さあ 解き放て





















Intruder
17.exterminate a dragon 2^夜に閃く月のように^















「ここだな……」

洞窟の前で一人呟く。
中に入ると、洞窟特有の涼しさが感じられた。
いや、それだけじゃない……
これは、寒気だ。

『何をしに来た。異界のものよ』

圧倒的な存在に対する。

「あんたを、殺しに来た」

己の身長の数倍はあろうかという、巨大な龍に対して言う。
そして【桎梏】を抜き、構えた。

『その剣…そうか、貴様が奴に選ばれた者か』
「……?」

奴?誰の事だ?

『いいだろう。こい、異界の者。我が名はレーズ。水龍レーズだ』
「【桎梏】の真夜。神凪・真夜だ。行くぞ!!!」




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「ぜっっあぁ!!!」

拳に纏ったオーラで、レーズに殴りつける真夜。
だが、その皮膚には傷一つ付かない。

(ウロコが厄介だな…それなら!!!)

同じ部分に“夏日連衝”を叩き込む。
しかしそれでも血が出るどころか、ウロコ一枚はがれない。

「な……マジかよ!?」
『どうした!その程度か!!?』

ブンッと音がして大木のような右腕が真夜に迫る。
流旋ストリーム”では流しきれないと判断し、バックステップで距離を置こうとする、が

「が!!?」

横からの衝撃で真夜の体が大きく吹き飛んだ。
吹き飛びそうになる意識を無理矢理繋げて確認する

(尻尾か!?)

一瞬の油断、体が岩壁に叩きつけられ、体の動きが止まる。
その一瞬の隙を突き、レーズは次のアクションを取った。

「なん…だ……?」

レーズの元に、青いマナが集まっていく。
それを見てマズイと感じた。
動物としての生存本能が、危険回避を叫ぶ。
だから、走った。
全速で、“疾空アクセル”を使い最短加速で

爆音!!
倒れこみ、前を見る。
先程自分がいた場所は、岩が完全に吹き飛ばされ、洞窟の岩壁には直径二メートルほどの大穴が開いていた。

『アクアブレスをかわしたか。だが、次は当てるぞ?』

レーズが言う。
どうする、考えろ真夜!
このままじゃジリ貧だ!!
裂空フル・アクセル”は…駄目だ、あれは一日一回が限界。
それにあれはパワー自体は余り高くない。
“死季”も、春風桜花ではレーズに敵いそうもない。

(考えろ、考えろ!今までもそうしてきただろうが!!)

負けるわけにはいかないんだ。
待っててくれる奴等がいるから。

一瞬“紅”の事が頭によぎるが、即刻却下。
今までは保てていたが、何時まで俺の意識が持つか分からない。
それに、発動するかどうかもアヤフヤなものを、頼るわけにはいかない。
どうする、どうする、どうすれば………














言語制限:Level.5マデ解放
ソレニ伴イ神剣魔法ノ制限ヲ一部解禁
遠距離攻撃型、対魔法防御型神剣魔法ノ発動ヲ許可
制限解放ロック・リリース、汝ニ幸アランコトヲ















「何……?」

【桎梏】の刀身が光り輝き、刀身から何かが剥がれていく。
刀身の色は変わらない、しかし今まで以上の力が感じられる。
オーラの色は、まるで月光色に……

【………眠いの】
「第一声がそれかよ」

それが真夜と【月詠つくよみ】の、始めての会話だった。




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「つーか、喋った……?」

今まで一言も喋らなかった【桎梏】が、初めて……

【……桎梏じゃない。月詠】
「え?」

名前まで変わったのか。
何がなんだかよく分からんが、少しは戦力が上がっ―――

【…落石注意……】
「あ?っておわ!?」

突然落ちてきた巨大な岩を、紙一重で避ける。
さっき俺が叩きつけられた影響か?

【三歩下がって】

言われたとおりに三歩下がる。
と、目の前にレーズの豪腕が横切った。

『何をブツブツ言っている、異界の者。油断すれば、死ぬぞ!!?』

そして、今度は左手を振りかざした。

【右に飛んで】

右方向にジャンプする。
この剣、もしかして……

【右】
「よっと!」
【後ろ】
「分かった!!」

やはりだ。
読んでいるのだ、敵の動きを。
【月詠】に言われたとおり、向かい来る豪腕と尻尾の連打をかわす。

【左…と見せかけて上】
「了解、って!?」

ギリギリ上から来た尻尾での攻撃を跳躍して避ける。

「あ、危ねえな!!何しやがる!?」
【……茶目っ気】
「いらんわ!こんな生死の分かれ目で!!」
【……つまんない】

少々性格に難ありな気がするが……

「それで、俺はあいつに勝てそうか?」
【無理】
「即答かよ……」
【マスターの持つ剣技じゃ】

その言葉に引っかかりを感じて質問する。

「他にならあるのか?」
【あるにはある。でも……】
「でも?」

何だ?なにかリスクでもあるのか?

【……疲れる】
「ちょっとは頑張ってくれ……」
【ふぁいと?】
「そうだ」

そこでまたレーズの攻撃が来た。
喋ると舌をかみそうなので、心の中で会話をする。

(それで?)
【神剣魔法。教えるから詠って?】
(了解!!)

【月詠】から魔法に関する知識が流れてくる。
紡ぎ上げるは、破壊の祝詞。
血と死で結ぶ、滅びの言霊。

【ばっちり?】
「ああ、さんきゅ!【月詠】!!」
【愛してる?】
「メロメロだ!!」

流れ込んできた情報を整理、繋ぎ合わせて術式を形成。
今必要なのは、遠距離攻撃用・神剣魔法………!!

「永遠神剣【月詠】の主、神凪・真夜が命ずる……」
【水害注意……】

こちらの詠唱に反応したのか、レーズの方も『アクアブレス』の発動準備に入っている。
だが、詠唱は止めない。

「マナよ、オーラへと変われ。闇を切り裂く光となりて、彼の者に滅びを与えたまえ……!!」

マナと共に持っていかれそうになる理性を手繰り寄せ掴み取る。
詠唱完了と同時に、俺を中心に巨大な魔方陣が浮かび上がった。

「行くぜ、レーズ」
『いいだろう。互いの全力、出し切ろうぞ!!』

圧縮されたマナが、開かれた口へと集束していく。
恐怖はない、あるのは勝利のみ!!

『「おおおおぉぉぉぉ!!」』

そして同時に、放たれた。

夜天閃月やてんせんげつ!!!」




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「はぁ、はぁ、はぁ……」

巻き上がった砂埃が晴れていく。
その先に佇むレーズは……

『我の、負けか……』

肩からほぼ真っ二つになっていた。
【月詠】が持つ、唯一絶対の攻撃専用神剣魔法、《夜天閃月》によって。

「やばかったよ、【月詠】が起きてなかったら、俺はあんたに負けてた」
【…えっへん】
「えらいえらい」

そう言って【月詠】の柄を撫でてやる。

『そうか…目覚めたか』
「そうだ、あんた俺のこと知ってんのか?」

戦う前も確か「奴に選ばれた」とか言ってたはずだ。

『シンヤ、これからお前は、この世界の運命を変えうるかもしれん。』
「運命?」

何だ、どういう意味だ?

『されど、迷う事はない。唯、自分を信じて突き進め。たとえ、それが屍で出来た道であろうとも』
「待てよ!あんた何言って―――!!」
『進んだ先に、きっと分かる』

ほとんど原形をとどめなくなったレーズが、マナの霧に還っていく。

「待てよ!!どういうことなんだ!!?」

その言葉の返事は、遂に返ってこなかった。




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【……眠い】
「一眠りしとけ。暫く戦闘はないはずだから」
【………zzz】
「はやっ!?」

苦笑いして【月詠】の柄を撫でた。
目覚めた神剣、新しい力。
そして……

「運命を変える、か………」

最後にレーズの残した言葉。
四神剣の伝承に無い、エトランジェだけが持ち得る上位神剣。
そこで、一つの疑問が湧いた。

「俺は…本来ここにいるはずが無い…のか……?」

脚本に無い存在。
本来登場しないはずのイントルーダー(乱入者)。
更に言えば、この戦いそのものが誰かの手で………

「…止めよう、考えすぎだな」

日が落ち、夜が迫ろうとしている。
今日は野宿だな、とそんな事を考えながら、もう一度【月詠】柄を撫でた。










<後書き>

第十七話「ドラゴン退治・弐」

【桎梏】が喋りだしました。しかも名前まで変更に

【月詠】の能力は敵の攻撃予測。
更に正確に言うと、時間の先を読む【時詠】と違い、【月詠】は周囲のマナの流れを感じ取る事によって敵の攻撃を、あくまで“予測”します。
ただ、その予測の的中率は非常に高いのだ!!みたいな(どんなだ

同時に【月詠】の秘密もそれとなく出てきていますが、それはお楽しみにと言う事で……
スキル説明をして、締めたいと思います。


夜天閃月 (やてんせんげつ)

真夜の【月詠】が使える唯一絶対たる攻撃用神剣魔法です。
オーラによる斬戟を繰り出す技であり、込めるマナによってその威力は変化します
唯一が故にその能力は高く、その中でも<高速詠唱(スペルアクセル)>は【月詠】独自の能力です
これはマナを従来必要な量より多く込めることで、詠唱を短縮して撃ち出す事が出来ます


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