「ネリーも行くーー!!」
「シアーも〜〜!」
「はいはい、落ち着きなさい」

セリアに首根っこを掴まれたまま、ジタバタするネリシア姉妹。
概容としては朝何時までも起きてこない真夜をネリーがくーるに起こしに行ったところ(ジャンピングニーを鳩尾に叩き込むのがクールかどうかは想像にお任せする)部屋はものけの殻だった。
そこでセリアに尋ねたところ……

「シンヤ様に黙っとけって言われてたでしょ?」
「もう出た後だったし、大丈夫だと思ったのよ」

そう言って溜息をつく。
最初は適当にはぐらかしていたが、余りにしつこい二人につい本当のことを話してしまったのだ。
まあ年少組からすれば、イキナリいなくなった上、一日帰って来ないのだから心配もするだろう。

「大丈夫でしょうか……?」
「大きなマナの解放が〜あったみたいですしね〜」

ヘリオンの言葉にハリオンが答えた。
先日の夕方確認されたマナ解放のことを差して言う。
ただ、それが真夜のものか、水龍のことまでは彼女たちには分からない。

「だからー、ネリー達が調べてくるってばー!!」

ジタバタともがくネリーの首根っこをセリアは更にしっかり握った。

「時間を考えれば、もう直ぐ帰ってくるはずだから。それまでジッと―――」
「帰ったぞー」
















Intruder
18.exterminate a dragon 3^good Night^



















【追突注意……】
「了解」

そう言って腰を落とし、衝撃に備える。
……来る!!

「シンヤ―――!」
「さま〜〜!」

ハイロゥを展開して飛びついてくる二人を、しっかり受け止めた。
フッ、俺も成長しているのさ。

「シンヤ様ーー!!」
「まさかの三撃目!!?」

そこにヘリオンが突っ込みあえなく撃沈。

「大丈夫でしたか!?怪我してませんか!!?」
「……あ、ティアにフィーナじゃねえか。どうしてココに?」
「だ、駄目ですよシンヤ様!まだ逝っちゃ駄目ですー!!」

倒したはずの二人のスピリットの顔を見ながら、そこで俺の意識は落ちていった。







「って!?」

ガバァッと布団から飛び上がり、周囲を確認する。
よ、よかった、生きてるな俺……
ホッと一息つく。

【追突注意って言ったのに……】
「時間差で来るとは思わなかったんだよ」

そう言って【月詠】をとった。

【どこ行くの?】
「髭んとこ。帰還したから報告に行かねえと」
【……舐めんなごらぁ?】
「まあそんなとこだ」

生きて帰ってきたんだ、あいつの驚く姿が目に浮かぶな。
そう思ってクッと笑っていると、ドアがノックされた。

「開いてるぞ」
「あ、もう起きてたんだ」

そう言って入ってくる最年少スピリット。

「何だ、ニムか」
「何だって何?ていうかニムって呼ぶな!!」
【うるさいの……】
「我慢しろ」

コツンと鞘を叩く俺に、ニムが訝しげな表情を見せる。

「何やってんの?」
「【月詠】が文句言ってきたからな、ちょっとお仕置きだ」
「……【月詠】?」

そう聞いてきたニムに、俺は刀を掲げてみせる。

「こいつの新しい名前。喋るようになったんだよ」
【……よろしくね?】

いや、聞こえないから。

【……残念】

ホントにな

「へ〜、ポンコツなのかと思ってた」
「失礼な」
「だって、喋らない神剣なんて聞いたこと無かったもん」

まあそうだろうが……

【マスターもそう思ってた?】
(…そんな事無い。お前には何度も助けてもらったからな)
【あい・らぶ・ゆう?】
(べた惚れだ)

柄を撫でてやる。

「そんじゃ俺は報告に行くから。皆にもそう伝えておいてくれ」
「ん、分かった」




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「以上で報告は終わりです」
「……馬鹿な、単騎で龍を殺したと言うのか…?」
「信じられないなら確認したらどうだ?マナの発生が確認されてるはずだからな」

【月詠】の覚醒と、龍の討伐の報告を終える。
あの反応だと、マナの発生が俺のものだとでも思っていたのだろう。

【…マスターはつよいの】

心の中でありがとな、と告げて一歩踏み出す。

「それで、お願いがあるんだが」
「な、何だ?」
「今度のマナの三割を、イースペリアの復興に回してくれ」
「何だと!?」
「俺はアズマリアのエトランジェだぜ?それぐらいの権利はあるだろ。全部と言わないだけありがたく思え」

そう言った後、アズマリアを見る。
驚いたような、喜んだような表情に、思わず笑ってしまう。

「いいでしょう。」
「な、レスティーナ!!」
「お父様。シンヤの言うとおり、今彼はイースペリアのエトランジェです。それに本来なら得ることの無かったもの、感謝こそすれ拒否する事など出来ません」
「そ、それは……ぐぅ」

それを聞いた髭が、苦虫をかみ殺したような表情になる。
チラッとレスティーナの方を見ると、気付かれないように小さくウインクをしてきた。
口だけで「さんきゅ」と伝える。
しばらく考えていた髭が、遂に諦めたように

「分かった……」

と言った。




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「男らしかったぞシンヤ!あのラキオスのジジイの悔しそうな顔といったらなかったわ!!」
「ありがとよ、でも何でお前がココに来てるんだ?」

報告を終え、第二詰所で風呂に入った後、食卓に行くと、そこにいたのがアズマリアだった。

「もちろん、お前に会いにだ!」
「いや、いいのか?勝手に出歩いたりして」
「問題ない。レスティには言っておいたからな」

レスティーナも引き止めとけよ、危ねえなあ……
そんな俺の思考を知ってか知らずか、アズマリアは【月詠】の事をじろじろと見る。

「なんだ、外見は余り変わっておらんのだな」
「見た目はな。だけど神剣魔法も使えるようになったし、こいつのおかげで水龍にも勝てたしな」
【…えっへん】

そこにハリオンが帰ってきた。

「あら〜?また来てたんですか〜、アズマリア様〜」
「待て、前も来てたのか!?」
「え〜、昨日もネリーとお喋りしたり〜、みんなでお茶を飲んだり〜」
「うむ、ハリオンの淹れた紅茶は旨いからな。」

いや、女王様が一人で出歩くなよ、唯でさえ微妙な立場だってのに……
嬉しそうにハリオンが紅茶を淹れに行ったのを見て、俺はアズマリアに話しかけた。

「大丈夫だったか?」
「うむ、問題ない。普段はレスティと【求め】のエトランジェのいるし、第一私を殺せばお前が黙っていないとなると、向こうも手が出せんようだ。」

そうか、なら暫くは大丈夫だろう。
まああの髭がこのまま何もしないとは限らないだろうしなあ……
そんな事を考えていると、アズマリアがこちらをジッと見ていることに気付いた。

「ん?どうした?」
「シンヤは、私が心配だったか?」
「ああ?」
「私は心配だった。」

向かい直って話し出す。

「私が不用意に相手の提案に乗ってしまったせいで、シンヤを危険な目にあわせてしまった。謝っても謝りきれぬ失態だ」

今回の討伐の事か?
そんなに気に病むこと無いのだが

「気にすんなって」
「しかし……!」
「そうやって、お前が心配してくれただけ、俺は嬉しいよ」

そう言ってポンポンッと頭を叩く。

「それとさっきの質問の答え。心配したに決まってんだろうが」
「シンヤ……」
「あらあら〜、熱々ですね〜」

そこにハリオンがお盆に三つのカップをのせてやって来た。

「あ、俺はいい。ちょっと寝るわ」
「そうですか〜?」
「ああ、アズマリアが帰るとき起こしてくれ。連れて帰るから」
「心配ですか〜?」

そう言ってニコニコしながらハリオンがこちらを見る。

「お姫様を護るのは、兵士の役目だろ?アズマリアもおとなしくしとけよ?」
「分かっておる。夕刻には帰るから、それまでゆっくりしていろ」
「さんきゅ」

そう言って居間を後にした。







「ふぅ」

ドサリとベットに倒れこむ。
皆の手前、表情に見せてはいないつもりだったが、かなりの疲労が蓄積している。
単身での任務がここまできついとは知らなかった。
隣に誰かがいるという事が、こんなにも心強いとは……

「無くなって初めて分かる、か……」

そう一人呟く。

【わたしがいる】
「そうだったな。さんきゅ、【月詠】」
【どういたしまして】

今回こいつが目覚めてくれなかったら、本当に俺は死んでいただろう。
もう一度「ありがとな」と言って、俺は眠りについた。




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此処ではないどこか…
そこにいるのは二人の女性

「第一段階解放ですね」
「そうじゃな、覚醒も予定より早い。後は……」
「こんな面倒臭いことせずに、さっさと教えてあげればいいじゃないですか。第一なんで<混沌>と<法>の戦いにねじ込んだりしたんですか」
「……約束じゃからな。【 天照 ライジング・サン】との」
「あの人も、あなたも、この人との関係者ですか……奇妙な人ですね。二十も生きてない子供が、二人の永遠者に接触するなんて」
「そうじゃな。本当に、不思議な奴じゃ……」









<後書き>

十八話「竜退治・参〜よい夢を〜」

大して進まなかった……

最後の二人、読んでくれてる人は、片方は誰か分かるかも。
秘密は深まるばかりですが、どうなっていくかはお楽しみに

次回から「サルドバルト篇」突入、かな?

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