリュートゼロ》!!」」
砂漠の中に現れる氷によって周囲のスピリットたち全ての神剣魔法がキャンセルされる。
すかさずファーレーンが風を纏い斬り込んだ。
【月光】には淡い緑色のマナ。
「力が溢れてくるんです。ニムが、力を貸してくれるから!!」
抜刀から斬戟、その一太刀一太刀から真空波が発生し、次々とスピリットたちが切り伏せられていく。
「「“落葉の太刀”―――!!!」」
声と共に一層強い鎌鼬が舞い上がり、周囲のスピリットを切り裂いた。
息を吐き、抜刀した【月光】を収めながら後退してニムントールの隣へと戻る。
「メンドウ」
「駄目ですよニム、みんなも頑張っているのですから。それにシンヤ様が帰ってきたとき、恥ずかしくないような戦況にしなければいけませんから」
「……ニムはいいけど、シンヤが帰ってきたとき負けてたりしたらムカツクかも」
そう言ってもう一度【曙光】を握り直す。
その時だ、一際大きな真剣な気配が近付いてきたのは。
その手には十字槍、緑色の髪を三つ網に結わえた少女が、威圧感を持って歩いてくる。
前に出たセリアが【熱病】を構えた。
「稲妻部隊、永遠神剣第六位【迅雷】の主。【翠緑の稲妻】、クォーリン・グリーンスピリット。隊長の命によりあなたたちを排除しに来ました」
その名に反応し、ラキオスのスピリットたちは身構える。
【翠緑の稲妻】。
【蒼い牙】【漆黒の翼】と並ぶ、三妖精の一角を担う存在だ。
「悪いけど、負けてあげられないの。何時まで経っても帰ってこないバカを待ってるから」
そう言うとセリアは理性が切れる限界寸前まで【熱病】の力を解放させる。
剣は我と共にあり、我は剣と共にある。
それを見たクォーリンは、微笑んで【迅雷】を構えた。
「あなたと戦えば、光陰様の言っていた“戦う理由”も分かるでしょうか?」
「知らないわよ、ハイロゥ!!」
白い翼が、一層強く輝いた。
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同刻、ニーハスにて。。。
「殲滅します、《イグニッション》!!」
「“星火燎原の太刀”!!」
赤いマナが膨れ上がり、炎が殺意となって爆発する。
その中を縫うように駆けるヘリオンは、黒のマナを纏った連撃を放つ。
後ろに控えるハリオンは、戦況を見つめながら回復に専念。
こちら側は敵戦力も少ないので、三人でも十分に渡り合えるようだ。
「敵、捕捉。一気に行きます。」
「私も〜お手伝いしますよ〜」
緑のマナが【消沈】の力を増大させ、膨れ上がる。
「「《ブレイク・フレア》(〜)!!」」
所々に緑を帯びた大火が、敵を飲み込んでいく。
それを呆然としながら、ヘリオンは見て思っていた。
(わ、私がいなくても大丈夫だったんじゃぁ……)
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ミレーユ。。。
「ハアァァ――――!!!!」
吼えるように漆黒のハイロゥを羽ばたかせ、アセリアが単身稲妻部隊へと突っ込む。
そのまま【存在】を振り回し、周囲のスピリットを薙ぎ払った。
慌てたように悠人がアセリアの元へ走る。
「くそ、一人で突っ込むなアセリア!!エスペリア、サポート頼む!」
「は、はい!ウルカ―――」
「ご安心ください。アセリア殿とユート殿は、手前が護ります。」
「オルファにも任せて!!」
白のハイロゥを展開してウルカは飛び出し、オルファリルは【理念】を手にし詠唱を開始した。
それを見ながらエスペリアは微笑む。
大丈夫、皆心も力も強くなった。
「大地に満ちる活力よ、癒しの風となれ―――」
そして自分の仕事をするために、エスペリアは癒しの言霊を唱えだした。
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「はあ、はあ、はあ………」
息を切らしながら悠人は一人砂漠を駆ける。
ミレーユ攻略はまだだ、だがもう時間が無い。
クェド・ギンがマロリガンのエーテル施設を暴走させ始めたのだと、ヨーティアから【理想】を通して連絡があったのだ。
あれだけの大国を治めるエーテル施設、それがイースペリアのようにマナ消失が起これば、その破壊規模は前者の比にならない。
「何で、そんなことを……!!」
思いは違えど、その先にあったものは同じであったはずだ。
なぜ今破壊を選ぼうとするというのか。
苛立ちと焦りと憤怒がごちゃ混ぜになって頭の中を占める。
させない、させるか、させてたまるか!!
「来たか、悠人―――」
だから今目の前に立ってるバカも、殴って目を覚まさせなくてはならない。
【求め】から溢れるように頭の中に入ってくる憎悪と殺意を無理矢理押し込めて、光陰を睨んだ。
「どいてくれ光陰。俺は、行かなきゃいけないんだ」
「……それが勇者の進む道だからか。だがな悠人、お前にはここを通ってもらっちゃ困るんだよ」
【因果】の切っ先を悠人に突きつけながら、光陰は続ける。
「お前に護りたいものがあるように、俺には俺の護るものってのがある。同じならよかっただろうが、生憎お前と俺の求めは違うんだ」
「だからって、何で戦うんだよ!?それしか道が無いなんて言うんじゃないだろうな!!?」
認めたくなかった。
何時も余裕たっぷりで、自分より大人で、どこか憧れてさえいた存在が、たった一つの道しか選べない事に。
お前はそんな奴じゃないだろうと、心が叫ぶ。
しかし、光陰は自嘲するように笑うと、萌黄色のオーラを展開した。
「俺は今日子を護るために戦う。それがあいつの望まない道だとしても、その所為で俺が呪われようと構わない。あいつが生きてさえくれれば、それでいい」
「光…陰……」
「それにお前とは一度全力で戦ってみたかったんだ。たのむ、俺のために、今日子のために死んでくれ」
違う、そうじゃない。
分かってるんだろ、自分が間違ってるなんてこと。
「お前」が「俺」に止めてもらって欲しいんじゃないのか?
意識を集中させ、オーラを展開する。
止める、止めてみせる。
それが俺の“求め”なのだから、強く思えば、心から願えば、きっと大丈夫だ。
「いくぞ………!!」
「こい!!」
白と萌黄色のオーラが、交じり合―――
ドンッ!!!
「なっ!?」
「これは!!?」
突如二人の真ん中に立ち上る光。
それを見た悠人と光陰は、それぞれ一度後退する。
砂塵を巻き上げるそれは、少しずつその光を失っていった。
光の集束と共に、その中から一人の人物が輪郭を現していく。
それは、黒髪で金の瞳を持つ………
「真…夜……?」
「よう」
神凪・真夜だった。
<後書き>
第三十一話「それぞれの戦い、それぞれの想い」でした。
真夜、ファンタズマゴリアに無事(?)生還です。
三章は、意外と早く終わりそう。というか二章の話が長すぎた(汗
話がぶつ切りなのは使用なのであしからず。
落葉の太刀
風の守護により速さを増加させた事により、瞬時に己の間合いに入り込むことが出来る上高速で出される居合いと共に鎌鼬を作り出す事によって見える太刀、見えぬ太刀が無数に襲い掛かるアタックスキルです。
別名リープ・スラッシュとも呼ばれています。
ブレイク・フレア
緑のマナで活性化した炎で、敵に攻撃する神剣魔法。
単純に威力を増大させた物ですが、それ故に魔法能力に長けた者同士が使えば、その威力は凄まじいものとなります。
エスペリアとオルファでやれば、それはもう凄い事に……
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