「……何の冗談だエトランジェ？」
「いや、だから……この娘がアズマリア女王なんです」
「馬鹿にするな！！こんな小娘が女王なはず無かろうが！！」
「いや、まあそうでしょうけど……」
「分かった…貴様等が無礼なのは十分分かった……」
Intruder
15.Negotiations
ラキオスに帰還した俺たちは、アズマリアを連れて謁見の間へ。
そして、さっきのような状況だ。
どうやらラキオス王（以下：髭）は本物のアズマリアを知らなかったらしい。
隣でレスティーナが笑いをこらえている事から、彼女は知っていたんだろうが……
「大体貴様のような子供が―――」
「子供ではない！もう子も産める立派な大人だ！！」
髭の言葉にピシャリと言返す。
……大人の基準ってそこなのか？
「大体王になるのに歳など関係ない。必要なのはそこに至る器があるかというそれだけのこと。それに、今は本物か偽者かなどはどうでもいい。問題は、だ」
ビシィッと髭を指差すアズマリア。
「貴様だな？イースペリアのマナ消失を引き起こしたのは！？」
周りの重臣たちがにわかにざわつく。
まあ、サーギオスが起こした事になってんのにこんな事言われりゃな……
チラッとアズマリアがこちらを見てきた、確認するかのように。
黙って頷いてやる、大丈夫だと。
だからお前の好きなようにしろ、あの髭に一泡吹かせてやれ。
それを見たアズマリアは微笑んで前を見た。
そして先より更に堂々とした態度で喋りだす。
「あ、あれはサーギオスが―――」
「バカを言うなバカ。帝国が起こしただと？そんな１ルシルの得にもならん事を何故ヤツらがするというのだ。言い訳ならもう少しマシな物を考えろ」
吹き出しそうになるのを必死でこらえる。
周りも同様のようだ。
それも仕方がない、髭をはやしたジジイが、自分の娘より小さな子供に言い負けているのだから。
「いいか、底浅きラキオスの王よ？私たちはそれに対し別に糾弾するつもりは無い。問題なのはその後だ」
「……何が望みだ」
完全にアズマリアのペースになっている。
これを見ていると、こいつが女王だってのも信用できる。
本人に言ったら怒るから言わないが。
「まず一つ、ラキオスの総マナの…そうだな、戦時中という事もある。一割をイースペリア復興にまわせ。」
たかが一割、されど一割。
今のラキオスなら、結構な支援が出来るはずだ。
「そして、ここにいるエトランジェ、カンナギ・シンヤを私の指揮下に置くこと」
「……………は？」
思わず口に出てしまった。
いや、聞いてないぞそんなの！？
「ば、馬鹿な！そのような事出来るはずが無かろう！！」
「ああ、戦場には今まで通り参加させて構わん。ただ、私の命令を最優先させるというだけだ。どこかの誰かに暗殺などされては敵わんからな」
焦りを見せる髭。
まあ、エトランジェ一人ヘタしたら敵にまわす事になるからな。
まあアズマリアはそんな事しないだろうが。
暫く考え込んでいた髭は、急に何か思い出したように笑い出す。
「聡明なるイースペリアの女王よ、この男が何故ラキオスにいるか分かるか？【求め】とその妹のためだ」
そう、俺はその為にココにいる。下手なことをしたら―――
「……ハッキリと言うぞ？貴様はバカだ」
「なに？」
アズマリアの言葉に髭がピクリと眉を動かす。
「聞こえなかったか？なら何度でも言おう、貴様はバカだ。貴様はバカだ。貴様は―――」
「ええい、もうよい！！そのような低俗な言葉でわしが怒るとでも思っているのか！？」
いや、怒ってんじゃん既に
「貴様の手札は二つ、“王族の制約”と“【求め】の妹の身柄”。しかしこんな物何の役にもたたん」
そう言うと、アズマリアはこちらを向いた。
「シンヤ、立て」
「え？あ、ああ……」
促されて立ち上がる。
「斬れ」
「………は？」
「いいから、私を斬れと言っておるのだ」
「お前…頭がおかしくな―――」
「いいからサッサとせんか！！」
しぶしぶ【桎梏】を抜刀する。
「いいか、寸止めだからな。斬るつもりで寸止めだ」
「滅茶苦茶な要求だな」
掲げた【桎梏】を、言われたとおり肩を斬る直前に寸止めする
「これでいいのか？」
「十分だ、ありがとう」
くるっと髭に向き直る
「どうだ？これで貴様の手札の一つは消えた」
……あ、そうか。
アズマリアも王族のはずだから、俺が斬ろうとすれば制約がかかるはずだ。
でも…なんでだ？
「この制約は伝説に残る四神剣にのみに働く力だ。伝承に無い【桎梏】にその制約は存在しない」
「……しかし、貴様自身が偽者である可能性も―――」
「ならば試してみるか？確認した瞬間、貴様の首が吹き飛ぶ事になるが」
ジワジワとアズマリアが髭を追い詰めていく
「【求め】の妹も同様だ。貴様がそのような事をする前に、シンヤが殺す。私が言わなくてもそのくらいするはずだ」
まあ、制約がかからない以上は、な
「さて、手札はなくなったぞ？浅薄なるラキオス王よ。どうする？」
「ぐ………」
詰みだな
「……分かった。受け入れよう」
Ⅹ Ⅹ Ⅹ
「格好よかったですよ～、アズマリア様～」
「当然だ、あんな野心ばかりのジジイに負けはせん！」
フフン、と胸を反らせて言うアズマリアに、ハリオンが頭を撫でている。
「いや、でも本当に凄かったよな」
「アズマリア様カッコいいー！」
「かっこい～」
悠人とネリー、シアーの言葉に、ますます得意気になるアズマリア。
こんなところはやっぱり子供かと思うと、つい笑ってしまう。
ところで……
「お前、どこに住むんだ？」
やはりレスティーナのところだろうか。
ならさっき一緒に行けばよかったと思うのだが。
それを聞いたアズマリアは、さも当然のように答えた。
「シンヤの部屋だ」
「……………は？」
ナニヲイッテイルノカナ？
「危険から身を守らなければいけない。それには近くに護衛が必要になる。ならば当然の選択だ」
「いやいやいやいやいや」
「お前は私に言ったぞ？お前の全てをかけて私を護ると。」
周りの視線が冷たくなる。
ち、違う！そういう意味で言ったんじゃない！！
「ア、アズマリア？それは流石にまずい。お前は女王、俺は来訪者。更に言えば男と女だ」
「今だってお前はここにいるスピリット達と暮らしているではないか」
「いや、それは……」
「それに…私はシンヤなら…その…別に構わない」
顔を赤らめてアズマリアが言う。
し、視線が更に厳しくぅ！！
「や、やっぱりそうだったのか真夜」
と言って悠人が後ずさる。
「……つーか、パパとか言われてるお前にだけは言われたくないわーーー！！！」
結局、アズマリアに拝み倒しレスティーナの部屋に行ってもらうことになった。
しばらくは皆の視線が冷ややかだったが……
＜後書き＞
第十五話「交渉」
全く話が進んでいません(´・ω・｀)
いや、私のせいじゃないんです。これホント（じゃあなんだ
次回は改訂版「水龍討伐篇」突入ですよー
次回「wake up」
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