「ここが正念場だ!!」

周りにいる皆に向けて叫ぶ。
帝国と協力したサルドバルトとの戦闘が開始し、間もなくミスル平原へ入ろうとしていた。

「敵は必ず、自分たちに有利な地形で戦いを行うはずだ。いいか、殺されるな、ぶち殺せ!!個々の能力ならお前等の方が上だ!!」

一息

「それからネリーとシアー。この前やってた“です・ぶろっさむ”って技。あれは禁止な」
「え〜〜……」
「何でーー!?」
「お前等なあ…手ぇ掴んでグルグル回るのは共鳴剣シンクロ・アビリティじゃねえから……それにこの前の訓練で俺にジャンプして避けられた上、ヒミカとヘリオン巻き込んで突っ込んでいってただろうが。」

溜息をついて再び皆を見る。

「共鳴剣の使えるやつは出来るだけ離れるな。それと、あれは反動リバウンドがあるから、確実に相手を仕留められるときだけにしておけ。以上、全員生きて帰るぞ!!」

















Intruder
19.reason to fight against 3^disastrous conflagration^

















【…右から来るよ】
「了解!!」

【月詠】の声に応え、右を向き詠唱に入る。
そして、敵が草むらから現れると同時に、放った。

「―――闇を切り裂く光となりて、彼の者に滅びを与えたまえ……《夜天閃月》!!」

月光色の巨大なオーラの斬戟が、一気に複数のスピリットを切り裂く。

「うわー、シンヤ様スッゴイねー」
「ネリーもぼさっとしてるな。どんどん来るぞ!」
「分かってるよー!」

現在の編成は俺、ネリー、ナナルゥの三人。
火力重視の重厚編成だといえる、ナナルゥと俺の神剣魔法で、大概の敵は屠っていた。

「先制攻撃、いきます。《イグニッション》!!」
「もういっちょ!《夜天閃月》!!」
「う〜…ネリーの出番が無いよう……」

そう言ってふて腐れるネリー。
しかし、想像以上の敵の数に、中々前に進めない。

「うざってぇ……何なんだよ、この数?」
「共鳴、いきますか?」
「……出し惜しみしてる場合じゃねえか。みんな、下がれ!!デカイのいくぞ!!」

散開している仲間を下げさせて、ナナルゥとの共鳴に入る。
鼓動を合わせ、心を通わせるイメージ……

「いくぞ、ルゥ」
「了解」

互いの鼓動が合わさり、膨れ上がる。

「「共鳴剣!!」」

赤いオーラが龍を形作り、その龍が大きく口を開く。
そして、放った。

「万物一切……」
「焼滅させろ!!」
「「《レーバテインブラスト》!!!」」

爆音!!
あたり一帯を、紅蓮の劫火が焼き尽くす。
平原に生えていた草花は焼き消え、敵スピリットはそのほとんどが飲み込まれて消えていた。
それとほぼ同時に、神剣からの加護が消える。
これだけの威力だ、直ぐには回復しないかもな……

「すまないネリー、回復するまで護衛頼めるか?」
「もっちろん!!ナナルゥもちゃんと休まなきゃ駄目だよ?」
「ご心配感謝します」

そう言っていったん後方に下がる。
少し離れた場所では、悠人がアセリアと一緒に戦っていた。
……エトランジェとスピリットとの共鳴剣の威力は強力だ。
その分反動も激しいが…悠人と共鳴したらどうなるのだろうと考えると、興味と同時に恐怖が湧いた。

【…過ぎたる力は】
「分かってるって。無理はしない」
【最後まで言ってないのに……】

ふて腐れる【月詠】の柄を、苦笑いして撫でてやる。
ネリーが向かってくるブラックスピリットを切り倒した時、神剣の力が回復した。
恐らくナナルゥも同様だろう。

「よし!ルゥはもう少し休んでろ。俺とネリーで残り倒すぞ!!」







それから数時間後、こちらのスピリット隊が、サルドバルト城を包囲していた。
傍にいる悠人に話しかける。

「数ばっかって感じだったな」
「ああ、訓練の足りないスピリットたちばかりだった……」

あれが帝国からの支援ってことか……
ろくに訓練もしてないスピリットを支援するなんて、まるで別に勝とうが負けようが構わないようだ。

「なに考えてやがるんだ、帝国は」
「分からない。でも、今はここを落とす事だけ考えないと……」

……そうだな。
どっちにしろ、殺らなきゃ殺られるんだ。

「あと一息だ。行くぞ、悠人!」
「ああ……!!」




]   ]   ]




それから数時間、サルドバルトは完全降伏した。
残っていたスピリットたちは脆く、ほとんどが訓練不足ばかり。
戦闘は、ほとんど一方的な展開だった。
資源の少ないサルドバルトだ、スピリットの強化に回す力も無かったのだろう……
そして今は、悠人とエスペリアとで、一部が崩れたサルドバルトの城内の一室にいる。

「胸糞わりぃな……一方的な戦いってのは」
「仕方がありません。相手が何であろうと、私たちは戦わなければいけませんから」
「分かってるけどな……」

エスペリアの言葉にそう答える。
とはいっても、気分がよくないのには変わりが無いのも確かだ

【…がっつ】
「ありがとよ」

エスペリアが報告をし始める。

「今回の戦闘で、サルドバルトはラキオスの一部となりました。これで、龍の同盟国全てを吸収した事になります」
「髭は喜ぶだろうな」
「これで、しばらくは戦わなくて済む……か?」

その悠人の質問に、エスペリアは俯き、俺は首を振る。

「あの髭がこのまま満足するか?俺は無理に全財産賭けてやってもいい」
「…そうか、そうだな……」
「……あのさ、悠人。お前、まだ戦うの迷ってんのか?」
「!!」

俺の言葉に反応し、悠人が立ち上がって叫ぶ

「あたりまえだろ!!佳織の為だって言ったって、俺は殺したくない!そんなの当たり前じゃないか!!」
「……そうやって、“妹の為”つって何時までも逃げるつもりかよ!!」

そう言って悠人の襟首を掴む。

「誰かの為にと言って、その誰かを理由に殺しを正当化させようってか!?ふざけんな!!」
「じゃあどうしろっていうんだよ!!?」

掴んだ手を振り払い、俺を壁にたたきつけた。
そして叫ぶ。

「佳織のために戦うのが、いけない事だって言うのかよ!!?」
「お前のそれは、それを理由に逃げてるだけだろ」
「……!!そんなこと」
「あるんだよ。俺も前はお前と一緒だったからな……」

俺にはティアがいた。
戦う理由を教えてくれた人が。
だから俺は今、迷うことなく剣を振れる。

「もう一度考えろ。何でお前は剣を振るう?仲間の為か、自分の為か、ラキオスの為か?」

俺が問いかけられた、フィーナに問いかけた問いを、今度は悠人に放つ。

「俺は……」
「別に俺に言わなくてもいい。決めたらとにかく突き進め。それが間違えでも、それがお前の決めた道だ」

そう言って部屋から出ようとする。
ドアのノブを握ったところで、悠人が問いかけてきた。

「…真夜は、どうして戦ってるんだ?」
「……秘密だ」

きっとそれは、お前が選ぶ道と同じだから。







<後書き>

第十九話「戦う理由・参〜劫火〜」

進んでないなあ……
なんだか偉そうな真夜君。
「お前が偉そうに言うんじゃねぇーーー!!」とか言われそうだけど気にすんな。俺は気にしない(ぇー


です・ぶろっさむ

ネリー&シアー専用シンクロドライブ(?)
剣を持たない互いの手を繋ぎ、回転しながら突撃する技。
訓練時、真夜に使用したがジャンプであっさり回避され、目を回したまま訓練中のヒミカとヘリオンに突っ込んだ。

レーバテインブラスト

炎のオーラを纏った火龍を生み出し、そこから劫火を放つシンクロドライブ。
基本的にエトランジェとのシンクロは従来の共鳴を遥かに上回り、その中でもこの技は魔法としては最高峰の威力を誇る。
それ故、反動も半端ではなく、使用後は神剣の加護が完全に消えてしまう。

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