「……どう思う?」
「どうって……」
目の前の少女を前に、セリアと顔をあわせる
これが、女王?
こんなちっちゃい子が?
「む…信じておらんな?だが私こそが正真正銘イースペリア女王だ!」
「……はぁ」
とりあえず、頷くしかなかった。
Intruder
14.LOST^defend you defend you...^
「えーと、つまり……」
「えーい、理解が遅い!!だから―――」
「分かってる分かってる。つまり、王座にいたのは偽者で、お前が本物の女王様って訳だろ?」
「そうだ。このような小さい娘が女王と知れたら、国民が混乱すると言われてな。仕方なく侍女であるカルマに影武者となってもらったのだ」
分かった、のは分かったが……どうも信用できない。
まあレスティーナに会わせればことの真意もつかめるだろ。
「……貴様、信じていないな?」
「いえいえ滅相もございません」
「む〜。誠意が感じられん!!」
抱きかかえた(自称)王女が暴れだす。
「いででで!!信じる、信じるから!!」
「ふんっ!まあよい、それにしてもエトランジェというのは無礼な奴だな」
とは言ったものの、こんな小さな少女が王女だとも信じられない。
すっぽりと収まってしまう小さな体を見ながら考えていたその時―――
ゾクウッ!!
「なん、だ……」
急な悪寒に立ち止まり、辺りを見回す。
しかし周りには何も無く、これと言った変化も見られない。
だが、告げていた。
それが【桎梏】の声無き警戒なのか、それとも動物としての反応なのかは分からない、だが……
「どうしたの?」
「急いでココから離れよう、嫌な予感がする」
訝しげなセリアを急かすように、俺たちは城を後にした
] ] ]
「えーと、これが女王?」
「非常に信じがたい事実だがな」
「貴様等、無礼という言葉を知っているか……」
ワナワナと震えるアズマリア(仮)
これ以上ぶり返すと厄介なのは目に見えているので、早々と話題を変える。
「それで、エーテル施設は?」
「ん?ああ、なんとかなったよ」
途中帝国のスピリットが出てきたけど、と悠人が付け加える。
後ろを見ると、戦闘によってつけられたのであろう傷を、エスペリアたちグリーンスピリットが回復しているところだった。
「後はどうするか、だな」
悠人がエスペリアに呼ばれて行った後、一人ごちる。
このまま、ここにいるアズマリア(仮)を置いて救助に向かうのも難しい。
なら悠人と俺とで分担して、救助とこの娘をラキオスに連れて行くのを分けるか。
そう思って悠人を呼ぼうとしたその時―――
ドクンッ!!
先程以上の悪寒を、体中が駆け巡る。
方角は―――
「イースペリアか!!?」
咄嗟にアズマリア(仮)を庇うように前に出る。
「いいか、絶対に動くんじゃねえぞ!!?」
「わ、分かった」
こちらの真剣な表情に驚いたのか、やや強張った表情でギュッと制服の裾を握り締める。
「やはりあれは暴走の操作!!みんな守りを固めて!“マナ消失”がきます!!」
そうエスペリアが叫んだ瞬間、何かが弾けた。
「マナよ、我が求めに応じよ。オーラとなりて、守りの力となれ!」
「“死季・春風桜花・弐式”!!」
悠人が抵抗のオーラを、俺が桜花を防御に転用させた技をそれぞれ放つ
「《レジスト》!!」
「“千紫万紅”!!」
白いオーラの障壁と、灰褐色のオーラの花弁で出来た防御壁が、皆を覆うように包み込む。
それとほぼ同時に放たれる死の咆哮。
木をなぎ倒し、植物は枯れ、生きとし生けるすべてが消えていく。
その悲鳴を聞きながら全開で障壁を張るが……
「力が……!!」
共鳴剣の反動か!?
力を振り絞ろうとしても、体が上手く機能しない。
「ふざけろっ!!」
壊れてもいい、腕でも足でも、この心でも持っていけ!!
だから、もっと、もっと力を!!
「うおおおおぉぉぉ!!!」
視界が赤く染まっていく。
感じる、あの力だ。
だが、それでいい、そうじゃなきゃ誰も護れない!!
赤く染まるオーラを解放し、制御する。
ありったけのオーラでできた障壁が全体を包み込んでいった。
・
・
・
・
・
どれほど経っただろう
先程とは打って変わって静寂が場を包む
そして俺の目の前に広がっているのは
「嘘、だろ…?」
朽ち果て何とか城の原形をとどめたイースペリアだった。
いつの間にか、俺の制服の裾を握り締めていたはずの少女が、俺の前に立っている。
「……シンヤ、何故私はココにいるのだろう」
「アズマリア……」
「何故、国の者たちを誰一人護れず、ここにいるのだろう」
俯いてかすれた様な声で話す少女。
俺はそんな少女に何も言ってやることが出来ない。
できるのは、抱きしめてやる事だけだった。
「あああああぁぁぁぁ!!!」
小さな少女の慟哭が、空に響きわたった。
] ] ]
その夜、ダラムまで撤退した俺たちは、そこに立てられた仮詰所で一夜を明かすことになった。
皆は始終無言、アズマリアは泣きつかれたのか眠ってしまった。
俺はといえば、深夜になってもまだ眠れずにいる。
気を紛らわそうと、置いてあった報告書を読み上げていると、扉がノックされた。
「空いてるぞ」
「……失礼する」
そう言って小柄な少女が入ってくる。
アズマリアだ。
ドレスでは寝れないだろうと、今はスピリットと同じ寝具を身に纏っている。
手には枕を抱えていた。
「どうした?」
「……眠れない」
夜中に起きてしまったのか。
そう思い椅子から立ち上がるとアズマリアの元に近付く
「一緒に寝るか?」
「………」
ギュッと枕を握り締め、小さく頷いた。
・
・
・
・
・
「カルマは、私が小さい頃から一緒にいてくれた人だった」
アズマリアがそう切り出す。
確か、この娘の影武者になっていた人だった。
「父も母も、私が生まれて少しして死んでしまい、後継者が私しかいなかった国は、仕方なくまだ子供だった私を女王にした」
今でも子供なのでは?という疑問は口に出さなかった。
絶対怒るだろうし
「そのとき、カルマが影武者になるといった。もちろん小さな私をそのまま世間に広める事は、政治上不利であったし、どちらにしても代役を立てる必要はあった。」
でも、と呟く。
「嫌だった。カルマは私にとって姉のような人だったし、何より危険だったから」
それはそうだろう。
何しろ世間には女王とされているのだから、当然暗殺の危険だってある。
「また、いなくなった。父も、母も、カルマも、国さえも……」
シーツを握り締める音がする。
顔は火を落としているから見えない。
そんな少女を、俺は安心させるように抱きしめた。
「俺は、いなくならないなんて言わない」
「……!」
「俺がいるのは戦場だ。きっとこれからも戦い続けるだろうし、いつかは死ぬかもしれない」
だけど
「だから、俺はお前が俺と一緒にいるときだけでも、笑っていて欲しい。その為になら、俺はどんな奴とだって戦ってやる。どんなものも、打ち払ってみせる。俺の力の、全部を懸けて」
剣になろう、この娘を脅かすものを切り裂く。
盾になろう、この娘をあらゆるものから護る。
安心したのか、アズマリアが微笑むのが感じられる。
「シンヤは、父上のようだな」
「勘弁してくれ、この歳で子持ちにはなりたくない」
そんなのは悠人一人で十分だ。
そう言うとクックッと笑う。
「ありがとう、シンヤ」
「どういたしまして」
<おまけ>
翌朝。。。
「真夜、朝飯だって…さ……」
「うあ?もう朝か」
悠人に起こされるとは、余程疲労がたまっていたのか。
伸びをして悠人を見ると、顔を強張らせてこちらを見ている。
「ん?どうし……」
といった時に気付いた。
というか悠人の視線で気付かされた。
俺の傍らに眠る少女の存在を。
「……違うんだ」
「いや、い、いいと思うぞ俺は。歳の差とか関係ないよな」
「マテ、お前は激しく勘違いをしている」
このままではいけないと、未だ眠ったままのアズマリアを揺すり起こし、状況を打開しようと行動に出る。
「おいアズマリア、起きろ!起きて説明を!!」
「ん〜、いけないぞシンヤ…そんな激しく……」
「何の夢見てやがるんだーーーー!!」
「じゃ、じゃあ俺は先に行くから……」
「い、行くな悠人!ちょ、ちょっと待てーーー!!」
「そんなに激しく揺するなシンヤ……もう起きて…zzz」
<後書き>
話が全く進みませんでした、第十四話「消失〜君を護ると〜」
何もしてませんよ真夜は、当然です!!(必死
ちんまいアズマリアは、レスティーナの友人とは言え別に年上じゃなくてもいいんじゃないか?と思いやっちまいました(´・ω・`)
途中で(仮)が抜けたのは、イースペリアを前に泣き叫ぶ彼女を見た真夜が、彼女を女王だと信じたからです。
-Powered by HTML DWARF-